飛行島の宿屋(2) (Pixiv Fanbox)
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飛行島には公営の娼館があり、島の運営を経済的に支える上で重要な役割を担っている。
男たちはギルドの荒くれ仕事の帰りに宿に寄ってすっきりしていき、女性たちはその分け前を対価として受け取る。島は場所代としてその何割かを徴収する。実によくできたシステムだった。
宿で働く嬢にはレギュラー嬢と臨時嬢がいて、人手不足のときだけ臨時メンバーが呼ばれる時がある。
ノアもその一人だった。ノアはレギュラーとして登録しようとしたところ、ネモにひどく反対されて中止した経緯がある。そのため臨時嬢として仮登録されたままになっていた。
このたび、大感謝半額セールを実施するため大量の嬢が必要となり、ノアたち臨時組にも招集がかかった。
ネモはオファーにでかけておりノアは飛行島で留守番をしていたので、ちょうど暇を持て余していたところだった。
一日くらいなら……そう思ってノアも参加することにした。
*
ノアが入店するとすでにたくさんの男たちが列をなしており、半額セールの好評ぶりが窺える。宿のそこら中から女性たちの嬌声が聞こえてきて、部屋はほとんどフル稼働状態だった。
個室に入って準備をしていると、さっそく客が一人あてがわれる。
「ノアなのです。よろしくお願いするのです。」
ノアがヒトのかたちをとってから覚えたこの行為は、身体の奥底から悦びと快感をもたらしてくれる。
だからなぜネモが、他の男とするのを禁止するのかが理解できなかった。
ただノアは、ネモが悲しむ顔を見たくないから……とその言いつけを守ってきた。
「どうぞ……なのです」
いつもより短いマットでのご奉仕のあとに、挿入を受け入れるポーズを取った。
半額セール中なので、一人あたり40分しか時間がない。手っ取り早くフィニッシュに持っていくにはこれが一番いい。
「ん……ん…」
蜜でぬめるそこが押し広げられ、客の熱く固くなったものが侵入してくる。
「んあ……っ」
この瞬間がいちばんドキドキする。
敏感なところを通り抜けると、背筋に電撃が走ったかのような快感が駆け抜けた。
戻っていくときもまたそこを逆向きに撫でられ、電撃が走る。
ピストンとはこの繰り返しで、止めどない快楽の連続だった。
「い……いいのです……っ」
久々にするえっちは、たちまち快楽の渦の虜にしてくれる。こんなに悦びをもたらしてくれる行為が、なぜ駄目なんだろう。
だが、客の動きが早くなり、フィニッシュが間近に迫ってきたとき、急に恐怖心が首をもたげ始めた。
客の男の体液が入ってくることが、急に怖くなってきたのだ。
侵略。自分の身体に、見知らぬ男の成分が注ぎ込まれて活動する。そう、これは侵略行為だ。
ネモがなぜ頑なに禁じようとしていたのかが少しだけわかった。今、自分は侵略を許そうとしている。それはできれば避けたい……
「な…なかは…駄目なのです……っ!んんー……っ」
だが拒絶の声も虚しく響くだけだった。心は拒んでも、身体の方はこの行為に悦んでいる。男のそれがびゅくびゅくと溢れるほどに注ぎ込まれると、その熱さに身体は絶頂を迎えた。
*
やっぱりこれきりにするのです……
ひとりシャワーを浴び、身を清めながら、ノアはそう決心した。
言いようのない不快感がぬめりついている。
やはり言いつけを守って、売春などやめておけばよかった。
約束を破ったことでこんなに惨めな気持ちになるくらいなら。
ノアを呼ぶ声が聞こえる。次の客がもうやってくるらしい。
既にノアの指名が5人ほど溜まっているらしい。
とりあえず、指名を全員捌き切ったら、もう辞めることにした。