Japanese short story Part03 (Patreon)
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「で、研究の結果はどうだったのかしら?」
スラっとした足を組み直し、研究開発担当の報告を待つグレイス。
前回の作戦で身動きが取れない巨体と化したキューティーシスターズを持ち帰り調査を指示して数日、ようやく担当が部屋に訪れてきたのだった。
「はい、グレイス様!研究結果なのですが……結論から言えば怪人化は成功しております。ただ肉体の変化に本人たちが適用できず刺激の強さに快楽を感じ続けているという状況ですねぇ……」
「あら……ってことは味方として使えないじゃない。どうするのよ?」
「心配ありません!奴らが溢れさせている胸の液体を採取したところ、また新たなアイテムを制作するのに役立つ成分を検出しました!やつらには液体製造を担ってもらうため隔離室で軟禁させております!」
「それは良いわねぇ!我がダークワールドの世界征服のため十分役立ってもらいましょう!おーほっほっほっほっ!」
椅子から立ち上がり高笑いをあげるグレイス。
「さて、それじゃあ次の作戦だけれど……」
「ふひぃ…グレイスさまぁ~…わ、わたしぃ、次はわたしにお任せ…くださぁい…!」
どすどす、と重い体を揺らしやってきたでっぷりガール。
服のサイズが間に合ってないのかシャツがめくりあがり大きなおなかが丸出しになっている。
常日頃何かを食べているためか以前よりさらに太くなったように見える。
「あなたが?そうね…そういえばまだ怪人化したあなたの力を見てないし……良いわ!あなたに任せてみましょう!」
「ありがと…ございまふ!では早速いってきます!」
どすん!どすん!!
意気揚々と巨体を揺らしてでっぷりガールは街へと繰り出していった。
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「さて、と……」
人でにぎわう街中、そこにツインテールのスラっとした少女……その姿は太る前のでっぷりガールそのものだった。
「さすがにあんなに太ってたら目立っちゃうからね……怪人化して体型操作が身に着いてほんと良かったなぁ~体力使うから普段は使わないんだけど」
太った姿とは変わって軽い足取りで目的の場所へ向かっていく。
しばらく歩いていくと何やら店の前に大勢集まっている。
「あ、ここに居るかな…?」
人の隙間を縫って店内を覗くと……
「ぐぅっ…負けたぁ…大食いチャンピオンのこの俺様がぁ…!」
「へっ!どんなもんだい!女だからって舐めないでよね!」
うなだれている巨漢の男性の隣でガッツポーズを決めるボーイッシュな少女。
二人の前には大量の皿が積み上げられており、少女の方が数枚多い。
どうやら二人は大食い対決をしていてこの人だかりは勝負の行方を見ていた野次馬といった所だろう。
(流石ファイティングガール…いつも何かと勝負してるって聞いてたけど本当だったのね~)
でっぷりガールの目的、それはこのファイティングガールだった。
ひとまず店の外で彼女が出てくるのを待つことにする。
「はぁ~けっこう食ったなぁ……ん?あんた…?」
「あの、お久しぶりです…!以前お会いしたことありますよね…?」
「確かD地区に居た…ミラクルガールか?最近居なくなったって聞いたけど……」
「ちょっと色々あって…そんなことより!すごかったね、大食い対決!いつもこんなことしてるの?」
「あぁ、別にあたしはそんな気はないんだけど…今日なんてちょっと興味あって話しかけてたら勝負ってなって…勝負になったらつい熱くなってあたしもやろうってなっちゃってさ…アハハハ!」
たっぷりと食べ物が詰められたお腹をさすりながら苦笑いするファイティングガール。
そのお腹は山のように積まれた皿の量を考えると全然膨らんでおらず一体食べ物はどこへ消えたのかと聞いてみたくなる。
「そうなんだ~私も結構大食いとか自信あるから今度勝負とかしてみる?なんて…」
「勝負か!?良いぜ!今すぐやろう!」
「え、でも食べてすぐだけど……」
「大丈夫大丈夫!前に1日5回も大食い勝負したことあるし!」
(よし、乗ってきたわね…w)
「それじゃあ…あのお店でどうかな?」
ミラクルガールが指をさした先の店、少しひっそりとした場所にある中華料理店だった。
「あんなところに店なんてあったっけか…?まぁいいや!行こうぜ!」
店に入ると店内はお昼を過ぎたためか人は居ない。
早速ファイティングガールが店員に大食い勝負の許可を取れるか尋ねる。
「えぇ、よろしいわよ!店の奥を使ってくださいね!」
「ありがとな!……なんか、あんたどこかで会ったような…?」
「あぁ!さ!さ!奥に行きましょ!勝負!負けないから!!」
ファイティングガールをせかすようミラクルガールが背中を押して店内の奥へと進んでいく。
店員は二人を見送るとホッと胸を撫でおろす。
「またバレそうになったわね…一体何が原因なのかしら……」
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店の奥で待っていると二人の目の前には大量の料理が並べられ勝負の準備が整えられた。
ラーメン、餃子、肉まん、豚の丸焼き……どれもカロリーが高そうなものばかり。
「さ!始めるぜ!制限時間は50分!その間にどっちが多くの皿を空にするかだ!」
「うん、望むところよ!」
そして戦いの幕が切って落とされた。
二人は猛スピードで目の前の料理を胃の中へ納めていく。
「ガッガッ……んぐっ…なかなかやるなぁ…!ペースアップしないと危ないかも…!」
「私だって…はむっ…負けないよぉ?あむっ……」
ガツガツムシャムシャとチャーハンをかきこみ、餃子を口にほおりこんでいく。
10分が経過、両者のペースは変わらず差はない。
20分、以前差は無く食べ進めて行く。
30分…40分…そして
ピピピピピピピ……!
セットされたアラームが鳴り響く。結果は……
「あたしの…はぁ…勝ちだぁ…!」
その差1皿……僅差でファイティングガールの勝利となった。……が、
「フフ……フフフ……アハハハハハハ!」
「何がおかしいんだよ……?」
「ごめんなさい、でも嬉しくて……だって私の勝ちなのに……」
「何言ってるんだ…んぶっ!?」
突然ファイティングガールの顔がパンパンに膨れ上がる。
目と口が狭められ、以前の元気な顔のイメージが消失してしまう。
「な、なにぃ…がぁ……!?」
ブクゥッ!ブクブクブクっ……!!
細かった手足にも肉が付き、お腹もでっぷりとせり出し始める。
「ぐぅっ…!へ、へんっ…じぃんっ……!」
敵の罠と感じ、変身を試みるも肉体の肥大化は止まることなく進み、衣装はぶよぶよとまとわりつく贅肉をぎちぎちに包んでいくだけになってしまう。
「ふぁいでぃんっ…がぁー…るっ…!」
ポーズを取るもぶよん、と肉が揺れてどう見ても機敏に動けそうには無く、滑稽に見えてしまう。
「お、おまえぇ…ほ、ほんどに…みらぐる…ぶふっ…ガールかぁ…!?」
「フフッ…そうよ?でも違う。私はミラクルガール改め…」
ぶくんっ!と急激に身体が膨らみ元の姿へと戻っていき……
「はふぅーっ…でっぷりガールよぉ…♡」
だぷんっと腹肉を揺らしてみせる。
十分な肥満体だが今やそのでっぷりガールの横幅を超えるほどブクブクとファイティングガールは太り続けている。
「ふひぃっ…ぶふぅーっ…わだじにぃ……な、なにを…じだぁ……」
「ふぅ…私の能力でぇ…ふひぃ…あなたの体質を変えたのよぉ…太りすぎる体質にねぇ…」
でっぷりガール曰く、体型操作の応用で対象をその体型に変化させるために体質を変化させた、との事。ただし使用するためにはその対象の至近距離に接近し、30分以上はその距離を保っていないと効果が発揮されないらしい。
つまりファイティングガールはまんまと罠に陥ったというわけだった。
ブクブクゥッ!
「んぶっふぅっ…!ぐ、ぐぞぉぉ……あ、あだじがぁ…ご、ごんなごどぉでぇ……ぶひゅーっ……!」
「はふぅ…ふひぃ…グレイスさまぁ~!やりましたよぉ~!あなたを邪魔する…壁をひとつ……排除しましたぁ~!」
「よくやったわね、でっぷりガール!帰ったらおやつのドーナツ20個あげるわよ♡」
店員が服を脱ぐとそれはやはり変装したグレイスだった。
煮え湯を飲まされていたファイティングガールがブクブクと太り続けるその姿にグレイスの表情は悦びが隠し切れずにいた。
「さぁ、帰りましょう!次なる壁を排除しに!」
「はい~!はふぅ…グレイスさまぁ~♡」
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ファイティングガールが倒されて数日、街にはある噂が広がっていた。
ひっそりとたたずむ廃業したはずの中華料理店。
そこから度々怪物のようなうなり声などが聞こえてくる、と。
「んぶっふぅぅぅぅううう~~~……はぁらぁぁ……へぇぇっだぁぁああああ……」
誰もが気味悪がって近寄らない場所となったそこで、ファイティングガールはファッティングガールとして、今も太り続けている……