ペキューリア　2021/12/19 (Pixiv Fanbox)

バビロン・リビジテッドに寄せて

　kenapoさんのアルバム「バビロン再訪」がついに永き封印を破り世に解き放たれました。このFANBOX見てる方には説明しなくても大丈夫なんじゃないのと思うんですが同作は双葉の歌姫とSCE2へのオマージュ，リスペクト，インスパイア，トリビュート，こういうのをぼくが自分でいうのもどうなのってありますが，そういう感じを踏まえつつ完全にkenapoさん独自の世界が余すところなく出ている，あの，奴になっています。

　個人的な話でいうと，kenapoさんと創作をともにしたりしなかったりするようになって実に10年以上が経ち，今年で知り合って12年目とかなんですが，おたがいどうやって知り合ったかとか今どういう関係かとか何年目とかは折に触れていちいち言ったりしないし忘れましたどうでもいいっす，今があればいいので，とか適当に流すことが多いものの，ぼくの場合はこういうのは大体照れ隠しでじつは大抵ばっちり覚えているみたいなケースが多いです。

　ぼくの二大フカシは「酒に酔って適当言う」と「昔のことは忘れた」であり，どっちもだいたい意識を保っていたりちゃんと覚えているのに時間やアルコールなどのせいにしてつごうよく話を避けたり避けていなかったりというやつです。昔話とかお互いのすりあわせもなしに切り出すのもまあ嫌じゃねえ？　ぐらい遠慮もぜんぜんあるし，ぼくらまだそんな昔はねえ・・・など先細ったださい話するほどロートルでもないので。わはは！　しかし双葉の歌姫から10年ですか，10年もやってるといろいろまあありますよ。SCE2は出るし，バビロン再訪も出てしまった。繰り返しになるんですが今回はバビロン再訪が出てしまったという話なんですね。

　しょうじきぼくはkenapoさんがいっぱしの読書家であることを完全に忘却，失念，割愛してしまっており，ここらへん当たり前なんですが，ちゃんと本を読み，じぶんを客体視できる人が出してくる表現は，端的にちゃんとしているという特徴があり，まあぶっちゃけkenapoさんがテキスト回り仕上がらねえよ～ってウンウンうなっているとき，その裏で行われていることをナメていました！

　たぶん世界で2番目か3番目くらいの距離感でkenapoさんのつくってきた曲を聞き，彼のもつ世界観にも触れてきてるんじゃないかという自負があったんですが，でも彼の持ってる内的な燃焼力，まあぶっちゃけバビロン再訪を過小評価しており，本アルバムと，それをとりまく事象を見たとき，ほんまに失礼なことにまず大変驚いたんですよね。

　彼の言う音楽の従属先としてのバビロン再訪これはちょっとしたボリュームになっており，まともに消費しようとしたら1日2日はスッと持っていき，週末はそういう感じでだいたいフニャフニャ終わったのですが，「おい！　やりやがったな・・・」とか「世界がととのいすぎている・・・」とかそういう嫉妬っぽい感情が先に一通り並んで，「スゴイじゃん！」素直な感想は感情としては4番目とか5番目くらい，kenapo さんに「これはスゴイね！」って素直な賛辞を贈るのに半日くらいタイムラグが生まれてしまったなどという経緯もあります。

　音楽には従属先が必要みたいなkenapoさんの言い分はぼくは従属される側の実感としておなじような感覚はあり，こっちは単なる消費者ですが，よくわからん妄想コンピはハードコアタノシーの量産音ゲーコアじみた振り上げた行き先がないとりあえずビートに合わせてバチバチやるだけ的モヤモヤは確実にあり，当て書きの曲としての芯のできる感じとちゃんとした世界にはちゃんとした楽曲やら素材やらイラストやらシナリオやらが自動で整頓されますな論理的にしごく当然な帰結を抱え，しかしkenapoさんに世界をかかえさせるには荷が重かろうよといったナメはほんまにバビロン再訪がリリースされる直前まで持っており，一撃でもろもろひっくり返されちゃったなっていうのが大筋です。

　そうなると「えええ～kenapoさんからすごいのが出てきてしまった，おれはじゃあ2年間何やってたんだ」と自己批判もでてくるし，このおれの2年は社会で何も成していない虚無の2年だったし，なによりバビロン再訪を生み出せる人間が目の前におり，足掛け2年くらい一緒にゲーム作ってますって態度見せてた割には，kenapoさんのカタログスペック上の挙動をぜんぜん引き出せてねーと後悔懺悔もあり，あれ双葉の歌姫やったときは足並みそろった雰囲気あったけどエイプリルはだいぶ歩調がずれとるかもな・・・感も強く，こういう内的なことを細々と書いてもまあ本人も見てるんだけどね・・・みたいな添え書きをしつつお茶を濁すのもFANBOXならでは，十年一昔ときたもんだ・・・

　こういう，わりと近しい距離感のひと（ぼくはそう思ってるけど向こうはどうかな・・・）同士の「やるな～」っていう健闘のたたえあいも，見えるところでやるとおじさんクリエイター集団のなれあいクソダサい雰囲気がどうしても出てしまうフシもあり，ツイッポーなんかは通り一遍のお疲れ様です的スクラッチに終始するなどといった処世あれこれもあり，これが20代と30代の最大の違いでしょうな・・・というぼくのこの10年のあまりのしょぼさに泣けてきます。

　双葉の歌姫を作った時点で決めてたけど言ってなかった/やれなかった/やっていなかったあれこれがゆっくりじわじわと結晶化して露出するのがぼくにもkenapoさんにもあったのは実際かなり面白い兆候だとおもってます。

　もう手当たりしだいに作れるもんは作っておけ的価値観で東方やってオリジナルやってオリジナルやって東方やるみたいなことをやりつつ，べつに二次創作だろうがオリジナルだろうがわれわれにとっては本質は変わらん，それを分類するやつがたまたましわけた箱に所属が決定してるだけにすぎんと憮然とした毅然な態度をとるなまいき野郎をやってきた一方，10年くらい前につくった1本のゲームがお互いすげー気に入りつつやり残したこともあるんでホイ，とべつべつの形で物語構造をもった作品をお出しするにいたったわけで，10年っていうとまじで区切りがいいんでつい10年って言いたくなっちゃうんですが，わりと我々（ぼくとkenapoさんです）にとってはこれも合意はとってないけどたぶんその区切り自体に意味はなくたまたま符牒が一致したよねぐらいの距離感だしょうと思います。

　自分の話ばっかりしてしまった。自分のFANBOXなんでそれは別にいいんですが，いまはバビロン再訪を話す場でしょう，あらためてバビロン再訪の話をすると「うそだろ・・・」って思ってしまうトラック数，「うそだろ・・・」って思ってしまう世界設定のつくりこみ，「うそだろ・・・」って思ってしまう細部への注力とか目配せなど全体視の精度，かんぜんに1歩先を行かれてしまったぜと余裕ぶっこくいとまもない程度にはやられちゃいましたよね，ということで。

　双葉の歌姫は言うまでもなくずいぶん古い作品で，今直視するにはままだるい部分もあり，とはいえあのへんからぼくのゲーム作るに際しての価値判断基準とか規模の感覚とか風呂敷畳み癖とか引用ボンドで作品の無理筋と無理筋をくっつけて尺稼ぎながら残りの話を何とか考える的取り廻し術がじょじょに形になって今に繋がっているところは大いにあり，一方であの当時くらいからぜんぜん成長してない部分もあってダル～い面も全然あり，それでもいまだにあの作品を好きだとかいってくれる人がいるからぼくとかkenapoさんもその節目節目でああいうゲームもあったよね的振り返りとか回顧懐古に続いて愛していただきありがとうございますぽい素直な感謝といてこういう作品がポロッと出るのかなとかは思いました（本当に端から端まで自己満足だったらつくる必要はないじゃないみたいなところもあり）。

　そういうもろもろを考えると，バビロン再訪がでてきた背景としてやっぱ双葉の歌姫ってみんなにそれなりに好かれてるかもなといった高慢ちきな感情はどうしても出てしまうんですが，これはやっぱりありがとうございますみたいな話になるんですよね。そのありがとうございますがぼくにとってはユーザーさんに向けてなのかkenapoさんに向けてなのかはわからんというだけです。

エイプリルリローデッド

　わかったわかった！　kenapoさんがこれだけやってるんだから俺もやらなきゃならんめいということで文字通り寝る間も惜しんでエイプリルに着手しました，これまでの甘えを取り戻そう

　年内，ぎりぎりとかになってしまうかもしれないんですが以下のような予定で次のバージョンをリリースします。

・前回3部にあたる部分のテキストを2部に無理やり詰め込んで3部の部分が空いたのでそこに新しいシナリオを入れます。どんだけシナリオ間延びするのかと批判が四方八方から出ておりぼくもこないだシナリオ読み返したときに量にびっくりして泣いてしまったのでそろそろまとまると思いますが，これはわからない……

・ゲーム部分をいろいろ手入れしてちゃんともっと遊べるようにすると言ってましたがこれは無理でした。単にぼくの怠慢であり謝っても現実改変は不可能なのでしょうがないんですが申し訳ないとしか言いようがないです。

・大きな変更はそれをメインに，あと細かいところを無数にちまちまいじってるんですが見た目には劇的な変化はないと思います。一部の画像が正式な絵に差しかわっていくとかも少しずつやってるんですが何分量が多すぎることからまだ全然作りかけで，これは風呂敷のサイズを完全に見誤ったぼくが悪いんですがこの感じだと完成まではもう1年コースかも……

　そんな感じで……ほんと言うともっとサクッ！　と完成したらいいんですが，なんか……だめですね！　だめって言ったら全部だめになりそうなんであんま言えないんですが，言ってしまいました。

　双葉の歌姫は今見返すと適当にやってる場所もいっぱいあってこういうのが締め切り通りに完成させるコツなのかなと思いつつ，でもそうじゃないむちゃくちゃな若さがないととても対応できてない場所があるし，締め切りがないと無限に細部にこだわりだすのは良し悪しでいえばぼく的には悪し，ユーザーさんがどう思うかはその過程によるといった感じです。

　それではまた！