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こんにちは、スタジオ真榊です。NovelAIv3特集の第三弾は、プロンプトの工夫による「画風とクォリティの一貫性」に関する記事をお送りします。


NovelAIで久しぶりに「みんなと同じモデルをプロンプトのみで制御する」ことになり、どうやって狙った画風にするんだっけ・・・と迷子になってしまった方も多いと思います。v3で初めてNovelAIを触った方も、生成するたびに全く違うイラストになってしまうことに戸惑ったのではないでしょうか。


              ▲迷子になる賢木


こちらのイラストのように、うちの看板娘のミナちゃんを生成しようと試みても、生成するたびに大きく異なる顔立ちやタッチになってしまうと、制御がやりにくくなってしまいます。


ただ、いろいろと苦心してプロンプトを工夫したところ、ある程度まで「収束」させることができるようになりました。


ただ、画風を固定しようとして有名イラストレーターさんの名前のタグを利用したりすると、炎上必至な「海賊版」感の強い画風になってしまうケースもあることに注意が必要。記事の後段では、トラブルになりそうなポイントや押さえておきたい著作権についても、併せて解説していければと思います。


設定の違いで画風はどう変わる?

さて、第一回、第二回でおおむね生成の方法はお伝えできたと思うので、まずはFANBOXオリジナルキャラクターのミナちゃんを生成してみましょう。とりあえず、見た目の特徴から簡単に組んだプロンプトは以下の通りです。


プロンプト:1girl, solo, from side,red-framed eyewear,navy serafuku, purple eyes, hair between eyes,black hair,ponytail,sidelocks,white ribbon,classroom,chair,desk, grin,smile,piece sign,v sign, detailed black pantyhose

ネガティブ:(空欄)


普通サイズの正方形(1024x1024)で、ステップ28正確度5、サンプラー「Euler_Ancestral」、smeaとDYNはいずれも「ON」です。最初はあえて、規定のクォリティタグとネガティブタグは外して4枚生成してみます。



画風はまちまちですし、クォリティタグがないこともあり、全体に低劣に感じますね。左上の一枚をチョイスし、Seed値を固定します。今度はクォリティタグをON(末尾に, best quality, amazing quality, very aesthetic, absurdresが追加される)、規定ネガティブを「強い」と「軽い」で生成してみましょう。


まず、これが最初に生成した左上の画像。




こちらはクォリティタグON、ネガティブ「軽い」、smea「オフ」です。ネガティブに「lowres, jpeg artifacts, worst quality, watermark, blurry, very displeasing」が加えられています。

(注意:NAIのデフォルト品質タグは時期によって変化することがあるのでご注意ください)



こちらはクォリティタグON、ネガティブ「軽い」までは同じで、smeaを「ON」にしたもの。構図が大きく変わり、髪の毛や服の皺、線画などの描写が繊細になっていることが分かります。一方で、やや詳細がぼやけてしまった印象もあります。



こちらが同じ設定でクォリティタグON、ネガティブ「強い」、smea「オフ」にしたもの。ネガティブプロンプトに「lowres, {bad}, text, error, missing, extra, fewer, cropped, jpeg artifacts, worst quality, bad quality, watermark, displeasing, unfinished, chromatic aberration, scan, scan artifacts」が加えられています。

右手はよく見ると指が6本ありますが、さきほどに比べると全体の形状的には整っているように見えます。



こちらはsmea「ON」。こちらも同じように構図が大きく変わり、髪の毛の描写などが繊細になっています。左手は変ですが、最低限の形は取れています。


主観やseed値によるランダム性はあろうかと思いますが、クォリティタグがないと全体に幼く、シンプルな印象のイラストになり、クォリティタグがあるとよりリアル調に近づき、smea「ON」にすると構図が変化するとともに繊細さがプラスされる・・・といった様子が見て取れますでしょうか。ネガティブの強い・軽いの差はやや分かりにくいですが、「軽い」の方では手が崩壊しがちで顔立ちもやや低劣なのに対し、「強い」は手も顔立ちもはっきりした印象が感じられます。


しかし問題は、全体に低劣なことと、画風が統一できていないことですね。NAIv1で「マスピ顔」と言われたように、誰が生成しても毎回同じ顔立ちにまとめられるのも困りますが、生成するたびにそれぞれ「違う子」に見えてしまうのも、それはそれで実用性に欠けてしまいます。


オリジナルのクォリティタグを模索するが…

さらにクォリティタグを工夫することでなんとか画風が固定できないか実験を重ねますが、結論から言って失敗してしまいます。「こうしたらどうなったか」を追ったほうが理解しやすそうなので、一応失敗の流れを書き留めておきました。


まず、規定プロンプトを両方オフにして、自分で組んだクォリティタグを入れてみました。smeaは今後全て「ON」で統一。クォリティタグはデフォルトの「best quality, amazing quality, very aesthetic, absurdres」をベースに、いろいろなものに変化させていきます。ネガティブは「軽い」で固定します。


1.{{{best quality, amazing quality, very aesthetic, absurdres,masterpiece,4k,highres, sharp focus}}}


単純に強化してみたつもりが、むしろ手や顔は低劣化しました。無闇に強調すればよいわけではない。



2.best quality, amazing quality, very aesthetic, absurdres,[[[3d,realistic]]],highres, sharp focus


背景はともかく、人物は悪くはない。弱めに入れた3dとrealisticによって、やや大人びたキャラになった。ただ、固定感は全然ない…。


3.very aesthetic,best quality,{{absurdresAnime}},anime coloring,shiny skin,highres,[[realistic]]


全体にアニメ調に整ったが、目は溶けている。クォリティタグを足すほどに細部がおかしくなっていく…


4.very aesthetic,best quality,{{absurdresAnime}},anime coloring,shiny skin,highres,[[realistic]],masterpiece, watercolor (medium)


復活のマスピ。watercolorも入れてどんな変化が出るか試した。結果、多少整った感じはするが、特にメガネ周りは低劣。絵柄を収束させたいのに、逆に拡散している感じ…


5.very aesthetic,best quality,{{absurdresAnime}},anime coloring,shiny skin,beautiful eyes,beautiful face,gradient,highres,[[realistic]],{{watercolor (medium)}},


watercolorを強め、ビューティフルフェイス・ビューティフルヘアーにしたら、最も酷い結果に。プロンプトが長大になりすぎているのだろうと考え、もう一度考え直すことに。


6.very aesthetic,best quality,absurdresAnime,anime coloring,erotic shiny skin,highres,[[realistic]],watercolor (medium)

いろいろとマイナーチェンジしても、顔そのものの低劣感が抜けない。ここに、detailedなどを盛り盛りにして各特徴要素のバージョンアップを図ってみる。


7.盛り盛りver.

1girl, solo, from side,sitting,detailed red-framed eyewear,detailed navy serafuku, gradient purple eyes, hair between eyes,silky black hair,ponytail,sidelocks,detailed white ribbon,classroom,chair,desk, grin,smile,piece sign,ultra detailed black pantyhose, very aesthetic,best quality,absurdresAnime,anime coloring,erotic shiny skin,highres,[[realistic]],watercolor (medium)


全体に底上げされるかと思いきや、全然違う感じになってしまい、手も大崩壊。アニメ塗りの感じは嫌いではないが…背景も消失してしまった。

どうしたらいいんだい!



…というわけで、完全に迷走してしまいました。ちなみに「6」のプロンプトを使ってランダムSeedで生成し、アップスケールしたのがこちらのイラスト。


プロンプトはこちら。強調したのがクォリティタグです。


ポジティブ:1girl, solo, from side,sitting,red-framed eyewear,navy serafuku, purple eyes, hair between eyes,beautiful long black hair,ponytail,sidelocks,white ribbon,classroom,chair,desk, grin,smile,piece sign,v sign, detailed black pantyhose, very aesthetic,best quality,absurdresAnime,anime coloring,erotic shiny skin,highres,[[realistic]],watercolor (medium) , great quality, amazing quality


ネガティブ:lowres, bad, text, error, missing, extra, fewer, cropped, jpeg artifacts, worst quality, bad quality, watermark, displeasing, unfinished, chromatic aberration, scan, scan artifacts,bad face,normal quality,monochrome,low background,loli,child,white background,bokeh, blurry


一見よさそうにも見えるのですが、この設定でもやはり、生成のたびに違うキャラクターが生まれてしまいます。クォリティタグは全体のタッチやクォリティを左右しますが、求めている「一貫した容姿」とは直接関係がないことがうかがえます。



【結論】容姿に一貫性をもたせるには?

では、どうしたらキャラクターの容姿を収束できるのでしょうか。先達の皆様に教えを乞い、いろいろと自分なりに試行錯誤した結果、得られた結論は2つです。


①キャラクターの容姿を収束させるには、独自のクォリティタグではなく、何らかの『画風タグ』が必要である。


②NAIv1では効かなかった「tareme」などの弱いタグもしっかり効くため、キャラの容姿を事細かに指定することによって一貫性をもたせることもできる。


NAIv3にはわかりやすい「マスピ顔」がない代わりに、さまざまな画風をLoRAのように個別に学習しています。画風をタグで指定しないと、さきほどの実験のように「容姿だけは守るが、画風はランダム」という結果になりますし、「masterpieceと指定するとこういう顔立ちに寄せる」という効果もありません。つまり、NAIからすれば「特に何も言われなかったから画風はランダムにしたんだよね。どういう画風に固定してほしいのかちゃんと言ってよ」という状態なわけです。


・「画風タグ」イコール「クリエイター名タグ」?

ただ、ここで問題になるのが「特定作品/クリエイターの画風タグ」を使用することの危険性です。


文化庁資料にもある通り、AIイラストの投稿によって誰かの著作権を侵害してしまう場合とは、基本的に「何らかの著作物と酷似していて、類似性・依拠性の要件を満たすもの」を、私的利用の範囲を超えて使用(ウェブ上に投稿etc)した場合です。NAIv3はかつてないレベルで無数の作品のキャラクターやイラストレーターの画風をタグとして学習しており、簡単な作品名タグだけで画風とキャラクター容姿を強力に拘束して新しい画像を出力できます。

  ▲作品名だけでキャラクター容姿だけでなく作品のタッチまで再現できた例


「新しい画像」であれば既存のイラストとは線が重ならないとはいえ、ここまで強力にキャラクターの容姿とタッチ双方を再現してしまうと、著作権侵害の恐れ(正確には著作権者が対応せざるを得なくなる恐れ)は強まってしまいます。ましてや特定のイラストレーターさんのタグを使って酷似した画風のイラストを投稿するとなると、本人の気分を害することはもちろん、炎上するリスクも非常に大きいと言えるでしょう。AIイラストを投稿するというの行為には、「見た人に楽しんでもらって、自分もその反応を見て楽しみたい」という目的が根本にあると思っているので、炎上必至の投稿は本末転倒です。


話を元に戻すと、「イラストレーターの名称タグ」をポジティブプロンプトに入れることで画風を固定する試みは、非常にリスクのある危険行動であることはまず確認したいところです。では、特定のイラストレーターの画風を剽窃せずに、意図した画風に収束させるにはどうしたらいいのでしょうか。




新規タグ「AI-generated」の可能性

こちらの4枚生成をご覧ください。これは、いずれも「AI-generated」(AI生成)という画風指定タグを使用して生成したものです。


ポジティブ:1girl,solo,red glasses,{navy school uniform,navy serafuku},long ponytail,short sleeves,navy pleated skirt, shiny skin,tareme,detailed black pantyhose,orange pupils,beautiful purple eyes,black hair,large white ribbon on hair, ai-generated,{{{ amazing quality, very aesthetic}}}, dot nose,red tie,small breasts,detailed face,purple and pink gradient eyes,eyeliner,outdoor,beautiful sky

どうでしょう、これまでとは比べものにならないほど画風が固定できているのではないでしょうか。目立った崩壊もありませんし、少なくとも同一のキャラに見えます。


同じ設定で「AI-generated」タグを抜くと、このように容姿が散逸することがわかります。


「AI-generated」タグは、これまで投稿されたAIイラストの画風を集合知的に学習したものと思われます。鼻の上の反射光やスカートの質感など、見覚えのあるSD1.5系モデルの影響が見て取れます。モデルが学習した大量のAI生成イラストの平均値的顔立ちということですから、言ってみれば「新マスピ顔」とでも言えるでしょうか。


さきほど実験に失敗した教室ミナちゃんプロンプトでも、このように「同じ子」と感じられる程度に収束させることができています。

プロンプトはこちら。


ポジティブ:1girl, solo, from side,red-framed eyewear,navy serafuku, hair between eyes,black hair,ponytail,sidelocks,white ribbon,classroom,chair,desk,sitting, grin,smile,v sign, detailed black pantyhose,orange pupils,beautiful purple eyes,black hair,large white ribbon on hair, ai-generated,{amazing quality, very aesthetic, anime coloring}, dot nose,red tie,small breasts,detailed face,gradient eyes,eyeliner,

ネガティブ(弱い):@_@,simple eyes,tsurime,chibi,purple hair


注目したいのはネガティブに入れた目に関するプロンプト。taremeやtsurimeのタグは過去のNovelAIだとあまり効きが悪かったタグなのですが、V3ではかなりしっかりと効かせることができます。キャラクターの容姿統一にはai-generatedなどの「集合知タグ」だけでなく、こうした容姿タグを細かく入れていくことが効果的。まつげはどうなっているか、ほほの赤みはどうか、どんな表情でどれくらいの目の大きさで…といった細かな部分をしっかりと指定していくことが重要です。



そのほか、さまざまな実験で分かってきたことを順番に紹介します。


(1)Yearタグは収束効果がない

NovelAI公式が紹介しているyearタグというのがあります。これは「Year 2023」「Year 1990」などと打ち込むとその当時の画風が出てくる…というものなのですが、これには画風を収束させる効果はなく、その年代を代表する作品やクリエイターの画風をランダムに出すような生成結果になります。画風や容姿を一貫させる効果がない(むしろ散逸する)ので、ここでいう「画風タグ」とは言えないものですし、場合によっては特定イラストレーターを強く連想させるものも出たので、あまり使用をおすすめしません。


(2)画風タグとmediumタグは違う

前回の記事で「画風タグ」として下記のような公式タグを紹介しましたが、これらは「mediumタグ」とか「画材タグ」と呼んだ方が近いもので、キャラクターデザイン(特に顔立ち)を収束させる力はありません。

3d (medium), animated (medium), watercolor (medium), ink (medium), pen (medium), copics (medium), graphite (medium), watercolor pencil (medium), spot color (medium)


(3)「v1」と変わった事情

NovelAIv1のころは、例えば新海誠監督を示す「makoto shinkai」というタグを使っても、「なんとなく壮大な自然背景が出やすい」程度の効果しかなく、画風を模倣するようなことはできませんでした。AIが「そちらの方角へ歩き出す」程度の意味しかなかったため、さほど抵抗感なく利用していたユーザーもいたと思います。(ちなみにv3でも、1girl,makoto shinkaiだけでは作品のキャラクターがもろに出たりはせず、壮大な自然風景が出るだけです)

ただ、「v3」は方角どころか緯度経度を指定するように正確に再現できてしまうケースがままあるため、こうした人名タグ、作品名タグの扱いが一気にセンシティブになりました。こうしたタグを使えば容易に顔立ちを収束できますが、見た目の悪さと強い炎上リスクを鑑みると、使わないことを強くおすすめします。


AI-generatedのような集合知タグを探すことと、キャラクターの顔立ちに関するタグを細かく指定していくことで、自分らしい画風を作っていくことが重要になってくるのかなと思います。また、逆方向のベクトルを掛ける意味で「ネガティブタグに使う」という方法も考えましたが、「ポジティブタグでなければアリ」と考えるかどうかはそれぞれの倫理観によるなと思っています。


(4)大切なのは「自己防衛」

強調しておきたいのが、この記事は「画風タグを使うことを禁じる」趣旨ではないということです。特定イラストレーターの画風をもろにパクったような見た目のAIイラストを公開しても、既存のどんなイラストにも似ていなければ、著作権侵害とはしにくいのはそのとおりです。例えば自分のオリジナルキャラを描かせた場合は、どんなにタッチが似ていても類似性が抜け落ちます。


いつものことですが、このFANBOXは界隈のルールづくりをしようとか、私が作ったルールを誰かに押し付けようとするものではないので、「個人でラインを引いて自己防衛しましょう」という呼びかけしかできないと思っています。せっかくの投稿で炎上したり訴訟リスクを負ったりしてもつまらないですものね。



NovelAIv3の使用感まとめ

さて、ここまでの解説でおおむねNovelAIで生成する基礎を見てきました。ここからは、実際に触ってみた個人的なレビューを書いていきます。



(1)プロンプトの拘束力が強い

まず、SDXL由来のプロンプト拘束力が光っていて、指定したものがしっかり再現される点、手指の破綻も少ない点が「強いポイント」です。一方で、絵柄の幅が広すぎるため「一貫性のあるタッチ」を再現するためにはかなりプロンプトの工夫がいると感じます。要するに、「高性能だがガチャ性が非常に強く、一貫性を保つのは難しい」モデルだと感じています。


クォリティタグも画風を安定させるのはかなり習熟が必要で、低劣な絵が出てくることも多く、初めて触ると「あれ?こんなもん?」と思うはず。「smea」をONにしたり、何らかの画風タグを入れたりすると改善するのですが、いずれにせよじゃじゃ馬感が強いのは確かです。


SDとの違いで言えば、やはり「結局ポジティブプロンプトとネガティブプロンプトの出来がイラストの出来を分ける」というNAIらしい特性でしょうか。DALL-E3では自然言語でざっくりした指示をするだけでハイクォリティなイラストを出すことができましたが、NAIではそう簡単ではありません。


(2)Anlas消費は高すぎ!

Opusプランで無料生成を中心にしていないと、Anlasの減りはとんでもなく早いです。メインで使おうとすると、かなり金食い虫になってしまいそう。tabletとscrollプランでもらえる1000Anlasは一瞬で消滅するレベルなので、無料生成サービスもないこの二つのプランの存在意義が薄れていると感じました。


ただでさえドル高の昨今、画像生成できるサービスにさまざまな選択肢がある中で、あえてお高めなNAIを選ぶ理由があるかどうか、しっかり考える必要があると思います。NAIにあって他にないものというと、結局は「版権再現」「エロ」に収束するのかな、と個人的には考えています。出すたびに顔立ちが大きく変わるのでは、キャラクターの一貫した漫画を作るような用途には向いていないでしょう。


(3)インペイントが異様に強い

これはかなり驚きました。首から上を別キャラに変えたり、逆に首から下の衣装だけを変えたり、ポーズだけを変えたりが簡単な操作で可能で、とても自然な仕上がりになります。また、インペイントの範囲指定画面がとても簡単で見やすいのも高ポイント。ここはSDwebUIも見習ってくれたら嬉しいです。キャンバス最大化ができるようになってありがたいのですが、UI上でマスクするの、まだまだやりにくい・・・


(4)nsfwがガチのマジでnsfw

本当に強いです。成人向け描写が一切NGなウェブサービスが大半な中で、原点回帰なムードを感じました。LoRAなしでかなり広範なプレイ内容、小道具、表情、ポーズその他、nsfw絵に必要な要素を満たしてくれますし、ちょっと変かもしれませんが、nsfw絵のほうが安定したクォリティが出るような気がします。


ただ、後述するようにアニメ公式絵のクオリティでnsfwを出せたり、いわゆる「剥ぎコラ」的な使い方をしたりもできてしまうので、自分だけで楽しんでいるうちは問題ありませんが、ウェブ投稿するとなると相応の注意が必要だと思います。


(5)版権・画風再現力の高さ

NAIv3の最大の特徴であり、問題点にもなりうるのが、版権キャラの容姿や特定のクリエイターの画風再現力の異様な高さです。特定著作物(キャラクター・作品名・イラストレーター名等)のタグを冒頭で打ち込むと、ぶれがちだった画風とクォリティが一気に収束します。その上、有名作品であればキャラクターの特徴だけでなく、画風もかなり正確に再現してくるため、生成のやり方によっては公式絵とみまがうような高いクォリティのものが飛び出してくることがままあります。


           ▲1girl,キャラ名,作品名だけ


SNS上では、公式ロゴや版権表記のようなものがかなり正確に生成されたという指摘も出ており、公式イラストを多数学習していることがうかがわれます。利用段階であまりに公式絵に寄りすぎているとファンアートの文脈が抜け落ちてしまい、ただの「海賊版」に見える出来になってしまうため、ウェブ公開する場合は見た人がどう感じるイラストになっているかをよく吟味する必要があると感じています。


そして、版権再現よりもさらに危険度が高いのが、イラストレーター名のタグの再現度も同じく高いことです。日本を代表するような少数の有名クリエイターだけでなく、かなり幅広くイラストレーターの画風を再現できるという指摘がSNS上でなされています。確かに、絵柄・画風・タッチといったものは著作権保護できませんが、画風だけでなくキャラクターも模倣した場合、既存の著作物に酷似したものが生成されてしまう恐れが強まります。そうなれば、他人の著作物の「翻案」や「複製」とみなされたり、著作者人格権の「同一性保持権」の侵害だとみなされて法的トラブルに発展することもありえますので、個人的には最大限の注意が必要だと考えています。


特定絵師さんの名前をNAIv3に打ち込むことは、v1のころの「この人の作品くらい高クォリティなものを出して」とか「この人がよく描くようなこういう雰囲気のイラストを出して」という意味ではなくなり、「この人の画風をコピーして〇〇を描いて」という指示になっていると感じています。i2iパクリと同様、合法か違法かとは関係なくトラブルを呼び込む画像となってしまいますので、取り扱いを気を付けるに越したことはありません。


画風再現をめぐる著作権法のポイント

自己防衛のため大切な著作権法のポイントについて、再度確認してみます。


・キャラの模倣は著作権侵害ではない?

まず、「キャラクター」や「画風」はそれぞれ著作権法が保護する「表現」ではなく「アイデア」であるとされ、それらの模倣は少なくとも著作権法上は問題がありません。(※超有名キャラや作品ロゴといったものの場合、意匠権や商標権など別の文脈で問題になる可能性があることに注意)


ここでよく勘違いされがちなのが「キャラクターも画風もコピーしていいなら二次創作は全部合法じゃん」といった意見。もちろん、昔から「二次創作は黙認されているだけで基本的に違法」と言われている通り、そんなことはありません。


ここでいう「キャラクターに著作権なし」というのは、髪と目と肌は何色で、どんな服を着ていて・・・といった「アイデア」、つまりキャラクターを示す「概念」は保護されないということにすぎません。ここが保護されてしまうと、あるキャラと目や髪、服の色が一致するキャラを描いただけで著作権侵害になってしまいますものね。しかし、あるキャラクターを表現した「絵」や「アニメ」は著作物としてしっかり保護されています。その著作物に依拠し、類似したものを私的利用の範囲を超えて投稿すれば、手描きでもAIでも、著作権侵害に当たる恐れが強く生じます。キャラクター概念に著作権は生じませんが、ひとたび著作物として表現されたキャラクター絵は著作権保護されているのです。


・じゃあ画風の模倣は問題ない?

「画風に著作権なし」についても同じです。ある人の画風に近い絵を描けば罪や不法行為になってしまうとなると、創作行為が萎縮してしまうことが避けられないため、画風「だけ」の模倣は著作権侵害にはなりません。が、画風だけの模倣にとどまらず、その特定絵師さんの過去作品のどれかによく似たイラストができてしまえば、画風ではなく「その絵」の著作権侵害になってしまうことを忘れてはいけないわけです。「自分がいま模倣しているのは画風だけにとどまるのか?」「画風だけではなく、ある過去絵を模倣しているのではないか?」ということはよく考える必要があります。




・NAIで気をつけるべきことは?

そして、NAIv3において個人的に怖いポイントだと感じているのは、版権キャラや作品のタグを使うと、公式の「キャラクター」と「画風」を両方とも精巧に再現できてしまう点です。キャラクターだけを再現して画風が似ても似つかない場合は類似性が抜け落ちますし、純粋に画風だけを再現してこの世にないイラストを生成しても画風は著作物ではないため問題がありませんが、二つとも揃うと「既存の著作物のどれか」に類似性も依拠性もある「海賊版風」の画像が出てしまう恐れがあるということです。


「セーラームーン」の月野うさぎちゃんや「うる星やつら」のラムちゃんのイラストを試しに出してみたところ、生成物の中に「これはほとんど同じ公式絵が実際にあるんじゃなかろうか?」と疑ってしまうレベルのイラストが混じりました。実際のところはわかりませんが、あまりにタッチが似ているとそうした危惧を抱かざるを得ませんし、もしそれを投稿したとしても、ファンが見て素直に楽しめる二次創作にはならないだろうな、というのが素直な感想でした。


また、前述したように「year 2023」や「year 2000」といったタグでも時代感を感じるイラストが出るのですが、当時を代表するイラストレーターさんや有名アニメを連想させる画風になります。知っている作家さんやアニメなら「これは危ないな」と回避できるのですが、「自分は知らなかったが投稿したら人からパクリと言われる画像」が混じっている可能性を考えると、とても危なっかしい。危なっかしさは単純に使いづらさに繋がってしまいます。


・BL同人誌事件で「二次創作の権利が認められた」?


二次創作の著作権侵害性をめぐっては、「BL同人誌事件」という判例があり、よく「二次創作の権利が認められた」という文脈で紹介されることがあります。確かにこの判例の中で、版権キャラクターを使ったBLまんがについて、「原著作物のシーンと本件各漫画のシーンとでは,主人公等の容姿や服装などといった基本的設定に関わる部分以外に共通ないし類似する部分はほとんど見られ」ないというくだりがあり、公式絵の具体的パクリがなく、キャラクター設定の模倣にすぎない同人作品は著作権侵害にならないと理解することも可能なように思われます。


ただ、この同人誌は類似性がすっかり抜け落ちるほど、原作と全然違う絵柄だった点は忘れてはならないと個人的に思います。キャラクター絵の模倣の場合、いわゆる「トレス」のように線が重なっていなくても著作権侵害になり得ます(ポパイネクタイ事件)し、「ときめきメモリアル・アダルトアニメ映画化事件」では、いわゆる同人アニメについて原作ヒロインと実質的に同一で、複製ないし翻案したものであるとして著作権の侵害を認定しただけでなく、原告の著作者人格権の中の「同一性保持権」も侵害していると認定されています。ウェブ上を探すとこのアニメの絵柄が出てきますが、原作の「ときメモ」と酷似しているか?と言われるとさほどではないのですよね。


「原作と線が重ならなければ二次創作をしても著作権侵害にはならない」などというわけではありません。


・「例外はあるけれども二次創作をやるなら基本的には違法」

・「何かあれば損害賠償などの責任を負わなくてはならない」


という感覚で二次創作を行うことが必要なのだろうと思います。それは、手描きもAIも何も変わりません。


終わりに

思ったよりもかなり長文になってしまいましたが、NovelAIの最新ver「v3」についての解説記事をお送りしました。特に、


①これまでにないレベルで一部の版権再現ができること

②特定絵師のタッチも再現できること

③その二つとnsfw表現を組み合わせられること


これら3つの危険性についてよく理解し、いままで以上にトラブルを呼び込まないような使い方を心がけることが自己防衛に繋がると思っています。



少し話題は変わりますが、12月もGoogleAI「Gemini」が登場したり、Bing Image CreatorでDALL-E3のバージョンアップ版が使えるようになったりと、大きな話題が次々に押し寄せてきていますね。


他にも、SD1.5でトレーニングされたControlnetやLoRAを、SDXLなどの後発モデルでもそのまま利用できるようにする「X-Adapter」や、静止画とボーン動作を組み合わせるとキャラクターの一貫性を保ったままアニメーションさせられる「Animate anyone」など、予想もしなかった技術が目白押しになってきています。


ひょんなことからRTX4080を格安で入手できたので、年内にマシンを大幅にパワーアップさせ、このあたりの技術についても追いかけていきたいですね。もう2023年もあと少しですが、引き続きどんどん更新していきたいと思います。以前から課題の一つにおいていたAutomatic1111版SDwebUIからComfyUIへの移行も真剣に検討したいですね。


話はつきませんが、今日はこのへんで。スタジオ真榊でした。






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Comments

ケン

最近全くNAI使ってないですが、SDを快適に使える環境だとそんないいものでもない気がするんですよね。NAI最大のメリットってマシンパワー使わないことと思ってます。

スタジオ真榊

NAIv3はモデルとしてかなり異次元ですので、一度触ってみることをオススメします!最初は「あれ?」という感じですが、プロンプト指示で化けます。