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25:旅立ち 「………………」 「……………………」 「…………………………」 「なんとか……出られた……みてぇだな……」  先程までは、美しく建ちそびえていた白亜の教会も……見るも無残なガレキの山と成り果て、隕石でも落ちてきたかのような大穴をその中心には開けて、村人のみならず辛くも脱出に成功したエリシア、レファ、アイネ、メリッサの4名は呆然とその底の知れない穴の奥を覗き込み言葉を失っていた。 「皆さんっっ! ご無事でしたか!!」  しばらくその穴を見ていると、黒い修道服に身を包んだマリナが嬉しそうな声を上げ駆け寄ってくる。 「おう、マリナ! お前も無事だったんだな?」  吸い込まれそうな穴に気を奪われそうになっていたレファはハッと意識を取り戻すように顔を上げ、マリナの駆け寄りに視線を向ける。 「はい。何やら地震が起きてきたのでマドレアさんの指示通りすぐに避難してきました!」 「母様が? では……母様は今……どこに?」 「えっ!? 一緒に戻ってきたのではないのですか?」 「いえ……私達とは合流してませんでしたから……」 「おかしいですねぇ……“最後にやることがある”って言われて……瞬間移動して行っちゃいましたから……てっきり皆さんの援護に向かわれたと思っていましたけど……」 「最後に……やることがある? そう言ったの?」 「はい。そう言って消えてしまわれました……」 「そう……。そっか……やっぱり……」 「お姉様? 母様は……どこへ……」 「……けじめを付けに……行ったのでしょうね……彼のところへ……」 「えっ?」 「……ううん、何でもないわ。母様はまた私達とは別の所へ行ってしまわれたみたい……」 「別の……所?」 「今までと一緒……エルフの村を追い出され……あの村に拾われた時と何も変わらない……。何も……ね……」 「……?」  エリシアは全てを悟り、改めて教会の建ってあった大穴を覗き込みながら心の中で言葉を紡ぐ。 『母様は……また遠くに行かれてしまったのですね? この深い深い……穴の中に……』  ふと、エリシアの脳裏にマドレアの言葉が蘇る。 ――貴女には、私の力が一番に流れているはずです……。 「そうね……確かに、流れていた。母様の力が……アイネや皆を救える力が……私には宿っていた……」 「姉様……?」  「これからも……この力は皆の役に立ってくれるハズ……そういう魔法ですよね? 母様……」  エリシアはグっと手を握り、力強くレファの方を振り返る。 「レファさんっ!!」 「お、おう??」 「私も……私もこれからついて行ってもいいですか? 貴女の狩りの旅に……」 「んえっっ!?」 「お、お、お姉様っっ! 村はっっ? 村には帰らないのですか??」 「アイネ……私は……母様のマナを受け取りました……」 「母様の? マナ……??」 「温かくて……力強い……この力……。多分……腐らせるには忍びないと思うのです……」 「えっ? えっっ??」 「村の巫女は……貴女とお姉様だけでも務まるはずです。私はこの……淫魔の狩り人さんと一緒に、マナの本質を見極めに行きたいのです!」 「お、お姉様って……エイレーヌお姉様ですか!? 琥珀化された……」 「マリナさん!」 「は、はいっ!?」 「母の琥珀化を解いてもらえたのでしたら……教会に依頼すれば出来るはずですよね? 姉の琥珀化の解除も……」 「あ、は、はい……司祭クラスの聖職者さえ出せれば……可能かと……」 「じゃあ、その手配をお願いできるかしら?」 「は……い。分かりました……」 「お姉様っっ!! でも! エイレーヌお姉様が復活されても……またこのような事になったら……」 「だからこそ、見極めたいんです! この力が……皆を救える力になり得るのかどうかを!!」 「えっ!?」 「今回の顛末で……私は確信しました。彼女のような力の強い魔族に村をまた襲われたら……私たちの村の二の舞になりかねないと……」 「でも……3人いればどうにかなるかもしれませし……」 「いいえ。今回……私たちの力だけではどうする事もできなかったではありませんか! 彼女達の協力がなければ……あの淫魔は倒しきれませんでした!」 「そう……ですが……」 「でも、この母から授かった力は強大です。恐らく……マナの底が見えるくらいまで私に注ぎ込んでくれたのでしょう……」 「そんなに……強い力が?」 「しかし私はその本質をまだ理解していません! この強大なマナを……どう扱えばいいか……自分でも分かってはいません!!」 「………………………」 「なるほど~? それで私にくっついて……戦闘で自分の可能性を見極めようっていうのか……」 「えぇ! 足でまといにはなりませんから! 自分の身は自分で守れますから……どうか一緒に連れて行ってください! お願いします!!」 「わ、私ゃ……別に構わんが……。というかむしろ助かるぐらいだ……」 「必ずこのマナを見極めてみせる! そしてこれまで以上に村のために力になれると思う!! だから、アイネ……」 「別に……お姉様が行きたいと言うんでしたら……私に反対する余地はありません……しかし、それは村の人たちに挨拶をしてから行うべきではありませんか?」 「うっ……うん。そうよね……」 「こっちは別に問題はないぜ? どうせ情報集めに各村を回るつもりだったんだ……挨拶してぇってんなら、最初に寄ってやってもいいさ……」 「ありがとうございます……」 「でもいいのか、アイネ? 姉さんが居なくなると……寂しいんじゃないのか?」 「ご心配には及びません! 私はもう大人ですので! 寂しくなんて……」 「本当に~? 本当かぁ~?」 「本当にっ! 本当ですっ!! っというか……姉様が私に“村を任せたい”って言ってくれているんです……その期待にはお応えしなくてはなりません!」 「……そう。アイネはもう……子供じゃない……。貴女は村を守るだけの資質を兼ね備えているはず……」 「勿論ですっ! エイレーヌお姉様と私で……お姉様の分までも必ず村を守ってみせます! 必ずっ!!」 「おうおう、頼もしいねぇ~~♪ 将来が楽しみだぜ……」 「信じてますよ……アイネ……」 「任せてください! お姉様が気兼ねなく旅立って、気軽に帰って来れるよう全身全霊を持って務めます!」 「……うん」 「だから……時々……。少しでもいいので……帰ってきてくださいね? 旅の話とか……聞きたいですし……」 「おやぁ~? やっぱり寂しいんじゃないのか? アイネちゃ~ん?」 「さ、寂しくなんてありませんっっ!! 別に寂しくなんか……」 「大丈夫。必ず戻ってくるわ。お土産も沢山買って……帰ってくるから……」 「お、お土産ですかっ!? お土産っっ!! いいですね! お土産っっ!!」 「物に釣られるとは……やっぱりお子様なんじゃないかぁ? ア・イ・ネ……ちゃん♥」 「ムキィィッッ!! レファさんは黙っておいてくださいっっ!! ちゃん呼びも禁止です! 禁止っっ!!」 「じゃあ……なんて呼べばいいんだよ? アイネ嬢ちゃんかぁ? ククク……」 「レファさんだけは“アイネお姉さん”って呼んでもらいます。レファさんだけはですけどね♪」 「うげっ! なんでこんなお子ちゃまみたいなエルフにお姉さんなんて言わなきゃいけねぇんだよ! やだよ!!」 「アナタより何倍も生きてるエルフにお子ちゃま呼ばわりされたくありません! お姉様って呼んでください! お姉様って」 「さらっとお姉様に格上げしてやがる……これだからお子様は……」 「んあぁぁっ!! また言ったぁぁぁ!! またお子様って言ったァァ!!」  和やかな歓談は陽が沈み始める頃まで行われ……それぞれの労をねぎらうように互いに温かい言葉を掛け合う一同。    陽も暮れかけ、歓談に区切りが着いた頃……それぞれがそれぞれの帰路へとつき始める。  メリッサは、自分の勤めていた研究所へと戻り、今回の惨状が不老不死の霊薬を求めた結果である事を職員達に解き、このような研究が二度と行われないようと注意喚起を徹底して行った。 マリナは派遣してもらった教会へと戻り、受けた依頼を受理してもらうべく名の知れた司祭に掛け合った。    そしてアイネとエリシア……レファの3人は、彼女達が旅立った村へと戻り無事であることとエリシアが旅立つ旨を報告した。  村人は一様にエリシアの旅立ちに異を唱えていたが……彼等は自分の村が心配なのではなく、エリシア自身の身を案じて異を唱えてくれた。  エリシアは嬉しかった……。  自分ことを思ってくれている村人たちの想いが嬉しくて……やはり旅立つ意思はより強く固まった。  この村は絶対に守らなくては……  自分の力を見極めて……どのような外敵からも皆を守れるエルフの巫女になってみせると……強く誓うのだった。 ――2人の狩り人は旅立つ……  重々しい荷物を背負った重装備の人間の女と……  軽装備ながら絶大な魔力を有して、淫魔の軍勢を払いのけるエルフの女……  いつしか淫魔の狩り人は……淫魔の狩り人“達”と呼ばれるようになっていた。  広い世界を旅し……巨大都市をまわり……豪雪降り積もる山でも……切り立った崖からなる谷でも……広大な海原でも…… 淫魔の名が轟く所に……彼女達は行く……。 彼女たちこそが“淫魔の狩り人達”なのだから。   ―――Fin?――― ―――――――― ―――――― ―――― …………。 「ちょっっ! Finちゃうでっっ!! ウチの事忘れとらんかっっ? ウチもおるんやでっっ!! ちょっと……性癖が歪んでもうたけど……ウチもおるんやでっっ!! レファっ! ちゃんと街まで戻ってお礼を言いに来なあかんで! 相手してもらうんやからなっ!! 一晩中イチャコラして貰うんやからなぁぁ!! 覚えときいやぁぁっっ!!」 「あ、お客さん? それで……今日は……どんなプレイをお望みぃ? 実は……とっておきのプレイがあるねんけど……試していかへん?」 「えっ? どんなプレイかって? アハハ……めっちゃ楽しくなるプレイやねん♥ 楽しくて……楽しくて……いっぱい笑ろうてまう……愉快なプレイやで♥」 「あぁ……大丈夫や♥ されるのはウチやから♪ いっぱい体にも触れるで♥ ウチの事……気持ちよう……してや♥」 ―――【淫魔の狩り人達】 Fin ―――

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