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13:深く暗い闇と狂笑 「おかえりなさいませ……。良き収穫を得られましたようで……」  淫魔の祠と大差ないくらいに薄暗い教会の地下霊安所。 ラフェリアが空間移動することが分かっていたかのように、そこに蝋燭台を片手に佇んでいたミゼル司祭が不気味に笑みを零しゆっくりと頭を垂れる。 片手に気を失ったアイネをかかえ、片手には鈍色に光るナイフの柄を握り、光の粒が消えていくのを静かに待つラフェリア。突き立てられていたナイフの傷跡は植物が自己修復するかのように皮膚が勝手に重なり合い、すでに元のまっさらな胸元へと治されていた。 「ラフェリア様? その体はあまり傷つけないでって言いましたでしょう? せっかく集めたマナを大量に消費しちゃうんですから……」  片手を腰に当て、呆れた声を零しながらメリッサも暗闇からツカツカと彼女に歩み寄る。 「フフ♥ ドクターは手厳しいわね♥ ちょっとだけ油断しちゃっただけよ♥」  手に持っていたナイフを要らない物のようにポイっと床に捨てたラフェリアは、片手にかかえていたアイネをミゼルに引渡しつつメリッサに皮肉の笑みを見せた。 「なんです? また……新しいエルフを連れ帰ってきたのですか?」  まだ成人しきってもいない子供のように見えるエルフを見てメリッサは目を細める。 「今回の餌場は上々よ♥ なんせ巫女と呼ばれたマナの強いエルフちゃんが3人も居たんですもの♥」 「巫女? あぁ……あのエルフ集落から追い出された方々ですか……。やっぱり噂通りあの村に居ましたのね?」 「居たわ♥ そしてその子が一番の末っ子。つまりはエルフの巫女の中で最もマナを溜め込んでいる娘よ♥」 「エルフは代々……マナの血統が下の代に行くほど濃く受け継がれると聞きますからね……」 「それにね……貴女の妹ちゃんとも再会できたのよ♥」 「妹? 妹って……レファの事ですの?」 「そう……。相変わらずイノシシのように突っ込んでくるだけだったから怖くはなかったけど……さすがに強い恨みを持って向かってきてたわね♥」 「それは、あんな趣味の悪い呪いをかけて逃がしたんですから……恨まれて当然でしょうに」 「アハハ♥ でもあの呪いのおかげであのイノシシ娘から餌も吸い取れているし……何より居場所もすぐに分かっちゃうから備えることもできる♥ 我ながら良い監視装置を世に放ったと自負しているわ♥」 「遠隔搾取……貴女の得意技ですわね……。自分は現場に赴かずに呪術を操作して搾取する……凄く便利だとは思いますわ」 「でも、マナは多量に消費しちゃう……。毎晩彼女の為に呪いを作動させているけど彼女だけのマナでは到底補いきれないわ……」 「ですから、この研究所を作ったのでしょう? マナを補うために……」 「それに、あの霊薬も完成させたいしね♥ どう? 首尾は上々かしら?」 「えぇ……いい感じですわ。送られてきた姉エルフのマナに人間の処女の体液を混ぜて基盤となる霊液の初期段階までは完成してますの」 「後は……この子から強力な純潔のマナを搾り取って配合に加えるだけね?」 「その予定です。勿論……今まで以上に搾り取らないと足りないんですけどね……」 「それは抜かりないわぁ♥ 私が直々に搾り取ってあげるんですもの♥ 彼女には最高の地獄と天国を同時に味あわせてあげるわぁ♥」 「……くれぐれも前の村のエルフ達みたいに無茶して殺さないでくださいまし? 被検体はその子しか居ないんですから……」 「大丈夫♥ 足りないものは足せばいい♥ あの姉エルフも必要とあらば連れてくるわ♥ その為にあのイノシシ娘を生かしておいたんだから♥」 「呪いを受けたレファと姉エルフに自分を追わせれば、いつでも姉エルフの居場所は把握できるからいつでも連れて来れるって算段ですか? ……まったく……あなたって淫魔は……どこまで狡猾なんでしょう……」 「いやぁ~ん♥ もっと褒めてぇ~♥」 「褒めてませんけど!」 「あら……褒め言葉じゃなかったの?」 「まったく…………。ところで……」 「うん?」 「妹は……。レファは元気にしていましたか?」 「していたわ♥ 元気が有り余るほどにね……」 「そうですか……」 「心配? 妹ちゃんのことが……」 「いえ、あんな頭の悪いポンコツな妹など心配するに値などしません。ただ……こと戦闘能力だけは馬鹿みたいに高いので……逆に弱ってくれていた方がこちらとしても助かるかな、と……」 「確かに、以前より好戦的ではあったわね。銃の使い方も慣れてきてたみたいだし……」 「彼女を侮らない方が賢明です。ああ見えて……変のところで知恵を使ってきますから……」 「戦闘の知恵だけは賢いってことかしら?」 「えぇ……あの子は小さい頃から血の気が多くて喧嘩大好きな子だったのですけど、何歳も年上の力の強い男の子にも勝ってしまう程に戦い方を工夫する子だったんです……」 「フフ……子供の頃からじゃじゃ馬だったのね♥」 「今回も貴女の前に現れたのは偶然ではないはずです。きっちり準備して貴女に挑んだはずですし……」 「確かに……水銀の銃弾を用意して挑んできたあたり……しっかり準備されていたみたいよね?」 「今だって何か企んでいるかもしれません……十分に警戒をなさってくださいまし……」 「わかった……肝に銘じておくわ♥ ありがとう……ドクター・メリッサ♥」 「我々の邪魔だけはさせたくありませんからね……あの暴力妹には……」    ……薄暗い地下部屋に不気味に響き渡る沢山の娘たちの狂笑。  その中にシスター・マリナの姿があった。  裸の格好で両手をバンザイし、無防備に晒された身体の側部を無数の触手にくすぐられている彼女は……なんとも苦しそうでなんとも幸せそうな顔で笑い狂っている。  あの静粛さを纏っていた凛とした表情はそこにはなく……金色の髪を左右に乱してゲラゲラと声を零し続ける。  そんな笑い狂う人間たちの中へミゼル司祭は意識のないアイネを連れて行く。  部屋の中央には“ラック”と呼ばれる体を引き伸ばして拘束できる拷問台が用意されている。 そこへアイネを連れて行く。拘束柱に括りつけられた女性達の狂笑を歓声のように浴びながら……。 「楽しみね……♥ 彼女はどんな声で鳴いて(わらって)くれるのかしら……」 「えぇ……。この研究もいよいよ大詰め……。早く精製してみたいものですわ……不老不死の霊薬を……」  ラックの上にゆっくりアイネの体を横たわらせたミゼル司祭は、音もなく拘束台の下部へと移動しアイネの小さく可愛らしい靴を片方ずつ脱がしていく。  その様子を見届けているラフェリアとメリッサはそれぞれの目的を思い浮かべ含み笑いを口元に浮かべている。  これからの所業が楽しみでならない……そのような顔をしてアイネが服を脱がされ拘束されていく様を眺めている。  ……しかし、彼女達は気づいていない。 彼女達のすぐ後ろの床に転がっていたレファのナイフが怪しく鈍い光を発した事を……。 致命の一撃になりえなかった場合に備え、レファがナイフに別の役割を持たせていた事を……。 ~~『淫魔の狩り人達』前編……完~~

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