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3:黒い対話 ――学園内、某所、某時間…… 「会長……。情報精査同胞会から連絡が有りました。どうやらあの……何かとお騒がせなPT研が鳴臥教諭を顧問に付けようと動き始めたようです」 「……あぁ……それはうちの耳にも既に届いとるよ。あいつら……鳴臥を狙っとる事隠そうともせんで堂々と情報収集しとるようやからな。情報屋(情報精査同胞会)を通さんでも聞き及んでおったわ……」 「今までの経緯から見て……何かの罠の様に感じられますが……いかがします?」 「罠? あぁ……そう言えばPT研には……あの京堂財閥の京堂小夜子がおるんやったな? あの女……ただの金持ちってだけに留まらず、中々の才女だと聞き及んどるで。今回の件も何かしらの裏があってもおかしゅうないなぁ?」 「PT研は生徒会長をも屈服させて部にのし上がったダークホースです。下手をしたら予算分配会議にも名乗りを上げるつもりなのかも……」 「それだけやったら……まだエエけどな……」 「えっ?」 「奴等の事や……ただ予算が欲しいというだけで会議に出るとは思えへん……」 「まさか……我々の動きに勘付いているとでも?」 「さぁな……。せやけど、このタイミングで鳴臥を顧問に取り込もうとするっちゅう事は……何かしらの意図を感じずにはいられんよなぁ?」 「こちらが鳴臥を取り込もうとしている旨を……PT研が知っているとでも?」 「そこまで理解して居るかどうかは分からへんけど、でもこの動きは逆に利用できると……思わんか?」 「逆に利用? PT研をですか?」 「あぁ……。奴らはあぁ見えて生徒会長の“何かしらの弱み”を握っているようやし……下手をすればあの風紀委員長の弱みも握っている可能性がある。うちらが“手から喉”が出る程欲しいと思っている情報をな……」 「会長? それを言うなら“喉から手”です。手から喉は出ません……」 「お? そうか? ハハハ……まぁそんな細かい事はどうでもええやないの♥ それよりも……上手く行けばそういう、ウマウマな情報が簡単に手に入る可能性があるっちゅうこっちゃ♪」 「私がリークした情報だけでは……足りませんか?」 「うん? いやいや、お前さんはよくやってくれたよ。まさか生徒会長と風紀委員長が不順同性交友をしとる仲やとは思いもよらんかったからなぁ……。その情報だけでも十分に揺さぶりを掛けられる値千金の情報になる筈や♥」 「でしたら、あまりPT研に関わらない方が……良いかと思いますが……」 「まぁしかし、生徒会長の弱みは有れば有るだけうちらが優位に立てるんやから……些細な情報でも今は欲しいと思っとる」 「聞いても……何も喋らないかもしれませんよ?」 「うん? それならそれでもいいさ……。情報を得られなかったとしても“情報を欲しがっている誰かが居る”っちゅう事を匂わせておけば下手な動きも出来んくなるやろ?」 「そのようにおっしゃるという事は、聞き出すというのもかなり手荒な方法を用いて行うつもり……ですね?」 「当たり前や♥ 今回の予算分配会議はうちら“学園監査委員会”が予算を搾れるだけ搾り取る予定なんや……それを知ってか知らずか邪魔しようというなら、力づくでやめさせたるでってアピールせなあかん♪」 「しかし……会長? 会議の前に監査委員会が動いている事を知られるのはマズいのでは?」 「そこはホレ……奴等をぶつけておけばエエやろ? 魔女狩り屋を……」 「……魔女狩り屋……? あぁ……中世異端審問研究クラブの事ですか?」 「そう……。学園の裏の始末屋と呼ばれとる奴等なら、うちらの存在を悟られずに情報を聞き出してくれるハズや……」 「そう……ですね。正直……得体の知れないあのクラブに繋ぎを取るのはちょっと気が引けますが……」 「フフ……安心せい。奴等(魔女狩り屋)が執着してるのは金だけや……何のために依頼を出したかとかは気にも留めん。せやから“でかく稼ぐチャンスを与える”と触れ込んでおけば簡単に話に乗る筈……。こちらの情報や目的を明かさずに依頼さえ差し込んでしまえば、もしも何かしらのトラブルに見舞われてもヘイトを買うのは魔女狩り屋だけになるさかい、うちらはこの部屋から出ずにの~んびり情報収集が出来るという寸法や♥」 「成程……。例え情報が得られなくてもPT研には“余計な事をするな”と牽制もかけられるし、仮に生徒会長の新たな弱みが聞き出せれば、予算会議の時に更に有利になれる……と」 「そうや。予算会議の審議役は鳴臥センセになって貰わんと困る……。それが叶わんと、うちの計画が狂ってまう……」 「確か……予算会議には“部活動の顧問になっていない先生が1人、審議役として入ってもらう”というルールがありますよね?」 「部活動の顧問を審議員に入れたら、自分達の部に有利になるよう票を入れてしまうかもしれんし、そうでなくても誰を起用するかで先生方が揉める事にもなる……。せやからこの会議には顧問になっていない誰かを入れる決まりになっとるんや……」 「鳴臥先生なら今はどこにも属していないからその要件を満たしているし……こちら側に肩入れさる事が出来たら監査委員がかなりのアドバンテージを得る事が出来る……。そう考えているのですね?」 「本当は“うちのセンセ”にお願いしたい所やけど……あの人はあんまり目立つ舞台には立ちたがらんからなぁ……今回は仕方なく鳴臥センセに協力を仰ぐことにしたんよ……」 「しかし……あの鳴臥先生が我々の要求に応じますかね? かなり堅物で偏屈だと聞いてますが……」 「そこは心配いらん♪ それこそ、うちのセンセの出番や♥ センセがパパっと魔法をかけてくれたら……いかに堅物な鳴臥であっても一発コロリよ♥」 「一発コロリって……殺虫剤じゃないんですから……」 「あのセンセのチカラは……ホンモンや。しっかりこの目で見たから間違いない……」 「だと……良いのですが……」 「なんや、疑り深いのぉ? センセのチカラはうちが保証したるって言うとるやろ?」 「いえ、私の性格上……あまり科学的でないものには疑いを向ける癖がありますので……」 「難儀な性格やなぁ? そんな真面目すぎる生き方しとったら肩が凝ってしゃーないやろ?」 「肩凝りと片頭痛は昔から持病の様なものでしたから……」 「真面目もほどほどにしときや~? 水清ければ魚棲まず~みたいな言葉もあるんやから……」  「水が綺麗すぎても魚は住みずらい……転じて、あまり清廉すぎる態度でいると疎まれたり孤立したりする事もある。要は寛容さを持ちなさいという意味ですが……それは遠回しに私は会長に疎まれていると教えて貰っているという事でよろしいでしょうか?」 「い、いやいや! そこまで思うてへんよ! いつもみたいに適当な事言ってみただけや。そこまで深い意味を含ませとらんって!」 「本当ですか?」 「ホンマ、ホンマ♥ うちはちゃんとお前さんの事頼りに思っとるしおパートナーやと思っとるんやで?」 「……………………」 「ま、まぁま♪ そういう訳やから、魔女狩り屋の件はお前さんにお任せしてもええか?」 「……はい。では早速“新聞部”に明日発行する学園新聞の記事を一部書き換えるよう伝達してきます」 「ん? 新聞部? あぁ……そうか、魔女狩り屋へコンタクトを取るには学園新聞にメッセージを載せて貰わんとあかんかったな……」 「そうです。学園新聞の最後に載っている何の変哲もない占いコ―ナー……そこに山羊座を最下位にするよう指示をして、ラッキーアイテムにペンタグラム(五芒星)の首飾りと書いてもらうのが依頼の合図になると言われてます……」 「ヤギは中世では魔女が崇拝していた悪魔の動物とされとったらしいし……それに、五芒星は魔女のシンボルともされとる。魔女を裁くための異端審問組織やというのに……それをラッキーアイテムに書かせるとは中々シャレが効いとるやないの♥」 「後は、連絡先の個人用メールアドレスを新聞の備考欄に載せて貰うだけです……。それが掲載された新聞が園内に貼られれば、翌日に向こう側からメールにてメッセージが届く筈……」 「成程……。新聞部の占いコーナーは毎度サイコロを振って適当に順位を決めとるとかぬかしとったからなぁ……順位を弄ったりラッキーアイテムを指示しても怪しまれんというワケか……」 「えぇ。恐らく新聞部は異端審問研究クラブとは何のかかわりもない筈です。知っている者だけが知っている秘密の暗号というやつですね……」 「フフフ……面白い連中や♥ この件が片付いたら個人的にも親しくしてみたいくらいじゃな……」 「異端審問研究クラブは恨みを晴らせない生徒の為に“魔女狩り”という名目で罰を下す裏の組織です……本人たちは正義と口に出してはいますが、やっている事は暴力以外の何ものでもありません……」 「確か学園のセンセ達も、誰がそのクラブのメンバーか把握していないっちゅーよな?」 「メンバーも組織の人数も何処で集まっているのかも、誰が首謀者なのかすらも分からない秘密だらけの組織です。その正体を追おうとすれば必ず報復されるとも聞きます……」 「ほぉ~それは怖いのぉ~」 「ですからその様な組織に対して軽々しく“親しくなりたい”とか口にしない方が身の為かと……」 「ハハハ……分かっておるわ♪ 冗談や……冗談♥」 「それに、この依頼を出したのが“学園監査部”だと知られれば……それをネタに異端審問クラブから逆に揺すられかねません。正義とは名ばかりで結局はお金が目的ですからね……」 「あぁ、その点なら大丈夫や♥」 「……え?」 「そうならんよう、うちの方でも対策は立てておく……」 「…………?」 「だから、安心して繋ぎを行ってくれたまえ♥」 「は、はぁ……」 「フフフ。この件が全て上手く行ったら、お前さんをちゃんとコッチに引き抜いてやるさかい……その時は一緒に搾り取った金で学園生活を楽しく送ろうやないの♥」 「……えぇ。そうですね……」 「それまでは今まで通り……しっかり、生徒会の役員を演じてスパイ活動しておくんやで?」 「……………………」 「なぁ? 生徒会“副会長”の……『宮腰 恵梨佳』……殿?」 「……えぇ(ニヤリ)。お任せを……」

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