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#22  フードコートを後にしたあなたは、七穂の提案を元に3階にある映画館へと足を運んでいた。  映画館のエントランスは奥まで照明が落とされており全体的にダークで薄暗い雰囲気に仕立てられている。しかしながら、フードコーナーやチケット券売機、グッズ販売などの箇所はネオンカラーのLEDが壁やショーケースの縁を彩っており、映画館全体をサイバーで近未来感あふれる雰囲気に盛り上げてくれている。  どうやら、七穂とのデートの最終目的地はこの映画館になるようであり、彼女が前から見たいと言っていたアクション映画を見る事が最後の締めとなるようだ。  映画館の中でどんな誘惑をしてくるつもりなのか……それは今は想像すらつかないが……とにかく彼女の中では今日のデートの締めくくりにふさわしい最後のイベントであると自負しているらしい。何やら自信あり気にあなたに「覚悟してくださいね♥」と零し、チケットの予約を自動券売機にて行った。  七穂が見たいと思っていたアクション映画は、次の上映が早くて5分後のものがあったのだが……彼女はなぜかその直近の上映ではなく、次の2時間後に上映する映画を予約してきた。  作品自体は2か月前に公開が始まった映画である為、別にお客さんが満員になる様な事態にはなっていない。悪く言えば“旬を過ぎた映画”と言えなくはない為、予約するお客さんもそれほど多くはない印象だ。  だったらなぜ……彼女は映画をすぐに見ようとせずわざわざ次の上映時間を予約して来たのか?  その理由は彼女が予約用の引き換えチケットを渡してくれた時の一言ですぐに察する事が出来た。 「はい、先輩の分♥ 時間は2時間後のを予約したので、まだまだショッピングを楽しむ時間はありますよぉ♥ さぁさぁ……次は何処に行きましょうかねぇ? ……フフフ♥」  不敵に笑みを浮かべてあなたを斜めに見上げる七穂。その笑みと言葉の言い方で大体の事情は察してしまった。  要は、映画を見る前にもう少しデートを楽しんで、何処かでもう一つくらい誘惑を挟む気でいるつもりだ……  直近の上映を見ずにあえて二時間後の上映を選んだのはそういう意図があったと考えられる。  デートの締めくくりが映画を見るという事であれば、確かに今映画を見るのは早すぎる……  フードコートでの挑発的な態度を見るにもう一つ二つあなたを惑わす罠があっても良い筈……と思っていた所だった為、これはそういう事なのだと理解出来る。  映画館に入る前に更なる誘惑を……と考えているのだろう。  それがどういう誘惑になるのか、行く場所も決まっていないのだから予測すら出来ない。  そもそも、先に誘惑を挟むつもりなら……なぜ映画のチケットを“予約”したのか理由が分からない。  だって……その誘惑にもし耐え切れず手を出してしまったら……デートは終わりになるというルールだった筈……  だとするなら、映画を見ずにデートを終わるという事になりかねない。  それならばなぜ……予約をしてしまったのか? 手を出したとしても映画だけは個人的に見たいからこれだけは見て終わる……という事なのだろうか? そうなると……だいぶ気まずくなるのが目に見えているのだが……  っと、七穂が映画の予約を取ってきたことにあなたが疑問を抱いていると、彼女はその答えとなるべき理由を煽り言葉に込めて返してきた。 「この映画……先輩と見るの……す~~っごく、楽しみにしていたんですから、必ず見て帰りましょうね♥ 私、これを一緒に見るために独りで見るの我慢してきたんです♪ ですから……まさか、予約までしたこの映画のチケットを……先輩の我儘で無効には出来ませんよねぇ? デートが途中に中止とかになって映画が見られなくなったら……どれだけ私が落胆するか……分かってますよねぇ?」  その言葉を聞いて、あなたは背筋に寒気を走らせた。  そう……この予約は……あなたに新たな枷をはめるつもりで行った罠だったのだ。  誘惑に負けて手を出してしまったら、七穂が楽しみにしていた映画も見られなくなる……  それは、のちに行う“手を出してしまった仕置き”に大いに絡んでくる要素となるだろう。  楽しみにしていたのに見れなかった……  あなたが欲に負けて手を出すと、そういう怒りも上乗せで仕置きが執行されるに違いない。  その理由を作りたかったから敢えて予約を入れたのだ……  そして、その映画を楽しみにしていたという感情もあなたにしっかりと伝えて、後の仕置きに感情を込めやすくしてきたのだ……  これは枷以外の何ものでもない。安易に手を出せば……七穂の怒りを増幅させた状態で仕置きを受けなければならなくなる。  それがどれほど恐ろしい事態を招くか……想像すら出来ない。  想像は出来ないが、その導線を彼女は子供のような笑顔を零して自ら引いてきたのである。自ら引いたという事は、彼女にはあなたが誘惑に負けた時の仕置きの仕方もしっかり考えてある筈だ。  それは彼女のにやけている笑みを見れば察しが付く。  その笑みは映画を楽しみにしているというよりむしろ……私の怒りを買って仕置きされろ、と言わんばかりのいやらしい笑みだ。  こんな企みを七穂がしてくるなんて……  こんな仕込みを考えて来ていたなんて……  普段の七穂の姿からは想像できない。姿形は七穂だが、中身は別の誰かに入れ替わったんじゃないだろうかと思えるほどの豹変ぶりだ……  七穂の笑みが怖い……  映画館の薄暗さも相まって、七穂の笑みに影が掛かっていて……余計に怖い…… 「フフフ♥ でも、私は信じてますよぉ? 先輩がぁ~、ちゃ~んと約束守って~、私に手を出ず、デートを全うしてくれるって……」  あなたの手を両手で握った七穂は、その手を引いて映画館の外へとあなたを導いていく。  あなたはその力強い導きに身体をよろめかせながらも彼女の歩みについていく。 「さぁ、2時間も時間ありますしぃ~どうしましょっか? 私は……そこの“雑貨屋”を最後に覗いて映画を見たいと思ってますけど……先輩はどこか行きたいとこ……有ります?」  七穂の言う“雑貨屋”という言葉が妙に力みを感じ、何かしらの強制力を感じさせる。  恐らく……この雑貨屋で……何かしらの誘惑を企んでいると思って間違いないだろう。  それを思うと胸の奥がザワザワして落ち着かない。  映画館の隣にあるその雑貨屋がまるで“処刑場”か何かではないかと思える程禍々しいオーラを放っているように見える。  ただの雑貨屋であるのは間違いない筈なのに……七穂がそこに行きたいと言っているという事は、そういう場所に変貌するのは目に見えている。  雑貨屋が誘惑してくるポイントだろう……だったら、すぐにはそこに行かずに、少しでも心を落ち着けられる場所に行って時間を稼いで……雑貨屋に挑むべきだろう。  そう思ったあなたは周りを見渡して、どこか気が紛れそうな場所はないかと目を配る。  近くにはゲームセンターと携帯電話・アクセサリー専門店……、少し奥にはスポーツ用品店が見える。  ゲームセンターであればゲームに意識が向いて少しは気が紛れるかもしれないし、携帯電話の店ならば最新機種やそれに付随するアクセサリーなどを見て気を紛らわせる事も出来る。スポーツ用品店は……別にどうしても行きたいという訳ではないのだが、七穂の方は興味津々な様子で先程から行きたそうな目をしてあなたに目配せをしている。ある種……七穂側に興味のある店に行けば彼女の意識がそっちに向いてくれて、その時間だけは相手をしなくても済むようになるかもしれない。もしそうなってくれれば自分の気を紛らわすには絶好の時間に成り得ると思えるのだが……  あなたは視界に映ったその三か所を見て、自分の気が落ち着けそうな箇所は何処だろうかと想像を働かせながら最善の場所を捻り出そうと考えを巡らせてみる。しかし、何処を選んでも、結局七穂を意識してしまう結果になるのではないかという残念な懸念が後から浮かび、最終的には何処を選んでも変わらないかもという結論に至ってしまう。  何処を選んでも七穂と行く以上彼女から意識が外れるなどと言う事はあり得ない。だから結局は何処を選んでも気は休まらないかもしれない……  ならば今行きたい箇所を選ぶだけで良いのではないか? とも思うのだが……     などとあなたが場所によるリスクやら結果やらを想像して頭を捻らせていると、あなたの選択を急かすように七穂が「早く選んでよ」と言わんばかりのアクションを取り始める。  考える事に意識を奪われていて無防備になっていたあなたの脇腹に、七穂の人差し指がツンツンと刺激を送り込んでくる……  その刺激に驚いたあなたは思わず情けない悲鳴を小さくその場で上げてしまう。  あなたが悲鳴を上げても七穂のツンツン攻撃はやめてくれない。ガッチリと腕を組んだ状態で立っていた為脇腹をその攻撃から逃がそうとしても七穂の腕がそれを許してくれない。  脇腹の色んな箇所に差し込まれてくるこの指先の鋭くくすぐったい刺激は、身体がビクついてしまう程に強烈で悲鳴の中に笑い声が混じってしまいそうになる程……  七穂はあなたの脇腹をツンツン突きながら「まだですかぁ?」とか「早くどこか行きましょーよぉ?」と悪戯っぽい笑顔を浮かべながら聞いてくる。  七穂は悪戯程度に仕掛けたに過ぎないこの脇腹突きだが、くすぐりを意識させられているあなたにとってはこれも立派な誘惑に成り果てている事にかわりはない。  突かれれば突かれるほど、逆に彼女にもやり返したくなってしまって妄想が湧き立ってきてしまう。  このままでは気を紛らわすどころか昂りが増してしまう! ……と思ったあなたは慌てて、腕を組んでいる反対の手で彼女の突いてきている手を掴み、悪戯を止めさせると同時に次に向かう目的地を決めた事を彼女に告げた。  そして、未だ悪戯顔を止めていない彼女にあなたは…… A:携帯電話ショップに携帯電話を見に行こう……と伝えた→ #23へ B:ゲームセンターで遊んで時間を潰そう……と伝えた→ #24へ C:スポーツ用品店を見て回ろう……と伝えた→ #25へ

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