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16:本番 「あがくっっっ!!? ふひっっくくっふっっっぅくくくくくくく!!!」  その刺激は綾香の想像を遥かに凌ぐ凶悪さを孕んでいた。  中指がほんの一撫で……腋の窪みを掻いたというだけなのに、肌に伝えられたその刺激は筋組織に守られている筈の触覚神経をも震わせてしまう程のおぞましさを彼女に与え、意地でも笑うまいと必死に奥歯を噛み込んで耐えようとする綾香に必要以上の笑欲を湧き立たせていく。 ――コチョ……コチョ……  決して早くなく、むしろ焦らす様に中指だけで腋窩の中心を撫でつつ確実に笑いたくなるような刺激を送り込んでいく鈴音のくすぐりに、綾香は顔を下に向けながら首を激しく横に振って込み上げてくる大きな笑いの塊を必死に喉奥に留め置こうと我慢する。  さっきまでの彼女であればこの刺激だけでも無様に笑いを吐き出していた所だったであろうが、今は笑いが込み上げてくるたびに涙を溜めた夏姫のあの顔が思い出され綾香に緊張の糸を切らせないよう勇気づけて来る。  あの顔を……もう見たくはない。  笑いたい感情を必死に押し殺す事が出来ているのは、そのような夏姫への想いがあったからだった。  鈴音は、そのような心理が綾香には働いていて笑いを堪えていると察している為、あえて最初の責めは強く刺激を加えず様子を伺う選択をした。  それは別に彼女の心情を汲み取って同情したから手を緩めてあげているという生易しい感情からきている行動ではない。  笑いたいという本能に逆らって笑いを我慢するという行為は決して楽な行為ではない。笑うという行為と同等以上に歯を食いしばる為の体力も使わなくてはならないし、耐え続けなくてはならないと言い聞かせる忍耐も途切らせないようにしなくてはならない。  自分の意志で笑いを堪えるという事がどれだけ心身ともに負担を掛けるものなのか存分に理解している鈴音だからこそ彼女はあえて我慢できそうな刺激を綾香に与えて我慢させようと振る舞う。  我慢して我慢して……必死に我慢してきた挙句、努力も空しく結局笑わされる事になれば……もはやくすぐりを我慢しようと思う気力さえ萎え切ってしまうだろう。  どんなに我慢しても結局は笑わされる……我慢しても無駄……我慢など意味はない……綾香にそのように思わせる事で無力感を味合わせ……かつ、我慢した分の体力も削り取って笑う事への苦痛感を最大限に引き出してやろうという恐ろしい考えがその行動には表れていた。  だから、最初はゆっくり焦らす様に……でも確実に笑いたくなる欲求を強めるように刺激に緩急をつけながらなぞり上げる。  その責めは鈴音の性格の悪さがいかんなく発揮されていると言っても過言ではない。 「どう? そろそろ笑いたくなってきたんじゃない? 別にいいのよ~? さっきみたいにゲラゲラ子供のように笑い狂っても……」  綾香は必死に顔を横に振る。  鈴音の言葉に反抗するかのように頭を振っているように見えるが……実際は笑いを我慢するのがもはや限界になってきている事を悟られたくないという思いで振って見せている。  どんなに笑わないよう奥歯に力を込めていても……どんなに意思の力で笑いを抑え込もうとしても……鈴音のくすぐりは綾香の身体の内側から彼女を笑わそうと働きかけて来る。  息を吐き出す時に大きく収縮する横隔膜は鈴音のくすぐりを感じると意思とは関係なく収縮を繰り返し笑いを胸奥から押し上げようと勝手に動作を始めてしまうし、酸素を取り込もうとする肺もその動きに伴って肺胞に溜め込んでいた酸素を吐き出そうと呼吸筋を震わせながら貴重な空気を吐き出そうと動き始めてしまう。  呼吸を司る二つの内臓がくすぐりによって鈴音の意のままに操られ自分の意志を無視してでも笑わそうとするものだから、綾香は鈴音のくすぐりとは別に笑いを吐き出させようとする身体の構造とも戦い抜かねばならない。  くすぐり=身体の反射作用……で、ある為くすぐったさを感じるのと身体が笑おうとする感覚は繋がっていると考えるのが当然なのだが、綾香にはこれらが別々のものとして認識されている。  くすぐったい刺激にも耐えなくちゃいけないし、笑いを吐き出そうとする自分の体内の動きにも耐えなくちゃいけない……そのように自覚して我慢を続けている。  笑い出してしまうという事は、自分の意志が弱いがために起きる事だ! だから身体がどんなに笑いたいと訴えても我慢しなくちゃいけない! でないと……夏姫をまた泣かせてしまう事に……なるから……  笑うという身体の反射行動をそのように曲げて解釈してしまっている綾香は、夏姫の顔を浮かべると必ずそのように考え至ってしまう。  本来なら意思とは関係なく“笑ってしまう”のがくすぐりという刺激に対する身体の自然な反応である筈なのに、綾香はその自然の摂理を曲げてまで耐えようと意地を張る。  彼女のために笑わない! 彼女のために耐えなくてはならない! そう言い聞かせ、唇を震わせ、歯も浮きかけ、今にも笑い出してしまいそうになっている自分の顔を必死に横に振って限界以上の我慢を続けている。 「ふぅ~ん、薬で敏感になっている筈なのに……案外よく頑張るじゃない? 普通の女だったらこれだけの刺激でも悲鳴を上げて笑い狂ってるトコなのに……」  綾香の必死な抵抗を背中越しに眺めつつ焦らしのくすぐりを続ける鈴音だったが……彼女の我慢が崩れる寸前まで追い込まれているという事を察知すると、突然動かしていた中指の動きを止めて一瞬の無刺激を彼女に与えてあげた。 「もしかしてこのまま我慢し続けられるんじゃないか? とか……思ってないでしょうね? そんな馬鹿な妄言を頭の中に巡らせてはいないわよね?」  指の動きは止まったが、その指が撫でた余韻が未だはっきりと思い出せてしまう為腋のムズ痒さが一向に収まらない。綾香はその指の止まった時間でさえも笑いを堪え続けなくてはならなかった……気を抜けば刺激を思い出すだけで笑ってしまいそうだから…… 「そういう妄言は信じない方が賢いってものよ? だって……あんたが笑わないで済んだのは……私の指加減のお陰でしかないんだから……」  中指の動きは止めたまま今度は全ての指を腋の端から這い出させて見せた鈴音は、その指達を全て彼女の腋の窪みへと集結させそれぞれの指先が腋の至る所に触るよう配置していきくすぐる態勢を整えていった。 「あんたが笑うのも……笑わずに済むのも……結局私の指加減一つである事を今からきっちり教え込んであげる♥ この無防備なワキに……ね♥」  ひとつ……またひとつ……と、指先が腋の肌の上に置かれていく感触を味わう。  指が置かれるたびに……その刺激だけで肩や脚が反射的に跳ね上がり、身体が刺激を拒否している事を如実に示し始める。 「彼女の為にも笑いたくない……って思ってるんでしょ? 笑ったら心配させちゃうかもしれないって思って……我慢してたんじゃない? あんたは……」  下腹が不規則に痙攣し、肺は過呼吸気味に酸素を取り込もうと呼吸筋を激しく伸縮させる。心臓はジェットコースターにでも乗っているかのようにドクドクと鼓動を速め、食いしばっていた奥歯も無重力を感じるかのように浮き立っていく。 「その我慢が見るに堪えないほど健気に思えたから、敢えて笑わせないでこの我慢がいつまで続くか見てたんだけど……私の方がそんな健気さにムズ痒さを覚えて嫌気が差したからもうお仕舞にするわ♥ ここからは予定通り……あんたには笑って貰う……」  込み上げてくる笑いの衝動に呑まれまいと必死に顔を横に振る綾香だが、ワキに触れた指が順番に肌に食い込むよう力を込められ始めたのを境にその振っていた顔をピタリと止め、表情を見られないよう隠すように俯いた格好のまま顔全体を痙攣させるかのように震えさせ始めた。 「自分の意志で笑いを堪えられないっていう無力感を……存分に噛みしめながら……笑い悶えなさい?」  その様に言葉を零すと、鈴音はまずはと言わんばかりに人差し指をピクリと僅かに動かして綾香に最初の刺激を送り込む。 「んぐっ!!? んむふっッっ!!?」  その鋭く突き刺さるような刺激に笑いこそ出さなかったものの、それを受けた綾香は雷が直撃したかのように身体をビクつかせ目を見開かせて顔を上げる。 「ほら……ワ・ラ・エ♥」  指が動いたのを皮切りに、腋の窪みに集めた全ての指が一斉にモジョモジョと蠢き始め、綾香の腋の神経に容赦のない刺激を送り込み始める。  その刺激の渦中に置かれた綾香は、喉奥から笑いが勢いよく吐き出しそうになるが、それでも笑ってはいけないと思う一心で頬を膨らませ、その笑いを口内に押し留めようとした。  しかしそのような抵抗が長く持つはずもなく、媚薬によって敏感になっているワキの中でも特にこそばゆさを感じやすくなってしまっている腋下の肌を鈴音の小指に引っ掻かれた事でその我慢は一瞬にして崩壊へと導かれてしまう。 ――カリッ♥ 「ぶっっはっっっっ!? びぎゃはっっ!? いぎゃあああぁぁぁ~~~~~~っっはははははははははははははははははははははははははははははははははははは、そこだめっっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、そこくすぐっちゃだダメェぇぇっへっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、いひゃぁぁ~っははははははははははははははははははははははは!!」  我慢していた笑いが溜め込んでいた涎や唾と一緒に吐き出され、スポットライトの明かりに綾香の飛沫が飛び散る様が映し出される。  吹き出しから間を置かずその勢いに負けず劣らずの声量で笑いが放出され、綾香は身体をガクガクと震わせながら次々に吐き出されていく笑いに悶え始めた。 「ギャ~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、いひゃはははははははははははははははははははははははははは、こんなの無理っっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、我慢なんて出来る訳ないぃィひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ! はぎゃ~っはははははははははははははははははははははははははははははは、きひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、んははははははははははははははははは!!」  我慢していた分の笑いを全て吐き出しているかのように次々と途切れなく溢れ出てくる肺を震わすほどの笑いは、綾香の端整な顔を大きく歪ませ彼女が望む筈もない無様な笑い顔を強要する。 「はぎゃひひひっっ!? あひゃ~~~っひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、うはははははははははははははははははははははは、ぎひっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ちょ、やめっっへへへへへへへへへへへへへへへへ、ワキやめてぇっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」  笑う事により肺の中に溜めていた空気はすぐに底をつき、新たな酸素を求めて肺は口を開けて酸素を吸うようにと綾香に指示を出すが、それに従って口を開けても空気を吸うどころか逆に笑いが吐き出される事によって残っていた僅かな空気も一緒に出て行ってしまう。  なおも酸素が無くなり続けるこの現状を良しと思わない肺は再び綾香に酸素を吸う様指示を出す……しかし笑いが途切れない以上吸える酸素の量は僅かであり、肺は常に酸欠状態に追い込まれる事となる。  この状態が続くのは苦しい。滅茶苦茶苦しくて辛いのだが……綾香はそれでも笑う事をやめられない。鈴音のくすぐりがあまりにも容赦なく彼女の笑いのツボを刺激してくるから…… ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ♥ (※こーじさんのイラスト挿入予定)  綾香の伸びきった腋の筋を指で強く押したり肌に指先を食い込ませて強く引っ掻いたり、また逆に優しく撫でて焦らしたり……  脇の下までモジョモジョと敏感な肌をまさぐりながら上下に往復したり、爪の先でツツツ~ッと撫で上げたり……  背中に張り付くように綾香の背に密着しながら多種多様なくすぐりを彼女に加える鈴音だが、彼女の顔は真剣そのものだ。綾香の笑い方を見て触る箇所を変えたり、触った箇所に対する反応の強弱で次にくすぐる箇所を臨機応変に変えて言ったり……  くすぐりを楽しんで行っていたさっきまでの彼女とは違い、今の彼女は“綾香をどんな風にくすぐれば笑わせ続けられるか”を真剣に考える研究員の様な眼差しで綾香の様子を観察している。  少しでも反応が悪くなれば次の弱点へ移動……ココも反応が悪くなればまた移動……反応が良かった箇所でも長くくすぐるのは厳禁であり、力の強弱にもその時の状況に応じて使い分ける。一見するとただがむしゃらに指を動かしているだけに見える彼女のくすぐりだが、彼女の指は綾香を笑わす為に最も効率的な動きを選びながらくすぐりを行っている。  余興の時間やその罰の時間……果ては感度上げに用いた時間でさえ鈴音にとっては“対象を研究する”時間へと成り果てる。  何処をどんな風にどれだけくすぐれば笑ってしまうのか……それをあの短い時間で見抜き、感度の上がった肌にその見抜いた成果を責め手として与えていく……。  くすぐりという子供染みて聞こえるその仕置きも、そこまで徹底して笑わせる事へ執着して研究し尽くしたなら立派な拷問にもなり得る。  綾香はそれを今身に染みて感じ取っている。 「ギャッハッッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、わ、わ、わきぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひ、ワキっ死ぬっっふふふふふふふふ!! ワキで死ぬぅぅふふふふふふふふふふふふふふふふふ、はぎゃははははははははははははははははははははは、うはははははははははははははははははははははは!! くるひっっひひひひひひひひひひ、いっひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ふへっひひひひひひひひひひひひひひひ!! 息でぎないぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」  鈴音の指遣いは動きの速さや触る箇所に規則性が見受けられない。例え同じ箇所をくすぐっていたとしても、さっき行っていたくすぐり方とはまるで違う触り方をしてくるので与えられる刺激は全くの別物に変わる。  だから刺激に慣れる事が出来ない。慣れるどころか、くすぐったさは増す一方で終わりが見えてこない。  脇の下がくすぐったいと感じた次の瞬間には腋の窪みの方がくすぐったく感じるし、腋の窪みがくすぐったいと感じたなら今度は腕の付け根もくすぐったく感じる。  そんなくすぐったさのループが何度も何度も繰り返され、綾香は次第に自分の意志で笑いをコントロール出来なくなっていく。  元々コントロールなど出来ていなかったと綾香は思うかもしれないが、実は無意識下で彼女の脳は笑いを僅かにコントロールしていた。  あまりにも笑い過ぎて呼吸が全く出来なくなると命にかかわる為……彼女の本能がギリギリ呼吸が出来るよう笑いの間に僅かな間を置いて知ら知らずの内に呼吸をさせていた。  ほんの僅かなその空気の取り込みのお陰で綾香は呼吸困難に陥ることなく笑い続けていたのだが、このあまりに度を過ぎた鈴音のくすぐりには綾香の本能も呼吸をさせる為の間が置けなくなっている。それほど鈴音のくすぐりには隙が無いのだ。綾香を笑わす為のツボを確実に突いて笑わせるそれは、一瞬の呼吸も許さないほど綾香を笑わせてしまっている。 「がはっっははははははははははははははははは、ぎひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、んひひひひひひひひひひひひ!! だ、だ、だめへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ホントにぐるじぃぃっっひひひひひひひひひひひひひひ!! ホントに息がぁぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」  普通なら指の位置が変わったりくすぐる強さが変わったりする際に一瞬の間が空いたりするものだが、鈴音のくすぐりはその間が存在しない。  絶え間なくくすぐり続けながらも指の形や動かし方を動きの中で変えていき途切れ目を作らないような動きでくすぐりを行っている。そんな事をすればすぐにくすぐる側も疲れてしまうのが関の山だが、鈴音はそれだけを行えるよう訓練してきている。だから途切れない……どんなに身長差があって腕を上げながらのくすぐりになったとしても指の動きを緩めたり肌から離したりなどもしない。指を移動するタイミングや笑いのツボをいかに慣れさせない刺激で責め立てるかなど、さながら綾香を笑わせる為だけに作られた精密なマシンであるかのように笑顔の少なかった彼女を確実に笑わせ続けていく。 「ぎへぇ~っへっへっへっへっへっへっへっへっへっへ、うぎひへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ゲホゲホ!! かはっっはははははははははははははははははははは、んげっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、いぎひぃぃぃぃっっ! がひぃぃっっ!?」  そんなくすぐりを受けて綾香が苦しまない筈がない。  吸える空気などほとんど与えられず笑わされ続けているのだから、水中に顔を付けている状態とほぼ変わらない。そんな状態が続けば酸欠どころか呼吸困難に陥るのは火を見るより明らかであり、綾香の顔も酸素が供給されない状態が長引き血の気が引いた真っ青な顔に変わり果てていく。 「フフ……そろそろかしら?」  生存本能すらも凌駕する鈴音のくすぐり責めは、綾香の意志で呼吸をする事を許さない。だから、鈴音の裁量次第で綾香の呼吸をコントロールされると言っても過言ではない。  鈴音は綾香の顔色の変化や苦しみ方の変化をしっかり観察して、彼女の命にかかわるような事態にならないよう定期的に指の動きを止め彼女に呼吸を促す。  休みを与えている……と言えば聞こえはいいが、結局この酸素を吸わせるという行為も気を失うギリギリのラインを見計らって行うものである為、彼女を気絶させずに限界まで苦しめ続ける……と考え方を改めれば中々に鬼畜だ。  死ぬほど苦しんだ挙句に僅かな呼吸する時間を与えられ肺に空気を取り込んだと見ればすぐにその酸素を絞り出してやろうとくすぐりが再開される。  折角取り込んだ酸素も彼女のくすぐりの前では思うように溜め込んでおく事も出来ずまたすぐに肺が空になる程吐き出す事となる。  それを何度も繰り返す……  鈴音は綾香にそういう苦行を強い続ける。 「はぁはぁはぁはぁ……はひ、はひぃぃっっかはっっ!! はぁはぁはぁ……ま、ま、待っで! くすぐるの……ま、待っで……はひっひぃ……はひぃ、はひぃ……」 「はい、もういいわね? 再開よ♪ ほれ! また笑いなさい? コチョコチョコチョコチョコチョ~!」 「ぎゃっっ!? ぎひゃっっっ!!! うぎゃはっっははははははははははははは!? げひははははははははははははははははははははははははははははは、ま、待っでっでばぁぁっははははははははははははははははははは、まだ息が整っでぇへへへへへへへへへへへへへへへ、にゃひぃっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、くははははははははははははははははは!!」 「ほらほらぁ! そんな余計な事喋ってる余裕あるの? そんな訴えを出すくらいなら笑う為の息繋ぎにした方が良かったんじゃないの? 私に苦しさや辛さを訴えかけて慈悲を乞っても無駄よ! そういう慈悲を掛けるような性格に見える? 見えないでしょ!」 「だぁーーはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、ぎひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、うはははははははははははははははははは!! だ、だ、だってぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ホントに苦じいの! ホントにホントなのよっっほほほほほほほほほほほほ、くはははははははははははははははははははははははは!!」 「それくらい分かってるわよ。だからちゃんとあんたが気絶しない様に注意して調節しながら笑わせているんじゃない! これでもこの道のプロなのよ? あんたがどれだけ苦しんでいるか分かってあげられるのは攻め手の私だけに決まってるじゃない!」 「ちがっっはははははははははははははははは、そうじゃなぐでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、そういう事じゃなぐでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! もっと緩めでぇぇへへへへへへへへへへへへへへ! 手を緩めでよぉぉぉ!!」」 「だぁ~かぁ~らぁ~! そういう慈悲は与えないんだってば! 私はあんたが屈服するまでこれを続けるの♥ あんたが心の底から悪行を認めてそれを反省したと判断するまでコレは続けるわ! どんなに苦しくてもね!」 ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ! 「ギャ~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、わ、わ、わがっだぁぁあぁはははははははははははははははははは、反省ずるっっふふふふふふふふふふふふ、反省してあげるから今すぐやめでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」 「そんな言い方で反省してるって誰が思うわけ? 馬鹿じゃないの?」 「だはっっはははははははははははは、うはははははははははははははははははははは!! もう十分反省したぁぁっははははははははははははははは、反省したがらぁぁはははははははははははははははははははははははははは!!」 「反省したかどうかは私が決めるの! あんたが決める事じゃない!」 「ぎゃはっっははははははははははははははは! ウハヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、えはははははははははははははははははははは、そんなの理不尽よっほほほほほほほほほほほほ、私の事何も知らない癖にぃィひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 「知らなくて当然じゃない、他人なんだし! でもあんたのプライドがとてつもなく高いという事はこの短い時間でも理解出来たわ」 「くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、えへへへへへへへへへへへへへへへへ、いへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ゼェゼェ……ゲホゲホ!! くは~~っっははははははははははははははははははははははははは、やめでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」 「こういう……プライドだけはいっちょ前に高くて、自分以外の人間を下に見るような女の調教の仕方……どうやるか知ってる?」 「かはっっははははははははははははは、ひぃひぃっっ!! くしゅぐったいっっひひひひひひひひひひひひひひひ!! めちゃくちゃくしゅぐったいぃぃぃひひひひひひひひひひひひひ、あはっ!? だはははははははははははははははははははははははは!!」 「自然界の法則である食物連鎖と同じ……自分よりも恐ろしい生き物がいる事を教え込むの! 勝手に“捕食する側”だと思い込んでいた勘違い女に思い知らせてやるのよ! あんたの身体をまさぐってるこの私こそが、あんたにとって脅威であり天敵だったんだって事をね!」 「ひぎぃぃっっっひひひひひひひひひひ!? がははははははははははは!? ひぎゃあぁぁ~っはははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」 「私のくすぐりは絶対よ。あんたがどんなに嫌がろうが……どんなに抵抗しようが……どんなに苦しくて辛い思いをしていようが、私が少し指を動かせばあんたはたちまちの内に無理やり笑わされる事になる!」 「だひゃめっっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、そこだめぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ぅはひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」 「もう分っているとは思うけど……あんたの“笑う”という感情の意思決定権は私の指に委ねられているの。私が許可しないと笑う事を休めないし、笑う事をやめる事も出来ない……」 「ぃぎひひひひひひひひひひひひひ、くへへへへへへへへへへへへへへへへ、はひぃ、はひぃぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、うへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ」 「それすなわち……あんたの生殺与奪権さえ私に預けられているとも言えるわ♥ 生かすも……殺すも…………笑わせるのも、休ませてあげるのも……私の判断次第……ってね♪」 「かはっっはぁ、はぁ、はぁ、はぁ……はひっ、はひぃっ! かはっ! ゲホゲホ!! はぁはぁはぁはぁ……」 「どう? こんな子供の様な私に“笑いを自由に出す意思”を完全に支配された感想は♥ 改めてそう聞かれると色んな感情が込み上げて来るでしょ?」  ほとんど無酸素状態で笑わされる鈴音の激しすぎるくすぐり責めに綾香の頭は真っ白に塗り上げられ、もはや何かを思考するという気力すらも湧いてこない。  ようやく与えられた二度目の休憩に、口は必死に命を繋ぐための酸素を吸い込むために無心に呼吸を続け、手は疲弊し切った身体の様子を表すかのようにだらりと弛緩し枷に体重を預ける。  肩や脚は痙攣するように震え、口から垂れ放題になっていた涎は自分自身の露出した腹部に好き放題垂れてローションでも掛けられたかのように肌をヌメらせている。  まるで長い坂道を全力疾走させられたかのようなおびただしい汗の量に、興奮気味に見ていた観客も僅かにその熱量を抑えこの仕置きショーの凄まじさに圧倒されている。  くすぐられて笑っている女の姿を見ているだけ……  確かにこのショーはそれだけの事しか行ってはいない。  しかし、それだけであの高圧的な態度を取っていたディーラーをここまで心身ともに疲弊させることが出来るのだと分かると……俄然、このくすぐりという行為がSMなどで見られる“窒息責め”や“蝋燭責め”と並ぶくらい身体的にも精神的にも苦痛を与えられる凶悪な責めなのであると認識を改めさせられる。  だが、行為が行為だけに見た目にはその苦痛の度合いは推し量れない。こんなにも完全な拘束をされ、誰とも分からない人物からくすぐりを受けるという場面に遭遇する事が普通に暮らしていれば皆無に等しい程ない為、どれほどの辛さなのかは想像も湧かない。  それに加え、くすぐりという行為によって笑わされてしまう為……全く辛そうに見えない。  むしろ喜んでいるのではないかと錯覚すらしてしまう程だ……  だから、改めてくすぐりが止まって……過呼吸を繰り返しと身体が弛緩する程の疲労を目の当たりにすると、笑い続けていた彼女とのギャップを大きく感じ着地地点の無い不思議な感情に苛まれる事となる。  疲れ果てているのだから同情の一つでもしてあげたいけど……責められている時は笑っているから、その必要は無さそうにも感じるし……  笑っているから楽しそうだと思っていても、くすぐりが止めば瀕死の重傷者のようにぐったりするから本当は苦しみを味わっていたんだと思えてしまうし……  同情すればいいのか、罰なんだからもっと激しく責め立てろと怒ったほうがいいのか……その裁量が見ている側では判断できない。  判断できないから……客達は徐々に考えるのを諦める。  きっと苦しいのだろう……きっと辛いと思っているだろう……と、あやふやな想像を勝手に綾香の苦しみに当てはめ彼女の本当の苦しみを理解してあげようという考えを捨てていく。  それどころか……  この倒錯的な仕置きの流れに、妖しい色気さえも意識する客も増え始める。  肌の露出は最低限である筈なのに……性的な刺激に悶えさせるというような淫靡なショーではない筈なのに……  なぜか……自由を奪われた綾香の姿に扇情的な意識が向くようになってしまう。  くすぐりに弱い箇所であるワキや足の裏を、くすぐって下さいと言わんばかりに露出させられ拘束されている彼女の姿があまりにも挑発的に映り……思わず手を伸ばしてしまいたくなる程の色欲に駆り立てられる。  くすぐられる事が分かっていながら……そのくすぐられたくない箇所を堂々と晒すように拘束されている彼女の事が、なんとも無抵抗で無力な存在にさせられているのだと意識が至ると途端に淫靡な感情が込み上げてきてしまう。  綾香の拘束姿にそのような感情が芽生えた客達は、もはやくすぐりという行為は“子供の悪戯”という認識ではいられなくなる。  もっと大人の行為……そう、それこそSMや特殊プレイのカテゴリーとして認識が改められる。  あのピクピクと小刻みに震えているワキに……指を這わせてみたい……  敏感になっているあの腋を……滅茶苦茶に掻き毟って、綾香のあの端整な顔を無理やり笑わせてみたい……  あの腋の窪みの膨らみを……あの腋の端にある筋の部分を……脇の下を……脇腹を……いや、あの無防備な足の裏でもいい! 触ってみたい……触った時の反応を……見てみたい!  客達の一部がそのように“ただの仕置き”から“淫欲沸き立つ行為”にくすぐりを昇華させていくのを知ってか知らずか、鈴音は綾香の呼吸が整うのを見計らって再び彼女の腋にその小さな手を差し込んでいった。  そして、満身創痍で俯きながら必死に荒い呼吸を繰り返していた綾香の腋を何の手加減もせずに再びコチョコチョとくすぐり始めた。 「ギっッヒゃっッっ!? イぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッっ!!?」  その繊細な中に「笑わせてやる!」という強い意志が込められた力強いくすぐりに綾香は再び目を見開いて痛烈な叫び声をあげる。  そしてその悲鳴が観客の熱気に掻き消される前に綾香は前よりも一段トーンの上がった笑いを吐き出し始める。 「ぎゃはっっ!!? いぎゃ~~~~っっははははははははははははははははははは、うはひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、や、やはぁ~~っはははははははははは、やだぁっははははははははははははははははははははははははは、ひぎゃははははははははははははははははははははははははは!!」  綾香の大笑いが口から吐き出されると……ある者は歓声を上げ堂々と股間を膨らませたり、またある者は頬を赤らめながら前屈みになりその場にうずくまったりと、込み上げていた欲が鈴音の行為と綾香の爆笑によって満たされている事を示し始めた。  扇子で口元を隠し、目だけを見せながら綾香のその絶叫から大笑いまでの一連の流れを見ていた麗華も、周りの淫靡な空気にあてられたのか頬を真っ赤に火照らせ組んでいた脚をモジモジさせつつ、何やらもどかしくなった下腹部を反対の手で摩りながら事の成り行きを見守った。 「アギャ~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、うへへへへへへへへへへへ、イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、くはははははははははははは、いひゃあぁはははははははははははははははははははははははは、くははははははははははは」  綾香は汗と涙と涎を額と目と口から同時に吹き出して笑い狂った。    あんなに凛々しくいつも自分に檄を飛ばしてくれる綾香が……こんな無様な笑い方を強いられているなんて……  夏姫にはその事実は受け入れがたかった。  出来ればこのような彼女を見ていたくはなかった……耳を塞ぎ目を閉じて顔さえ背けて、見ないようにするべきではないか? と自分に言い聞かせようとした……  しかし……夏姫も、彼女の笑い乱れる姿から目を離せないでいた……  自分の知らない……乱れ切った恋人の姿がそこにはあると意識すると……目を離さずにはいられなくなってしまう。  綾香が自分の前でこのような姿を見せる事は決してない。見せようとも思っていないだろうから見れないのは当然の事だが……それを鈴音はいとも容易く皆の前に晒して見せている。  それは悔しくてならない。自分の知らない綾香の痴態を自分だけでなく他の不特定多数に見せているというのが我慢ならない。  本来なら自分だけに見せて欲しかった……このような一面もあるのだと自分だけが知っておきたかった。  でも今は彼女がそれを支配してしまっている。  綾香の痴態を彼女がコントロールしてしまっている。  自分が誰よりも先に彼女の痴態を見ておきたかったのに……  理性の欠片もない綾香の乱れた一面を自分だけが知っておきたかったのに……  悔しさはやがて怒りに変わり、かようなテクニックを持つ鈴音への恨みへと変貌していくが……綾香の乱れを見れば見る程、鈴音に対する恨みよりも……こんなに乱れた痴態を晒す綾香に普段とは違う異質な魅力を感じてしまい戸惑いが隠せなくなってしまう。  こんな場面でこんな事を思う事は絶対に間違っていると自分でも自覚しているが……  綾香の乱れっぷりを見続けていると……次第に、もし自分が同じように責めたら……綾香はこんな風に笑い悶えてくれるだろうか? などと妄想してしまっている自分がいる。  こんな事を考えるのは綾香に対して誠実ではない……と思っているのに……  綾香の事をこの苦しみから一刻も早く助け出したいと思っているのに……  気が付いたら妄想に耽ってしまっている。  鈴音の指の動きを見て……思わず自分の手も動かしたくなる衝動に駆られてしまう…… 『私も……お姉さまの事……くすぐったら……こんな風に……笑ってくれる……かな?』 『もしも笑ってくれるんだったら……その乱れたお姉さまを……間近で見ていたい……かも……』  頭を振ってその妄想を掻き消そうとするが、綾香の大笑いを聞けば聞くほどその妄想は膨らむばかり。  そんな妄想を頭が勝手にしてしまうものだから、綾香のくすぐられる姿から目が離せない。  不謹慎かもしれないけど、責められている綾香を見るのも悪くはないというのが本音にあると気付かされてしまう。 「ぎひゃ~~っははははははははははははははははははは、うははははははははははははははははははははははは、もう無理ぃぃひひひひひひひひひひひひ!! ホントに無理ぃィぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ひぎゃあぁはははははははははははははははははははははは!!」  そんな事を思っているとは露知らず、綾香は夏姫の顔だけを見て思いを馳せながら笑い狂う。    どんなに苦しくても……どんなに辛くても……彼女を悲しませるような態度を取るような事だけはしたくない! だから負ける訳にはいかない! 負けを認めれば……夏姫との関係までも終わってしまいそうだから……だから負けられない! 決して屈服などしてはいけない!  弱り切った自分の姿を彼女は絶対に見たくない筈だ! どんなに苦しくても弱音を吐けば幻滅してしまうに決まっている……そういう態度を示してきたんだから……強くてカッコいい先輩という像を見せつけてきたのだから!  これからも……それを続けなくては駄目だ! こんなに苦しい責めにも負けない自分を……夏姫には見せないと駄目なんだ!!  綾香のその想いは夏姫の想いとは真逆を走ってしまっている。  自分に全てを曝け出して欲しいと願っている夏姫に対して、自分の弱い部分は極力見せたくないと思っている綾香……  交差していながらも微妙にすれ違っている両者の想いは綾香の気力を無駄に引き立て、彼女にとって予期せぬ展開を生む事となる。  それが綾香にとって致命的な事になるとは彼女自身も思っていなかった事だが……  麗華は“そうなる展開”を見越し……綾香の悶絶に様々な感情を浮かべて見守っていた夏姫にソッと声を掛ける。  綾香に気付かれぬよう……扇子で口元を隠しつつ……  この後の展開を楽しみにしているかのように……ニヤリと笑みを浮かべながら……

Comments

ガリタル

この期待値高まる以前とは違う展開最高です。以前のも好きですが個人的には以前より更に好きな展開ですね。

ハルカナ

先の展開は基本的な流れは原作準拠で進んでいく予定ですが、リメイクにあたってキャラの心情と背景や情景の明確化を拘っているので、同じことをやっていても全く捉え方が変わって感じて貰えているなら今回のリメイクは成功だと言っていいかもですね♪ 鈴音の責めはだいぶ弄ったのは確かですけどね笑