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あの日見た光景が頭から離れない。 仕事終わりの本部室で、レッドさんがパープルに従っていたこと。レッドさんがパープルの…あれをしゃぶっていたこと。パープルの口から出た…記号のような、ノイズのような誰かの名前。全ては夢だったんじゃないかって思いたいけど、そんなに俺の頭は都合よく働かない。 「おまえよー!ボーッとしてんならどけよ!」 「うあぁ…ご、ごめんなさい」 考え事をしていて怪人が目の前まで来ていることに気が付かず、あともう少しで顔面に思い切り拳を入れられるところだった。 でもブルーさんが倒してくれたからよかったけど。 と、とにかく今は戦いに集中しないと…。 今日の結果が出た。 ブルーさんがトップの8キル。次にブラックさんの7キル。いつもはこの次に俺が5キルくらいでくるんだけど…次は5キルでパープルとレッドさん。 俺は…1キル。しかもそれはブルーさんが倒したようなもんだった。 「イエローらしくないな」とレッドさん。 「大丈夫?」とパープル。 よりによってこの二人に話しかけられるとは。忘れかけていたあの光景がブワッと、また頭の中のほとんどを占めた。 「あー…ははは…大丈夫です。今日はあんまりご飯食べてなかったからー…ですかね」なんておどけてみせた。 「ちゃんと食えよな。お前は大事な戦力なんだから」 ははは…それも全てはあなたとパープルのせいなんですよ…なんて言えなかった。 今日も気づいたらまた遅くまで本部で過ごしてしまっていた。 あのことが頭に浮かぶと、いつもやってることや、やるべきことを忘れてしまう。 はぁ…とため息をついたあと、リュックを背負って休憩室を出る。 出口に向かう途中、また本部室の扉が少し空いてることに気づく。…その隙間から中を覗く。 誰もいない。よかった…と思い本部室のドアを閉めて家路についた。 -数日後 「おまえよ!マジでやる気ねえならやめちまえよ!」 ブルーさんが俺の胸ぐらを掴んでいる。その顔は怒ってるなんてもんじゃなくて、殺されるんじゃないかってくらいに殺気に満ちていた。 俺のヒーローとしての活動は日々右肩下がりにダメになっていった。 今日なんて俺のせいでみんながやられそうになったんだ。油断してトドメを刺すのを忘れた敵が、俺たちの体を痺れさせる霧を放った。 それをみんなが吸い込んでしまって動けなくなった。かろうじて戦える状態にあったパープルがトドメを刺してなんとか助かった。 なんとか本部に戻ったあとに、薬で中和をし事なきを得た。 でもみんなが帰ったあとに「イエロー、話がある」とブルーさんに呼び止められて、今につながる。 「…答えろよ!!やめんのか!?あ!?」 「…あ……あの…きいてほしいこと…が…」 なんでこのタイミングで言っちゃったかなあとも思ったけど、もう相談した方が楽だなとも思った。 「は?くだらねえ。言い訳かと思って聞いてやった俺がバカだったよ」 「…でもほんとに見たんですよ。それが…頭から離れなくて…」 ブルーさんがイライラしているのがわかる。机の上に足をどかっとあげて座ってんだもん。 「でもそれが本当だとしてどうすんだよ」 「どうすんだよって…そりゃあの二人を助けてあげないと。よくわかんないやつに乗っ取られてるわけですから」 「正体もわかんないやつから?あいつらを?しかもまだ乗っ取られてるかもわかんないのに?…たく…寝言は寝て言えよ。お前向いてないよ。やめろ」 相談しておいてなんだけど…ほんとにこの人が苦手だ…。 *** 「ブルーさん…見せたいものがあるんです」 「あ?」 「昨日、本部で…また見たんです。あの二人の行動を。それをスマホで、撮影したのがあるんです」 「…」 ブルーさんはどうせまた戯言だろうと言った感じに無視をした。 「…言い訳じゃないんです。というか俺がクビになるなら、それでいいです。でもせめて…最後くらい仲間を助けてやりたいんです!」 無視していたブルーさんは、横の椅子をスッと引いた。 「…見てくれますか?」 「早く座れよ。うぜえな」 俺はスマホを机に置いて動画を再生する。 ドアの隙間から見える映像。 『…もうそろそろいい頃合いだろうな』 『ええ、そうですね』 本部のレッドさんの席に座っているのはパープル。その前に跪いているのはレッドさん。 「なんだよ…これ…」 ブルーさんは眉間に皺を寄せ、険しい表情になる。 なぜなのかはわからないが、パープルとレッドさんは全裸であって、レッドさんはパープルの勃起したちんこに顔を近づけて蕩けた顔をして扱いている。 「この後なんです、聞いてほしいのは」 俺は少し音量を上げる。 『BFF;43:;)¥様も喜んでくれるな』 『ええ…この部隊を堕とせば計画もスムーズにいくでしょうからね』 そう言った後にレッドさんはパープルのちんこを美味しそうに舐め始めた。そこでブルーさんが動画を止めた。 それからしばらく黙ったままだった。 俺の言ってることが嘘じゃないとわかってほしかったんだけど…きちんと通じただろうか。 「…あの会話聞きましたよね?俺が言ってたのはあれなんです。誰の名前かわからないけど…やっぱ二人は誰かに乗っ取られてるんですよ」 ずっと何かを考えているような感じだったブルーさん。しばらくの沈黙の後、ゆっくり口を開いた。 「……お前の言ってることが嘘じゃないのはわかった。…とりあえず今日は帰る」 一応は…通じたんだろうか。そう言ってブルーさんは帰っていった。 俺は胸の中には、まだ少し不安な気持ちが残っていた。 *** 「今日は敵もいなさそうだから解散だな」 「僕また掃除しておきます」 午後4時。この時間まで特に動きがない場合は、解散をしても問題はないことになっている。 珍しく敵も出なかったので、レッドさんの決定で、今日は早めに解散となった。 「ブルー帰りどっか寄るか?」 「…いや、今日は一人で帰るよ」 「ああ、そうか。それじゃあな」 あれ、今日は一緒に帰らないんだなとブルーさんの顔を見たら、目が合った。 周りをキョロキョロと見たあとに「…お前このあと俺の家に来い」と声をかけられた。 「おじゃまします」 ブルーさんの家に来たのは初めてだ。結構可愛らしい部屋で、置いてあるものや飾ってあるものがきちっと揃えられていて、几帳面だなと思った。 「あんまジロジロみんなよ」 「すみません。へへ、なんか人の部屋ってワクワクするじゃないですか」 ったく…と少しブルーさんが微笑む。この人って結構可愛い顔するんだなって思った。 そして、この数日の緊張が少しほぐれた感じがした。 「お前嫌いなもんないよな?」 「…嫌いなもの?食べ物ですか?」 「そ」 「ないです…けど」 「うまかったっすー」 「見た目通りの食いっぷりだったな」 ブルーさんってこんなに料理上手い人だったんだ。鯖の味噌煮、ほうれん草の胡麻和え、サラダ、だし巻き卵に味噌汁、そしてどんぶりにご飯いっぱい。とくに鯖の味噌煮は味付けが絶妙で、ご飯めっちゃお代わりさせてもらった。 「ご飯ご馳走していただいてありがとうございます」 そう言って、俺はソファに寄りかかるのをやめて、姿勢を正す。 「でも…俺を呼んだ理由って…ほかに…あるんですよね?」 俺はブルーさんを見る。 「まあ…そうだな。…パープルとレッドの話をしようと思ってな…」 隣で同じく寄りかかっていたブルーさんも体を起こす。 「…まあ、お前が見せてきたあの動画。あれは…事実なんだよな?」 ブルーさんの目が真剣になる。 「はい、間違いないです。嘘ではないです。それと…あの二人があんなことをふざけてするとは思えないです。…ふざけるのであれば会話さえ聞かせられたらいいはずです。だから、あんな性行為をする必要はないと思います」 「確かにな。しかしあいつらを堕としたと思われる主というのか、ボス的なやつの名前はわからない。俺にもなんと言ってるのか聞き取れなかった」 そうなんだ。なぜか名前の部分はノイズのようになって何を言っているのかわからない。 そこの部分だけ繰り返し聞くと、毎回違う単語を発しているように聞こえる。 「今のままだと…情報は不十分だな。……俺もあいつらのことは注意して観察する。おまえもなにかあったら俺に連絡しろ」 「わかりました」 *** 「今日は、ご飯までご馳走になってありがとうございました」 「ああ、気をつけて帰れよ」 「それでは失礼します」 「もしもしパープル様ですか?ブルーです。……ええ…順調に進んでおります。もう少し餌を撒かれた方が効率が良くなるかと思います。はい…はい…わかりました。それでは…」 *** 「イエロー」 「…は、はい」 誰もいない休憩室。ブルーさんがスマホを手に俺の横に座った。 「これ見てみろ」 一本の動画が再生される。 『今日…cut,;(3236様からこれを渡されたよ』 『なんですか?』 いつものように本部入り口のドアから隠し撮りされた映像。今日は二人ともヒーロースーツを着ている。 「これ、ブルーさんが?」 「ああ、昨日お前が帰った後に見かけたんだ」 パープルがポケットから何かを取り出してレッドさんに見せている。何だろうあれ…緑色の…。 『僕たちが元に戻れる薬だってさ』 「…!…ブルーさん…」 「いいから黙ってみてろ」 『なんでそのようなものを?』 『「私の支配下に置かれるのが嫌になった場合、これを首に刺し戻ればいい」と言われた。そんなもったいないことしないよな?』 『ええ…するわけありませんよ』 そのあとゆっくりとレッドさんはパープルの体を抱き、お互いに口を近づけたところで映像は終わった。あのあと、また行為に及んだんだろうと推測される。 「…ということらしい」 「…じゃあ、あいつからあれを奪って」 「刺してやれば戻るんだろうな。…でも嘘の場合もある」 「…今はもうそんなこと言ってる場合じゃ……」 「まあお前ならそう言うと思ったよ…。とりあえずはきちんと作戦をたてよう」 *** 現状、乗っ取られていないのは、俺とブルーさん、そしてブラックさん。 ブラックさんも仲間にと話したら「俺から話しておいてやる」とブルーさんが言ってくれた。 正直うまくいくか不安だったけど、ブラックさんも俺たちの行動に乗ってくれることになった。 どうやって話したんです?って聞いたら、終わったら教えてやると誤魔かされた。 *** 今日も解散となり、パープルは一人掃除に向かった。 レッドさんは用事があると言って今日はささっと帰っていった。 そして休憩室には俺、ブルーさん、ブラックさんの3人。 「なぜ今まで黙っていた」 「そう言うつもりじゃなかったんですよ」 ブラックさんときちんと話をしたのは今日が初めてな気がする。 「やめろ。今日は仲間割れなんてしてたら大変だぞ。いいか、あいつは今一人で本部室を掃除している。スーツはここに置いていってある。俺たちはスーツを着ていく。状況的にも数的にも優位に立つんだ」 「くだらない。さっさと終わらせるぞ」 ブラックさんはすぐに向かっていってしまった。 俺は何度も何度も深呼吸をする。そんな俺の肩をブルーさんはポンと叩き「大丈夫だ。お前なら救うことができる」と言ってくれた。 ぐっと拳を握って胸に当て、最後に大きく深呼吸をして本部室へ向かった。 *** 俺は初めて仲間を殴った。固めた拳がパープルの小さな体に思い切りめり込む。後でちゃんと謝るからとグッと堪えて、鳩尾に拳を入れた。 「かはっ…っぁ……」 パープルは腹を押さえて床に倒れ込んだ。 「イエロー!早くあの薬を取れ!ポケットに入れているはずだ!」 そう言われて俺はすぐにパープルのズボンのポケットに手を入れ薬を取り出した。 足掻いて取り返そうとするパープル。しかし思い切り入れた拳が効いているからなのか、力はまったくなかった。 薬は数本出てきた。…しかしなぜか10本くらいばらばらと出てきた。…なぜこんなに?レッドさんとパープルが戻るだけならこんなに本数は必要ないはずなのに… 「イエロー!もたもたするな!」 ブルーさんの声で起こされる。そうだ、今はそんなこと気にしている場合ではない。 緑色の液体の入った小さなその容器を見る。注射器くらいのサイズ。先に小さな針がついている。よく映画とかで見る首に刺すやつだとわかった。 俺がパープルの首に刺そうとしたとき、ブルーさんが「待て!イエロー!」と叫んだ。 後ろを振り向く。ブラックさんが苦しそうに倒れていた。 「パープルがこいつに力をすり込ませていたみたいだ!」 パープルの方を向く。 「…馬鹿な奴らだ…僕が弱いと思って…油断したなあ…。…あいつも……時期に僕の仲間になる……せいぜい苦しめばいい…ひひ…はははははははっ!!!!」 ぐっと怒りを堪える。だめだ!今はこいつの口車に乗せられてはダメだ。俺は急いでブラックさんのところへ行き、躊躇せず首に薬を刺した。 「んぐうっぅあっ!!」 ブラックさんの体が跳ねる。 「…ブラックさん」 苦しそうにするもがくブラックさんの手を握る。 「大丈夫…すぐ…戻れるから…」 パープルから奪った薬は数本まだ手元にある。 「ブルーさん!パープルにもこれを!」とブルーさんを見た。 「………」 ブルーさんは俺を見下ろしている。その目を見たときに息を呑んだ。 その目はさっきまでと違う。黒く澱んで、瞳には光がなかった。 「ブルー…さ…ん?」 「……よくやってくれた」 背筋に気持ちの悪い刺激が走った。それは、聞いたことのない低い声とブルーさんの声が重なって聞こえたからだった。 「…なに…が?…え?」 「パープル様、無事にブラックも仲間にできました」 一瞬、シン…と静まったように感じた。世界が止まったような。 何が起きているかわからない俺を無視して、ブルーさんはパープルのところへ歩いてぃった。 そして苦しそうにしているパープルを起こす。本当に何が起こってるのかわからなかった。 「大丈夫ですか?」 「…ああ一応な…力強すぎんだよマジで」 一気にパンプアップされたようにドッ…ドッ…ドッ…と心臓が跳ねている。 ブラックさんの手を握ったまま、正座のような形で、俺はパープル側にまわったブルーさんを見ていた。 「…ブラック。…おい!ブラック!」 パープルがブラックさんを呼び捨てで呼びつける。その声に反応してブラックさんの手が動いた。 そして俺が握っていた手は乱暴に払われ、すっとその場に立ち上がった。 俺はブラックさんを見上げる。 「……申し訳ございません。パープル様」 さっきと同じ、低い声と重なるブラックさんの声。 そして同じようにパープルの元へ歩いていく。 パープルが立ち上がる。その両脇にブルーさんとブラックさん。ビシッと背筋を伸ばし胸に手を当て立っている。 俺は何も言えず間抜けに座ってそれを見ていた。 「どうする?あいつ動けなさそうなんだけど」とパープル。 「まあ、こんな状況ですからね。無理もないでしょう」とブルーさん。 うまく整わない呼吸。払われた形のままの手。よくわからない気持ちの悪い汗がスーツをより密着させる。 計画はなんだったのか。終わったのか、ダメだったのか…全くわからない。 「…手短に終わらせようなイエロー。だから、わかりやすいように言ってやる。おまえが打った薬でブラックは僕の仲間になった。そう、もうわかるよな?君が僕の仲間を増やしてくれたんだ」 そのあとに、パープルの立っている後ろの大きなモニターが紫色に何回かちかちか光ったなって言うのを見た後、俺の視界はシャットダウンした。 *** 気がついたら俺は椅子に座らされていた。 立ち上がろうとしたが立てない。よく見たら首、手首、足首全てが動けないようにされていた。 「おはよう」 後ろから声が聞こえた。パープルの声だ。コツコツと足音が聞こえて耳の横を通り過ぎて、ようやく姿が確認できた。 さっきまでの私服ではなく、ヒーロースーツだった。 「覚えてる?さっき言ったこと。君が倒れる前に言ったこと」 その顔はニコニコとしている。動けないが口は動くので答える。 「…覚えてるよ」 「お?良かった。説明する手間が省けるね。馬鹿じゃなくてよかった。ははは」 ようやく…遅すぎるよな…でもやっと今わかった。理解したよ。 俺と同じ時期に入ったあの可愛らしいパープルはもういないと言うのもわかった。 「おいで」と手招きをすると、レッドさん、ブラックさん、ブルーさんが軍隊のように足並み揃えてパープルの横に整列する。 そして前に見たあの胸に手を当てているポーズをしている。 「みんな、僕の仲間。…そしてそれは同時に…ギレガレッド様の支配下に置かれたと言うこと」 ギレガレッド…ようやくその名前がはっきりと聞き取れた。 「…俺も…その…ギレガレッドとか言うやつの仲間にされるってことか?」 「ご名答」 ぱちぱちと手を叩く。 「ギレガレッド様は僕に絶大な力を授けてくれた。それを使って僕はみんなを仲間にした。そうすればギレガレッド様も喜んでくれる。僕はそれはそれは嬉しい気持ちになるんだ。心がね…満たされるんだよ。ブルーや…ブラックに…貶されるよりも…充実した毎日を送れるんだよ!」 なるほどな…パープルはその気持ちの隙間に漬け込まれたってわけか。 「でもそんなブラックやブルーも僕のいいなり。レッドもね。みーんな僕の人形みたいなもんさ。あのまま君を落としてやっても良かったんだ。でもさ…やっぱり楽しみたいんだよ。ね?みんな?」 「「「はい、その通りです。パープル様」」」 声を揃えて答える3人。 「あれ?…イエロー…何興奮してるの?ここ、こんなにおっきくしてさ」 「んぅおっあっ!」 気がつかなった。あの光景を見て俺は勃起させてしまっていた。それをパープルに乱暴に握られた。 「そういや君は…あれかな?レッドが好きだったのかな?だからこうやって言いなりになっている様を見て興奮したのかな?」 「ち…ちがう!」 「そんなこと言ったって…はは。説得力ないよ」 恥ずかしさで顔が真っ赤になっているのがわかる。 「しょうがないなあ…ギリギリのところまで、やってあげなよ。レッド」 「私でよろしいのですか?」 「うん、やってあげてよ」 「ありがとうございます」 *** レッドはイエローのおでこあたりに手のひらを当てる。 「レッド…さん…お願いです…戻ってください!」 「…戻るって……俺はいつも通りじゃないか」 そう言うレッドの笑顔はいつもと変わらないようではあったが、目に光はなく、ブルーと同じように澱んでいた。 「お願いです…レッドさっ…っが…あっぐぅぁ…が!」 イエローのおでこあたりにかざした手が怪しく紫色に光ると、イエローは苦しみ始める。その姿をレッドは無表情で見つめていた。 「いっ…ぎ…っっ…あ…がっ」 歯を食いしばるイエロー。涙や鼻水や、口の端からは泡を吹き出し始める。 「あまり入れすぎるなよ。壊れてしまったら使い物にならなくなるからな」 「かしこまりました」 徐々に光が弱まる。 「…ぁ…あ………ぁ………」 黒目は上を向き、言葉と言葉の間が長くなる。 怪しく光っていた手の光は消え、レッドは手を下げる。 「パープル様、よろしくお願いします」 そう言ってレッドは一歩後ろに下がる。 ブルーやレッドの時と同じく、パープルがトドメを刺す。 「ああわかった。それと…ブラックにもやっておこう。薬でやったからな、いつ切れるかわからない。今はこうでも、すぐに切れて僕たちを襲ってくるかもしれないしな」 パープルは舌なめずりをして、あのポーズのまま動かないブラックの頬を撫でる。 「…ブルー、こいつはお前にやらせてやるよ」 「は。ご使命をいただけて大変光栄です」 「さて…じゃあイエロー…おまえもギレガレッド様の仲間になろうな」 レッドよりも強く濃い紫の光。それを手のひらに集中させる。パープルの首や腕、いたるところの血管が波打つように動き始める。そして眼は全てが黒くなる。 足元からもバチッ…バチッと音が鳴るくらいのオーラが放たれている。 そしてゆっくりと手をイエローの胸に当てる。 「あ…あ…ぁ…あ…あっ…が…が…っ」 イエローは強い痙攣を起こし震える。 「堕ちろ…堕ちろ…堕ちろ堕ちろ堕ちろ」 呪文のように何度も繰り返すパープル。それに合わせイエローの痙攣が強くなる。 そして当てた手をぐっと握ると、その手はずぶりとイエローの胸に突き刺さり、イエローの体はぐぅっと一気に反り返った。 それからあっという間にパープルの体に纏っていたオーラのようなものも、紫の光も全てイエローの中に入り込み、堕とす儀式は終わった。 「お疲れ様です。パープル様」 ゆっくりと手を引き抜き、汚れを払うかのように手をぴっぴと振る。 「ま、しばらくすれば定着するさ。少し張り切りすぎたかな」 「なにかありましたか?そんなに張り切りすぎる理由は」 「…ん?これで全員がギレガレッド様のものになると思えば…どうだ?自然と力が入ると思わないか?」 「…ああ…なるほど」 レッドは不気味に微笑む。そして自然と股間の膨らみも大きくなっていた。 横に目をやればブルーもブラックを堕とし終えたようで、首をごきごきと鳴らしていた。 「…ん…う」 「起きたかイエロー」 数分後、イエローが目を覚ます。固定されていた拘束具は全て外されていた。しかし堕ちた今は、暴れることもなく自分の体に定着したその力を味わっているようにも見える。 そしてパープルの姿を確認すると、すぐに椅子を降り、膝をつく。 「パープル様、私めを堕としていただきありがとうございます。また、ギレガレッド様のお仲間に加えていただきましたこと、光栄に思います」 「またおまえと一緒になれたことを僕も嬉しく思うよ」 *** 明かりの付いていない本部室。 大きなモニターの前、ぼんやりと紫に光るその前に、パープル、レッド、ブルー、ブラック、イエローの元ヒーロー5人は、片膝を着きモニターを見つめギレガレッドの言葉を待つ。 『…よくやったなパープル。さすが私が見込んだ男だ』 「は!ありがたきお言葉!」 『これでこの部隊は私のものとなった。しかしだ。まだこれでは足りぬ。もっと…もっと広げていかなくてはいけない。わかるな?』 「はい!ギレガレッド様!!」 今度は5人が声を揃え返事をする。 『力を使うことを躊躇うな。全力で堕とせ。全てを悪に染めろ』 「躊躇うことはせず、全てを悪に!全てをギレガレッド様のために!」 かつては町を守るために全力で戦っていたこのヒーロー部隊も、今では全てを悪に染め上げるために集うギレガレッドの奴隷となった。 この街が、この世界がギレガレッドの手中に収まるのも、そう遠い未来の話ではない。 おわり

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