MOTD 6話 (Pixiv Fanbox)
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「もう、ミカ先輩いくら電話しても出ないんだから。研究熱心なのはいいけど……」
なんて面倒な。ミカ先輩の様子を見に地下へ急ぐ。私はイレギュラーが嫌いだ、なぜかって? 面倒だからだ!!!!
「流石に二日間出てこないのは異常でしょ。勤務時間48時間行きそうじゃん。残業代たらふく摂取して贅沢の極みをするつもりか?」
会社の裏手にある工場施設。設備を整える機械やら素材やらがたくさん置いてあるところだ。ちなみに本社よりも3倍でかい。中は複雑な迷路のようになっていて、毎年何人かは迷子になっている。
当然だ。ここで作ってるのはシェルターの補強素材や、遠くに運ばれたエディの回収用のドローン。外敵対策課による研究機材などの精密機器。つまり、この第三シェルターの核となる部分なのだ。
「えーっと エレベーターはっと」
地下室の生き方も激しくめんどくさい。一度三階に登って隣の別棟へ連絡通路を渡り、エレベーターで一階まで降りて、そこから階段で三階分下らないといけないのだ。
「誰だこんなに巨大な施設を作ったのは」
と、心の中で悪態をついてみる。けどまあ、こういう施設は先代の皆様が私たちを守るために作ってある。
もちろん、ゾンビから。
このシェルターが出来てから100年以上経っているが、今までそれらしい大事件が起こることもなく、平和に過ごせているのもこの施設のおかげなのだ。
「ふー 走ったら暑くなった。季節は春とはいえ、充分に暖かい日もある。走ったら尚更だ。上着脱ぐか」
と言ってノースリーブ一枚になってみる。脱ぎすぎじゃね? って思うかもしれない。
けど誰もいないし、誰も言う人もいない。
この仕事は誇り高いインフラを整える仕事だが、ことルールに関してはまっっっっっっっっじで適当なのがいいのだ。
仕事さえきちんとやれば何も言われない。裸でいても仕事さえできていればなーんにも言われない。
極論であるけどそういうことだ。
「はあ靴も脱いじゃおっかな。どうせ胸が邪魔で見れな……また大きくなったっけ?」
前の健康診断でIcupだった。ミルクの貯蔵量も人の1.5倍ほど多かったけ。それよりも大きくなっているというと?
Jカップ爆誕である。ミカ先輩と同じ世界に立ってしまったのである。
まだ確証はないけどね。次の健康診断楽しみだなぁと、含み笑いを抱えながらさらに走る。
「さて、セキュリティキーを…………ん? レッドランプが光ってる?」
いつも軽快に開く扉が、警告音も出さずに固く閉ざされていた。電源供給の異常を感知しました。と警告が出ている。
「は? え? 停電? 補助電源は付いてるっぽいけど……」
緊急事態時には、ロックを手動で解除するやり方がある。が、この扉の先には何か不穏な気配を感じた。どこか、不気味な感覚だ。
「うぁ……鳥肌が」
何となくだが、この先には行かない方が良い気がする。
だってどこかおかしい。それなりに沢山の従業員がこの先で働いてるはずだが、人の気配をまるで感じないのである。
「でも、もしかして事故が起きて、みんな動けないのかも」
この奥にはミカ先輩がいる。
「危なくなったら……逃げればいいよね?」
横にある盤を開き、レバーをひねると、ガチャリという大きな音が鳴り響いた。両手で力一杯開き、赤いランプで照らされたいつものオフィスへと入り込んでいく。
「誰かーー!! 誰かいませんかーーー!!」
誰の返事も返ってこない。流石におかしい。
奥の方へと歩き、同僚の部屋を覗くと、机の奥の下で何かもそもそ動いているのがs見えた。ひょいとのぞいてみると、そこには上半身むき出しにされて、おっぱいを啜られている同僚の姿があった。
甘ったるい匂いが部屋に充満している。
目の前にゾンビがいる。生でみるのは初めてだ。
そして、その捕食も初めてみる。
「ひっっ」
理性と本能が同時に働いたのか、叫びそうな声を片方の手が必死に抑えた。ゾンビはこちらに気づいてないようで、ひたすら同僚の胸にしゃぶりついていた。
私が硬直していると。
「に、にげ……て」
食べられてる同僚が私に言う。
今目の前で行われていることは、ただの食事。それが怖くて人類はシェルターに逃げたし、今も全力で逃げている最中だ。
それが、その均衡が、こうも簡単に破られてしまったという事実が、段々と胸の奥から恐怖心という形で認識をし始めてしまった。
ハッとしてつい。
「きゃああああああああああああああああああ!!!!!」
大きな声をあげてしまった。
じゅるるじゅるると乳を啜っていたゾンビがゆっくりこっちに顔を向ける。人の様で人ではないその見た目と目が合い、恐怖でさらに体は硬直し、ペタリと床に尻餅をついてしまった。
悍ましい口元には真っ白な液体がこびりついており、口の中でくちゃくちゃと何かを噛む仕草を見せていた。まるで、次はお前だと言っているみたいだ。
逃げなければと理性が働こうとしているが、死が目の前に迫っているという事実は私の足を震え上がらせるには充分であり、体に力が入らなくなっている。
「あ……や……いやぁ」
同僚で満足しているのか、腹が減っているのか、ゾンビはこちらに何の反応もなく、食事に戻ってしまった。
必死に体を捩らせる彼女だが、ゾンビはお構いなしにひたすらミルクを貪り続ける。