SMメイド喫茶を利用する女の子【後編】 (Pixiv Fanbox)
Published:
2022-09-22 01:15:29
Edited:
2022-09-27 12:17:17
Imported:
2023-05
Content
「んー、口で説明するよりも実際に見てもらったほうが早いかも? ちょっと用意しようか」
言うや否や、日夏七奈は結衣だけを手招きで呼び出して、部屋の隅へと移動する。
そこにある埋め込み式のロッカーのような扉を専用の鍵で開けて、ひそひそと話をするように耳うちで結衣にコミュニケーションをとってから、中から幾つかの縄の束を取り出し、結衣に預けていく。
そして、紗希の目の前のテーブルの上に結衣が縄の束を適当に並べていき、あとからやってきた日夏七菜は、黒や赤などのSMチックな革製品や重そうな鎖を並べていく。
細いベルトに赤いプラスチックの穴空きボールが付いた道具は、どこかで見覚えがあるのだが、なんという名前だっただろうか。
他には、ハトメでしっかりとデコレーションされた首輪のようなものまである。
「じゃあ、紗希ちゃん。こっちに来て」
「は、はい……?」
「ほら、ぼーっと座ってないで、紗希ちゃんは参加するの決まってるんだからこっちに来る!」
「あっ、え……!?」
テーブルに並んでいるSMチックな道具に興味を示していると日夏七奈に背中の縄を掴まれて、半ば強制的に紗希は部屋の広いスペースに移動させられる。
「えと……っ、結局イベントって何するんですか?」
背中の縄を掴まれただけなのに、何一つ抵抗できなかったことに慌てながら、紗希はキョロキョロとテーブルの道具へ視線を送って身を縮めた。
日夏七奈はそのうちの一つである縄の束を手に取り、数メートルはあろう縄を紗希の目の前でほぐしていく。
「私が来るまでに縄抜け。できてなかったでしょ? だから、ちょっとだけお仕置きも兼ねて、紗希ちゃんの身体の尊厳を奪っちゃいます! 本当は後ろ手縛りだけで引き回すイベントなんだけど……紗希ちゃんにはもっと奴隷の気分を味わってもらいたいから、今回は特別に、サービスしちゃうね?」
「うわぁー、七奈先輩鬼畜だあ……!」
と言いながら、結衣はスマホのカメラを起動させて、動画撮影を始めていた。
「いや、スマホで撮影してないで、やめさせてよ!」
「えー、いいじゃん!? 紗希はコレからそこのテーブルにある道具でSMチックに拘束されて、七菜先輩の奴隷にされちゃうんでしょ? 記念に撮影しといてあげるから、いっぱい楽しんでよ!」
「ちょ、結衣っ!? マジで言ってんの!?」
「マジマジ」
ニヤニヤと笑っている結衣の様子からして、先ほどの耳うちのときにこの計画が決まったのだと紗希は悟った。
「じゃあ、まず紗希ちゃんには、股縄を追加してあげようかな? 腰に縄をかけるから、動かないでね——紗希ちゃん?」
「うぅ……ッ」
背後に回ってきた日夏七奈に肩の上から撫で下ろすように縛られた両腕をガッチリ掴まれ、耳元で名前を囁かれる。
たったそれだけで、ぞわぞわとした緊張感に全身が包まれ、紗希の身体は調教師に手綱を握られてしまった小動物のように動かせなくなってしまう。
いつの間にか、紗希の身体は何かしらの条件反射を身につけさせられてしまったらしい。
「紗希ってば、マジで七奈先輩の言うことは聞くんだね」
「う、うるさいなぁ、もう……ッ! バカッ! 裏切者!」
「はいはい、バカは黙って撮影してますよ〜、だ!」
顔の前に構えてたスマホの隙間から結衣はベーっと舌を出して、口にチャックする。
暫く撮影に集中するから、喋らないということみたいだ。
その間にも紗希のスカートがへその辺りまでたくし上げられ、それをお腹に抑えつけるように脇腹へ縄がかけられていく。
紗希の股間を隠す水色の下着がスカートから僅かに顔を覗きだしてしまってるが、入店時に下着の露出もありえることは説明されていたから、口を噤んで恥ずかしさを我慢するしかない。
「これから股の下に縄を通すからジッとしててね」
「うぅ……っ」
日夏七菜は紗希のウエストを絞った縄をT字にそらし、へその辺りで綺麗なY字を残しながら、パンツの上を通してお尻のほうへ移動させる。
「あ、あ……ッ」
その縄を腰の後ろで縄に引っ掛けて、パンツに割れ目を作り出す縄を調節するようにグイッと引っ張り、さらに紗希の股間へ縄を食い込ませてきた。
布ごしに縄が股間に擦れるたびに逃げ出したくなる。
「すぐに終わるから、そのまま我慢して」
「は、はい……っ、ん……ッ!?」
日夏七菜は、紗希が動かずジッと耐えている間に、太ももの側面に縄を這わしてから、鼠蹊部の片側に縄を通し、そこからお尻のほうへ縄を一周させて、太ももの側面の縄と絡ませる。
それを反対側の太ももと鼠頸部にも施していくから、紗希の股関節は縄の締め付けによって絞り出され、縄によって押しつぶされたスカートがはだけるように乱れていた。
そして、最後に残った縄尻を腰の後ろでウエストの縄に繋げてから、手首を吊り上げる背中の縄に結ばれる。
「まず一つ目の縄化粧の完成かな」
「うわ……ッ」
両手を後ろ手に緊縛されているだけでも不自由なのに、股間節まで縄で縛られてしまった現実に、手のひらに汗が滲んでくる。
しかも、コレは明らかに“そういう目的”を持った縛り方だ。
絞り出されたスカートの乱れ方が扇状的で、いやらしいくせに、紗希が少しでも下半身を動かすと、割れ目と鼠頸部に食い込んだ縄がグリグリと敏感なところに擦れてくるのだから、間違いない。
おまけに、そんないやらしい縄を股間に施したにも関わらず、背中に吊り上げられていただけの両腕に下方向へ引っ張る力も加えられてしまったから、背中にそろえた手首がさらに強く固定されて、両腕が微動だにしなくなった。
「じゃあ、次は太ももと膝を縛るよ」
コレだけでも紗希は充分に惨めな恥ずかしさを味わっているのだが、日夏七奈はさらに太ももへ新たな縄を巻きつけてきた。
紗希のしなやかな二本の足を閉じるように真横からぐるぐると縄を三周ほど掛けられ、柔肌をくすぐるように太ももの間に縄を通されたと思えば、ギュギュッと絞られ、太ももの肉を潰すように縄がギチリと食い込んでくる。
そこから、梯子をかけるように連続で、膝の上と膝の下にも同じように縄を掛けられたら紗希の両足は、内股に閉じたまま開けなくなってしまった。
一応、足首を縛られていないから、膝から先をかろうじて動かせるが、紗希が普通に歩くのはもう無理だろう。
「これで縄は終わりかな。次は、定番の首輪を着けてあげる」
日夏七奈はテーブルから新たな道具を手に取り、紗希の細首へ、ハトメ加工が施された黒くて重厚な革の首輪を巻き付けてくる。
「どう? 苦しくない?」
「は、はい……ッ、大丈夫です……ッ」
「じゃあ、このまま紗希ちゃんの首に嵌めちゃうね」
「ん……ッ」
紗希の呼吸を阻むような適度な締めつけを残しながら、うなじの下でバックルが止められ、そのとき、カチャリ、と追加で音が鳴った。紗希には見えていないが、簡単に外すことができないように日夏七菜が首輪のバックルに鍵をかけたのだ。
「はい、次はお待ちかねのボールギャグだよ。ちゃんと咥えられるようにお口は大きく開けてね?」
その後、間を置かず紗希の背後から口もとへ寄せられたのは、テーブルの上に並べられていた細いベルトに赤いプラスチックのボールが付いたボールギャグという道具。
「んむ……っ」
それが、紗希の熱した唇に触れながら、冷たいプラスチックの感触をぺたりと残して、まだかまだか、と口もとに留まる。
「ほら、紗希ちゃん。あ〜ん、して?」
経験したことのない歪な状況に、紗希がおもわず口をつぐんでいると唇にボールギャグがぐりぐりと押しつけられてくる。
その行為が意味するのは、このボールギャグを口に咥えない選択肢は選べないということだった。
「ほら、紗希ちゃん早く」
「——ッ」
強制的に、一方的に用意されたこんな状況で、早く。と耳元から急かされて口を開く子なんているのだろうか。
いや、そんな女の子なんかいるはずない。
こんなにも背徳的な赤いボールを唇に押しつけられて、口を開く子なんて、絶対にいない。
いるはずがない。
「あ……っ、んあ——」
けれども、紗希はゆっくりと口を開いていく。
どうして開いたのかはわからない。
わからないけれども——
気がつけば、赤いボールギャグが紗希の口腔へ入ってきて、それで——
「——んむッ」
プラスチックの硬い感触をカコッと奥歯で噛み締めるように深く咥え込んでしまったのは、事実だった。
「いい子だね。紗希ちゃん」
「あ、ッ……かはッ……あ」
ギュギュッと首の後ろでボールギャグのバックルが止められ、最後には首輪と同じように追加でカチャリと甲高い音が木霊する。首輪同様に日夏七菜はボールギャグにも鍵を施したのだ。
「うん、すごく似合ってて可愛いよ」
「あ、んぁ……っ、ンフ……んっ」
そのことに気づかず、紗希は頭をぽんぽん撫でられて、なぜか不思議と正しいことをした気分になり、頬を熱くさせていた。
けれども、紗希の口は赤いボールギャグに埋め尽くされ、開いた顎は閉じられない。
顔を左右に振ってもボールギャグはそこから落っこちることはないし、舌で押し出そうにも頬を割くベルトがそれを許してくれなかった。
「あとは、この鎖をつけてっと……」
そこへ、とどめを刺すように紗希の首輪のリングへ日夏七菜がジャラジャラと音を鳴らす重厚な鎖を繋げてしまう。
たったそれだけで、息苦しさを感じるしかなかった首輪にズッシリとした強烈な重みが加わって、身体が急に重くなる。
「コレで紗希ちゃんは、私の奴隷になっちゃったね? もう、私から逃げられないよ」
「――ッ!?」
耳元で囁かれる言葉。
それが無性にむず痒く感じて身を縮めると、紗希の全身へ、ゾクゾクとした何かが広がっていく。
次第に、縄で縛られた太ももが震えてきて、後ろ手に揃えた両手が行き場を探すように虚しく鳴く。
けれど、もう遅い。
今さら紗希が縄に抗っても意味はない。
紗希はもう、日夏七菜から逃げられない。
「さて……次は結衣ちゃんの番だけど、覚悟できてるかな?」
「え、あたし?」
「さっき言ったでしょ? 結衣ちゃんにも参加してほしい。って、そのために紗希ちゃんをお手本にしてあげたんだから」
日夏七菜はそう言いながら、身を縮めることしかできない紗希をソファーまで誘導して座らせる。
腰を下ろすときに、股間を縛める縄が割れ目に擦れて、腰がビクっと跳ねて、「んぁ」と変な声を零してしまったが、結衣には気づかれてないようだった。
「いや、あ、あたしはちょっと遠慮願いたいっていうか……、し、縛られるの怖いから、マジで無理っていうか、というか、マジ無理ですっごめんなさいっ許してください七菜先輩!」
「そっかぁ~、結衣ちゃんがそんなに嫌なら……今回は紗希ちゃんだけ連れて行っちゃうかなぁ――ということで、はい。紗希ちゃんやっぱり立って」
「――んッ!?」
首輪と繋がる鎖を日夏七菜にグイっと引かれたとき、紗希の脳裏に浮かんだのは、先ほどの会話で聞いていた地下牢のことだった。
だから、紗希は咄嗟に足に力を込めて、リードに抵抗してしまう。
「ほら、紗希ちゃん。嫌がってないで、早く立つ! 言うこと聞かないならお仕置きしちゃうよ?」
「ひ、ひあえふッ、ほんはほッ! ひあ――ッ、んぁ……ッ!?」
リードに抗うように紗希が首を大きく振って声を上げると、ボールギャグを咥えた口から唾液が勝手に溢れ出してきた。
「ン……ッ、ふぐ……ッ!」
咄嗟に天井を見上げるように紗希は顎を上げるけれど、溢れ出した涎は、顎を伝って糸を引くように首筋へと滴り、紗希の白いブラウスの胸元に黒い染みを作り出してしまう。
「あぁ~あ、赤ちゃんみたいに涎なんか垂らしちゃって……紗希ちゃんみっともないよ?」
「うわ、紗希マジでよだれ垂らしてる」
「ひ、ひがッ……!? ほえ、ふぁっへひふぁふへえッ……! ――んんッ!?」
正面からは指摘をされ、横からは追及される現状に、紗希は言い訳をするが、それが裏目に出てさらに頬を涎塗れにさせてくる。
「紗希、めっちゃエッチじゃん」
「ん……ッ、んぁ、んむぅ……ッ」
ボールギャグを咥えた口を紗希はもごもごと動かし、口の中に溜まってくる唾液をなんとか飲み込むが、次から次へと、口の中が唾液で満たされてしまう。
少し前まではなんともなかったのに、ボールギャグの存在を意識すればするほど唾液は溢れ出して紗希の顔を汚そうとしてくる。
それがもどかしくてたまらない。
「あ、んふ……ッ、んぅ……っ、んッ!」
だから、紗希は舌でボールを押し出して口から追い出そうとした。
しかし、頬を割くベルトのせいでボールは口の中に収まるように固定されており、何度試しても吐き出せない。
「――ッ」
せめて、両手が自由だったら……。と紗希は考えるが、後ろ手に縛られた両手はギチギチと鳴くだけ。
入店してから30分以上も紗希は両手を後ろに縛られているけれど、一向にこの縄は緩む気配はないし、それどころか紗希の細い身体のラインに馴染むように最初よりも肌に食い込んでしまっているような気もする。
なのに、紗希はこんな状態でイベントに参加しなくちゃならない。
「ほら、よだれ垂らしてないで、いい加減立ちなさい」
「ンンッ……」
命令されるように日夏七菜にグイっとリードが引かれ、紗希は涎でブラウスを汚しままソファーから立ち上がる。
厳重に手足を緊縛されて、自由を奪われてしまった紗希には、もうそうすることしかできなかった。
ボールギャグ越しに喋っても、ただ惨めな気持ちになるだけなのだ。
「転ばないようにゆっくり歩いてね」
「んふぅ……っ」
日夏七菜に首輪のリードを引かれ、紗希は最大限に気を遣った足取りで、鉄格子を抜ける。
すると、日夏七菜は牢屋の鉄格子を閉じて鍵を閉めてしまう。
「あ、あれ? 七菜先輩……? なんで、締めちゃうんですか? あたしまだ出てないんですけど」
紗希の後に続こうとしたスマホを構えてる結衣が置き去りにされたペットのように動揺した視線を日夏七菜へ向ける。
「入店時に説明があったでしょ? 店内における奴隷の自由行動は許されておりませんって。結衣ちゃんはイベントに参加してないから、そこから出してあげることはできません。紗希ちゃんのイベント参加が終わるまで牢屋でお留守番してること」
「そんなぁ……」
「お留守番が嫌なら、紗希ちゃんと同じように縛ってから連れて行ってあげるけど……?」
「お、お留守番してます……!」
「そういうと思った。さぁ、紗希ちゃんは私と一緒にお店の中をお散歩するよ」
「ふぁい……ッ」
日夏七菜にグイっとリードが引かれ、紗希は止めていた歩みを進める。
首からぶら下がるリードは半ば強引に引かれるけれど、その歩みはゆっくりだ。
いくら奴隷といえども、紗希はお店を利用するお客さんであることに変わりはない。
日夏七菜もそれをわかっていて、奴隷という立場を紗希が楽しめるように配慮してくれているのだろう。
とはいっても、身体中を縄で縛められた挙句に首輪から伸びるリードによって、強制的に歩かされるというものは非常に耐えがたいものだった。
紗希がリードに従って一歩ずつ前に進めば進むほど、牢屋の中に閉じ込められている他のお客さんの視界に紗希の惨めな姿が映り込むのだ。
正面の手錠だったり、後ろの手錠だったり、縄での後ろ手縛りだったり、お客さんによって拘束の度合いは様々だったけど、廊下に面する鉄格子の中には、必ず誰かしら20代くらいの女の子が一人か二人閉じ込められている。
ただ、紗希のようにボールギャグを咥えさせられ、厳重な緊縛を施されながら、首輪のリードに引かれて廊下を歩かされている人は誰もいなかった。
このようなあられもない姿になるほど拘束を施され、強制的に歩かされているのは、紗希しかいない。
だからだろう。
鉄格子越しに紗希へと向けられる彼女たちの視線は、哀れな生き物を敬うような眼差しだった。
他人から初めて向けられるその視線に、自分が如何におかしな行為をしてしまっているのか紗希は理解していく。
今の紗希は、本物の奴隷といわれても言い逃れできないほど奴隷らしい存在へと成り果てているのだ。
「――あぅ」
そうやって自分の立場を理解すればするほど、アソコへ食い込む股縄がいやらしい刺激を与えてきて、腰がビクっと跳ねる。
それを何度も繰り返してるうちにじわじわとアソコが湿ってきてるような気がしてきて、もう下を向くことさえもはばかられてしまう。
アソコが湿ってきてるのだとしたら、紗希はこの行為に性的な興奮を覚えてしまっていることになるのだ。
だから、できるだけ自分の現状を意識しないように努める。
「んぁ……ッ、あぅ……ッ」
しかし、日夏七菜に握られたリードは問答無用で紗希の首をグイグイと引っ張ってくるのだから、いやらしい。
「んふぅ……ッ、うぅ……ッ、んッ……」
一歩。
「ン……ッ」
二歩。
「んふぅ……っ」
三歩。
「ん、んぅ……」
リードに従って歩けば歩くほど、股縄がアソコに食い込み、口に咥えたボールギャグから涎が糸を引きながら垂れ落ちる。
無力に従うしかない自分が囚われの奴隷ではないことを主張しようと上半身を縛める縄の感触にわざと抗ったりするのだが、それが逆にギシギシと縄の存在感を誇示させてしまって、何もできない自らの立場を道具でしかない縄にさえも理解させられていく。
お前はもう、奴隷なのだ。と――
「ふふ、紗希ちゃん楽しんでるね……?」
「ひ、ひがッ……!? ン、んんッ……っ!」
日夏七菜に語りかけられた言葉に首を振って紗希は否定する。
だが、紗希はこの瞬間にも興奮を隠せないでいた。
縄に絞られた胸の先端部は硬く尖り、熱気が立ち込める肌からは汗が噴き出してしまい、縄の味を噛み締めながら歩く紗希の姿は艶かしい色合いを放っていたのだ。
「うんうん、そうやって自分の立場をいっぱい否定して、現実逃避するといいよ。紗希ちゃんが帰るまでには、普通の暮らしにもどれないくらい身も心も奴隷に落としてあげるから」
「あぅ、うぅ……ッ」
「ふふ、紗希ちゃんが自分からおねだりするようになるのが楽しみだなぁ~」
まるで全てわかっているかのような眼差しで微笑みかけられ、紗希は言葉を失う。
日夏七菜のいうとおり、こんなことをずっと続けていたら、紗希は本当に奴隷になってしまうだろう。
それも、ただの奴隷ではなく、日夏七菜専用の性奴隷に落とされてしまうに違いない。
「ん、あ……ッ、あ、あぅ……ッ」
それが嫌で否定しようにも、紗希に許されているのは、首に繋がるリードに従いながら小さな歩幅でよちよちと歩くことだけ。
ただ、それだけ。
「あ、なになに……七菜ちゃんこの子なに!? すっごく可愛い子じゃない? もしかして、この子が七菜ちゃんの言ってた子?」
延々と日夏七菜にリードが引かれ、お店の入り口へたどり着いたころ。ツインテールの可愛いメイドが近づいてきて、ジロジロと紗希を視線で舐めまわしながら、声を掛けてきた。
様子からして、日夏七菜とは仲が良さそうだった。
「違う違う。私の言ってた後輩は、イベントに参加したくないっていうから牢屋でお留守番してもらってるかな。この子はその友だちの紗希ちゃん。今は私のイジワルでイベントに強制参加させられてるの」
「うは、強制参加って、七菜ちゃん相変わらずでやば! ボールギャグで口も塞がれちゃったら、もう、逃げられないじゃん。おっつー」
「んんッ……!?」
ツインテールメイドにトントンと指先でボールギャグを突かれて、歯に振動が伝わってくる。
紗希は生意気な態度をとってくるツインテメイドに何か言い返してやりたい気持ちになるが、縄に縛められ、ボールギャグを噛まされているからあきらめた。
「ねぇねぇ、イベント参加中なら、アタシからこの子に玩具追加してあげてもいいの?」
「もちろん、おっけーだよ」
「んう……?」
目の前のメイド二人で交わされる会話は紗希についての話題なのに、なぜか当の本人を差し置いて勝手に話しが進んでいく。
玩具を追加とは、どういうことだろう。
「なら、定番だけど……コレとかどうかな?」
「うん、すっごくいいと思う」
ツインテールメイドがどこからか取り出してきたのは、親指ほどの大きさをした楕円形のピンク色の球体から電源コードが伸びた道具。
「ちょ~っと、ごめんねぇ」
「んむぅうッ!?」
それを両手にツインテールメイドは紗希の正面へとかがみこみ、そのピンクの球体を股間に食い込む縄の内側へ宛がって、パンツの食い込む割れ目の中心へ埋め込むとコードの先にあるリモコンのスイッチを押した。
ヴヴヴヴィィィィィィィィィイイイイイイッ。
「ひゃッ、はひほえッ!? ふほいへッ!? ンッ、んふぅう!?」
「ピンクローターだよ? 知らない?」
それが鈍い音を上げながら振動するのが当たり前と言わんばかりにツインテールメイドは紗希の反応を不思議そうに見つめつつ、コードの先にあるリモコンを紗希の太ももに這う縄に引っ掛けてしまう。
「ひぁ、あ、ひゃはッ、ほえッ!? は、はふひへふはひゃいッ!」
先ほどまでの縄の感触よりも過激な刺激が一番敏感なところに伝わってくるから、紗希は腰をくねくねと動かしてその球体をどこかへやろうとするのだが、振動する球体が縄とパンツの間をゴロゴロと転がるだけで、逆にアソコが刺激されてしまうだけだった。
「ダメダメ。このイベントで引き回しされる奴隷ちゃんは通りかかったアタシたちメイドから一個ずつ玩具が追加させられていくルールでしょ? 最低三つは玩具を追加されないと入口から自分の牢屋には戻されないんだから、アタシが一番最初だとして、あと二つ追加してもらうまではそのままだよ? って、アタシが一つ目にしては身につけてる縄の量が多いけど——もしかして」
「いや〜、紗希ちゃんの戸惑う姿が見たくて、つい……ね?」
人差し指を口に添えながら口角を上げて、ニコっと微笑みながら日夏七菜は何かのアイコンタクトをツインテールメイドに送る。
「うわ、かわいそうに――まぁ、そういうことならアタシは何も聞かなかったことにするから、いっぱいかわいがってあげたらいいんでない? 頑張ってね紗希ちゃん」
「んあッ、あ、ふあっへッ! はっへふひゃはいッ!」
紗希が呼び止めるのも虚しく、邪魔しちゃ悪いから。という感じでツインテールメイドは足早に立ち去ってしまう。
その間も、紗希の股間で振動する玩具はヴヴヴ、と鈍い音を上げながら動き続け、何とも言えない刺激を淡々と与えてくる。
先ほどのツインテールメイドの話しが本当なら、このピンクローターは、他のメイドからあと二つ玩具が追加されるまで外されない。
それはつまり、これからしばらくの間は、紗希のアソコはずっとこの玩具に刺激され続けるということになる。
そんなの、嫌に決まってる。
「いきなりピンクローターもらえるなんて運がよかったね? ——紗希ちゃん」
「ん、ンんっ、あ、ほへ、ふひへぇふはひゃい……ッ」
「ダ〜メ。あと二つ玩具追加してもらうまでは、そのままだよ。リリちゃんからイベントのルール教えてもらったでしょ?」
「んうぅ……っ、ンフ……ッ」
「あ~あ、いっぱい無理して喋るからお口の周りべたべたに汚しちゃって……あとで顔洗わないとね」
「んぁ、ぅ……っ、んぅ……ッ」
まるで、わがままを言ってる子どもみたいにあやされながら、口から溢れた唾液をハンカチで優しく拭われる。
だらしないぞ。と頭をぽんぽんと撫でられてしまったら、胸の奥底から惨めさが湧き上がってきて、紗希は頬を紅く染めることしかできなかった。
「お、七菜さーん! その子ってイベント参加中の子?」
そうしているうちに、どこからかポニーテールのメイドが現れる。
「そうそう、名前は紗希ちゃんっていうんだけれど、見ての通りすごいマゾなの」
「ンムウッ!?」
先ほどのツインテールメイドと同じように軽い世間話のような流れで、勝手に紗希の紹介が行われてしまう。
あらぬことを吹き込まれるがボールギャグのせいで否定もできない。
「ふ~ん、それなら私からはコレをプレゼントしてあげようかな?」
一通りの事情を聞き終えたポニテメイドは紗希の足もとへかがみこむとソックスの上から何か硬いものを足首にカチャリと嵌め込んできた。
右足、左足の両方を繋げるように装着されたそれは、首からぶら下がっている鎖と同じような銀色の光をキラキラと放っている足錠だった。
「あちこち拘束されちゃってて使えるのがこれくらいしかなくて、ごめんねー、マゾな奴隷ちゃんなのにこんなので満足できるかなぁー?」
「んうぅ……ッ」
満足も何も、もうこれ以上拘束を増やされても紗希はただ困惑することしかできない。
「紗希ちゃん。玩具もらったお礼は?」
「ンッ……、ふぁひぁほおひょはいはふ……ッ、ん」
頭を下げるように無理やりリードが引っ張られてて、紗希は服従するようにボールギャグ越しにお礼を伝える。
「うわ、なにこの子。めっちゃ可愛いっ! よかったら、次に来たときは私のこと指名してよ!」
「ダメだよ、紗希ちゃんは私が先に目をつけたんだから、ノノさんには渡しません!」
「えー、それは残念……まぁ、仕方ないっか!」
じゃあ、はい鍵。とポニテメイドは日夏七菜に足錠の鍵を手渡して、またね紗希ちゃん。と言い残して受付の奥へといなくなる。
「七奈っちー! リリちゃんから話聞いたよー! わたしも道具持ってきたから混ぜて混ぜてー!」
そこへ入れ替わるように三人目のメイドが現れる。
見た感じは元気いっぱいなショートカットのメイドだったが、その手にはアイマスクのような形状をしたベルトがぶら下がっていた。
紗希に装着するためにわざわざ持ってきたのだろうか。
「えへへー! これから紗希ちゃんに本革の目隠しつけちゃうからね〜! 目元が完全に覆われて何も見えなくなっちゃうから、七奈っちにリードしてもらうんだよー!?」
「んうぅ……っ、ンフ……ッ」
日夏七奈と軽く言葉を交わせてから、ショトカメイドは紗希の目元へ革の目隠しを当ててきて、頭の後ろで一つ目のベルトを固定する。
そして、アイマスクの上にある二つ目のベルトも適度な強さで締め上げ、僅かな隙間も許さないように紗希の顔に目隠しを密着させてきた。
「じゃ、七奈っちは紗希ちゃんのこといっぱい可愛がってあげてねー!」
「うぅ……」
「あはは、ルリちゃんは相変わらず元気いっぱいだね」
去っていくショトカメイドに苦笑いをしている日夏七奈へ視線を向けようとする紗希だったが、その視界はすでに暗闇一色に覆われ、何も見えない。
視覚を封じられてしまった紗希にわかるのは自分の身体を縛める拘束が、先ほどよりも肌に馴染んでしまっていることと、目隠しによって顔の不快感が増えてしまったことだけ。
「さて、無事に玩具を三つもらえたから、結衣ちゃんのいる牢屋へ帰ろうか?」
グイッ。
「——んむッ!?」
「ほら、ちゃんと自分の足で歩かないと転んじゃうよ?」
グイッ。
「んひッ、あ、ふぁッ!? ふぁっへ! ふぁっへふはひゃい……ッ!」
足が不自由に加え、目隠しのせいで何も見えないというのに、何度もリードが引っ張られる。
先ほど歩いた道のりを、今度は何も見えない視界のまま、ちょこちょこと動かすしかない足取りで戻れというらしい。
そんなの、いくらなんでもあんまりだ。
「いうこと聞かないとローターの振動強くしちゃうよ?」
「ひあッ! ひゃへへふッ!」
「じゃあ、頑張って歩く! ほら!」
「ンッ、んんッ……! あ、あふッ……! んむッ、ん……ッ!」
だが、紗希は従うしかない。
従わなければ、ローターの振動が今よりも強くなってしまう。
ただでさえ、鈍い振動音に混じって、股縄がグリグリとあそこを刺激してくるのに、これ以上の強い刺激を与えられるのはごめんだった。
「うぅ……んふぅ……ッ!」
牢屋から連れてこられたときのように、紗希はリードに誘われるように歩みを進める。
そのたびに紗希の腰は上下左右へと忙しなく動いて、艶かしいダンスを繰り広げてしまう。
「んんッ……!? ンッ……!」
それでも、頑張って前に歩くのだが、でもやっぱり、熱い何かがお腹の奥底でぐるぐると蠢きまわって、全身がムズムズしてくる。
「あ、ンァッ……あ、あぅ……っ!」
だから、刺激を堪えるようにお腹に力をこめて、湧き上がるむず痒さに抵抗しては足を止める。
けど、そうして歩みを止めてしまうとグイグイと理不尽にリードが引っ張られて前屈みになるように首が前方へ持っていかれる。
「あ、あふッ、んぅ……っ、ん……ッ!」
一定のスピードを維持させるように、前に歩くことを強制されて、何も見えない暗闇の中を紗希はただひたすらに歩く。
それがいつまでも、いつまでも続いていく。
数分か。数十分か。
目隠しをされただけで人はこんなにも時間間隔が狂ってしまうのだろうか。と紗希が疑問を抱いたころ。
「うわー、七菜ちゃんまだ紗希ちゃんのことイジめてんの? マジ鬼畜じゃん」
どこからか、ツインテメイドの声が聞こえてきた。
「だって、見てよ。紗希ちゃんすごい可愛いんだもん」
「まぁ、たしかにすごい可愛いけどさぁ……」
けど、なにか様子がおかしい。
どこか身を引いているような、そんな声音でツインテメイドは言葉を続ける。
「だからって入口のところぐるぐる歩かせるのは、さすがにヤバ過ぎない? 紗希ちゃん気づいてないんでしょ?」
「ふぇ……ッ?」
「あ~あ、バレちゃった」
引かれていたリードの動きが止まり、紗希も足を止める。
日夏七菜の反応からして、ツインテメイドの言っていることは本当らしく、紗希は目隠しをされてからずっと入口のホールをくるくると歩かされていたらしい。
どおりでいつになっても牢屋にたどり着かないはずだ。
「いい加減、牢屋に連れてってあげなよ。結衣ちゃんだっけ? あの子も暇そうにしてたよ?」
「あー、そうだ。結衣ちゃんもいたんだった」
てへ。と付け加えても問題ないような茶目っ気ぶりを残すように日夏七菜は紗希のリードを引っ張って「戻ろうか」と再び歩き出した。
「んっ……んむっ……ッ!?」
弄ばれている現状に紗希は怒るべきなのだろうが、手足を縛られ、ボールギャグを咥えているから、その気にもならない。
何も見えない紗希は、股間の刺激に耐えながらただ大人しくリードに従って、ちょこちょこと歩みを進める。
向かうのは結衣がいるであろう牢屋。
視界は黒一色で何も見えていない紗希が、本当にそこへ連れていかれるのか正直なところ謎だ。
だが、紗希は日夏七菜のあとについていくしかない。
「あ、七菜先輩! 戻ってくるの遅いですよー! アタシそろそろお手洗いに行きたいっていうか――って、紗希ヤバッ!? え? なに? え、え?」
そして、日夏七菜に引きずられながら、やっとの思いで紗希が牢屋の中に入ると結衣が突然パニックを起こし始めた。
「そんなに驚かなくても、ただお店の中を散歩してきただけだから大丈夫だよ」
「いや、それだけでそんなエッチな姿になっちゃうとか、逆に怖いんですけど!?」
縄の縛めもとい、ローターの振動に耐えながら牢屋まで歩いてきた紗希の身体は、火照りが収まらないくらい額から汗をかいて、びしょびしょに濡れていた。
おまけにボールギャグからあふれ出した涎によって、ブラウスの胸元は汚れに汚れ、ヴヴヴとモーター音を響かせるアソコからはメスの匂いを漂わせてしまっている。
「はーい、紗希ちゃんこっちだよー」
「うぅ……っ、んぅ……ッ、ん……ッ」
日夏七菜はそんな紗希をソファーへと座らせることなく、部屋の中心部へ移動させる。
そこで首輪のリードを手放し、紗希の背中にある結び目へ新た縄を繋ぎ合わせ、天井のリングへ紗希を吊り上げるように固定してしまう。
「さて、結衣ちゃんはお手洗いに行きたいんだっけ? 今連れていくから、紗希ちゃんはそのままお留守番しててね。あ、一人でも楽しめるようにローターは強くしておいてあげるから、いっぱい気持ちよくなれるよ」
「んむぅううッ!?」
日夏七菜は紗希の太ももに括りつけられているリモコンを一度手に取り、「強」と書かれたスイッチを操作する。
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ!
「ン!? ん~~ッ!?」
経験したことのない刺激におもわず首を大きく振って、苦しそうな声を漏らす紗希の太腿へリモコンを戻すと、日夏七菜は鉄格子へ向かいながら言った。
「じゃあ、お手洗い行こうか。結衣ちゃん」
「え? あの、紗希のことこのまま放置しちゃうんですか?」
「そうだよ? そのほうが紗希ちゃん楽しめるでしょ? ほら、結衣ちゃんはお手洗いあるんだから漏らしちゃう前に行くよ」
「あ、うわ……っ、紗希マジでごめんッ!」
「んあ、ふぁっへッ……ッ!? ――ンんッ!? ふぁっへえッ……!」
ガララッ、ガチャンッ。と鉄格子の扉が締められ、二人分の足音が遠ざかっていく。
突然独りぼっちにされたことに、紗希は戸惑うが、そんなことよりも、強くなってしまったモーター音のほうが問題だった。
つま先立ちになるように吊り上げられたせいで、股縄が変にアソコに食い込んでしまってるのだ。
それに加えて、ローターの振動まで強くなってしまったから、先ほどの何倍も敏感なところに縄が擦れてしまっている。
「~~~~ッ!?」
先ほどからずっと、与えられる快感を我慢していたのに。
これではもう我慢しきれない。
「あうッ、んぅうッ……!? んあッ、あ、ああッ!? かはッ、……あッ!?」
縄の締め付けと一緒に敏感なところをグリグリ擦り上げてくる刺激に、今まで以上に紗希の腰がビクッと跳ねて、お尻がプルっと震える。
そうやって身体が勝手に揺れ動いてるうちに、紗希の手足に変な力が加わってしまう。
――ギギギッ、ギチッ。
「ン、ンん~~~ッ!?」
身体に馴染んでいた縄の縛めが息を吹き返したかのように再び紗希の柔肌を締め上げ、肉だけでなく骨の髄までも圧迫するように全身を絞り上げてはミシミシと共鳴する。
「ひゃあっ、あッ! ンぁッ……あッ!? んんッ……ッ!?」
その縄の抱擁感に耐えきれず、全身の筋肉が悲鳴を上げるように震えだし、紗希の意に反してたちまち手足の力が弛緩する。
「ンぅ~~~ッ!? ん、んんッ……!?」
そこからコントロールを失った腰が、激しく前後に動いては、自ら股縄にアソコを擦りつけてしまう。
それが、何度も、何度も、繰り返される。
「んふぁッ!? あ、んああッ、あ、あ~~ッ!?」
――マズイ。
紗希がそう思ったとしても、股間を責め続けるローターの動きは止まらない。
それどころか、さらなる高みへといざなってくる。
「ンん〜〜〜〜ッ!? ンァッ!? あ、あぁあッ!?」
今まで以上の大きな快楽の波に襲われて、一層強く、腰が大きく上下に揺れた。
そこで一瞬だけ紗希の足腰の力が抜け落ちると、
「——あぐッ!?」
縄によって吊り上げられた身体が体重の重みでさらに締め上げられる。
「うぅ~~~ッ!?」
胸の上下から腹部までもありとあらゆる部位が縄によって締め上げられる苦しさにうめき声を上げる紗希。
もしもこのまま快楽の波に呑まれてしまったら、どうなるのか。
バランスを崩した身体の重みで全身が縄に締め上げられ、今以上の縄の刺激をその身に受けることになってしまう。
そうなってしまえば、きっと紗希は正常ではいられない。
「あ、あッ、ひあ……ッ!? ひゃめッ……! ふぁへかッ! ふぁえかはふへへ……ッ! ひふッ! ひっはううッ!」
だから、紗希はボールギャグから唾液を溢れさせながらも、無様な声を上げて助けを呼んだ。
戻ってきた日夏七菜や結衣にこれ以上の醜態を晒したくなかったのだ。
「ンん〜〜ッ! ンァッ、あ、あ〜〜ッ!? ——ングッ!? ん、あぅ〜〜ッ!」
されど、股間を責めるローターはただただひたすらに官能的な刺激を与えてくる。
どれだけ紗希が望まなくても、そのために生み出された玩具には関係なかった。
紗希のアソコに施された股縄も、紗希の敏感なところを刺激するローターも、自分に与えられた役目をただまっとうしているだけ。
「あぅ、ンンッ……!? ンァ、あ……あぅッ!? ンん〜〜ッ!?」
――止まらない。
――止まってくれない。
それをわかっているからこそ、与えられる刺激に紗希の身体は思わず腰を振って、更なる高みを求めていく。
「ひゃめえ……ッ! はへはあ……ッ! はふへッ、ん――ンん~~ッ!?」
頭の中が気持ちよさと苦しさでいっぱいになりながらも、この危機的状況から逃れようと理性だけが助けを求めて声を上げる。
しかし、刻一刻と迫るタイムリミットに対して、逃れる術は見つからない。
それなら、いっそのことすべてを受け入れてしまえばいい。
そう、紗希が思った途端――
「ンッ、ンンッ!? んあ、あ、あぅッ!? んぅ〜〜ッ!」
じわじわと快楽の波が狭まってきて、乱れていた波長がお腹の奥で一つへと重なり始めた。
それは着々と大きな塊に育ち、そして――
「ングッ、うぅうッ!? んぅッ、う、うぅうッ!? ん……ッ――ン~~~~~ッ!? ン……ッ、んあッ、ああぁ!? ああああああぁぁああああああああッ!?」
ボールギャグを力いっぱい噛みしめて、紗希は恥じらうこともなく、最大限の声を上げた。
思考が真っ新になり、瞬く間に多幸感に包まれる。
――絶頂。
誰に何かをされるわけでもなく、縄の縛めと玩具の刺激だけで紗希はイッてしまった。
同時に、身体中を縛める縄がその声を抑えつけるようにミシミシと鳴き喚き、弛緩していく紗希の身体をキツく抱擁する。
「……ンッ、~~~ッ、~~っ!? っ!? ~~~ッ!」
背中に束ねられた紗希の両手が虚しく蠢き、絶頂後に弛緩しきった足もとが、滑らすように床を蹴り上げ、まともに立つこともままならない。
ただぶらぶらと宙吊りになった身体がビクビクと小刻みに震える。
「あらら、紗希ちゃんすごいイキっぷりね」
「ひッ、あ、あぁあッ……!?」
ふいに耳元で囁かれる声は、紗希をこのように貶めた人物の声。
目隠しのせいで紗希は気づかなかったが、紗希が絶頂している間に日夏七菜と結衣がお手洗いから戻ってきたのだ。
「縄で縛られて、玩具だけでイッちゃうなんて、紗希ちゃんはやっぱりはしたない子だったのね」
「ひ、ひがッ……!」
背後から抱きかかえるように、日夏七菜は紗希の右胸に左手をはべらせ、さらには縄で強制的に閉じられた内ももに右手を這わせる。
「否定したってもう遅いよ? こんなにお股をびちょびちょに濡らしちゃって、紗希ちゃんのココすっごい悦んでる。だから、もう一回イカせてあげるね?」
そして、甘い艶を含ませながら、紗希の耳筋へ吐息を吹きかけて、敏感になった柔肌を愛撫してくる。
「あ、あぁあ……ッ!? ひゃ、ひゃめ……ッ! ンッ、ん~~~ッ!?」
イッたばかりの火照った身体が、新たに加わる刺激に反応してビクビクと震える。
抵抗しようにも、縛られた手足ではそれもままならず、ただ一方的にありとあらゆる部位を引っ掻き回されてしまう。
「んむぅううッ!? ん、んぅ~~ッ!」
ヴヴヴッ――ヴヴッ、ヴヴヴヴヴヴッ。
そこへ股間を責める振動も加わり、瞬く間に次の高みが迫ってきた。
乱れた呼吸がさらに浅くなり、ボールギャグを咥えた口から「あうあう」と艶のこもった喘ぎ声が勝手に漏れ出す。
その瞬間を日夏七菜が見逃すはずもなく。
「ほら、イっちゃえ」
「ンぁッ、あ……ッ!? あ、あぅッ……! うぅッ、ン、ンんッ~~ッ! ン~~~~~ッ!? あ、あぁあ……ッ!」
ギュッと股縄を締め上げられて、紗希は激しく腰を振りながら二度目の絶頂を迎えた。
多幸感に包まれた全身から汗が噴き出して、自分がどういう状態なのか、紗希はわからなくなる。
余韻に浸り続ける頭に浮かぶのは、ただただ気持ちいいという感情だけ。
このまま、ずっとこの快楽に浸っていたい。
もう、どうなったっていい。
そんな欲求に紗希が支配されようとしたころ。
「さて……これだけお楽しみを味わえたら十分だよね? 今日はこれくらいで終わりにしようか」
股間を責めていた玩具が止められ、紗希を縛めていた拘束が解かれていく。
足錠や太ももの縄を優先して解かれ、股縄も外される。
「はぅ……うぅ……ッ」
力なくうなだれる身体からスルスルと解かれていく縄。
その解放感に不思議な快感を見出してしまうのは、何故だろう。
イったばかりの紗希の身体は、拘束を解かれてなお、高揚感を消せずに縄の味に浸っていた。
「吊ってる縄も解くから、しっかり立っててね」
「ん……ッ」
吊り上げられていた縄から身体を下ろされて、ソファーまで誘導される。
そこで目隠しと首輪が外され、最後にボールギャグも外されていく。
「紗希、大丈夫?」
自由になった口の違和感と共に眩しさに視界をくらませていると、眉をひそめた結衣が声を掛けてきた。
「う、うん……大丈夫。てか、すごい気持ちよかった」
「そ、そうなんだ……?」
紗希の返事が予想外だったのか、結衣は困惑した表情を浮かべる。
それもそうだ。紗希だって、自分がそのような感想を持ったことに疑問を抱いていた。
紗希が経験したのは、明らかに普通の快楽とは全く違った嗜好の快楽だ。
例えるなら、男女のセックスで味わうような、お互いの存在を確かめ合って安心感から得る快楽ではなく、危機的状況に陥りながら、自分の醜態をさらしに晒して、恥辱の先にある苦しみを悦びへと変換するような歪んだ快楽だ。
SMプレイというものがどういうものなのか紗希にはわからないが、現在体験したプレイは普通のSMプレイとも違った嗜好の快楽だということは、なんとなくわかる。
問題なのは、そのようなプレイに紗希は快感を覚え、興奮してしまったことだった。
「紗希ちゃんは、こういうのにすっごい素質があるんだよ。普通の子なら絶対気持ちよくならないから、そこは保証するよ」
褒められているのか、貶されているのか。
残りの縄を解いていく日夏七菜にそう言われて、どう反応するべきか迷う紗希だったが、頭に浮かんだ言葉は、ただ一つ。
「……七菜さんって、マジで鬼畜ですよね」
「あはは、それ、誉め言葉だし」
それから紗希は自由になった身体でお店のスタッフルームに通され、そこにあるシャワールームで汗を流し、日夏七菜が用意してくれた衣類へと着替えてから、会計を済ました結衣と一緒に帰路についた。
ちなみに紗希の会計については、結衣が払ったというよりもお店側の割引がかさみにかさみ無料だったのは言うまでもない。
END