【先行公開】姉の家で妹が自縛していた件『後編』 (Pixiv Fanbox)
Published:
2022-04-18 15:48:34
Edited:
2022-07-28 08:18:23
Imported:
2022-08
Content
バタバタ走り回る音が聞こえる。
美帆は音の正体を眠気眼で追いかけるが、そもそもこの部屋に住んでいる住人は姉の真帆しかいない。
寝室から出ると社会人みたいなスーツに着替え終えた姉が、寝ぐせでぐしゃぐしゃになったショートボブの黒髪を洗面台のところで整えていた。その手つきは慌ただしく、最低限のセットアップしかしてないようだった。
どうしたのだろう?
昨晩は「明日から休みだよ」と嬉しそうに話していたのに。
「そんなに急いでどうしたの?」
姉に声を掛けるが、チラっと美帆を一瞥するだけで振り返ることもしてくれない。
マジで急いでいるみたいだ。
「なんかわかんないけど、昨日の仕事のデータが処理されてないだがなんだかで電話が来たからちょっと職場まで行ってくる!」
「えー、仕事休みだから一緒に遊びに行くって言ってたのに」
ドタキャンすぎて、愚痴が零れる。
今日は姉と遊びに出かける約束をしていたのだ。
「私も休暇なのに出勤なんてしたくないけど、仕方ないでしょ! 呼び出されちゃったんだから!」
「むぅ……ッ、アタシに当たらなくてもいいじゃんッ!」
ナチュラルメイクを施した顔を真っ赤にして振り向いた姉の表情が、実家で喚き散らす母親とそっくりに見えてそれに酷く腹が立った。
昨日は愚痴を話して胸の内がスッキリしていたのに、どこにぶつけていいかわからない怒りが、腹の底で渦巻く。
「あぁ……ごめん! とにかく家を空けるけど、冷蔵庫のものは自由に食べていいし、帰るなら忘れ物しないようにしてね! 玄関はオートロックで勝手に閉まるから!」
「わかったから……さっさと行けば?」
「うん、行ってくる!」
玄関の扉が閉まると姉の残り香を残して、ガチャッ、と鍵が自動で閉まった。
慌ただしい存在が一人いなくなるだけで、部屋の中に静寂が訪れる。
「てか、結局一人だし……」
家にいるならこの静寂が心地いいはずなのに、なぜか寂しく感じた。
寝汗も気持ち悪いし、本当最悪だ。
気分を入れ替えるために、洗面所で顔を洗ってうがいをする。
正面の鏡には明るく染めた髪をくしゃくしゃにしたまま不貞腐れた顔の女の子が映り込んでいた。
「はぁ~あ、直すのめんどくさ……トイレどこだっけ……?」
ぼりぼりと頭皮を掻きながらあくびをして、トイレに向かう。姉と一緒に出掛けられないのなら、セットする必要なんてない。
お手洗いを済まして居間に戻り、冷蔵庫に入ってた牛乳を拝借する。
「お姉ちゃん……アタシが寝たあとに昨日の片付け終わらせてたんだ」
今まで気づかなかったが、昨晩散らかしたはずのテーブルの上も台所も綺麗に整頓されていた。
それに、美帆はソファーで寝落ちしたはずだ。なのにベッドで眠っていたということは、寝ている美帆のことを姉が運んでくれたのだろう。
これが母親なら、自分で片づけをしなさい。と怒り出し、叩き起こされてから自力で寝室まで歩いていく光景が目に浮かぶ。
「やっぱ、お姉ちゃんと一緒に暮らしたいなぁ」
数年前。姉が家から出ていったとき、美帆はこの上なく泣いた。
どれくらい泣き続けたのか美帆自身も詳しくは覚えてはいないが、とにかく泣いた。
親に反抗的になって、クラスメイトたちにも当たりが強くなって、姉意外に頼れる人間が傍に一人もいないことに気づいたのはそのころだ。
小学四年生だった美帆にとって姉の存在の消失はとても大きなものだったのだ。
だから、当時姉と親しかった姉の同級生を利用して、姉が住んでいるこのマンションの住所を聞き出すに至った。にもかかわらず。
「お姉ちゃんに腹立てるとか、アタシ……バカじゃん」
反省。
その言葉だけが頭に浮かぶ。
「あぁ~なんでお姉ちゃんは、家から出て行っちゃったんだろう」
美帆が姉のところへやってきた目的は、家出した理由を知るためだ。
社会人になるから独り立ちした。と言われたらそれまでなのだが、もしも違う理由があるのなら、その理由次第では姉を実家に連れ戻すことも可能なのではないか。
そのことを直接姉に聞こうと思っていたのに、本人を目の前にすると口に出すことができなかった。
「やっぱ男、とか? いや、さすがにそれはなさそうだけど……絶対無い、とは言い切れないし……」
男がいるのなら、この部屋のどこかにそれらしいものの一つや二つは置いてありそうだが、洗面所にはコップも歯ブラシも一人分しかなかった。
どうやら、常に入り浸っているような男ではないらしい。ただ、使い捨ての歯ブラシは用意されていたから、たまにやってくるような男なのかもしれない。
けれども、室内を見渡す限り、男ものっぽいものは見当たらない。美帆の推測どおり、たまにしか来ない男なら、整理整頓する姉のことだ。部屋に誰かが来ても見えないように隠すだろう。
つまり、一番怪しいところは――
「クローゼットの中とか……?」
飲みかけのコップをテーブルに置いて、カーテンが閉めっぱなしの寝室へ足を運ぶ。
あれだけ慌ただしく行動していたのに、着替えを済ませた姉がクローゼットを開けっ放しにしてないのはおかしい。
顔を洗ったとき、洗面台には髪の毛が散らばったままになっていたから、昨日の夜に片づけていないところは乱雑になっているはずなのだ。
「うわ、中身スッカスカじゃん」
しかし、クローゼットは整理整頓どころか、ほとんど物が入っていなかった。美帆のクローゼットは、なんでもかんでも詰め込んでめちゃくちゃになっているというのに。ミニマリストか、ってくらい姉のクローゼットは最低限のものしかない。
よくよく考えてみれば、室内の家具だって、必要最低限なもの以外は置いてないし、ここまで何もないってことは、「男がいる」という美帆の推測は間違いな気がしてきた。
けど、なんか臭う。
学校でソフトボールの授業のときに嗅いだグローブと似たような革独特の匂いがする。
しかし、これといって革製品のようなものは見当たらない。
一体この匂いはどこから漂っているのだろうか。
「これ、なんだろ……?」
姿勢を崩して奥のほうを見てみると大きなダンボール箱があった。
「絶対なんか入ってる」
確信めいた好奇心を手に、美帆はダンボール箱を引き寄せる。
動かすだけで中身のものが擦れ合い、ガチャガチャと甲高い音が聞こえてきた。
「なに、これ……?」
蓋を開けると、紅色の光沢を設えた幅広なベルトにハトメ加工が施されている物がたくさん入っていた。金色の金具がキラキラと光を反射して何かのアクセサリーのようにも見える。
だが、それがどういう用途で使われるものなのか、美帆にはまったくわからなかった。
そこに入っている一冊の本を手に取るまでは。
「はじめての、せるふぼんでーじ……?」
ペラペラとめくっていくページに写っていたのは、姉と同じくらいの裸の女性が飼い犬のように首輪を嵌めて、鎖に手足を繋がれている写真だった。
手首や足首、胴体など、アクセサリーみたいな感じで装着してあるそれらは、ダンボール箱の中に入っている道具と極めて形が似ている。
「え……? じゃあこれ、拘束具ってこと?」
美帆の知識では、拘束具は悪いことをしてしまうような危ない人を捕らえるために使われるものだという認識だ。
だが、どうだろう。
この本に記載されている内容は、そういう目的としてではなく、もっと別の卑しい目的のために使う道具であるように書いてある。
例えるなら、正義のヒロインが悪者に捕まって、あんなことやこんなことをされてしまうような目的である。
「まさか、お姉ちゃん……これを使って、自分の身体を拘束してたってこと?」
姉がまだ実家にいたころは、魔法少女のアニメや漫画を美帆もよく見ていた。悪者にヒロインが囚われるシーンなどは、これからヒロインが何をされてしまうのか、と胸をドキドキさせていた覚えがある。
しかし、実際にその縛めを自らの身体に施されてみたい、と思ったことはなかった。
それも、この本に記されているような性的な欲求を満たすためだけに自分の身体を自ら危険な状態に拘束してしまうなど、美帆は考えたこともない。
だが、姉の真帆は違うらしい。
「こんな変態みたいなことするためにお姉ちゃんは家から出ていったの……?」
美帆の知っている姉とは結びつかない新たな事実に胸の奥がギュッ、と締めつけられる。
自分の姉がこのような道具を隠し持っているなどありえないのだ。
きっと、何かの間違いに違いない。
美帆のことを理解してくれる唯一の姉が、セルフボンデージなどという卑しい大人の遊びをしているわけがない。
そうやって、美帆は現実から目を背けようとするが、本のページをめくればめくるほど、ダンボール箱の中にあるたくさんの革製品が大人の遊びに興じる変態が身に着ける玩具にしか見えなくなってくる。
「お姉ちゃんが着けてた拘束具……」
美帆は物思いに革の枷を手に取った。
革枷を観察してみるとバックルに通すベルトの先端のところに擦れた跡があった。
そこから推測するに、一度ではなく、何度も何度も繰り返し、姉はセルフボンデージというプレイを堪能しているのだろう。
本に写っている囚われの女性が美帆の脳内に浮かび上がる姉の姿と重なっていく。
手に持っている革枷から、牛革の濃厚な匂いに混じって、昔から嗅ぎなれている姉の匂いが漂っているような気がしてきた。
「アタシも……着けてみよっかな」
セルフボンデージという奴が、姉を家出させる理由なのだとしたら、美帆もそれを知りたかった。
自分を捨ててまで遠くに行った姉の秘密の遊びを自分も体験してみたいのだ。
そうすればきっと、姉が家出した気持ちを理解できるんじゃないかと美帆は思った。
「今ならお姉ちゃんいないし、少しくらいなら……いいよね?」
美帆は誰に確認するでもなく、姉の匂いがするベッドの上に移動してから、本に記されている情報を元に、まずは手枷と足枷を自分の手足に装着してみることにした。
本の女性のように裸になるか迷ったが、試すのは少しだけだし姉から借りている部屋着のまま美帆は拘束具に手を伸ばす。
「大きいかもって思ったけど……ピッタリだ」
美帆が最初に着けたのは足枷だった。
足首にアンクレットを嵌めるのとはわけが違うが、要領はジーパンを履くときのウエストベルトと大して変わらないため、装着することは簡単にできてしまった。
幅広な牛革の質感が肌に柔らかく密着して、なんだか変な感じがする。
これを次は手首にも嵌めなくちゃいけない。
「やばっ……、なんかドキドキしてきた。胸も苦しいし……ッ! もしかしてお姉ちゃんもこうやって、ドキドキしてたのかな……?」
胸の高鳴りを意識した途端に、呼吸も乱れていることに気づく。
しかし、美帆はまだセルフボンデージを始めたばかりで、動きを制限する拘束にまで至っていない。
そのことに口角が勝手に緩んで、これまで体験したことがないほど身体がワクワクしていた。
「そっか、手枷は片手でつけなくちゃダメなんだ」
手首に革枷を嵌めるときは両手が使えなくて苦労する。
利き手のほうに着けるときは、あまりにも上手くいかなくて口を使って無理やりベルトを引っ張るほどだった。
革枷のベルトに擦り切れた跡があったのは、姉の真帆も、美帆と同じように口を使って拘束具のベルトを締めていたからなのかもしれない。
「えへへ」
自分の行動が姉の行動と重なっていると思うと何故か嬉しくなってきた。
姉が居なくなってからの数年間。美帆はずっと姉の後ろ姿を追うように生きてきた。
だが、美帆は姉のように器用な生き方ができるほど大人ではなくて、いつも失敗ばかりだった。
けれど、今は違う。
今の美帆は、姉と同じところにいる。
「お姉ちゃんが変態なら……アタシも変態じゃん……ッ!」
姉だけが知っている秘密に自分が触れている。
そのことを意識するだけで、身体がものすごく熱くなってきた。
風邪をひいたときとも、運動のやり過ぎで息を切らしたときとも違う。
今まで体験したことのない未知への恐怖が大きくなって、好奇心が暴走してしまったような、そんな感覚。
「……ッ」
次の道具へ伸ばした指先が震える。
美帆が手に取ったのは、大型犬に着けるような武骨で物々しい紅い革の首輪だった。
それを、未成熟な自分の細い首に遠慮なく巻きつけて、喉に触れる圧迫感を肌に感じながらベルトを締め上げる。
「……んッ」
姉の首に嵌っていた首輪を自分に嵌めている。
自分の身体が、姉の一部と一つになっていく。
その一体感が麻薬ように美帆の思考力を壊してくる。
不思議な高揚感に包まれながら、美帆が次に手に取ったのは、卓球の球くらいのゴムの塊。
「次は……このボールギャグ? ってやつを咥えればいいんだ?」
温もりを感じない無慈悲なゴムの塊を唇に当ててから、わずかに震える口を大きく開ける。
「あ……ッ、んむ、んっ……ふ」
姉も咥えていたはずのそれを優しく受け入れるように、ゆっくりと咥えこんで、頬を割くベルトをうなじのところで連結した。
「……ンッ」
身体は反射的にボールを吐き出そうとするが、ベルトで固定されたボールギャグは美帆の舌を圧迫しながら、口内に残り続ける。
その感触がたまらなく不便で、不自由で、すぐに外してしまいたいと思うけれど、
「ん、ンん……ぅぅ」
あとは手足の革枷をナスカンという金具で連結してしまえば、セルフボンデージの完成らしい。
「ン……ッ、んぐ」
だから美帆は、少しだけ我慢して、手を動かした。
足首の革枷にあるD型のリングに、それぞれのナスカンのフックをカチッ、カチッ、と引っ掛ける。
そして、右手首の枷は右足首の枷と繋ぎ、左手首の枷は左足首の枷と繋いでしまう。
このとき美帆はなんとなく足の内側で手首と足首を連結した。
そのほうが腕で胸を隠すから、恥ずかしくないと思ったのだ。
「ん、ンんッ……んふッ、ぅぅ」
おかげで足を伸ばそうにも腕が邪魔をして、膝を曲げた状態から姿勢を変えられない。
さらには両手が股の内側にあるせいで、股を強制的に開かなければならず、ガニ股のまま下手に体勢も変えられなかった。
「——んぅッ!?」
初めてのセルフボンデージにしては、かなり恥ずかしい格好をしているのではないか。と勘繰っていると口に咥えているボールギャグから唾液が溢れてきて、姉から借りてるシャツに染みを作ってしまう。
「んむ……ッ!?」
やばい、と思っても、顔を下に向けるのがダメみたいで、拘束された手足から顔を逸らすように上を向かなければ、何度でも唾液が顎を伝って垂れてくる。
「んふ……っ、んぐぅうッ……!」
それがなんだかひどく惨めに感じて、口に咥えているボールギャグを噛みちぎってやろうかと顎に力を加える。
「んン、んッ……!?」
けれど、弾力のある塊がギュっと歯に擦れるだけで、ますます涎が溢れるだけだった。
「ンんッ、ん、ンむぅッ、んッ!」
どうにか楽な姿勢ができないか、と模索しながら少しだけ背中に体重を預けたときだった。
「ング、んぅぅッ!?」
重心がズレたことで、背中を下にするように身体が仰向けに転がってしまい、美帆は元の姿勢に戻れなくなってしまった。
「ん……ッ、んぐ、んむぅ!」
揺籠のように身体を振るって姿勢を元に戻そうとするが、上下には全く動いてくれなくて、お尻を着けて座ることもできない。
仕方がないので、左右に勢いをつけて揺らし、姿勢を横向きに倒した。
「んむぅぅッ?」
けれど、そこからがまた地獄だった。
ガチャッ、ガチャガチャガチャッ。
革枷によって繋がれた手足が不自由なせいで、横を向いても身体は全然いうことを聞いてくれない。
赤ちゃんみたいに口から涎を溢れさせて、首の回りをぐちゃぐちゃに濡らしてしまうだけ。
それがすごく惨めで、最悪だった。
「……ッ!」
手足を拘束しているナスカンを外してしまえば、この問題は全て解決できる。
不自由な状態から解放されて、自由になった手でボールギャグを外してしまえば、赤ちゃんみたいに涎もたらさなくなる。
だが、この不自由な感覚を姉も体験していたのだと思うとすぐには終わらせたくなかった。
美帆は姉の知っている世界をもっと堪能していたかったのだ。
「——んぶッ!?」
だから、手足の拘束そのものに抗うように、無理やり全身に力を込めて、起きあがろうとした。
このまま惨めな姿を天井に晒し続けるのは嫌だったからだ。
しかし、それがダメだった。
「ンンッ!? んムゥッ!?」
うつ伏せにお尻を天井に高く突き上げ、涎を垂らし続ける顔をベッドのシーツに食い込ませたまま、美帆は動けなくなってしまった。
「ングッ!? んんッ! んぐうっ!」
どうにかしようとしても、股を開いた膝がシーツに引っ掛かり、伸び切った両腕に体重が乗ってしまうせいで、腰を捻ることすらできない。
「んッ! んむぅッ! んむぅうッ!?」
パニックになって革枷同士を繋いでいるナスカンを外しに掛かるが、指にうまく力が入らず、ナスカンのフックを開くこともできなかった。
これではDリングからナスカンを取り外すことができず、連結された革枷同士を解放することもできない。
それは、完全な詰みを意味していた。
「んむぅぅううう!?」
抜け出せなくなった。
そのことを理解しただけで、心臓が爆発するんじゃないかってくらい美帆の胸がバクバクと音を鳴らす。
――なんとかしなくちゃ。
そう思えば思うほど、身体は熱く火照ってきて、お腹の奥でムズムズした何かが疼いてくる。
「んふぅ……ッ!? むぅ……ッ、んむぅ……ッ!?」
だから、美帆は頑張って拘束から抜け出そうともがいた。
ガチャッ、ガチャガチャッ。
ガチャガチャガチャッ
しかし、体勢を変えるどころか、ますます呼吸が激しくなり、自分がどこで何をやってるのかもわからなくなってくる。
「ンぇあ……ッ!? ンぶぅうッ……!」
頭の中がじわじわと真っ白になってきて、全てがどうでもよくなってくる。
「んむぅ……ッ、んぐ……っ、むぅ……ッ!」
ベッドのシーツに埋もれながら、何もかも諦めて、お腹の奥に渦巻く情動をすべてを受け入れてしまいたい。
そう思った刹那だった。
「——ングゥッ!?」
瞳の奥でチカチカと光が明滅する。
「ンッ、んむぅッ……!? ングッ、ングぅうッ!?」
耳鳴りと共に太ももが激しく脈打って、温かいものが下腹部の奥からジュクジュクと溢れ出してきた。
「んはッ……あ、ぅぅ……ッ!」
たまらない解放感に、思考が霧散して、強い多幸感に包まれた全身から力が弛緩していく。
「ちょっと、美帆……っ!? 何やってんの?」
そのとき聞こえてきた姉の声が、幻聴だと思ってしまうほどに、美帆は初めての強い絶頂を迎えていた。
―――――――――――
「ちょっと、美帆……っ!? 何やってんの?」
マンションに帰宅して早々に、真帆の視界に入り込んできたのは、拘束された美帆の姿だった。
開け放たれたダンボール箱から、飛び出すように散乱した拘束具の数々。
それらの卑猥な道具に囲まれながら、ベッドの上でお尻を突き上げて、ガチャガチャと音を鳴らしている。
「んむぅぅ……ッ、ん……ッ、ぅぅ」
スウェットのクロッチには黒い染みが出来上がり、性欲にまみれた甘い吐息を漏らす美帆の姿は、初めて自縛したときの自分を思い出す。
真帆も初めてのときは想像を超える興奮に何も考えられないまま絶頂してしまったのだ。
それを妹が再現してくるとは不意打ちにもほどがある。
家出のことにしろ、自縛のことにしろ、揃いも揃って同じ姉妹なのだと理解させられる。
「んッ、んふぅうッ!? んぐッ、んぅうう!」
快楽の余韻から解放されて、真帆の存在に気づいた美帆が両眉を大きく吊り上げて、ガチャガチャ、ガチャガチャと手足に力を込めて暴れ出した。
どうやら、拘束から抜け出そうとしているらしい。
「んむぅ……ッ! んぐぅっ……!」
しかし、身体の下敷きにされた両腕がそこから移動することはなく、背後に突き上げたお尻をぷりぷり動かすだけで、一向に姿勢が変わることはなかった。
「ンぉ……ッ!? む、ンむぶっ……!?」
それでも美帆は、ボールギャグから涎を溢れさせてでも、藻掻き続ける。
なぜ拘束から抜け出さないのか、真帆は不思議だった。
手足の紅い革枷を繋いでいるのは南京錠ではなくナスカンだ。
フックのレバーを引っ張って、Dリングから外すだけで連結された手足は自由になる。
なのに、耳たぶを紅く染めて、全身に力を込めるように拘束に抗っている美帆の指先はナスカンに触れるだけで、フックのレバーに指が伸びることはなかった。
「……バカにもほどがあるでしょ」
その様子から真帆はすべてを察した。
何かの加減で、身体が雁字搦めに嵌り込み、美帆は拘束から抜け出せなくなっているらしい。
自縛プレイをするときに一番大切なのは安全性の確認だ。
それを怠ると自ら施した拘束から抜け出せなくなり、「嵌り」に陥ったまま死んでしまうことだってあり得る。
そのことを意識せず、美帆は自縛してしまったようだ。
哀れな姿を晒す妹にため息を吐きながら、真帆はベッドへ歩み寄る。
「んぐッ……ッ、ん、ンぶぅ……ッ!?」
しかし、近づこうとする真帆に対して、抵抗を示すように美帆は激しく暴れ出した。
拘束された自分の身体を守るように、真帆の助けを拒絶してきたのだ。
「――――」
だから真帆は、触れようとした手を止めて。
ガチャガチャッ、ガチャガチャッ。
必死に手足を動かして、拘束から抜け出そうとしている美帆のことをジッと見つめる。
「ンむッ!? ンぶぅッ!? んぐぅうッ!」
顔を真っ赤に染めて、涙を流して、美帆は何度も首を横に振る。
まるで、自分の内に宿っていく感情を拒絶するように繰り返す。
「……もしかして、私に見られて気持ちよくなってんの?」
「んぐうッ!? んぐ……ッ!? ンむッ、ん……ッ、んむぅう!?」
真帆の問いに大きく首を左右に振って美帆は否定するが、それは肯定の裏返しにしか見えない。
「……ふ~ん、なるほどね。クローゼットの奥に隠しておいた私の拘束具使ってオナニーしてるくらいだもんね……そりゃ、私に見られたら気持ちよくなっちゃうか」
「んむぅうッ!? んぐぅうッ! んがぅうう!」
見開いた黒い瞳に涙を浮かべて、違う、違う。と美帆が叫ぶ。
その瞳は本当に助けを求めるように、真帆を見つめなおすが、その胸の内にある真実はもっと邪でいやらしいものに違いない。
「自分で自分のこと拘束して、動けなくなって、お股いっぱい濡らしちゃってさ……美帆ってこんなに悪い子だったっけ?」
「ん、ンんッ!?」
うつ伏せのまま熱く火照った小さな身体をひっくり返すように起こすと大股開きに拘束された妹の恥ずかしい姿がベッドの上に転がった。
「しかも、赤ちゃんみたいに口からいっぱいよだれも垂らして、ペットみたいに首輪なんか嵌めちゃってさ、中学生のくせに自分がどれだけえっちな格好してるかわかってる?」
「ン、んぅううッ!?」
涙でぐちょぐちょになった幼い顔にはボールギャグが食いこみ、何かを期待するようにわななく唇からは甘い吐息と一緒に涎が滴り落ちる。
ここにいる美帆は、もう小さかったころの無垢な妹ではない。
被虐的な願望を持つ、一人の女の子でしかなかった。
それなら、彼女の願いが叶うように姉としてリードしてあげなくてはならない。
「ねぇ、美帆。お姉ちゃんの家でえっちなことしちゃう悪い子にはお仕置きが必要だと思わない?」
「んむぅうッ!?」
「怖がらなくても大丈夫。今よりもっと動けなくなるだけだから、ね?」
ベッドの下から銀色のスプレッドバー(鉄の棒の左右の先端にリングがついている)を取り出し、ダンボール箱の中に入っている南京錠も用意する。
「んむッ……!? んぐぅッ……!?」
手足の枷をガチャガチャ鳴らしている美帆を抑え込んでから、スプレッドバーの左右の先端それぞれに手足の革枷をナスカンと入れ替えるように南京錠で連結してしまう。
「んぐぅうううッ!? ンぶぅううッ!?」
――ガチャッ、ガチャガチャガチャッ。
たった一本の棒切れを軸にするだけで、美帆の身体は先ほどの何倍も惨めな姿に成り果てる。
ナスカンであれば、指先を使ってフックをはずすことで簡単に拘束から抜け出せるが、南京錠の施錠によって連結された場合はそうはいかない。
もし、美帆がこの拘束から抜け出せるとするならば、南京錠の鍵を開けるか、手枷のベルトを緩めるしかない。
だが、スプレッドバーによって左右それぞれに拘束された手では、お互いの手枷のベルトに指は届かないだろう。
そして、南京錠を開けるための鍵は美帆の手元にはない。
つまり、美帆が自力でこの拘束から抜け出すことは不可能だ。
「ん、ンんッ!? んむぅうッ!? んぐぅうッ!?」
それでも美帆は口から涎を溢れさせながら、拘束に抗うように手足をガチャガチャと鳴らす。
たとえそれが無意味だとしても、美帆にはそうすることしかできないのだ。
「次は私の大好きな目隠しも着けてあげるね」
ゴーグルのように幅広な革帯を設えた目隠しを手に取り、真帆は大きく股を開いたまま肩を丸めるしかない美帆の背後にまわる。
「ンむッ!? ンぶぅッ!? んぐぅうッ!」
「暴れても逃げられないよ?」
「んむぅうッ!?」
不自由な身体を揺らして逃げようとしている美帆の細い身体を後ろからギュっと抱きしめる。
たったそれだけのことでも、手足を拘束された美帆は真帆の腕の中から逃げられない。
それでも諦めようとしない美帆の黒い瞳に目隠しを被せていく。
「んぐぅうッ!? んむぅううッ!?」
しかし、顎を上げたり下げたり、さらには首をイヤイヤと横に振って、美帆は必死に抵抗してきた。
これだとうまく装着できない。
「そんなに目隠しされるの嫌?」
「んむぅ……っ!? ん、んぅッ……! んうぅうッ!」
真帆の問いかけに動きを止めて、美帆は全力で頷いて肯定する。
そんな妹が可愛くて、もっと意地悪してあげたくなってしまった。
「ごめん、何言ってるのかわかんないから、着けちゃうね」
「ンぶぅうッ!?」
美帆が動きを止めた隙を逃さずに、涙を浮かべる瞳へ目隠しを装着する。
手足の革枷と同じ、本革製の紅い目隠しが妹の幼い顔を侵食してる様が実に背徳的だった。
「すごく似合ってるよ、美帆」
「ん……ッ、んむぅッ……!?」
耳元で囁く真帆の言葉に、美帆は拘束された細い身体を小動物のように縮こませるが、身体はしっかりと熱を帯びて甘い吐息がボールギャグ越しに零れてくる。
身を縮めて、どれだけ嫌がっているようなそぶりを見せていても、美帆が新たな刺激を求めてしまっているのがわかる。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だって、お姉ちゃんが気持ち良くしてあげるから心配ないよ」
「んふッ……、ん……ッ!?」
緊張をほぐしてあげるように首筋から肩、それから腕にかけて優しく撫でてやる。
「んぅ……ッ!? んッ!?」
ぎこちなさそうに身体を委縮させてはいるものの、大きな悲鳴をあげることなく、美帆はその愛撫を受け入れてくれていた。
「ね? 怖くないよ、気持ちいいだけ」
今度は膝先から太ももへと指を流し、下腹部を通って、美帆の衣服の中へ手を潜り込ませる。
そして、スウェットのシャツをめくり上げた。
「んむぅうッ……!?」
産毛を感じさせない白く透き通るつるつるな肌。
その柔肌をまさぐりながら、胸の上に垂れ下がる二つの乳袋へと手を伸ばしていく。
「んふぅ……ッ!?」
胸に触れた真帆の手がくすぐったいのか、背筋をビクっと跳ねさせて美帆は甘い吐息を漏らした。
だが、真帆はそのまま美帆の胸の中心部にある肉豆を摘まむように乳輪へ指を這わせる。
そして、しこり勃つ乳首を指先で転がすようにこねくり回す。
くりくり、くりくり。
「ンぁッ……ッ!? ンぶッ……!? んむぅうッ!?」
身体を縮こませたり、揺すったり、と美帆が抵抗してくるが、些細なものだった。
その程度の動きでは、真帆の責めは止まらない。
優しく、ねっとり、執拗に、硬くなっている乳首を刺激し続ける。
くりくり、くりくり。
「ンふぇッ……!? んぐ……ッ、ん!?」
「乳首触られて気持ちいい……?」
「んぐ……ッ、んむぅう……ッ!?」
気持ちよくない。と言わんばかりに美帆は首を横に振る。
「じゃあ、触るのやめる?」
嫌ならしょうがない。と真帆は手を止めようとするが、
「んッ……!? んむぅッ……!」
美帆はその問いにも首を横に振る。
「気持ちいくないけど、触ってほしいの?」
「ン……ッ」
「ふ~ん、気持ちよくないけど触ってほしいんだあ? じゃあ、美帆が気持ちよくなるまでずっと触っててあげようか?」
「んむぅうッ……!?」
くりくり、くりくり。
くりくり、くりくり。
「ンふぅッ……、んぐぅッ……ッ!」
みぞおちの辺りをヒクヒク動かして、乳首の刺激を我慢するように甘い吐息が漏れてくる。
ガチャッ、ガチャガチャッ。
それと一緒に手足の拘束にも抗って、一方的な責めを受け入れるしかない状況に「うぐぅっ」と喉から変な声まで出したりする。
けれども、真帆は乳首を責める指を止めない。
くりくり、くりくり。
「ン、んむッ……、んぐッ……ぅぅッ!?」
くりくり、くりくり。
「んむッ……んッ、んぐぅううッ……!」
くりくりくりくりッ。
「ンぇあ……ッ!? ンぉ……っ、ぉん……ッ、ンンんッ!?」
美帆の腰がビクビクと跳ねるように動き出し、先ほどよりも声が大きくなっていく。
縮こまっていた美帆の細い身体が前後に大きく揺れ出して、激しく波打って、そして。
「はい、終わり」
「んむぅぅううッ!?」
そこで美帆の乳首を責めるのをやめる。
手足をガチャガチャと鳴らして、美帆は何かを欲しがるように声を上げてくる。
「どうしたの? もっと気持ちよくしてほしかった?」
「……んッ、ンん!」
先ほどとは打って変わって、美帆は大きく頷いてきた。
「そっか、それなら欲しがりさんの美帆のためにもっと気持ちいいところ触ってあげるね」
「んむぅうッ……!?」
美帆のみぞおちからへその上を通り、黒い染みを作っているズボンの中――美帆の秘裂――へ真帆は右手を潜り込ませる。
そこは真帆の想像以上にびちょびちょになっていた。
指先が触れた途端ヌメヌメの愛液が絡みつき、ぬりゅんと滑り込むようにクリトリスの場所まで誘導してくれるほどに。
「ほら、ココ。ここが女の子の一番気持ちいいところなんだよ? お姉ちゃんの指が触れてるところわかる?」
そのまま円を描くようにクリトリスに指先をはべらせて、被さったままの包皮を優しく剥いてやる。
「んふッ……、ン、んむぅ……っ!?」
剥き出しになる神経を硬くさせてた美帆の細い腰がビクビクッ、と跳ねる。
「ここをスリスリ擦られると、身体中が熱くなって、気持ちよくなっちゃうの。試してあげるね?」
すりすり、すりすり。
「あふっ!? あ、うぅんッ……!? んぶぅ……ッ!?」
すりすり、すりすり。
「あぇおっ!? あぇっ……ッ!? あ、あぅああッ!?」
ガチャ、ガチャガチャガチャッ。
「どう? すごいでしょ?」
美帆は手足をガチャガチャならして、首を横に振りながら細い身体を前後に揺する。
「ぶふぅ……ッ、ぅぅ……!? んぶぅ……ッ、ぅぅ!」
そして、お腹を激しく上下させながら、汗で蒸した鼻息を漏らして、「ぶふぅ、ぶふぅ」と必死に呼吸を繰り返す。
想像以上の刺激に困惑しているようだった。
しかし、真帆は指を止めずに動かした。
すりすり、すりすり。
「ンぉ……ぉッ!? んぶ……む、ンぶッ!?」
すりすり、すりすり。
「ンぶぅっ!? ぶふぅ……ッ!? ンぶぇッ!?」
すりすりすりすり。
「ンあっ!? ぁぐッ!? ぅぅ……んぶぅあああッ!?」
先ほどまでとは比べ物にならないほどのメス声をあげて、美帆の細い身体が大きく跳ねる。
秘裂の奥にある穴からぐちゅぐちゅと愛液がにじみ出て、真帆の指を濡らしてくるから快楽を得ているのはたしかだ。
なのに、美帆は真帆の愛撫から逃げ出そうとする。そんなの許すはずがない。
「まだ始まったばかりだよ?」
真帆は美帆の脇の下から自分の足をくぐらせて、内ももを強制的に抑えつけるようにホールドする。
「えぶぉっ!? ぶふ……ンぶぇっ!? ぇおおお、お、お、ぉおッ!?」
「いっぱい気持ちよくなろうね、美帆」
声を上げながら首を横に振る美帆のことなど意に介さず、期待に満ち溢れるように大きくなったクリトリスに真帆は再び指先をはべらせた。
すりすり、すりすり。
「ンぉ……ぉおッ!? おぅうッ……!? うぶぅうッ!?」
その指先の動きはとても優しく、丁寧に。
最愛の妹を愛でるように。
無償の愛を捧げるように。
ただただ快楽を与えるためだけに動かし続ける。
すりすり、すりすり。
すりすり、すりすり。
「ンぇあ……ッ!? あ、うぅんッ!? んぉ、おごッ!? おぅううッ!?」
それを、何度も。何度も繰り返す。
すりすり、すりすり。
すりすり、すりすり。
永遠ともいえるような優しい愛撫を永久に続けていく。
「ンぇあ、ああ、あぇぇええッ!? あぅ、んぁぁあ……ッ!? んぎ、んひぃ、んぐぅぅぅうッ!?」
その愛情を受け止めきれずにケモノのような声をあげながら、妹の美帆が激しく絶頂する。
しかし、真帆の指は止まらない。
止めることはしない。
すりすり、すりすり。
すりすり、すりすり。
「ンがぁッ、あ、あ……あぎぃいいッ!? ンぇあ、ああ、あぇああああ……ぁぎッ、んぎ、んぐぅぅううッ!?」
手に吹きかかる愛液を糧に、真帆はただ一心に、妹への愛を与え続けた。
―――――――――――――――――――――――――――
数時間後。
「ホンッ、ト! 死ぬかと思ったんだから! もう、絶対やらないでよ! バカ! バカお姉ちゃん!」
「ごめんごめん、美帆があまりにも気持ちよさそうだったから、つい……」
「ついってなにさあ! そういうやり過ぎるところ昔と変わってないんだからあ!」
「はい……面目ございません」
あれから真帆の長い長い愛撫を受けて、絶頂を繰り返し続けた美帆は暫く動けなくなっていた。
色んな体液でぐちょぐちょになった妹の美帆から拘束具を外してやり、お風呂の用意をしつつ、美帆が動けるようになるまで、待ち続けた。
勢いのまま妹の身体をメチャクチャにいじり倒してしまったから、絶交されるのではないかと考えていた真帆だったがそんなことにはならず、復活した美帆に「お風呂で背中流して」と言われ、一緒にお風呂に入ることになったのだ。
「しかも、結局お出かけできなかったし……ッ! ホント、最悪!」
「うぅ~~、だから、ごめんってば~!」
色々と不満を垂れ流す美帆に真帆はとにかく謝る。
一般常識的に考えて、真帆のやったことはかなりグレーゾーンだ。
美帆が一言でも警察に「姉に犯されました」と通報すれば真帆は逮捕されるだろう。
姉妹だろうと何だろうと未成年に淫行を働いたのだから、それくらいの罰はあってしかるべきだ。と真帆自身も思っている。
なのに美帆は、
「まぁ、まぁその……手も、足も、口も……ッ、全部拘束されてエッチなことされて、さ……気持ちよくなっちゃったのは、その……すごいドキドキしたし、怖くて、不安で、めっちゃパニクったけど……! でも……その……っ、お姉ちゃんだから許してあげる……!」
などと言い放っているところ全く懲りていないらしい。
これには、真帆も自分の妹の頭が大丈夫かどうか不安になる。
「うん、ありがと」
でも、可愛いからいいか。と許してしまう。
「それに、お姉ちゃんの家出した理由もわかったし」
「ん? 私が家出した理由って美帆に話したっけ?」
たしか美帆には家出の理由は伝えていないはずだ。
「え、セルフボンデージが理由じゃないの?」
「いや、さすがにセルフボンデージを理由に家出はしないでしょ!」
違う。といえば嘘になるのかもしれないが、真帆が家出をした事実とは掛け離れている理由に突っ込んでしまう。
「じゃあ、どうしてお姉ちゃんは家出したの?」
美帆から好奇心を浮かべた瞳を向けられるが、真帆が家出したのは大した理由ではない。
だが、美帆が知りたいのなら教えてあげるべきなのだろう。
「私が家出したのは、一人になりたかったからだよ。自分の身の回りにあるもの全部なくなったら、自分がどうなるのか知りたくて家出したの。まぁ、その結果。セルフボンデージっていうアブノーマルな趣味に目覚めちゃったのは言うまでもないんだけどね」
家出したのは真帆の我がままでしかない。
寂しい想いをさせた美帆には悪いが、ただそれだけのことなのだ。
「そうだったんだ……? じゃあお姉ちゃんはアタシのこと嫌いになったから出ていったわけじゃないんだね」
「ん、なんで私が美帆のこと嫌いになるの? こんなに可愛いのに」
バカみたいなことを言いだす無防備な細い身体に真帆は腕を伸ばす。
「あ、ぅうんッ!? ちょ、ちょっと!? 急に抱き着かないでよ!」
「え~、小っちゃいときはいっぱい抱っこしてあげたんだし、少しくらいいいでしょ?」
美帆が寂しそうな顔をするときは、こうやって何度も抱きしめてあげていたっけ。
あの頃を思い出すように、つるつるの柔肌の上にそっと手を滑らせるだけで、
「手が! 手がなんかやらしいの!」
美帆は声を上げて抵抗を示す。
「ちゃんと優しくしてあげるから、ね? 許して?」
その反応が面白くて、真帆はぎゅっと妹を抱きしめる。
「うぅ~ッ! 次やるときはあたしがお姉ちゃんを責める番だから! 絶対アタシが責めるから!」
「それ本気?」
「あ、あたしが責めるっていったら責めるの!」
胸の中で顔を見上げながら、真帆に向けてくる美帆のまなざしは本物で、マジで真帆のことを気持ちよくしたいらしい。
それがまた無償に可愛くて、
「美帆がそこまでいうならそのうちね」
「あっ、そこ……ッ!? だ、ダメぇ……ッ!? そこダメだってばあ!!」
それからのことは語るまでもない。
END