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 数日後。 「ねぇ、光瑠ちゃん。来週の金曜日に例のホテル予約してるんだけれど、一緒にどうかな?」 「ま、また行くの?」 「そうだよ。まぁ、減るもんじゃないしいいでしょー?」  私と璃音は以前利用した喫茶店で放課後の時間を共にしていた。   「いや、でも、さすがにあれはちょっと……」 「遠慮しちゃってー、ノリノリだったくせにー」 「う、うっさい……」  結局、私はヒトイヌとして飼い殺しにされることはなく、ホテルの利用時間が終わるころに解放された。  一泊二日の宿泊だったために、丸一日はヒトイヌのままの生活を余儀なくされたけれど、常にカエデさんがそばについて健康管理を怠らなかったから命の危険に陥るようなこともなかった。  カエデさんの説明ぶりからして健康管理を怠らなければ一生ヒトイヌのままあのホテルで飼い殺すことが出来そうな感じがしたけれど、その話は置いておこう。    「光瑠ちゃんが来ないならアタシ一人で行くし、行きたくなったら教えてよ? 一緒に行くから」 「わかってるから、言わなくていいし」 「光瑠ちゃん冷たい。めっちゃ冷たい。アタシに隠し事とかしてる?」 「隠し事の一つや二つ誰にでもあるでしょ」 「やっぱ、冷たい」 「はいはい、あんた用事あるんでしょ? 早くいかなくていいの?」 「あ、そうだった」  璃音は伝票を手に取り「またねー光瑠ちゃーん!」と会計を済まして店を出ていった。  どうやら、私の分の会計も済ませてくれたらしい。  今度、会ったときは私が奢ってあげよう。   「ホント、璃音はおこちゃまなんだから」  例の一件から璃音は私に外面を作らず、正直な反応で接してくれるようになった。  初めて喫茶店に呼び出されたときは不良少女に絡まれてヤバイ。と思ったけれど、外面だけは完全な不良を演じてるだけで、璃音の内面はかなり子供っぽいのだ。自分に正直な女の子ってことがわかってしまえば、高城璃音はかなり付き合いやすい部類だった。  まぁ、ヒトイヌプレイにはびっくりしたけれど、宿泊プランが終わったあとに彼女は約束通り写真も削除してくれたし、お金まで渡してきたのだ。ちゃんと最後まで誠実な対応をしてきたから、ホテルでの一件は水に流してあげた。  それに、彼女のおかげで思いがけない収穫もあった。 「そろそろ、時間かな」  カフェオレを飲み終えた私は店員さんに挨拶してから店を出る。  そこには一台のリムジンが停まっていた。 「お迎えに上がりました。光瑠お嬢さま」 「今日もお願いします、カエデさん」  ゴムのメイド服に身を包んだカエデさんがニコっと笑ってからリムジンの扉を開けてくれる。  先週の何倍も緊張しながら、私はリムジンに乗りこんだ。  車内は相変わらずのゴム塗れだったけれど、なぜだかその雰囲気に懐かしさがこみ上げてくる。  そこへカエデさんも乗り込んできて、今回のプラン名を復唱してくれた。 「この度はヒトイヌスイートプランをご利用いただき誠にありがとうございます」  

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