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「光瑠お嬢さま。手は握ったままでお願いします」 「こ、こうですか?」 「はい、お上手です」  ビビッ、ビッ、と握った手にもフィルムがグルグル巻かれてく。  腕だけでなく、指の存在さえも必要ない、と全否定されてるみたいだった。  それからフィルムの底がつくまで、肘に向かったり、肩に向かったり、二周三周と繰り返した。  右腕を拘束するのに一つ分のフィルムを全部使うって厳重過ぎない? 「次は左腕ですね」  カエデさんは新しいフィルムを広げ、有無も言わさない勢いで折り曲げた私の左腕にもフィルムを巻いていく。  もちろん、右腕と同じように手は握ったまま二周三周と厳重にグルグル巻きにされてしまう。 「……っ」  ラバースーツの締めつけの上から、フィルムによる締めつけが加わり、腕がそこにあるのかどうか感覚が曖昧になってしまった気がする。  それ程までに私の両腕は完全にフィルムの中に収まってしまっていた。  次はどうするのだろう、と璃音のほうを見てみると床に仰向けになった状態で、脚にもテーピングを施されていた。それも折り曲げた状態で。 「あ、脚もやるんですか?」  私は、ビックリしてすぐさまカエデさんに質問する。 「はい、当ホテルに宿泊するための規則となっております」 「なに〜? 光瑠ちゃん、怖がってるの~?」 「べ、別に怖がってない、けど……」  手足を拘束するのが宿泊する規則って、意味がわかんなかった。 「コレくらいで怖がられてたら、あとで困るからさ、頼むよ〜?」 「うっざ」  手足をフィルムでぐるぐる巻きにされて自分じゃ起き上がれない状態になってる癖に、偉そうなことを言ってくる璃音にイラつく。   「そうそう、そういう感じでいてよ」 「だから、うざいって!」 「はいはい、黙りますよー」  なのに、ニヤニヤ笑って軽く受け流してくるからもっと腹が立って言葉が強くなる。 「光瑠お嬢さま、お口が悪いですよ」 「今のは璃音が悪いんです!」 「言葉を荒げるお気持ちもわかりますが、今は落ち着いて、璃音お嬢さまを見習うように床へ寝転がってください」 「……やっぱり、脚も巻くんですか?」 「はい、脚も巻かせていただく規則です」 「わかりました……」  カエデさんはあくまでも事務的な対応をしてきたけれど、意を唱えた私に向かってどこか口調が強まってる気がした。  ニヤニヤしてる璃音を睨みつけてから言われたとおり床へ寝転がる。   「あ、ん……っ」  仰向けに寝転がり、腹筋をするような感じで膝を緩めに立てていたら右脚をグイッと押し曲げられて、腕と同じようにテーピングされていく。  太腿から膝に掛けて二周、三週と巻かれ、一つ分のテープでは足りなかったらしく二つ分使用された。 「ぅぅ……ッ」  右脚が終われば次は左脚がテーピングされ始める。  淡々と行われるこの行為に他意はないとわかっていても、一箇所ずつ確実に折り曲げられていく感覚はまるで赤ちゃんみたいな無防備な存在に矯正されていってるみたいで、自分が弱い立場に追い込まれている気がしてきた。 「これ、あとで外してくれるんですよね?」 「もちろんです」  そうじゃなかったら困る。  璃音は余裕ぶっこいていたけれど、私は装うので精いっぱいだ。  結局、両手足共々折り曲げた状態でフィルムにぐるぐる巻きにされてしまった。  もう、自分でフィルムを外すこともできやしない。   「これからテーピングの仕上げに入りますので自由にしててくださいね」 「は、はい……」  折り曲げられた手足の輪郭が浮き出るくらいギチギチに拘束されているから、自由に手足を伸ばすことは当然不可能だ。  仰向けの姿勢から起き上がることもできそうにないし、自由にできるところなんてほとんどない。  仰向けに折り曲げた手足を投げ出しながら、無防備な姿勢で次の工程を待つことしかできないのに「自由にしててくださいね」って最高な皮肉だった。 「失礼しますね」  戻ってきたカエデさんは、手足のフィルムのところへ霧吹きのようなものをシュッシュッとかけていく。  そのままラバースーツの生地を馴染ませるときと同じようにカエデさんが何度も濡れたフィルムの上を撫でまわして、液体をじわじわと塗りこんでいく。 「うわ……っ」  動作を繰り返せば繰り返すほど、ぐるぐるに巻かれたフィルムの断面が消えていき、シワ一つ見当たらない滑らかな表面が姿を現す。  どこからどう見てもフィルムの繊維が一体化してるようにしか見えない。  原理はわからないけど、それを手足の四か所すべてに行われ、作業が終わったころには、初めから手足を折り曲げた姿勢でラバースーツを着用したみたいに、つなぎ目一つない黒い光沢を反射するラバーの膜が出来上がっていた。  璃音のほうも同じだ。  折り曲げた手足にテーピングされたような跡は一つもなくて、初めから手足を折り曲げてラバースーツを着用したみたいになっていた。  人の手足を折り曲げて、ラバーの中に閉じ込めた形は、はたから見ると歪な形状をしている。  果たしてそれを人と呼んでいいものなのか疑問だけど、私も璃音と同じ状態であることを忘れちゃいけない。私の身体も璃音と同様に、変な形をした黒い物体へと変えられてしまってるんだ。そう考えれば考えるほど下腹部の奥が切なくなってくる。 「光瑠お嬢さま、大丈夫ですか?」 「……へ?」  隣にいるカエデさんが銀色の金具を散りばめる黒い袋を携えて、私の顔を見降ろしていた。 「これから手足に装具を取り付けていきますがよろしいでしょうか?」 「は、はいっ、大丈夫です」  咄嗟に大丈夫、と返事をしてしまったけれど、装具がなんなのかはわかってない。 「では、失礼します」  折り曲げた状態で拘束されている右腕にカラカラと甲高い音を鳴らす黒い革の袋を被せられる。  逆二等辺三角形のような形状をしてるその袋は、ところどころにベルトが散りばめられていた。カラカラ音を鳴らしているのはベルトのバックルが擦れ合っているせいらしい。  カエデさんはそれらのベルトを留める前に、装具の側面にあるレースアップの紐を一か所ずつ的確に締め上げていき、肘から肩の根もとまで、黒革の袋が完全に腕を呑み込んだのを確認してから残っていたベルトをバックルに合わせて固定した。  先ほどのテーピングよりもSMのボンデージものっぽい見た目をしてるそれに胸の奥がざわついてくる。 「この装具はなんのためにあるんですか?」 「光瑠お嬢さまの身体を保護するためのものです。あちらで璃音お嬢さまも装着されています」 「保護ですか……?」 「はい、そうです」  左腕の装具の装着が終わったころに璃音のほうを見てみると、手足の四箇所すべてに黒革の装具を装着し終えていた。  無防備な胴体部を晒して、手足だけが黒革の装具に覆われているから、璃音の容姿は一部の部品しか取り付けられていないロボットのようにアンバランスなシルエットに見える。 「……ッ」  これから自分も同じ状態になるのだと考えるだけで、折り曲げたままの両手に力が籠るけど、何の意味もない。ギッチリと固定されたままビクともしない黒い塊がそこにあるだけだった。 「足にも被せていきますね」  自分の現状を確かめてる間に、右足へ黒革の装具が被せられていく。  カエデさんは淡々と作業をするのが好きらしい。  安心して身を任せられるような、任せられないような、どっちつかずな気持ちに苛まれながら、視線を横にそらすと璃音が私にウィンクを飛ばしてきた。  意図はわからないが、手足を拘束されたことに関しては、まったく動じていないことが伺える。  サービスを受けるのは一人じゃ怖い、って璃音は喫茶店で私に話しをしていたけど、こういうことだったのかもしれない。確かにこれは一人じゃ怖い。  喫茶店で前もって説明されてたら、写真のことがあっても絶対来なかった。 「……はぁ」  私がため息を漏らしてる間もカエデさんは残っている黒革の装具を左足に被せていく。  手順は腕と変わらない。  レースアップを一か所ずつ的確に締め上げていき、最後はベルトで逆二等辺三角形の袋を固定した。  そうすることが当たり前かのように淡々と行われていく拘束に言葉も出ないし、もうここまで手足を厳重に拘束されてしまったら、自分がただの着せ替え人形と変わらないような気さえする。  これからクマの着ぐるみを着せますよ、とカエデさんに言われたとしても驚かないくらいに、私はこの現状を受け入れてしまっていた。 「次は体幹を補強するためにコルセットを装着しますので、身体を起こしますね」  わかりました、と返事をするとカエデさんに身体を起こされる。  その正面には壁一面の鏡があって、不覚にも見てはいけないものを目の当たりにしてしまう。 「うぁ……っ、やばいよこれぇ……っ」  そこに映る女の子の姿は、女子高生がしていい恰好の範疇を超えていた。  黒いラバースーツに縁どられた艶めかしい身体を晒し、歪な黒革の袋に手足を折り曲げられている扇情的な見た目は、本人の意思にかかわらず、誰がどうみても過激なSMプレイに興じてる変態にしか見えない。  顔以外は一切露出してないけれど、逆に顔だけを露出しているという事実がなおのこと羞恥心を煽ってくるから、目が自然と鏡から反れてしまう。クラスの男子が私のこの格好を見たら、有無も言わさず性的な行動に移るのは間違いない。  理由は簡単だ。  手足の自由が失われてダッチワイフみたいな状態の女の子を誰が放っておくというのだろう。  おまけにラバースーツ越しに乳首を大きく勃起させて、自分が性的な玩具として扱われるのを期待してるようにも見えてしまう。  こんなにも訳が分からない状況に追い込まれているのに、それでも乳首を大きくしてるなんて、信じられなかった。   「光瑠ちゃん今どんな気持ち?」  少し離れたところに同じ姿勢で座ってる璃音が声を掛けてきた。 「……さ、最悪に決まってる、でしょ?」  喋りたくなかったけど、何か言わないと怪しまれると思って無理やり声を絞り出して答える。 「そんなに乳首大きくしてるのに、最悪なの?」  言われなくてもわかってることを言わないでほしい。 「う、うっさいなぁっ……! こんな状態にされたら誰だって反応しちゃうに決まってるじゃん!」    的確なところを突かれてしまって言い訳を並べることしかできなかった。  けど、私だけじゃなくて璃音だって乳首を大きくしてる。お互い様のはずだ。 「普通の女の子は拘束されても気持ち良くならないよ?」 「……は? え、ま、まじ……?」  追い打ちを仕掛けるように璃音にマジレスされて、拘束されてる自分の身体の反応がおかしいことに気がつく。 「はい、ほとんどのお嬢さまは、今すぐ外して、と嫌がります」 「う、うそでしょ……?」  横でフロントを広げたコルセットを掲げているカエデさんにもマジレスされてしまい、大多数の女の子とは違う反応をしてしまっている自分がますます信じられなくて、心臓が破裂しちゃいそうなくらい恥ずかしくなってきた。 「光瑠ちゃんに気持ちいいと思う、って言ったのは、歪んだ性癖を持ってる場合の話しなんだよねー。つまり、光瑠ちゃんはこういうことに元から素質があったってことだよ」  ニヤニヤ笑いながら璃音はフォローをしてくれるけど、全然うれしくない。  その話が本当なら、初めから私に「歪んだ素質」があることをわかってて璃音は声を掛けてきたということになる。  璃音は初めから私を試していたのだ。 「璃音のバカッ! 変態ッ! あとで覚えてなさいよッ!」 「そんな格好でも罵しってくるとか、やっぱ光瑠ちゃん誘ってよかったよ、色々と楽しめそう」 「あぁッ……! もう! だから、そんな期待する眼差しでこっち見んなぁ……っ! 私が拘束されて気持ちよくなるような変態なわけないでしょ!」 「うんうん、その調子で最後まで頼むよー」  ほとんど八つ当たりだったけれど、いくら私が璃音に反論したところで図星にしか聞こえなかった。  それもこれもすべて手足を折りたたんだまま拘束されているせいだ。こんな扇情的な恰好で異を唱えても、戯言にしか聞こえない。いくらなんでも哀れすぎる。 「光瑠お嬢さま、お口が悪いですよ」 「……だって、璃音が……っ!」 「だって、ではありません」 「〜〜〜〜ッ」  おまけにカエデさんからまたも注意を受ける。自分が幼稚であることを指摘されているみたいで悔しい。けど、実際にこの空間で子どもみたいにごねてるのは私だけだ。何も言えなくなったのはカエデさんが正しいことをわかっているから。 「……うるさくしてごめんなさい」  カエデさんに謝る。私の個人的な恨みで璃音に当たっているのはたしかだし、カエデさんはその間に挟まれているにすぎない。当事者である璃音は、私のことなど気にもせず、ツバキさんにコルセットを装着してもらってるからホント、ムカつく。 「お言葉には気をつけてくださいね」 「はい……わかりました」  カエデさんの口角がニコッと少しだけ動いた気がした。 「では、コルセットを装着いたします」 「は、はい……お願いします」  自分でも何をお願いしてるのかわからなかったけれど、私の願いどおりに脇腹から体幹を包み込む黒革のコルセットが胸の下に嵌め込まれた。 「閉じていきますね」  このコルセットはスチームパンクファッションとか、ロリータファッションなどによく使われるベストタイプのコルセットに似ていて、おっぱいの部分だけを絞り出す作りのアンダーバストのコルセットらしい。  ラバースーツに覆われたおっぱいのアンダーラインを持ち上げるようにコルセットを腹部に宛がい、カエデさんはフロント部分にある四箇所のベルトを順番に留めてフロントの部分を閉じてしまう。  そして、胸の位置を調整しつつ背筋にあるレースアップを締め上げていき、胸がコルセットでくびり出されるように肩に掛かるベルトを正面のコルセットと繋いでしまった。 「……んッ、っぁ」  ラバースーツの上からコルセットの硬い締めつけがお腹を圧迫してきて、肺から息がもれると同時に声がこぼれる。  背中のレースアップの紐を引っ張られるたびに、胸を反らすように腰椎が正しい形に補強されて、横隔膜が潰されていってるのがわかった。  コスプレとかでベルトタイプのコルセットを着けたことはあるけれど、こんなにも体幹を締めつけてくるコルセットは着けたことがなかったから、未知の感覚に心臓が高鳴る。   「痛い場所などはありませんか?」 「だ、だいじょうぶです」  レースアップの調節が終わると、黒い光沢を放ちながらぷっくらと強調されたバストを晒してる短い手足の女の子の姿が鏡の中に出来上がっていた。 「……ッ」  改めて鏡に映る女の子の姿を目の当たりにすればするほど、それが如何にあられもない姿であるかどうかを痛いほど理解してしまう。  乳首を大きく膨らませて「私の乳首を触ってください」と周囲に宣言している痴女みたいな見た目をしている彼女は、よほどの変態に違いない。  半開きにした口元を緩ませながら頬を赤く染めて、恥ずかしがっているように見えるけど、瞳をとろんと潤ませて自分が「人ではない別の何か」に作り変えられてしまっていることに完全に酔っているのがわかる。 「あ…っ、うぁ……」  言葉を失いながら、それが自分自身であることも忘れて暫く見つめていた。  口では璃音に反抗してたけど、璃音に指摘されたせいで私は完全に開き直ってしまったらしい。  鏡に映る自分がエッチな目的で拘束されている女の子だと思えば思うほど胸の奥でドキドキする感情が溢れてくる。  このあとは何をされるんだろう。と考えているとカエデさんが鏡に映る女の子の首に何かを嵌めてしまう。  手足を彩る黒革と同様に滑らかな黒色を基調とした重厚さを兼ね備えているそれは、女の子がファッションで身に着けるチョーカーよりも頑丈な佇まいをしてた。 「こ、これって……」 「光瑠お嬢さまをヒトイヌとして認定する首輪です。そしてこちらがカチューシャになります」 「ひ、ひといぬって……?」  いまいちよくわかっていない私の頭に犬耳のカチューシャも取り付けられる。 「はい、光瑠お嬢さまは当ホテルのヒトイヌとして登録されました」 「よかったね、光瑠ちゃん」 「……は、え? ど、どういうこと?」  カエデさんから聞かされた単語の意味を理解できるほど私の思考は冷静ではなくて、はてなマークがたくさん浮かび上がっては消えていた。   「まずは、歩く練習からいたしましょうか」  そんな私の首輪のリングにカエデさんが手綱のようなものをカチャりと取り付ける。それは、カエデさんの手元と繋がっていて、これから行われる「歩く練習」の意味がどういうことなのかを顕著に表していた。璃音はその様子を楽しそうに横で眺めてる。 「さぁ、光瑠お嬢さま、歩きますよ」 「あ、カエデさ…ッ、ちょ、ちょっと待ってくださいッ……!」  グイっとリードが前に動いて、首輪ごと身体が引っ張られる。座り込んだ姿勢で付いて行こうとするけれど、折り曲げられた足で歩くにも限界があって、バランスを崩したところで両肘を床に着いてしまう。肘が床に当たったら痛いかも、と思ったけれど、パッドのような柔らかいものが肘や膝の部位に埋め込まれていたらしく、黒革の装身具のおかげで全然痛くなかった。 「前足も上手に使って歩いてくださいね」 「う、うあ…ッ、こ、これって、つまり……ッ」  カエデさんのレクチャーどおりに四つん這いのまま折り曲げられた手足を順番に動かしてみる。  右手と左足。  左手と右足。  それぞれを交互に動かして、カエデさんの手元にあるリードに向かって前進していく。 「ふふ、お上手ですね」 「ぅぅ~~~~ッ!」  人として生まれたはずの私が、犬のように手足を動かして床を歩いていた。  その瞬間に何もかも理解してしまった。  カエデさんの言っていた「ヒトイヌ」という単語も、璃音のいう特別なサービスの意味も、手足を厳重に拘束した理由も、全部わかった。  ここは、ヒトイヌプレイを楽しみたい人たちへ特別なサービスを提供する秘密のホテルなのだ。 「光瑠ちゃん楽しそう」  カエデさんにリードされながらヒトイヌらしく歩行する私を、璃音は目を細めて見つめていた。 「は、恥ずかしいからッ! こっちみるなぁ……ッ!」 「お互い様でしょー? それにヒトイヌになっちゃった光瑠ちゃん、すっごく可愛いよ」 「~~~~ッ!」  顔が燃えるように熱くて何も言えなくなる。  もう、プレイがどうとか関係ない。  とにかく、自分の恥ずかしい姿を隠してしまいたかった。 「はい、たしかに光瑠お嬢さまはヒトイヌの姿がとってもお似合いです」 「うぁ…っ、あぁ、あ……っ!」    私を見下ろしながらリードを引っ張るカエデさんまで璃音に同調するから、脳の神経回路がいくつか焼ききれちゃったみたいに交互に動かしてた手足が震えてうまく歩けなくなってくる。 「さぁ、光瑠お嬢さま。慣れるためにあと三週しますよ」   「っ…あ、は、はい……ッ!」  私が動揺しているとわかり切っているからこそ、カエデさんはリードを引く手を休めず私に歩くことを強制してくる。その無遠慮な扱い方が、自分が人間として扱われていないのだ、というあらぬ答えを脳内に浮かび上がらせてきて、不覚にも下腹部の奥が疼いてしまった。コレ、ヤバい。 「光瑠ちゃん、がんばれー」 「~~~~っ」  璃音の声援も、現状も、無視して歩くことに集中しようとするけど、ダメだった。  普通に生活していたら絶対に味わえない仕打ちに、今すぐアソコに手を伸ばして弄り回したいほど、私のアソコはムズムズしちゃって興奮してた。少しでも刺激が伝わるように内股気味に足を動かしてみるけど、ラバーがギュチギュチ音を鳴らすだけで、全然刺激が届かない。 「んぁ、ッ…んくっ……ッ」  一歩一歩手足を動かすたびに、発散できない快楽のジレンマに自分が侵されているのがわかる。リードの導きに従うまま歩き続けたら、身体だけじゃなくて心までヒトイヌになっちゃいそうだ。 「どうしました? 物足りないですか?」 「ち、ちがっ、そんなつもりじゃ……ッ!」  三周目が終わるくらいにカエデさんから問いかけられて、反射的に否定する。 「あちらにいる璃音お嬢さまをご覧ください」  カエデさんに促されて視線を移すと、四つん這いの姿勢になりながらラーバースーツのクロッチ部分を開かれた璃音が光沢を放つピチピチのお尻を突き出して何かを待っていた。 「な、なんですか……あれ……」  それがツバキさんの手元に用意されている凶悪な二本の突起を生やした装具であることをすぐに理解する。  大小に分かれた突起の形はあまりにも卑猥すぎて、どういう意図で作り出されたものなのか一目瞭然だった。 「璃音お嬢さま専用のディルド付き貞操帯です」 「て、ていそうたい……?」 「はい、そうです」  ツバキさんはクロッチから曝け出した璃音の尿道と膣を優しく解しつつ、ローションでぬるぬる光ってる独特の形状をした二本の突起をそれぞれの穴へ丁寧に挿入していく。 「あっ、んッ…んふッ……ぅッ!」  璃音の甘い声が部屋中に響き渡ってきて、聞いているこっちが恥ずかしくなってくる。 「あのように、まずは尿道と膣の中に専用のディルドを挿入します」  カエデさんの説明どおりに二つの突起は初めから璃音のお腹の中に挿入されていた部品のようにずるずると奥まで入り込んで姿を消してしまう。 「それから、クリトリスを刺激する吸引バイブ付きの貞操帯で蓋をして固定します」  ツバキさんはそのまま根元にあるしゃもじ型の板で璃音の股に蓋を施し、腰にベルトのようなパーツを宛がうと取り外しできないように板と連結してカチンッと固定してしまった。 「う、うそ……」  絶句する私に対してカエデさんはまだ続ける。 「最後はアナルプラグ付きの尻尾を挿入すれば、完成です」  ツバキさんは犬の尻尾のようなアクセサリーをぶら下げる蕾型の黒い突起にローションを塗りこんでから、貞操具によって広げられている璃音のお尻の穴の中へ黒い突起をぐりぐりと差し込む。 「んぁッ! あ、ふッ……んっ、あぁッ!!」    璃音はよがるような大きい声をあげて、その異物を受け止める。  嫌がる素振りなど一つも見せず、自分からそうされることを望むようにお尻を突き上げて、快楽の虜になっている璃音の姿は、私の知っている高城璃音ではなく、黒い尻尾を生やしたただのヒトイヌにしか見えなかった。 「光瑠お嬢さまがお望みでしたら、璃音お嬢さまと同じものをご用意いたしますよ」  カエデさんを見上げると、その顔は本気だった。  私がお願いしたら、カエデさんはあの貞操帯を私に装着してくれる。  でも、あんな凶悪なものを一度でも着けてしまったら、二度ともとの生活には戻れないような気がする。  残りの人生を台無しにしてまで受け入れていいものなのか、わからなくて怖くなる。  たぶん、受け入れたらいけない。絶対に受けいれたらダメなやつだってわかる。 「わ、私……はッ……」 「まだお時間はたくさんありますから、考えておいてくださいね」  さぁ、戻りましょう。とカエデさんは私の答えを聞かずにリードを引いて璃音の傍へ連れていく。 「……あ、んっ……んふっ……ッ」  なんとか手足を動かしてあとを付いて行くけれど、お腹の中に異物を挿入されている璃音の気持ちよさそうによがってた表情が脳裏に焼き付いて離れてくれない。  私の頭の中はもう、えっちなことばっかり考えてしまってる。 「璃音お嬢さま。準備が整ったようですし、ゲームを始めてもよろしいでしょうか?」  私の首輪からリードを外したカエデさんが口を開く。 「ん、ッ…はい、お願いします」  三つの穴に玩具が挿入されて、動きにくいはずなのに、璃音はあたりまえのように四足の折り曲げられた手足で私の傍によりながらお尻をムズムズさせて問いに答えてた。   「その……大丈夫なの?」  はぁはぁ、と少し辛そうに璃音は息をしてるから、ちょっと心配になって様子を伺う。 「アタシはへいき、ん……それより、面白いこと始まるよ」  額の汗を気にせず、璃音はニコっと笑う。 「ゲームのこと……?」 「うん、ルールはカエデさんがっ、…ッ、説明してくれるから」  璃音の言葉に視線をずらすとカエデさんの手にはゴルフボールほどの白い球が用意されていた。 「ルールは簡単です」  これからカエデさんがボールを投げる。私と璃音のどちらがそのボールをカエデさんのもとへ早く持ち帰ってくるかを競い合い、勝ったほうにはご褒美を与えるというもの。  二人いるのでお互いに勝ち合えば、ご褒美が平等になるようにゲームは二回行うらしい。もちろん、片方が勝ち続ければ二回のご褒美は一人にしか与えられない。「ボール拾い」という実に犬らしいゲームだった。 「ほ、ほんき……?」  しかし、私は璃音がどんな状態なのか知っている。  お腹の中に三本も玩具を入れてるのに、私と競い合うなんて明らかに無謀すぎるのではないか。  それも投げたボールを拾ってくるなんて、歩けば歩くほど自分で自分を責めたてるようなものだ。  私だったら、絶対お断りしてる。 「もしかして光瑠ちゃん、アタシに勝てる自信ないとか? 別に棄権してもいいけど、その場合ご褒美は全部アタシがもらっちゃうよ?」  なのに、璃音は余裕満々に私を挑発してきた。  ヒトイヌ拘束されて、とんでもない貞操帯を着けられてるから気を遣ってあげたのに、心配してあげた私がバカだった。  やっぱり、璃音は高城璃音らしい。 「私が璃音に負けるわけないじゃん」  ご褒美が欲しいわけじゃない。けど、璃音に負けるのは嫌だった。 「じゃあ、アタシが買ったら光瑠ちゃんも尻尾生やしてよ」 「は、はぁ? 何言ってんの……? お、お尻に入れるとか……む、無理だし……っ!」 「大丈夫だよ、カエデさんもツバキさんも入れるのすっごく上手だから、気持ちいいって」  自慢げに尻尾をゆさゆさ振って、璃音はアピールしてくる。 「そ、それとこれとは話が別でしょっ!」 「ま、嫌なら強制しないけどねー」 「……ば、ばか」  マジで最悪だ。  璃音が変なこというからお尻のところを意識しちゃって、肛門がヒクヒクする。  これじゃまるで、私が尻尾を入れてもらうことを期待しちゃってるみたいじゃん。  カエデさんにお願いしたら、用意してくれるらしいけど……お、お尻に挿入れるとか、絶対ダメに決まってる。 「位置についたようなので、始めますよ」  無駄話を終えたのを確認したカエデさんが号令をかける。  私も璃音もお互いに負けるつもりはなくて、ボールを追いかける準備はとっくにできていた。  「よーい、ドン」というカエデさんの掛け声でボールが投げられる。 「――ッ!」  私と璃音は放物線を描いて飛んでいくボールのもとへ一直線に向かっていく。  あらかじめ歩行練習をしていたからか、スタートダッシュは璃音と大差なかった。  お互いにぶつかりそうになりながらボールのもとにたどり着いたけど、そのときになって気づく、ボールってどうやって持ち運ぶんだろう?  何も考えてなかった。 「えへへ、もらっちゃうよ」  立ち止まってる私を横目に璃音は床に転がってるボールを迷わず口で咥えて拾い上げた。  そのまま、カエデさんのもとへ戻っていく。  私はその様子を後ろから見ていることしかできなかった。  だって、あんな……口にボールを咥えて運ぶなんて芸当できっこない。  恥ずかしくて死んじゃう。 「さすが、璃音お嬢さま、えらいですね」  無事にボールを持ち帰った璃音はカエデさんに頭を撫でてもらってた。  璃音はえへへ、と嬉しそうに喜んで、飼育されている本物の犬みたいにカエデさんに擦り寄よって甘えてる。  胸のところがギュッと締めつけられる感じがしてなんだか悔しい。 「ご褒美はいかがいたしましょう」  そんな璃音にニコっと微笑み返しながらカエデさんは望みの褒美は何か問いかける。  璃音は私のほうを一瞥して、ニヤっと口角をあげてから言った。 「じゃ、じゃあ、アタシのおまんこも、お尻の穴も……っ、ぐちゃぐちゃのめちゃくちゃに全部気持ちよくしてくださいッ!」 「――ッ!?」  あまりに突拍子のないおねだりに、私は絶句した。 「かしこまりました」  なのに、カエデさんは顔色一つ変えずにその願いを聞き届けてしまう。  どこからかリモコンのようなデバイスを取り出して操作すると、璃音の身体から「ヴヴヴ」と低い重低音がリズムを刻むように途切れ途切れに聞こえてくる。  それは明らかに貞操帯の内側に収まっている玩具が動き出した音だった。 「き、きたぁあ……ッ! あ……ッ、んふッ……んっ、はぅんっ……ッ!」  手足をガクガク揺らし、璃音は気持ちよさそうに腰を上下左右に振って、甘々しい声を漏らす。  少し前までニヤニヤ笑って、あざ笑うようにこっちを見てた璃音の顔は、性欲に塗れたメスの顔に変貌していた。 「あぅ、んッ……ッ! んはぁあッ……ッ!? あ、あぁッ、はあぁああん!」 「~~~~ッ」  望み通りの刺激を余すことなく全身で享受していて、璃音はとても幸せそうだった。  乱れに乱れた欲情を纏う蕩けた璃音の表情を見るだけで、お腹の奥がキュンキュン締めつけられて私もその快楽が欲しくなってくる。   「あ、あぁッ……! はぁんッ…イ、イッ、ちゃ……うッ! もう、もうイッちゃうううう!」    そのうち璃音はガクガクと大きく腰を揺らして、両足を内股に閉じるとバランスを崩して床に倒れた。 「あッ、…ん、っ……はぅんッ…!? く、くるぅッ…イっ、クぅん…っ! あ、あぅあぅッ、ああぁん、はああぁああぁんッ!」  そして、カエデさんの足もとで手足を上下にピンと伸ばしながら、激しく腰を跳ねさせて璃音は絶頂した。 「あ……ぅあ……っ」  私はその姿に釘付けになっていた。  璃音は不良少女と噂されながらも、学校では一匹狼が如く毅然に振舞っていた女の子だ。  その璃音が、目の前でだらしなく腰を振りながら、淫らな声をあげて、快楽の坩堝にはまりこんでいる。  ありえない。  私をこんな場所に連れてきてヒトイヌの姿に貶めたくせに、私を放って自分だけ気持ちよさそうに声を上げてるなんて。 「わ、私も――」 「私も……? なんでしょう?」  床でびくびく震えてる璃音の傍にいるカエデさんから声を掛けられて正気に戻る。  私、今――何を言おうとしてた? 「あ、いや……その……り、璃音は大丈夫なんですか?」  身体から振動音は聞こえなくなってるけど、未だに「はぁはぁ」息をもらして床に転がってる璃音を見て質問する。 「今は余韻に浸っているだけですから、すぐに動けるようになりますよ」 「あはは……そ、そうですか」  視界がぐるぐるして定まらなくなる。  自分がカエデさんに発しようとしていた言葉が頭の中で何度も繰り返されて、胸の奥がもやもやしてた。 「はぁ……ッ、はぁ……んッ」  暫くして、璃音は身体を起こそうと動き出した。一人では立てそうもないから、カエデさんに手伝ってもらって、若干ふらつきつつも四本の足で床とのバランスを維持する。あんなに大きい声をあげて絶頂したのに、もう立ち上がるって、どんな神経してるんだか。   「んふふ……ッ、どう? アタシのやつ見たら光瑠ちゃんもご褒美が欲しくなったでしょ?」 「う、うっさい……ッ」  気持ちよさそうに喘いでたくせに、恥ずかしがる様子もなく、璃音は相変わらず生意気だった。  あたしの身体は火照ったまんま熱が冷めなくて、ムズムズしてるのに、璃音はすっかり満たされたって顔してる。  それが酷く悔しい。 「……次は、負けないから」 「ふふ、そうこなくっちゃ」 「では、二回戦目を始めますね」  ルールはさっきと同じ。  「よーい、ドン」というカエデさんの掛けでボールが投げられる。  あとはそのボールをいち早くカエデさんのもとへ運ぶだけだ。 「負けない……ッ」  と、強く意気込むけど、今回は璃音のほうがヒトイヌ歩きは早かった。  お腹の中に玩具が挿入されてるのに、どうしてあれほど軽快に手足を動かせるのか謎だ。  悔しいけど、この感じだとまた負けてしまう。 「あふぁッ!? ちょ……ぁ、ぅ…んっ、やばッ…!?」  しかし、璃音は床のボールを咥えようとしたところで、なぜかバランスを崩した。  たぶん、さっきのご褒美が効いてたんだと思う。  このチャンスをみすみす手放すつもりはない。  さっきは見ていただけのボールを「あむ」と気にせず口で咥えて、カエデさんのところへ持っていく。  カエデさんはそんな私を迎え入れるように手を広げながらしゃがみ込んで待っていてくれた。   「よくできました。えらいですよ、光瑠お嬢さま」 「あはは……」  カエデさんのもとへたどり着いてボールを渡すと、よしよしと頭を撫でられた。  すごく惨めで恥ずかしいことをしたはずなのに、カエデさんに褒められるのは嬉しくて胸がドキドキする。  なぜかもっと褒められたい、と考えてしまう。 「ご褒美はいかがいたしましょうか」  そんな私にカエデさんはニコっと微笑んで、問いかけてくる。  ムズムズと練り動く感情を頼りに私は口を開いた。 「わ、私もッ……さっきの璃音と同じように気持ちよくしてください……ッ!」  こらえきれない欲求。それを満たすためだけに言葉を放った。  なのに、言ったそばから顔が熱くなってくる。  自分がなにを言っているのか理解しているようで理解できていない気分だ。 「璃音お嬢さまと同じようにとは、どのようにですか?」  でも、伝わらない。  カエデさんは首を傾げて、私があえてはぐらかした部分の意味を聞いてくる。 「そ、それは……っ」  頭の中に言葉は浮かんでいた。  けど、それを口に出してしまったら私は――。 「はっきりと仰ってください、光瑠お嬢さまは私にどうして欲しいのですか?」 「う、ぅぅッ~~~~っ!」  顔も身体も熱くって、頭が真っ白になって混乱する。  恥ずかしくて、惨めで、屈辱的で、どうしたらいいのかわからなくなる。  でも、カエデさんにはっきりと伝えなくちゃいけない。  さっきの璃音みたいにちゃんと伝えなくちゃ何もしてもらえない。  生殺しのまま何もしてもらえないくらいなら、あとのことなんてどうにでもなってしまえばいい!   「わわ、私のッ、お、おお、おまんこ、と、おしっこするところを……て、貞操帯で塞いで……っ、う、うんちを出すところには尻尾を生やしてほしいですッ!!」  言っちゃった。  言ってしまった。  全部言ってしまった。 「よく言えました。えらいですよ」 「あ……っ、あ、あ…あ、ぅああっ……ッ!」  自分が口にした言葉が何度も何度も頭の中をリフレインする。お腹の奥で何かかがぐつぐつに煮えたぎり、今にも爆発してしまいそうな感情に言葉を失う。 「光瑠お嬢さまには、特別なご褒美も差し上げますから期待しててくださいね」  ニコッと微笑んだカエデさんはもう一度私の頭を撫でる。   「~~っ」  自分の選択が間違いじゃなかったっていう証明をされているみたいで、少しだけ気持ちが落ち着いてくる気がした。  私は正しいことをしたんだ。 「それにしても、あれだけ光瑠お嬢さまを煽っておきながら一番にボールを拾ってこれない璃音お嬢さまには、お仕置きが必要ですね。ツバキ、璃音お嬢さまにあれを着けて差し上げてからお仕置き部屋へ」 「はい、わかりましたお姉さま」  カエデさんの指示をうけたツバキさんはとある道具を手に取り、床にダウンしてる璃音のもとへ向かう。 「へ? つ、つばきさん……? なにを――」 「これはお仕置きですから」 「ちょ、ちょっと待っ……ッ、んぁッ!? あがッ、あぅ!?」  ツバキさんは床に転がってる璃音の顔に、マスクのようなものを無理やり装着する。それは排水口のような銀色の環によって口を開けっ放しにしてしまう黒革のマスクに見えた。   「アウウッ! ア、ぐぅッ!?」  さらにツバキさんは璃音の首輪にリードを着けて、部屋の外へ連れていってしまう。  お仕置き部屋、とカエデさんは言ってたけど、璃音は大丈夫なんだろうか。 「では、光瑠お嬢さまには、特別なご褒美を差し上げましょう」 「あ、え……? か、カエデさんっ?」  でも、私に璃音を心配する暇なんてなかった。  私は抱きかかえられるように背中から身体を起こされ、鏡と向き合うように床に座らされる。カエデさんはその背後へ八の字に股を開いて座ると、私の身体を受け止めるように仰向けに倒して、自分の胸の下に私の頭をホールドしてしまったのだ。 「あ、ぁあ、ああ……」  乳首がラバースーツ越しに勃起してるところを晒すだけでも恥ずかしいのに、無防備な仰向け姿で抱っこされるというのは屈辱的すぎた。逃げ出したい衝動に駆られて起きあがろうとするけど、手足を拘束されている私は簡単に抑えつけられてしまって、逃げ道はどこにもなかった。 「光瑠お嬢さまは、本当にヒトイヌがお似合いです」 「そ、そんな、ことは……」  真上からまじまじとカエデさんの黒い瞳に見つめられて口も噤みたくなる。  目のやり場に困って、最終的に目を伏せることしかできない。 「ふふ、その恥じらい方もとても可愛らしいです。身も心も完全に堕として差し上げたくなります」 「あ、そこ……はッ、んふッ…んッ!?」  カエデさんの手が私のおっぱいに伸びてきて、そのまま大きくなっている二つの乳首をグニグニ揉まれてしまう。  ほんのりとした甘い刺激が背筋のほうへじんわり広がってきて、変な声が漏れる。  というか、これ、抵抗できなくて気持ちいい。 「遠慮しなくていいのですよ」 「あ、ぁあんッ…んぅ、ぅぅッ……くッ、んふあぁッあ、ッぅぅ!」  ゴムボールをこねるように、カエデさんはラバーに包まれた私のおっぱいを揉みしだき、硬くなった先端部を適度に摘まむ。  自分で触るときとはまったく違う刺激が胸から送られてきて、パニックになりながら小さく身を縮めるけどカエデさんの手は止まらない。  持続的に一定の刺激を馴染ませるように適度な入れ具合で力を維持してくるから、胸に残り続ける刺激に新しい刺激が重なって、さらに快楽が広がっていく。 「あぅ……ッ、んふぅ、ん……っ、ぅぅあッ!」 「とても可愛い声です、光瑠お嬢さま」 「んひぃッ……!」  乳首がグニッとつねられて、腰がビクっと勝手に跳ねる。  自分の身体が、玩具みたいに反応して、まるでおっぱいが身体をコントロールするリモコンに作り変えられちゃったみたいだった。  もっと、もっと触ってほしくて、おっぱいをむき出すように突き上げる。  でも、するりとカエデさんの手は離れて下腹部のほうに伸びていってしまう。 「下のお口も見てみましょう」  クロッチのジッパーがジジジッ、と開かれる。  少し顔を上げるとラバーの隙間からぐちょぐちょに濡れたメスの匂いを撒き散らす桜色の割れ目が鏡に映り込んでいた。 「たくさん涎を垂らして、だらしがないですが……ヒクヒクと動いて、とても可愛らしいお口をしておりますね」 「あ…ッ、あぁ、あ……ッ」  もう、何も言葉が浮かんでこない。  ただただ私がエッチな女の子である事実だけがカエデさんに知られていく。  私の中の三枝光瑠という存在定義が壊れていくのがわかった。 「では、光瑠お嬢さま。いっぱい気持ちよくして差し上げます」 「……は、はぃ……ッ」  ラバーに包まれたカエデさんの右手がゆっくりと動き出す。 「んふぁ……ッ、あぁ」  優しくねっとり掬いあげるように、カエデさんの人差し指と中指が割れ目の中に入り込んで、おまんこの上を撫でられる。 「あぅッ、ん……ッ、んんッ…んふぁッ…あ、あぁっ……ああぅッ!」  おまんこの中に指は入れず、くちゅくちゅ入口を撫でまわしながら焦らすように指を動かされる。内ももがビクビク反応しちゃって、自分でも股を動かしてしまう。  もっと、敏感なところも触ってほしい。 「く、くりとりすも……ッ、触ってほしい、です……ッ!」 「ふふ、欲しがりさんですね」  私がお願いしたら、カエデさんはクリトリスを人差し指と中指で挟みこみながら、すりすり、と優しく擦りはじめた。 「あ……っ、ぅあ、あぅ…あ、ぅああっ……ッ!」  ツルツルしたラバーの質感が一定のスピードを維持しながらクリトリスを刺激し続ける。  とろけるような甘い刺激に下腹部もヒクヒク動いてしまう。 「ぅぅ~~~ッ、んふぁ…っ!? あ、あぁんッ……く、ぅう…ふ、ぁああッ!」  我慢できずに声が零れる。  自分で触っているときなら、気持ちよさによってペースを変えてしまうけど、的確にクリトリスだけを刺激してくるカエデさんの愛撫はペースを変えることなく動き続けていた。一定の火加減でじっくりと煮込こまれているような甘い快感を絶えず送られてくるのは初体験で、ずっとこのまま触られていたいと思うほどに甘美なものだった 「クリトリスすりすり擦られて気持ちいいですか?」 「あぅ、ッん……き、きもちぃ……ッ、ですっ、ぅ……!」 「それはよかったです」  ニコっと微笑むカエデさんの指先は変わらずに、すりすり、すりすり、と何度も、何度も、クリトリスの上を往復する。 「ッ、あぁっ、はああぁんッ、んぐッ、ぅぅ…っ! イクッ…あ、ぅぅ、きもぢぃ、くてっ……イッちゃうぅッ!」  重なり続ける刺激がゆっくりと高ぶっていき、限界へのカウントダウンを刻み始め。 「いいですよ、イッちゃってください」  カエデさんの言葉をトリガーに自分の身体がどうなっているとか、全部どうでもよくなって。 「あ、あぁッ、はああぁあぁぁああん!」  幸せな気持ちをいっぱい溢れさせながら、私は絶頂した。 「あぅ……ッ、う、うぅ……ッ、あ」  全身が多幸感に包まれて、意識がふわふわする。  このまま夢見心地に浸りたくて、その余韻に身体の主導権を手放そうとした。けど、クリトリスの上で、すりすり、すりすり、と二本の指が動き続けてた。 「あぅッ、ん……ッ、んんッ…んふぁッ!?」   そこからさらなる快感が送り込まれてきて、腰が逃げようとするけどダメだった。 「な、なんでっ? なんで止めて、くれないッ、の……ッ!?」  カエデさんに簡単に抑え込まれてしまう。   「まだ、始まったばかりですから」 「んひぃ……ッ!」  ニコッと微笑むカエデさんに告げられた言葉は絶望の始まりか、それとも楽園へのいざないか。  ただわかるのは、すりすり、すりすりと私のクリトリスを擦り上げるカエデさんの指は一定のリズムで動き続けているということだけ。 「あぅッ、ん……ッ、んんッ…んふぁッ…あ、あぁっ……ああぅッ!」  それが、次の絶頂へのカウントダウンを進めていく。 「あぁっ……、い、イクッ…ぅぅ! またッ、またイッちゃうぅッ……ッ、ぁ、はああぁああぁッ、ああ、あぅッ、んんッ!」   私の身体は内ももを震えさせながら、すぐさま甘い声を上げて二回目の絶頂を迎えた。 「あぅッ、ん……ッ、んんッ…んふぁッ…だ、ダメぇ……ッ、も、もうッ、だめぇ……ッ!」  でも、カエデさんの指は止まらない。  すりすり、すりすり、止まることなくクリトリスが扱かれる。 「うぁああ、あぅ、あぅう、イくぅうッ……ッ、ま、またくるうぅ……ッ、きちゃうぅ……ッ!」  私がずっと求めていた刺激が絶え間なく送られてくるのは「しあわせ」の四文字そのものだった。  でも、これは――。 「ああぁッ……あうぅッ、ぅぅ、きもぢ……よすぎッ、て、あたまバカになるぅう……ッ!」 「はい、あたまがバカになった光瑠お嬢さまをヒトイヌとして飼殺すのが目的ですから、もっと気持ちよくなって、バカなヒトイヌになってください」 「うそ……っ、そん、なのぉッ、聞いてなぃッ……ッ、イ……ッ!」 「はい、今教えてあげました」 「あ……っ、ぅあ、あぅ…あ、ぅああっ……ッ!」 「ふふ、光瑠お嬢さまはもう二度と人に戻ることはありませんから、安心してイッてください」  すりすり、すりすり、クリトリスが擦られる。  逃げようにも手足は折り曲げられたまま拘束されているし、仰向けに抱っこされているせいで起き上がることもできない。 「あ…ッ、あぁ、あ……ッ」 「死ぬまでずーーっと、このままです」 「い、イぁッ、ああああぅッ、ま、また……ッイ、ぐぅ、ああぁッ、はぁああぁああんッ!!」  その後もカエデさんの愛撫は延々と続いて、私は何度も絶頂を繰り返した。  あまりの刺激におしっこを漏らしたり、なんだりしてたみたいだけど、そんなのどうでも良かった。  絶え間なく続いた快楽責めに何かを考える余裕なんて私にはなかったのだ。 「さぁ、光瑠お嬢さま専用の貞操帯もつけてあげますからね」 「……ぁ、ぅぅ」  抵抗する気力がなくなったころに私のアソコへ二つの突起が挿入されていく。  一番細い突起はおしっこする穴の中にプスッ、て入ってきてヒリヒリしたと思ったら、痛みは消えた。  二つ目の反り立った形状の突起はぬるるッ、と膣の奥に入ってきて、お腹を突き上げてくるけど、キュンキュンしてたところが満たされた感じがしてすごく心地よかった。  カエデさんはその上からしゃもじ型の板をあてがって蓋をすると腰のベルトと固定してしまった。  ちゃんとクリトリスが寂しい想いをしないように吸引付きローターが触れるか触れないかのギリギリに備え付けてあることをカエデさんが教えてくれる。  最後はお尻の穴にアナルプラグ付きの尻尾を挿入したら、先程の璃音と同じ姿をしたヒトイヌが完成していた。 「もう、言葉も必要なさそうですね」  カエデさんはそう言ってから、私の口に何かを咥えさせる。  顎を大きく開いたまま、舌を外に出すことを強制する黒革のマスクは、璃音がツバキさんに咥えさせられていたものと同じだ。 「あ……っ、ぅあ、あぅ…あ、ぅああっ……ッ!」 「さぁ、ご褒美の続きを始めましょうか」 「あ、あぅ……ッ、ぅぅ」  カエデさんの手には貞操帯の玩具を操作するリモコンが握られていた。  このときに私は覚悟した。  もう、人には戻れないんだ、って。  エピローグ https://style-freya.fanbox.cc/posts/3118632

Comments

Anonymous

ストーリーはとてもエキサイティングです, 特に最後の褒美~お仕置き部屋見もたい~これからも応援していきます

-freya-

ありがとうございます〜! その辺も描く予定だったのですが長くなってしまったので今回は割愛したのです〜