ご主人様とペットライフ (Pixiv Fanbox)
Published:
2021-06-11 01:07:00
Edited:
2022-07-22 03:20:46
Imported:
2023-05
Content
ついに準備が整った。
棺桶のようなボックスにメイド姿で胸を抱くように寝転がるチハルと瓜二つの人形——人工知能搭載自立型アンドロイド——を見下ろす。
二〇XX年。科学の発達によりアンドロイドの存在は一家に一台が当たり前になっていた。
盗難やハッキングなど防犯の観点から、家主のDNAをパスに使用したオーダーメイドになっており、その役目は家主(DNA登録者)に関わる生活のサポートを目的としている。
チハルの寝室で二重の瞼を閉じながら、専用の寝床に横たわっているこのアンドロイドも上記と同じで一般的なアンドロイドと仕様はほぼ変わらない。
「それにしても……生きてるみたい」
チハルが購入したアンドロイドは最新鋭の科学が結集した新型タイプであり、肌の感触や骨格、声色、デザインまでも、家主とそっくりに繊細な再現が実現されている。
チハルが過去に関わったアンドロイドたちより見た目は断然優れており、血を分かち合った双子の姉妹が突然現れたかのような気分にさえなる。
つんつん。
しっとりと人の肌のように柔らかい頬を突いてみる。人工肌とは思えない質感が指先から熱を含んで伝わってきた。チハルが触れたからだろうか、白い肌にコントラストを飾りつける朱色の唇がわずかに微笑みを造形している。
緩い内巻きのボブカット。厚めの前髪。瞼に添えられた長いまつげをピクリと動かして視界を開けば、黒く透き通る虹彩が双眸の瞳に光を与えるのだろう。
「ちゃんと、動いてくれるといいけれど」
自分と鏡合わせのアンドロイドに、チハルは底知れない期待感を孕んでいた。
他人に打ち明けることさえはばかられるような、邪で、破滅的な、性への期待。
これからチハルが行おうとしていることは、一般的には許されない非人道的な嗜好だろう。
だが、チハルの自由な思想を隔てるような存在はここにはいない。
六畳ほどの寝室には、アンドロイドが横たわる寝床以外にも直径三センチの鉄格子を使用したケージがある。犬を飼育しているわけではないが、中型犬が二匹ほど入れる大きさのものを用意した。出入口には施錠するための機構が取り付けてあり、中に入ったペットをケージの中に閉じ込めることもできる。
他には黒と銀色の光を放つ道具たちをフローリングの床の上にこれ見よがしに並べておいた。
チハルが今回の嗜好を満たすために用意した貴重な品々だ。
全てのしがらみを捨て、この嗜好に目覚めてから、ここまで用意するのに半年もの期間を要した。
おかげで、チハルは孤独になってしまった。ような気もするがそもそもの原因は他にある。
――宝くじ。
社会人一年目の年に、海外へ留学中の親友と悪ふざけで申し込んでいたそれに当選してしまったのが全ての始まりだ。
世界的にも有名な宝くじで、たった一度の当選で、数百億という金額がチハルの手元に入り込んできた。
お金は一度で振り込むことはできないらしく、年間を通しての口座への継続振り込みという契約で了承した。
当選の噂は急激に広がり、職場や親、親族から世間まで、チハルの話でもちきりになるのは当たり前。
祝福の声が、妬みの声に変わるまでそれほど時間は掛からなかった。
もちろん、詐欺紛いの行為で近づいてくる人も多く、人生を共に歩んできたその親友さえも、お金目的でチハルに近づくようになり、それら全ての関係を断つために総資産の一厘にも満たないお金を使うことになった。
最初からチハルは孤独だったのかもしれない。
もともとチハルのことを理解し、受け入れてくれる存在など、この世のどこにも存在していなかったのだ。
宝くじはそのことに気づくきっかけになったにすぎない。
親からの呪縛。社会という制約。それらから解き放たれて見えてきた価値観がある。
どうせ、最初から孤独に生きているのなら、他人の目を気にせずに自分が一番やりたいことに集中して、行動に移すべきだ。
そのほうが、後悔もなく前に進める。
たとえ、失敗したとしてもやり直せばいい。
どんなに選択を間違ったとしても、人は誤ちに気づくことでやり直せる。
現在のチハルの住まいは、地方の空き家だった場所だ。
外堀、外装、内装、防犯、防音など全てをリフォームし、外との関係はほとんど遮断している。
近所からはお金持ちが引っ越してきた。という認知程度で、宝くじに当選したチハルが越してきたとは思われていない。
挨拶などもしていないから、近隣住民とは関わりもないし、税金はしっかりと払っているから、市からのお咎めもない。
今の環境であれば、他人に振り回されることもなく、チハルの好きなことをして生きていける。あいにくとチハルはアウトドア派ではなく、インドア派ということもあり、家から外に出なくてもストレスに苛まれることもない。
インターネットの普及にともない、宅配サービスも充実している。家庭裁判所に申請して名前も変更済みなこともあり、業者にバレる心配もない。
他人に気をつかう必要もないし、一年間に使用できる金額を計画的に練っておけば、お金という魔物に人生を壊される不安もない。
お金を浪費するのではなく、自分がやりたいこと。目指しているものへお金を使用し、経験を積むことを意識していくスローライフは、チハルの人生観を前向きなものへと大きく変えるに至った。
「さて、そろそろ始めようかな」
お風呂で身だしなみを整え、汗を流し終えたチハルは、寝室でバスタオルを脱ぎ捨てる。
「じゃあ、お願いね?」
「かしこまりました。ご主人様」
チハルと瓜二つの容姿をしたアンドロイドが黒いスーツを広げる。
ラバースーツに似ている黒色の滑らかな材質のスーツは『skin wrap社』が開発、製造を手がけている“衛生処理型健康促進完全管理スーツ”というものだ。
様々な期間でテスターを募り、研究を重ねに重ねて出来上がった世界最初の生命装置搭載型の全体スーツだ。
人間の肉体から排泄される老廃物をエネルギー源として分解処理し、ラバーの膜に埋め込まれているゴム製の電子機械によってそれらを管理する。
スーツの膜による身体のあらゆる場所のマッサージが可能であり、心臓が止まってしまうような緊急事態にも電気ショックで対処できるように特別な機能が搭載されていることに加え、衝撃や熱の変動に強く、防刃性も兼ね備えている。
さらに、スーツ専用の他のアタッチメントパーツを使用することで様々な機能を取り付けることも可能である。
要するに、人体における生活の一部を全自動で管理し、着用しているだけでどんな環境でも生命活動を行うことができるという科学者びっくりの優れものなのだ。
ただし、このスーツを着るとラバースーツを着ているときとさほど変わらない性的刺激が肌を包みこむ構造になっており、富裕層の中でも特定の性癖を持っている者しか着用したいと思えない代物になっている。
これから着用するつもりでいるチハルは、その特定の性癖を持っているということになるのだが、そもそもこのスーツが世に誕生した目的は、そういうプレイを目的とした富裕層が投資してきたから開発された高性能なラバースーツなのであって、まともな人間が「健康のため」「長生きするため」とかいう真っ当な目的のために開発させたものではない。
歪んだ性癖が生み出した悪魔の産物なのだ。
世の中、思想が狂った人間は沢山いる。チハルもその思想へ、一歩だけ足を踏み入れただけに過ぎない。
「うわ、これヤバイ」
スーツを着用するために潤滑液を使用したのだが、黒い膜の内側でネチャネチャと音を鳴らし、透明の粘液に満たされた入口に自分の身体を潜り込ませる行為は倒錯に満ち溢れていた。
足の指先からグチョグチョの粘液の黒膜に成熟しきったチハルの下半身が呑みこまれていく。
手際のいいアンドロイドの手さばきで、膝、太もも、股関節にまで黒い膜が這いあがってくる。余分に入り込んだ空気がプスッ、と抜けるたびに肌へ吸着する膜が引き締まったチハルのラインを引き立てていく。
「ご主人様、ネックエントリーから両手を袖へ通してください」
ネチャ、ネチャ。
「……っ」
ネチャネチャの透明の糸を引いている袖口へ、両腕を潜り込ませるように通していく。ひんやりとした黒い膜が、下腹部からへそ、胸下、を掬いあげるように包みこみ、たわわに実るチハルのおっぱいもスーツの内側へ閉じ込めてしまう。
クチュ、クチュ。
うなじに触れる首筋で、ぴっちりと黒い膜の入口が閉じ、チハルの艶めかしい肉のラインが黒い輪郭に満たされる。肩の上から腕を組むように両腕の輪郭を、ゆっくり撫でる指先さえも、一つ一つ精密に、精確に、膜で覆い、わずかな爪の輪郭さえ、膜の外側へ浮き彫りにしてしまっていた。
「……うぁ、んっ」
ジジジジジジジジジッ。
スーツの内側に残る空白を追い出していくように、収縮と伸縮を繰り返す微弱な振動が全身を襲ってきた。
チハルの女体に完全にフィットさせるためにスーツに仕組まれたシステムが稼働したのだろう。隙間が残っていた僅かな空間さえも肌に密着し、ぴっちぴちに張り詰めた第二の皮膚がチハルの肉のラインを引き締めていく。
たわわに実るおっぱいをつぶすことなく柔らかく絞り出し、先端で硬くなりかけた乳首は恥辱に憂いているのか、ぷっくりと尖端をとがらせて、どこか寂しそうに震えている。
「ご主人様、苦しいところはございませんか?」
「大丈夫。ちょっとだけ、あそこがキュンってしちゃっただけ」
「それでは、次はこちらを取り付けていきますね」
「うん、お願い」
アンドロイドが掲げている装具は、腹筋のように連なる体節制を備えたコルセットだ。
アーマーのような銀色の外殻と、その内側にスーツと同じ黒膜がはびこり、他のアタッチメントパーツと連結可能な仕組みになっている。
観音開きのコルセットを上下の腹部を覆うように胴体に被せるとカチリっ、と背中で接合部がロックされ、背筋を矯正するように嵌まり込んでしまった。
ギギギギギギッ。
「ん、んふ……ぅ、ッ……んぁっ!」
鉄が軋みながら、チハルの腹筋、背筋、横隔膜をゆっくりと締め上げていく。一定の位置で締めつけが止まり、背筋を伸ばすようにぴったりと胴体を矯正してしまう。
無理に姿勢を崩そうとしても、外殻に阻まれて、整った姿勢をとることしかできず、息苦しさが増してくる。
前後への動きに対しては少しだけ余裕はあるが、左右への腰の動きはほぼ失われた。
コルセットの圧迫により、腰が拘束され、腹部の柔軟性が奪いとられてしまったのだ。
「こちらも装着しますね」
そこへ半円形のお椀のような膨らみを作る二つの装具――貞操ブラ――が脇の下をくぐって、背後から抱擁するように、チハルの胸にかぶさってくる。
二等辺三角形のピラミッドが連なって、お椀型の膨らみを象りあげている。円の中心には乳首をくびりだすための小さなオープンポケットが備え付けられており、たわわに実るおっぱいをステンレスの檻に閉じ込めながら、チハルの硬く尖った乳首を乳輪ごとポケットの外へ絞り出してしまう。
「あ、はぅ……っ、んッ」
器の中に乳輪が収まるように、アンドロイドが何度かチハルのおっぱいの位置を微調整する。じくじくとたわわに実るおっぱいがお椀型を象るピラミッドとピラミッドの隙間から外へとくびり出されていく。
交差する黒色と銀色のピラミッドがチハルの胸を装飾し、たわわに実る二つのおっぱいを鉄の牢獄へ閉じ込めてしまう。
「ロックします」
バチンッ。
甲高い音がなり、二つの銀色のお椀がコルセットに連結された。
「こちらも連結しますね」
カチッ、カチッ。
さらに、肩甲骨を避けて両肩の上をとおり、胸の谷間へ降りてきた銀色のベルトもコルセットと連結される。
オープンポケットから絞り出された黒色の乳首は、銀色の円の中心で寂しそうに硬く尖り、チハルのおっぱいを艶かしく彩っていた。
人生で初めて貞操ブラをつけたのだけれども、思っていた何倍も恥ずかしい。
「んっ、……っぅ」
それに、銀色の檻に閉じ込められたおっぱいが、肉を余すように絞りだされていく感じがする。
装着してから時間が経てば経つほど肌に馴染むように密着してきているようだった。
「……っ、これ、やば」
扇情的に装飾されている二つの膨らみが自分のものだという認識をするだけで身体が高みへ昇っていきそうになる。
残りの装具も装着していけば、身体の自由を完全に装具に任せることになる。
一から十まで『skin wrap社』のもので取り揃えているとはいえ、このまま全てを受け入れてしまっていいものなのか。少しだけ迷ってしまう。
「残りのオプションも取り付けていきますね」
「そう、だよね……全部つけなきゃね」
一瞬だけ理性が働いて、迷いが生じるチハルを本来の目的にさとすように、貞操ブラの最後のパーツをアンドロイドが取り付けてくる。
カチっ、カチッ。
「んぁっ」
硬く尖った乳首を挟み込むように包んでしまう性具は、貞操ブラの先端を閉じてしまう黒色の膜で覆われたステンレスの蓋だ。
内側には、びっしりと連なるブラシのようなシリコンの束が密集しており、装着するだけで乳首がブラシに摘まれてしまう。
装置を稼働させれば、乳首だけを丹念にかわいがることができるブラッシング式の乳首ローターがチハルの身体を調教する仕組みになっている。
このオプションは取り外しが可能な仕様で、他にもいくつかのタイプを用意しているが、今回はこのタイプを使用すると決めていた。
はたからみれば、チハルの胸を包む銀色の器は、たんなる下着姿のように見える。だが、銀色の装具に閉じ込められた自分のおっぱいにチハルが自ら望んで刺激を与えることは不可能になった。
「ご主人様、次はこちらを装着してもよろしいでしょうか」
チハルと瓜二つのアンドロイドは、次なる無慈悲な装具をチハルの前に掲げてくる。
無感情であるからこそ成しえるその冷酷さが、チハルを次のステップへと導いてくれる。
「うん、いいよ……っ!」
銀色の光を反射するT字型の下着のような装具――ステンレススチール製の貞操帯――がアンドロイドの手で取り付けられていく。
コルセットと結合できるベルトと局部を縦に覆う板は二分割にできる構造になっており、基本的な貞操帯とさほど仕組みは変わらない。
しかし、この貞操帯は自慰防止を目的としたものではない。
I字の部位の内側には、付属されたオプション――ディルドやアナルプラグ――である機器を埋め込むポケットがあり、局部に貞操帯を嵌めてしまえば、胎内へ挿入したそれらを簡単に取り出せなくしてしまう構造になっている。
装着したが最後。体内に残り続ける性具によって、肉体を調教、開発され、貞操帯を身に着けている限り、装着者を性奴隷へと仕立て上げてしまう恐ろしい拘束具となっているのだ。おまけに、オプションには一つ一つに特別な機能が備わっているのだから、『skin wrap社』は抜け目ない。
「……ん」
コルセットのウエスト部に貞操帯のベルトが左右からカチリと嵌められ、仮留めされる。UFOキャッチャーのアームのように開くステンレススチール製のベルトの内側には、スーツと同じ黒い膜がコーティングされている。
この機構がスーツやコルセットの電子部位と連動する役目を担っており、お互いに電力の供給をすることができるようになっている。
「ふぅ……っ」
貞操ブラどうように貞操帯を身につけるのは初めてだから、少し不安な気持ちがよぎるが『skin wrap社』の製品に間違いが起きたというニュースはないし、心配はないだろう。
ましてや最新鋭のアンドロイドの制作にも携わっている大きな会社だ。チハルの知らないような技術が他にもたくさん使われているに違いない。心配どころか期待ばかりが募っていく。
「失礼します」
「……っ」
チハルの股下に、くっきりと一直線の黒いすじを作っているスーツのクロッチ――股の部位――をアンドロイドが指でなぞる。
くぱあ、とネチャネチャの糸を引きながら、黒い膜が左右に口を開き、男の味を知らない桃色の割れ目が露わになる。
まだ何一つ刺激を与えていないというのに、何かを欲しがっているようにヒクヒクと割れ目が動いてしまっていた。
「挿入れてもよろしいですか」
「……っ、挿入れたらダメって言っても、入れるんでしょ……?」
「はい、ご主人様がプログラムを停止されない限り、最後まで実行します」
膝をつきながら、チハルの恥部を黒い瞳でまじまじと見つめるアンドロイドの行動に、胸の奥から恥ずかしさが湧き上がってくる。自分と瓜二つの顔が自分の性器をじっくりと観察しているのだ。恥ずかしいに決まってる。
「……ゆっくりお願いッ」
「かしこまりました」
アンドロイドはチハルの割れ目を指先で広げ、ヒクヒクと可愛げに緊張している膣へ、潤滑液をふんだんに塗りたくり、テラテラと光輝くイボイボ付きの黒色のディルドをあてる。
クチュ、クチュ。
イボイボの先端を、未開発のチハルの穴に馴染ませるように、優しく、愛でるように、擦りつけてくる。
「あっ、んふ、んッ……っ、ぅぅ!」
奥歯を噛みしめるが、声が自然と漏れてしまう。
股をこわばらせるチハルに遠慮することなく、アンドロイドは僅かにほころんでいく肉の動きを見逃さずに、ゆっくりと、奥へ、奥へとディルドを肉の中へ呑みこませていく。
「あぅッ……っ、うぅッ、く……ふっ」
胎内へ入り込んでくる冷ややかな熱が、灼けるように熱を放つ肉の襞をかき分けて、チハルの中を満たしていく。
「はぁ、んッ……っ」
奥の奥まで埋め尽くし終えたディルドの底は縦長の貝殻のように黒い膜を広げており、そこには尿道に挿入するための細いディルドと、クリトリスを包み込む溝が備えつけられている。
尿道の位置に細いディルドの先端を合わせ、包皮の向けた桜色のクリトリスに溝をあてるようにアンドロイドは黒い貝殻の蓋を局部へ圧しつけてしまう。
「ぅあっ……!? あぅ……んっ」
おしっこをするときに感じるよりも太いヒリヒリとした痛みが一瞬だけチハルの恥部に走る。
すぐに痛みはじんわりとした異物感へと変わっていき、物足りなさがチハルの前の穴を満たしていた。
「んひッ……!」
だか、余韻に浸る間も与えず、アンドロイドの手は動き続ける。
ぷっくりと膨らみを作るお尻をかき分けて、菊文字に閉じている紅い穴へと黒く光る尻尾つきアナルプラグの先端をあてがい、膣と同じように奥へと挿入してくる。
「はぁ……ん、んぁっ、あぅ……っ!」
肛門がアナルプラグによって、無理やりこじ開けられ、常に排泄しているような謎の異物感が背筋をとおって脳にまで伝わってくる。
前も、後ろも、同時に犯された経験のないチハルにとって、これらは未知の刺激だった。膝から下がガクガクと震え、自分のとは思えない甘美に満ちた声が勝手に口からあふれてしまう。
ピチャ、ピチャ。
チハルの膣からこぼれ落ちた愛液がフローリングの床にシミを作る。
それを閉じ込めるように、アンドロイドは貞操帯の残りの部位――前後の局部を覆うI字の板――をチハルの股に潜り込ませ、内側にあるポケットに性具それぞれをあてがい、ウエスト部のベルトと繋げる。
「ロックしてもよろしいですか」
「……っ、やっちゃって」
バチンッ。バチンッ。
チハルの指示に忠実に従いアンドロイドは貞操帯をコルセットと完全に連結してしまう。
これで、ロックを解除しない限り、チハルの局部を永遠に拘束し続ける性具を取り出す方法はなくなった。そのクロッチの内側で、わずかな隙間を埋めるようにスーツの膜が貞操帯と一体化する。
カツ、カツ。
試しに局部を覆っているステンレスの塊に触れてみるも、内側にはほとんど刺激が伝わってこない。それなのに、下腹部の奥には明確な異物感が残り続けている。
「わたし、普通じゃしちゃいけないこと……っ、しちゃってる……っ!」
背筋から首筋にいたるすべてにゾクゾクする高揚感が脊髄の奥からにじみ出るように這いあがってくる。
自分の肉体を物のように扱っている背徳感が瞬く間に全身を侵し、さらなる期待を求めてしまう。
このスーツも、コルセットも、貞操帯も、体内におさまる性具さえも、チハル自身が計画を練り、自らを好き勝手に弄ぶために用意した調教道具たちだ。
それを自分と瓜二つの顔をしているアンドロイドに装着させているのだから、チハルの変態性が常軌を逸脱しているのは明白だった。
けれども、コレだけじゃない。コレはまだ、序の口だ。まだまだチハルの目的とは程遠い。
「ご主人様、次はどうされますか」
「じゃあ、っ……これを履かせて」
「かしこまりました」
アンドロイドに手渡したのは、チハル専用に作られた二等辺三角形の本革の袋――『レッグバインダー』――だ。
通常のレッグバインダーは両足を一つにまとめるための拘束具だが、このレッグバインダーは片足ずつ装着するタイプのものである。装着方法はいたって簡単だ。
仰向けに座り込み、チハルが膝を立て脚を折り曲げる。そこへアンドロイドがレッグバインダーを被せていく。
「ん……っ、ん」
ふくらはぎと太ももが密着した状態で、片足が本革の袋に包まれる、とそれだけで不自由になる。
両足それぞれにレッグバインダーを被せたあと、正座をするようにフローリングの床へチハルが座る。こうすることで、ふくらはぎと太ももがチハルの体重で押しつぶされ、さらに密着する。
「締めていきますね」
袋の側面に備え付けられた編み上げ紐を、靴紐と同じ要領でアンドロイドが一つ一つ丁寧に締め上げていく。
「……ッ、ん….っ」
ギギッ、ギギギッ、とレッグバインダーが脚に吸着するように密着し、最初からチハルの脚が袋の中に収まることが必然だったかのようにぴっちりと肌に馴染んでくる。脚を包み込む底知れない圧迫感に言葉を失ってしまう。
オーダーメイドとはいえ、いくらなんでもぴったりすぎる。
「……ッ」
レッグバインダーに拘束されたチハルの脚は、膝を折り曲げたまま股関節を支点に動かすことしかできなってしまった。
だが、アンドロイドの手は止まらない。次は、袋に付属しているポケットへ幅広のベルトを通し、脚に深く食いこむように締め上げていく。
ギチチッ。
二等辺三角形の上から、チハルの脚をキツく締め上げてくるベルトをバックルで固定してしまう。
チハルがどれだけ足に力をこめて膝を伸ばそうとしても、レッグバインダーに包まれた足はギシギシ音を鳴らすだけで、完全にビクともしなくなった。
これでチハルは立って歩くことができなくなってしまった。
「ロックしますね」
カチッ。カチッ。
チハルの返答を待たずに、アンドロイドがバックルに手をかざすと電子音が響き、ベルトがバックルに完全にロックされる。
ギギギッ。
「……っ、これは自力じゃ外せないね」
試しにベルトを緩めようとしてみるが、どれだけチハルがベルトを緩めようとしても、バックルに噛んでいるベルトはキツく締まり、バックルから取り外すことが不可能になっていた。
バックルの電子ロック機能は、最近開発された防犯機能の一つだ。本来は、窃盗などで盗まれた個人のカバンを容易く開封出来ないようにするための機能だが、自分の身体を拘束するための道具に施されていると違った印象を与えられる。自分の身体が開封不可能な「物」に変えられていっているような気分だ。
「次はこちらですか」
アンドロイドの手にはレッグバインダーと同じ形状の袋が用意されていた。
それはチハルの腕を足と同じように拘束するために用意された片手用のアームバインダーだった。
「それの前に、こっちを履かせてほしい……かな」
アンドロイドの足元に転がる黒革のミトン型の手袋を手に取って渡す。このミトンの手袋は元々はセットで販売されていなかったもので、あとからチハルの趣味でオーダーメイドで導入したものだ。
「では、お手をお借りしますね」
「う、うん」
アンドロイドへ手を差し出すとミトン型の手袋が被せられていく。震えているチハルの手のひらを全て覆うと、当たり前のように手首のあたりでベルトが留められる。
「こんな感じなんだ……っ」
普通の手袋のように中には五本の指を一本ずつ差し込むポケットがあり、収まった指は動きを制限され、力を込めてもミトンの手がわずかによちよちと動くだけになる。
片手のみでなく、反対の手にも同じように被せてしまえば、あっという間に両手とも細かい作業ができなくなってしまった。
もう、自分の力で手袋を脱ぐことさえも、チハルにはできない。
「こちらもロックしますね」
カチッ、カチッ。
アンドロイドの手がかざされると、手首のベルトがバックルに固定され、ミトン型の手袋の内側が突然窮屈になる。
指を動かせるほどのスペースは消え去り、手のひらそのものが圧迫されてしまっている。
ミトン型の手袋とスーツの機能が連動して、わずかな手の動きさえ封じてしまったのだ。手のひら全てを覆う圧迫感にすごい違和感を覚える。こんな機能あったっけ。
「次は先ほどの装具を装着していきますね」
「う、うん……ッ、お願いっ……」
まぁ、細かいことはどうでもいい。
あと少しでチハルの嗜好を実現できる。
ここまで用意したのだ。あとは最後まで実行するのみ。
「では、肘から中へ入れてください」
ミトン型の手袋を履いた手を肩にあたるように折り曲げて、アンドロイドが丁寧に広げている片手用のアームバインダーの袋の中へ肘を通していく。
ギッ、ギチッ。
「……っ」
上腕と前腕にかかる圧迫感に息をのむ。
まだ編み上げ紐も締めていないのに。袋をかぶせただけで、チハルの片腕は無力に固定されてしまった。
自分と瓜二つのアンドロイドに自分の存在が無力なものに変えられていく。
「こちらも入れてください」
ギッ、ギチッ。
反対の腕も同じように被せられる。
試しに上下左右に振ってみたり、ミトンの手でアームバインダーを脱ごうとしてみるが、ほとんどズレることはない。すでにチハルの腕をぴったり包み込んでいる。さすがオーダーメイドだ。
「締めていきますね」
チハルの無駄なあがきを見守り、一言告げると、アンドロイドはレッグバインダーと同じ要領でアームバインダーの編み上げ紐を締め上げていき、チハルに返事を聞くことなく、ベルトをロックしてしまった。
「……あはは」
ただでさえ窮屈だった上腕と前腕がアームバインダーに締めつけられ、がっちりと固定されてしまう。
さきほどと同じように上下左右、さまざまに動かしてみる。
肩の周りをぐるぐると動かすことはできても、肘を曲げたまま腕を開くことはできず、顔の近くでミトンに包まれた手がぴくぴく動くだけだ。
チハルの手足は拘束具によって折りたたまれ、自分の身体に施された拘束を外す手段を完全に失った。チハルが自由になるためにはアンドロイドに拘束を外すよう指示を出す他ない。
「次はこちらですね」
だが、アンドロイドはそんなチハルの前に次の装具を持ち出してくる。
拘束具の余韻に浸る間も与えてくれない。
「…………」
プログラムを停止させない限り、アンドロイドは設定通りの動作をするからだ。
このアンドロイドには特定のプログラムを受理させている。
チハルがプログラムの中止を命令をすれば、すぐにロックを解除して、全ての装具を外してくれるだろう。
今なら、まだ間に合う。
チハルが企てた計画を破棄するなら今だ。
そんなこと、わかっている。わかっているけれど。
「どうかされましたか」
チハルの様子を不審におもったのか。アンドロイドが問いかけてくる。
自分と瓜二つの顔に心配されるなんて、不思議な気分だ。
チハルはこのアンドロイドを利用して、自らの嗜好を満たすつもりでいる。
邪で、浅はかな破滅的な嗜好のために、自分勝手な考えのまま、他人が羨むような最先端技術を好きなように使っている。
馬鹿みたいだけれど、チハルはそういうことで興奮してるし、楽しいと感じてる。
この先にどんな感覚が、どんな刺激が待っているのかそれだけを知りたい。
誰も知らないであろう蜜の味を舐めてみたいのだ。
「……っ、なんでもない、続けて」
「かしこまりました」
最後まで自分が建てた計画を実行する。
チハルが指示を出さなくてもプログラムが終了するまで、アンドロイドは自動で判断し、稼働し続ける。
スーツの機能がある限り、チハルに命の危険が及ぶこともない。
期限はしっかり設定してあるし、問題ない。
不安なことは一切なかった。
「では、ご主人様。こちらを咥えてください」
アンドロイドの手にあるのはチハルが身に着けているスーツの残り――全頭マスク――だ。
この瞬間まで全頭マスクを被らなかったのには理由がある。
「さぁ、咥えてください」
水筒の口のような形状をしている黒い膜に覆われた円形の筒。
マスクの内側に存在するその突起物を口に咥えない限り、マスクを被ることは不可能な仕組みになっている。
こんな筒を口に咥えてしまったら、喋れなくなるのは当然だし、途中で計画を中止しようと思っても取り消すことができなくなる。
アンドロイドのプログラムは起動済みなため、チハルが言語で指示を出さない限り、停止することはない。
つまり、心の準備ができるまで、避けていたのだ。
「咥えてくださらないと、被れませんよ」
「……わかってるっ」
マスクの存在を目の当たりにして、破裂しそうなくらい心臓が脈打っていた。
頭の中はぐちゃぐちゃで、やっぱり、プログラムを取り消そうか悩んでしまう。
「さぁ、ご主人様。お口を開けてください」
アンドロイドはチハルの迷いを理解しているかのように、その突起を唇にあててくる。
「……っ、ん……んむ」
唇に馴染ませるように、少しずつ力を加えて、ゆっくりと口の中へと突起が入り込んでくる。
今のチハルは手足を拘束されていて、抵抗する手段はない。
もしも、アンドロイドが無理やり咥えさせてきていたら、チハルは怖くなってプログラムを停止していたかもしれない。
だが、アンドロイドの手さばきは違った。
「んぁ….っ、あ、あぅ….っ、ん、んんっ」
ねっとりと、優しい接吻のように口内へ入り込んでくる冷たい異物。チハルはそれを飴玉を口に含むように受け入れていく。
紅い舌を円形の筒の中に通して、異物を咥え込むと、口を大きく開けたままチハルの口が閉じられなくなった。
「被せますね」
「あぅ……ッ」
黒い膜がチハル眼前に迫り、おでこに擦れながら前髪を巻き込んで頭を覆ってしまう。
顎も、頬も、鼻も、額も、顔のいたるところにマスクの膜が密着して、外気との接触が消えていく。
「……あぅっ」
アンドロイドがマスクの位置を微調整すると、目元がポケットに合わさり、真っ黒だった視界がクリアになった。
それとは別に耳の中に突起物が入り込み、音がこもったように外部音と遮断される。
ジジジジジッ。
スーツと同じく、全頭マスクの機能が稼働し、微弱な振動が顔を包みこんでくる。
チハルの輪郭にフィットするようにマスクが収縮を繰り返すと、わずかな空気の隙間を減らしながら、肌に吸着。首筋で、スーツとマスクのつなぎ目が跡を残さず接合されていく。
「あぅっ、ううっ!?」
さらに、口で咥えている筒が突如膨れ上がり、チハルの歯茎が柔らかい質感のものに圧迫された。
ただでさえ大きく開いていた口が、限界まで広げられ、銀色の環から紅い舌をさらけ出すように口腔内が露わになり、いくらチハルが拒絶しようと舌が勝手に外気と触れ合ってしまう。
「あ、あうっ、えうッ」
手足をバタバタさせ、犬のようにだらしない口を開けた四足の生物の頭には、犬の耳を模した――マイク内蔵型の――二つの耳が添えられていた。
チハルの耳の中に入り込んでいる突起物のイヤホンと連動しており、着用者の聴覚を制限する機能がつけられている特別製で、補聴器としても使用できるし、通常のヘッドホンとしても使用できる仕組みになっている。
「ご主人様、こちらはどうなさいますか」
次にアンドロイドが手にしていたのは幅広な――ネックコルセット式――首輪だ。
「あぅ……っ」
怪我人の首を保護するような設計の物々しい見た目のそれは、チハルの胴体に装着されているコルセットとほとんど役目は変わらない。
チハルの首をステンレスの膜で包み込み、柔軟な動きを抑制してしまう補装具ならぬ拘束具だ。
さらに首輪にはチハルを調教するために、チハルが用意した凶悪なシステムが搭載、設定されている。
「装着していきますね」
「――ッ」
目の前で拘束されている無力なご主人様の首へ、アンドロイドは迷うことなく首輪をあてがい、装着していく。
カチッ。カチッ。カチッ。
観音開きのパーツがチハルの首に嵌まり込み、三重の電子ロックが施錠され、顎を前に突き出すように首が固定され、圧迫された。
ピピッ、ピッ。
チハルの首元で電子音が鳴る。
その音は、チハルが設定していたプログラムが安全に機能し、起動を開始した証明だった。
「飼育対象を確認、登録しました。これより飼育プログラムを実行。対象の日常生活を保持、指定された期間まで管理します」
チハルが待ち望んでいた目的がついに――始まった。
「はじめまして、こんにちは。これより、あなたの生活をサポート管理させていただきます」
「……っ」
先ほどまで、「ご主人様」といっていた人称が「あなた」に変わる。
それはアンドロイドの中で、チハルの扱いが変わったことを意味していた。
「これよりあなたには、ご主人様のいいつけを守っていただきます」
アンドロイドに指示を出し、チハルは自らの意志で、特殊なスーツに身を包み、様々な装具を身に纏って、性具という玩具を受け入れた。
それらは『skin wrap社』が独自に開発、製造を行った特殊プレイ専用のセッティング道具で、特定の嗜好を持っている富裕層にしか販売、取引されていない高価な商品だ。
チハルをこのような姿になるまで付き合ってくれた目の前のアンドロイドさえも、その商品のラインナップに含まれている。
SMプレイの中でも極めて稀なヒトイヌ拘束を安心な環境下で行えるようにと考え、制作された『skin wrap社』独自が先行して開発した特殊プレイ専用のシステムをチハルは本来とは違う用途で使用した。
本来の使い方なら「ご主人様」がいて「ヒトイヌ」になる「装着者」がいる。
しかし、チハルは「ご主人様」であるにも関わらず、「装着者」である「ヒトイヌ」へなり果てた。
「今後、あなたがご主人様のいいつけを破るたびにペナルティーを与えます。そのようなことが起こらないように、善処してください」
「……ッ」
「お返事は?」
「アゥッ!」
「ふふ、いい子ですね」
期間は三日間。
この三日間は、如何なる理由があろうとアンドロイドはチハルのことを「ペット」とみなす。
どれだけチハルが抵抗し、自分がペットであることを否定しようと、アンドロイドに設定されたプログラムが停止する、もしくは、ID登録されている首輪が外されるまでは「ご主人様」ではなく「ペット」として扱われる。
「現在は、自由時間のようですね。部屋を移りましょうか」
こうなってしまった以上。もう、チハルは後戻りできない。
プログラムが終わるまで、自ら用意したヒトイヌという人権を剥奪された環境で、自分と瓜二つの顔をしたアンドロイドに「ペット」として飼育され続けるしかないのだ。
「……あぅッ、……ぅぅっ」
想像するだけで、下腹部の奥が疼いた。
胎内に収まっている性具が、早く稼働してくれないかと、期待を込めて腰を振ってしまう。
開けっ放しの口から、涎が垂れて、床に滴っていく。
自分がどうしようもないくらい、惨めな存在に貶められているというのに、この浮かれ具合はヤバい。
でも、考えても見て欲しい。
ラバースーツと貞操帯によってあらゆる箇所が強調された身体の中に性具を差し込んだまま、手足を拘束具で拘束されて抵抗する術もなく、ヒトイヌとしてアンドロイドに飼育、管理される。
これが、三日も続くのだ。
腰を振らずにはいられなかった。
「なにをしているのですか? だらしないペットですね」
「……ッ!」
「ついてきてください。あまり遅いとお仕置きしますよ」
気持ちよくなりたいと思った矢先に、アンドロイドに注意されてしまう。
アンドロイドに映っているチハルは、あくまでもペットなのだ。
言いつけを守らないようなわがままなペットにはしつけが与えられる。
設定したしつけの内容は覚えているが、わざわざここでお仕置きをうけるつもりは、チハルにはなかった。
だから、普通にアンドロイドのあとをついていこうと手足を動かした。
「あぅ……ッ、ぅぅっ!? あぅ、あぅうッ!?」
転んだ。
バランスを崩して、あっさりと。
転んだ衝撃で体内の性具が、膣とアナルを刺激してきた。
昂っていた性欲が背筋から脳に駆けのぼって、軽くイってしまう。
「なにをしているのですか?」
折り曲げた手足を使って前に歩くだけ。そう思っていた。
でも、ちがう。
コルセットで腰の柔軟性を抑制され、首輪で強制的に顎を突き出した姿勢のままでは、拘束されている手足で立位を保ち、バランスを取りながら動かすこと自体が難しい。
「あぅ……ッ、ぅぅ!」
起きあがろうとする。
だが、手足をバタバタさせるだけで、チハルの身体はまったく起き上がることができない。
「あうっ! えぅ! おあぅ!」
「あなたは歩くこともできないペットなのですね」
「……ッ」
「仕方ありません。まずは歩行練習からおこないましょう」
「あぅ?」
寝室の床に倒れているチハルの身体を起こし、アンドロイドは近くにかけてあったリードを首輪の金具へ繋げる。
「では、歩きますよ」
グイッ。
リードが引かれる。
首に圧がかかり、自然と前方へ手足を動かす。
「あぅッ!?」
床を見る余裕なんてなくて、すぐにバランスを崩して転ぶ。
膣と肛門で性具が動いて胎内を刺激が襲ってくる。これ、気持ちい。
「さぁ、もう一度」
姿勢を直され、リードが引かれる。
「あぅッ、ぅぅ!」
チハルが何かを訴えようと関係なく、アンドロイドは決まった動作を繰り返す。
その度にバランスを崩し転ぶ。
「あぅうッ、うう! あぅう!」
チハルの口から涎がこぼれ、床を濡らしても、アンドロイドの動きは変わらない。
ペットが歩けるようになるまで、教育を続ける。
「あうッ……ううッ!」
グイッ。
いい加減、手足が疲れて、動かなくなってきた。なのに、アンドロイドは手を休めることはしない。
「さぁ、がんばってください」
いったいどれほどの回数転んだのか。わからない。
数える暇もないくらい、必死に手足を動かした。
チハルに拒否権はなく、ただただ絶対的な従属だけを強いられる。
それは、チハルが夢見ていたヒトイヌプレイそのものだった。
「――ッ」
床に這いつくばりながら歩くだけで、勝手に腰が震えた。
腰をねじったり、前後に力をこめるだけで、胎内の性具がゴロゴロ動いて気持ちがいいのだ。
フッションショーのモデルが歩くように、腰を左右に振って手足を前に出す。
「……アゥっ、ぅぅ!」
気が付けば、ヒトイヌとしての歩き方をチハルは理解していた。
右腕を動かすタイミング。左腕に力を入れる強さ。
足を動かす歩幅。
それぞれを、覚えていく。
「ふふ、その調子です。いい子ですね」
「アウッ!」
アンドロイドに褒められたことが、不思議と嬉しいと感じてしまった。
本来なら、チハルはアンドロイドのご主人様で、アンドロイドのほうがチハルに従属、従事するべき存在だ。
それなのに、チハルは自ら望んでこのような立場に自分を陥れ、惨めな想いを堪能して楽しんでいる。
明らかにおかしい。
これは、やっちゃいけないプレイだ。
自分の人格が、ゆっくりと軋みながら、壊れていく。なのに、それに酷く、興奮した。
「さぁ、部屋を移動しますよ」
「アウッ!」
腰を振りながら、拘束された手足を使ってフローリングの床を歩いていく。
だらしなく開いた口から涎が垂れて、恥ずかしい。
今のチハルは自分の家を涎で汚すことしかできない惨めなペットだ。
それならば、ペットはペットらしく、振る舞えばいい。
——残り三日。
チハルのペットライフはまだ、始まったばかりなのだから。