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   目的は、街の維持であった。  素材集めの効率化兼サーヴァント達の慰安を目的としたこの街を、長く運営していくため。  繰り返しになるが、それには大量の魔力リソースが必要である。  そのリソースを、カルデア側はサーヴァント達から譲ってもらっていた。  古株の英霊ほど、より多くの魔力を提供してくれた。  カルデアで、長い間鍛えてきたサーヴァントほど、強い。  強ければ強いほど、素材集めなので、魔力リソースをたっぷり確保できるという、寸法であった。  しかし、いくら堅い絆で結ばれているからとはいえ、全員が全員、無償譲渡に踏み切ってくれるわけではない。  当たり前だが、サーヴァントにはそれぞれ人格があり、こちらの言いなりの奴隷ではないからだ。  だから、マスターはそうした絆レベルMAXなサーヴァント達に、見返りを渡した。  相手の趣味趣向に合わせて、何かプレゼントを送ったり、というように。  一部のサーヴァントたち、例えば同性の男サーヴァントであれば、それでよかった。  いい塩梅のお酒をプレゼントしたり、食べ物を贈ったりすれば、気前よく魔力リソースをくれた。  あるいは、まったくの無償で「マスターが元気ならそれでいい」と、なんとも良い男な返答をくれるサーヴァントだっていた。    ただ、問題は異性のサーヴァントであった。  彼女たちの名誉のために言うならば、全員が全員、そうだった訳ではない。  それこそ、男性サーヴァントのように、何とも協力的な人たちだっていた。  だが、一部の女性サーヴァントは、そうじゃなかった。 「魔力リソースは渡すから、その代わりデートの一つでもしろ」と、要求する者が出てきたのだ。    冗談か、あるいは悪ノリか。  マスターは、最初そう思った。  ゆえに、いなそうとしたのだが、彼女たちはかなり食い下がってきた。  ほとんどの英霊が、本気だった。  しかし、その時点で、既にマスターはマシュと恋人関係にあった。  いくらお世話になっているとはいえ、絆が高いとはいえ、彼女以外の異性とのデートはまずいだろう──。  そう考えて、断ろうとした。  でも、ここで気を利かせてくれたのが、他でもないマシュ・キリエライトだった。 「良いですよ。ちょっと嫉妬はしちゃいますが、一緒にお出かけするぐらいであれば、構いません」  そう、優しく微笑んで、許してくれたのである。  だからマスターは、そうした女性サーヴァント達と一緒に、この街の娯楽施設なんかを回ったりした。  映画を見たり、ショッピングをしたり。  最初は、そういうお出かけ止まりのデートだった。  それで、彼女たちは満足して、QPを払ってくれたのだ。  だが、人は慣れる生き物だ。  慣れて、エスカレートする生き物である。  デートを要求してきた女性サーヴァントの中に、やたらめったらボディタッチしてくる者が現れ始めた。  最初は、やんわりと拒んだり注意していたが、「こんぐらいマシュも怒んねぇって♡」と笑いながら、腰に手を回してくるサーヴァントもいた。  しかも、そういうサーヴァントに限って、絆レベルMAXで、こちらも聖杯やら何やらを捧げている相棒的立ち位置だったので、かなりの額のQPを払ってくれた。  彼女たちがいたおかげで、乗り越えられた難所はごまんとある。そういう英霊たちに対して、強く注意するというのも、今後の関係性にヒビが入りそうで、気が引ける。  だからといって、自分の一存でなあなあにするのは、マシュに対してあまりにも申し訳ない。  ゆえに、ある日マスターはマシュに現状を告げ、デートにこっそり同行してもらうことにした。  彼女から見て、我慢ならないということであれば、ちゃんと拒絶しよう。そう考えたのだ。  結論として、マシュは許した。 「先輩に危害を加えられているのであれば、決して看過できませんが……一応、単なるスキンシップとも取れますし……」  やや、引っかかっているようではあったものの、彼女はそう言った。  ただ、その反動でというか、その日の晩、マシュは今までにないほど、強く求めてきた。  まるで、他の女の匂いを自分の匂いでかき消そうとするかのように、激しく腰を振った。  思えば、その時点でマシュ・キリエライトは、狂いつつあったのかもしれない。  その日以来、カルデアの女性サーヴァントたちのスキンシップが、激しくなった。  『他でもない、恋人のマシュがマスターへのボディタッチを許した』という事実が、彼女たちの一種のタガを外したのは、明白だった。  遠慮のなくなったサーヴァントたちは、それはもうエグかった。腰を抱くなんて飯事だとばかりに、服の下に手を入れてきたり、冗談めかして笑いながら股間をまさぐってきたりした。  そんな状況なのに、マシュは止めなかった。 「せっ……♡ 先輩たちのデートの様子は、街の監視カメラでしっかりチェックしています……♡♡ もしも本格的に危なそうなら、私が割って入りますから……♡♡♡」  そう言っていたが、サーヴァントたちのスキンシップ──否、逆セクハラがどれほどドギツくなっても、マシュが乱入してくることはなかった。  代わりに、そういう日の夜は、いつも以上に激しく跨られた。  明らかに、マシュは興奮していた。  マスターが、自分以外の女にセクハラされているのを見て、劣情を催していた。  それに、他の女サーヴァント達も気づいたのだろう。  徐々に、デート時の服装が、こちらを誘惑するものに変わっていった。  その次に変わったのが、態度だった。  いよいよ、セクハラが露骨になってきたのだ。 「なぁなぁ、マスター♡ アンタ、マシュと上手くやれてんのか?♡ ……決まってんだろ、セックスのことだよ♡」  マシュとの性生活について、ズケズケと聞いてきたり──。 「はい、金玉抜き打ちチェ~ック♡ おほっ、プリップリじゃん♡ 濃ゆいの、たっぷり詰まってんなぁ♡ もしかして、昨日の夜はイイの出せなかったのか?♡」  ズボンの下に手を差し込んで、ダイレクトに睾丸を揉みしだいてきたり──。 「……白状しろよ♡♡ オレとのデートに向けて、溜めてきたんだろ?♡ そうですって言えや♡ 今からでもスッキリさせてやっから♡♡」  耳元でぽしょぽしょ囁きながら、人気のないところに連れ込もうとしてきたりと、まあ、やりたい放題である。  どうにかこうにか拒んでも、「あはは、悪ぃ悪ぃ♡ 冗談だって、冗談♡」と笑って誤魔化されて終わりだ。  明らかに、一線を越えようとしている彼女たちに、マシュからのお咎めはなし。  それどころか、定期的にデートに同行しては、目の前でセクハラを受けているマスターを見て、こっそり股をモジつかせる始末。    もう、かなり限界だった。  何故なら、逆セクハラサーヴァントたちは、一人残らず、性癖ドストライクな美女ばかりなのだ。  まるでこちらの好みに合わせて、徐々に霊基を作り変えているとばかりに、たっぷり実った女体。  マシュよりも安産体型な下半身に、マシュとは比べ物にならないほど大きな乳房。  雄としての本能が、子どもを残すならこっちの雌だと、やかましく騒ぎ立てるような極上のボディ。  そんな身体の持ち主である美女や美少女に求められ、反応するなというのが無理な話である。  それでも、マスターは最後の一線を、鋼の意志で守っていた。  他ならぬ、マシュへの操のために。  なのに。   「先輩。実は、一部のサーヴァントの方々から、デートプランに関して要望がありまして」    あの日。  マシュは、マスターを自室に呼び出して。 「具体的には、払う金額に応じて……きっ、キスや♡ ……それ以上のことっ……♡♡ させてくれないか、との要望で……♡♡♡」  どうして。  どうして彼女が、その話を、自分にしたのか。  もう、マスターは理解していた。  だから一言、彼女に尋ねた。    マシュは、どうしてほしいのかと。  すると。  すると、彼女は。  自分と絆を育んできた、唯一無二のファーストサーヴァントは。  にやぁ……♡♡♡ と、蕩けるように笑って。 「ま、街の維持コストに、莫大な量のQPが必要なのは、事実ですので……♡♡♡」  事実だった。  確かに、マシュの言う通りだった。  でも、マスターは知っている。  その言葉には、彼女自身の欲望も、多分に含まれていると。  しかし、口にはしない。  ただ、従った。  従えば、街は維持できる。素材が集まり、有事に備えて、英霊たちをより強くすることができる。  そう、自分に言い聞かせた。  自分に言い聞かせながら、マスターは、ついにサーヴァント達に身体を委ねた。  逆セクハラなんか目じゃない、本気の雌の欲望に晒された。  毎日だ。  毎日のように、マスターは、マシュ以外の女性に抱かれた。  一体、どれほどの額のQPを捧げられただろうか。  妖精国で、モルガンから賜った1億QPを、軽く超していた。  英霊たちは、マスターを買うため、今まで以上に周回に熱心になった。  街で集めた大量のリソースの一部を、街の維持や発展に充てる。  ある意味で、理想的な経済の循環だ──それが、マスターただ一人の性風俗によって支えられていることを除けば。  正直、異常だとは思う。    でも、マスターはこの日々が嫌いではなかった。  何故なら、マシュが喜んでくれるからだ。  他の女に抱かれた晩、マシュは普段の温厚な性格はどこへやら、獣のようなベッドヤクザに転身した。  最初は戸惑っていたマスターだが、何度も抱かれるにつれ、だんだんとそれが悦びに変わっていった。  あるいは、マゾヒズムに目覚めつつあるのかもしれなかった。  ただ。  この、一種の被虐趣味の萌芽により、やや、困った変化も起こりつつあって。 「あーあ♡ でも、本当に嫉妬しちゃうなぁ~♡」  時は現在に戻り、武蔵が笑う。   「これじゃあ私たち、当て馬じゃん♡ 二人のラブラブエッチを燃え上がらせるための、スパイス♡」 「べ、別にそんなつもりはありませんよ?♡」  マシュが、慌てて首を横に振る。  そんな彼女に、武蔵が「またまたぁ~♡」と続ける。 「正直になっちゃいなよ♡ マシュ、本当はQPなんかどうでもよくて、自分が気持ちよくなるためだけに、マスターのこと抱かせてるでしょ♡」 「うっ♡ ……は、はて?♡ おっしゃってる意味が、よく分かりません♡ 恋人を抱かせて興奮するなんて、一体全体、どういうメカニズムですか♡」 「決まってるじゃない♡」  にやり……♡ と、武蔵が微笑む。 「好きな人が、他の女と赤ちゃん作ろうとしてるのを見るとさ♡ 『駄目ぇ~♡ その子じゃなくて私を孕ませてよぉ~♡』って、子宮が本気で排卵しちゃうの♡」 「ほ、本気で……♡♡」 「そうよ♡ 雄を振り向かせるための、雌の本能ってやつかな?♡ 私にも覚えがあるから分かります♡ マシュがマスターと付き合い始めたって聞いた時、丹田の下が、キュゥ~~~~~~ンッッ♡♡♡ って疼いちゃったから♡♡」 「な、なるほど♡ ……だから、寝取らせた後の先輩とのエッチが、あんなに気持ちいいんですね♡」  マシュが、ぽしょりと何かを呟く。それは湯のチャプチャプという音に紛れて、マスターには届かなかったが、武蔵には聞こえたのだろう。  その上で、彼女は──。 「う〜ん♡ …………いや、まだ足りてないと思うよ?♡」  首を、横に振った。 「え?♡」 「だからさ♡ 本気の本気、子宮にズドンってクるガチ排卵のためには、今のお遊び逆NTRごっこじゃ、全然足りてないんじゃないかってこと♡♡」   「っっ…………♡♡♡」  ごくりと、また、マシュが生唾を飲んだ。  そんな彼女の反応を見て、武蔵が、笑みをますます深くした。  例えるなら、獲物が罠にまんまと掛かるのを見た、狩人のような笑み。  その視線が、マシュから、マスターの方へと移る。  ぞくりと、雄の官能を刺激する、いやらしい光の塗布された、眼差し。  その視線は、ペニスを向いていた。  タオル越しに、亀頭の輪郭が浮き出てしまうような、本気勃起テント。 「……さてさて♡ ガールズトークもこれぐらいにして、そろそろ、タオル取っちゃおっかなぁ~♡ ……もしかしたら、タオルよりも大事なもの、奪っちゃうかもだけど♡♡」  武蔵が囁く。  その声は、マスターには勿論、マシュにも聞こえていたらしい。 「っっ…………♡♡♡ んふうぅぅ……♡♡ んしゅうぅぅぅ……♡♡♡」  明らかに、マシュの鼻息が、荒くなった。  その音色を聞きながら、武蔵が笑う。 「……じゃあ始めよっかマスター♡ 私との、恋人ごっこ♡♡」  その時、彼女の目から、ちろりと、鬼火のような眼光が零れるのを、マスターは見逃さなかった。  声も笑顔も、どこか冗談めかしたものだったが、視線だけは本音が混ざっていた。  本気で寝取ってやる……♡♡♡  ぞくり……。  マスターの背筋が、甘く痺れる。  いけない、と思う。  これは、駄目だ。  これは、駄目なマゾヒズムだ。  招かれざる、心境の変化。  優秀な雌に、強烈に求められると、相手がマシュじゃないのに、靡きそうになる。  駄目だ。  絶対に駄目だ。  マスターは、自分に言い聞かせる。  マシュが、好きだといってくれたのだ。  長い旅路、ずっと隣にいてくれた、大切な大切な後輩。  そんな後輩を、裏切っていいのか。  絶対に駄目だ。  自分は、マシュを愛している。  であればこそ、他の女性に体を許しても、心まで奪われてはならない。  ぎゅう……♡  武蔵に、腰を抱かれる。  豊かな乳房を、押し付けられる。  密着。  彼女の、ぷるんとした唇が、こちらの耳元に近づいて──。 「……『ごっこ』で終われるよう、頑張ろうね♡」  マスターは、歯を食いしばった。  頑張ろう。  絶対に、マシュを裏切るような真似はしない。  硬く、決意する。 「ぶふぅうぅうぅぅっ……♡♡ ぶっふぅううぅぅぅぅうっっ……♡♡♡ あ゛っ♡ 駄目っっ♡♡ 想像しただけでっっ……♡♡ ~~~~~~~っっっっ…………♡♡♡」  そんなマスターの隣で、当のマシュは猪のような鼻息を漏らしながら、ギュッと背を丸めて、身体を痙攣させた。  明らかな、アクメ。  一体、何を想像して、彼女は果てたのか。  マシュが、ゆっくり、顔を上げる。  目を潤ませて、僅かに涎を垂らしながら、彼女はうっとりと笑っていた。 「し……しんじてましゅからね……♡♡ せんぱい……♡♡♡」  一体、何を信じての言葉なのか。  マシュの名誉のために、マスターは、そこで思考を止めた。

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