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 くちっ……くちっ……くちゅっ……と、淫らな水音が耳の内を支配する。

 はっ……はっ……という吐息がその合間に混じり、甘い香りが鼻腔をくすぐる度に、他人の息の匂いがこんなに甘く感じるものかと驚かされる。


「まだ、気持ちいい場所に一つも触れてないのに濡れてきた……♥ 下着の色、濃くなってるのわかる? こんなノンケ、どこにもいないって……♥」

「あのんちゃんが作るべきは、カレシよりもカノジョよ♥ 正確に言えば、私たちの誰かから選ぶべき♥ わかる? わかるわよね?」

「(ど、どうして、こんなことに……!?)」


 バンドメンバーによって左右から性的な責めを受け、それどころか交際を望むようなことを暗喩までされながら、千早愛音はただただ困惑する。

 しかし、その困惑もカリカリと左右から乳首を指で爪弾かれれば溶けて消え……そして、女の子を主張するそこは、間違いなく興奮で固く尖っていた。



 ──その言葉は、あまりにも自然に口にしたものであった。

 言うなれば「今日、天気悪いよねー」と同じくらいのノリで放たれたもの。

 周囲は当たり前に、しかし真剣とは程遠い同意を返してくるものと、愛音は頭から信じていた。


「彼氏欲しいなー」


 ……MyGOの面々の動きが一斉に停止し、ぎゅるんっ! と音を立てて愛音に集中した。

 その顔には、同意どころか困惑と驚愕、そして怒りが僅かに混ざっている。


「愛音ちゃん……どうして彼氏欲しいなんて言ったの!?」

「うわぁっ!? そよりん、圧がすごっ……えっ、春日影歌った時よりも怒ってない!?」

「はぁぁ……このバンドに常識人は自分だけだと思っていたけれど、訂正する。異常者が一人、紛れ込んでたみたいね」

「異常者!?」


 長崎そよと椎名立希が、整った顔を失望と激怒に染めながら強い言葉で言い立ててきて、愛音はすっかり困惑する。

 「彼氏欲しいよね!」は別に、男に飢えて今すぐ誰かと付き合いたい! とかでは全然なく、あくまで鉄板ネタとして口を突いただけである。愛音も性嗜好はストレートだとは思っているが、彼氏が今すぐほしいと渇望している訳でも、意中の誰かが居るのでもない。

 しかし、そんな軽いジャブのような会話に、コーナーリングに括り付けてからの執拗なボディブローのような、徹底的な拒絶が返ってくるなど、どうして想像できようか。


「……つまんねー女。ビッチ」

「考え得る限りの悪罵が飛んできてる!? 何が起きてるの、パラレルワールドとかに迷い込んだの!? そ、そうだ、ともりん! みんなと感性がちょっと違う、ともりんなら……」

「あのんちゃんには、残念ながらバンドリキャラとしての自覚が足りない」

「メタいこと言い出す方にキャラをズラしてきた!?」


 もはや練習とかいう空気ではなく、愛音はちょこんと椅子に座らされて、周囲をMyGOの面々に包囲されてしまう。ほんの先までは、様々な軋轢を超えて結束し、バンドとして形になってきた、少女たちの爽やかな青春群像がそこにあったはずなのに、愛音を今包囲している空気は刑死場の如く張りつめている。


「……イギリス、だな。彼の国で性嗜好を歪められてきたに違いない」

「紳士の国への風評被害はやめよう!? そもそも私、イギリスに馴染めなくて戻ってきたんだけど!?」

「いい、あのんちゃん? バンドリの世界では公式ノンケ女子はご法度。女の子は女の子に恋をして、巨大感情を抱くのが正しい。男と絡む作品にはヘテロタグが必須、恋愛と関係ない弟が生えてきただけで、大炎上する世界なのよ?」

「あれは百合厨の暴走とか言われると、問題の本質見えてない荒らしだなって踏み絵になるけどね」

「上位意思の思想が介入してるから! センシティヴなことには触れないで!」


 何とかツッコミを入れていくが、メンバーの放つ圧は本物であり、少なくとも彼女たちは本気でそのことを信じているらしい。

 この時、愛音の陽キャとしての、一番悪い部分がうっかりと露出してしまった。


「まあほら、それって男の子と付き合ったことがないから、頭が固くなってるっていうか……そういう娘たちに限って、男の子と恋愛すると夢中になっちゃっ……て……」


 如何にバンドリ界の陽の化身、愛音であろうと、言ってはいけないことがある。

 途中でそのことに気付き、尻切れ気味に「なん、ちゃって……」と呻く愛音だったが、既に肝心の部分は全て口にしてしまった後だった。

 四人はもう、愛音に言葉をかけてくれることすらなく、完全に「こいつはダメだ」と判断した目になると、身を寄せ合ってボソボソと何事か話し合い始める。


「いっそ……イプ……して……」

「二度と……男で……きない……」

「顔のいい……が、左右から……」

「(漏れ聞こえてくる単語が不穏過ぎる!?)」


 もう、恋愛の話なんてやめて練習しよう……そう言えば、音楽に真摯なみんなは正気に戻ってくれるだろう。

 そう考えた愛音は声をかけようとして、何時の間にか話しているのが三人だけになっていることに気付いた。


「あれ? ともりんは……」

「親指同士を結ぶと、もう立てない」

「はぁっ!? い、いつの間にか背後取られて……って、あれ? ちょっ……本当に立てなっ……」


 がたがたと座らされた椅子を鳴らしていると、目前にはいつの間にか、そよと立希の姿があった。

 ぺろりと唇を舐めてみせる姿に、愛音は美しい爬虫類の影を見たという……。



「あっ……あっ、あぁぁっ……♥ だ、め……ちく、びぃっ……♥ ホントにダメ、だからぁ……♥ あっ、お゛っ……♥ ひっ……へ、変な声出るの、やだっ♥ と、止まってよお……あ、謝る、謝るからぁ……♥」

「へえ……それじゃあ、あのんちゃん。何が悪かったか、説明できるの?」

「え、っと……それは……ふぅぅっ♥ つまんで擦るのダメっ♥ ひっ、ひうぅぅっ♥」

「失格。何にも分かってないのに、形だけ謝って逃げようなんて、愛音らしくない。彼氏を作ろうとかいう考えが、愛音から前向きな心を奪ったのよ……愛音を返して」

「ここにっ、ひぅっ♥ いる、よぉぉっ……♥」


 顔のいい二人から時に脅され、時に甘やかされて、徹底的な責めは続く。

 ある程度まで責められて、軽く達してしまう度、片方は責めを続行し、もう片方がじっと顔を見つめてくるというのが繰り返される……その顔の良さ、同じバンドの仲間、友人として意識していた造形を、今度は性的な快感と結び付けられていく。


「(う、ぁ……まつげ、長……♥ こんな、唇ってぷるぷるしてたっけ……♥ そよりんもリッキーも、レズってことは女の子といつもこんなことしてるのかな……私がこれまで気付かなかっただけで、これまでも私の知らない人と……知ってる人と、セックスしてたのかな……♥)」


 きゅぅぅ……と下腹が熱くなり、嫉妬とも興奮ともつかない感覚が体を貫く。

 そうやって体を熱くしているのを、二人は決して見逃さない。左右からくりくりと乳首を弄りながら、ぴちゃぴちゃと耳を舐め回され、時どき耳たぶを噛まれる。


「好き、好き、好き、好き……♥ あのんちゃんは女の子が好き♥ ちょっと自分のことを誤解してただけ、本当は女の子相手にエッチな気持ちになるのよね♥ 女の子にしか興味がない……男なんて、どうでもいい、恋愛の対象外……♥」

「堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ……♥ ノンケだっていうなら、私たちのことを好きになればいい……♥ 元ノンケのレズなんて、幾らでもいる……音楽業界では、当然だよ♥ ほら、こうやってお腹をぎゅーって押されると、たまらない……♥」

「はぁぁっ♥ んっ、んんっ……ダメ、だよぉ……♥ も、頭……おかしく、なるぅぅ……♥ くあぁぁっ……こ、これ以上は、本当にダメになるから……♥」


 思えば二人は、愛音がその言葉を発するのを待っていたのかも知れない。

 わかりやすく限界を迎えているサイン……確実に愛音の嗜好を矯正するチャンスを。

 先まで自分の乳首を弄っていた指が、つぷぷ……じゅぷっ……と、すっかり濡れそぼって準備を終えた膣の中へと入り込んでいく。ぐじゅっ……と白く泡立ったのは感覚でわかるが、散々に造形の良さをわからされた二人の、柔らかな頬で左右から拘束されてしまい、どちらの指が挿入されているのかも判別がつかない。

 かりっ、かりっ……と、もう片方の指は、お尻の穴の周りを軽く指で掻いており、そちらも性感帯にしてしまうつもりなのだと分かった。そのことにもう、抵抗の意思は沸いてこない。


「あぁぁっ……♥ いっ、うぅぅっ♥ 気持ちいいっ……♥ 指、気持ちいいっ♥ 気持ち、いいからぁ……♥ も、もう、許してぇ……お願いだから、もう……こ、これ以上はぁ……♥ んくっ……ひうぅぅっ……♥」

「駄目よ……このままだったら、どんな指でもバイブでもディルドでも、挿入さえしたら気持ちいいって勘違いするでしょ?」

「確実に私たちの……MyGOのモノに躾けないとな……♥ メンバー相手に、常に発情してるくらいにするから……♥」


 二人が、これまで肩を突き合わせていた方の腕を高く上げ、つるつるで汗が皺に溜まっている腋を見せつけてくる。性的な刺激を受けすぎたせいで、感性がおかしくなっているのか、愛音は二人の腋を見つめてドキドキが止まらなくなっていた。


「はっ……んっ、はあぁ……あっ、あぁぁっ……♥ そ、そんなところ、見せて……♥ そんな、えっちなところぉ……♥ ほぉぉっ……♥」

「こうするのよ、もちろん♥」

「ほら、私たちの匂い、覚えるんだよ♥」

「んむぅぅぅぅぅっ♥」


 ぱふっ……と二人の腋で顔を覆われて、鼻と口に柔らかい腋肉がめり込んでいく。

 むわぁぁ……とこれまでほんのりと感じていた甘い匂いがなだれ込み、鼻腔と喉と脳を焼いていく。

 指が蠢いている秘所から激しく潮を吹き、何度も何度もピンと足を延ばして痙攣して……興奮が、止まらなくなる。愛撫が与えてくれる快楽よりも、完全に女の子の匂いで発情してしまっていた。


「(あぁぁっ……♥ これ、覚える……女の子の匂いで、甘い匂いで興奮するの、完全に覚えちゃった……♥ もう、男の子に興味なんて持てない♥ だって、女の子の方がふわふわしてて、匂いが甘くて気持ちよくって♥ んんっ♥ かわいくてぇ……大好きだからぁ♥ 私、レズ、だったんだぁ……♥)」


 ひときわ激しく絶頂した後、顔から腋が外される。舌を突き出して痙攣している愛音に、静かに立希が語り掛けた。


「それで、愛音は男の子が好きなの? 彼氏、欲しいと今でも思ってる?」

「い、いらなぁい……♥ 男の子になんて、興味ない♥ カレシも、いらない……♥ そよりんやリッキー相手に、浮気したことになるもん……♥」

「可愛いわ……ようやく正しい道に戻ってこれたのね、あのんちゃん♥」


 二人は本当にうれしいといった様子で、愛音の体を抱きしめ、撫で回しながら首筋にキスをしてくる。

 その刺激だけで軽く達してしまった愛音の前に、気づけば残りの二人も室内に戻っていた。

 無言のまま、燈たちが足をすっと延ばしてくる。、靴下が脱がれた、素足だ……愛音は迷わず土踏まずに顔を埋めて深呼吸してから、ゆっくりと指を順番にしゃぶり始めた……。


「あはっ……えへぇぇ……♥ みんなの、共有カノジョになるぅ……♥ レズ、気持ちいいっ♥ レズ、最高……♥」


 もう二度と、愛音が性癖迷子に陥ることはないだろう……。

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Comments

ソウシップ

まさかこっち側でバンドリのリクエストを見る事になろうとは予想外。 愛音ちゃんはあんだけフラグばら撒きまくったんだから今更ノンケに行けるわけ無いだろうが!()

屋根が高い

愛音ちゃん、リクエストを送られた段階ではノンケっぽかったのかも知れませんが、今はもうレズにしか見えねぇ…! こういう背景があったのかも知れませんね!(無い)