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筆の進みが悪く、今回は少な目の文量となります。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- ――森でバッタリと熊と遭遇してしまったらこんな気持ちだろうか……  膝上まである水位だが彼女の足元だけ浅瀬になっているのだろうか、まるで水面に立っているかのように全裸の女性が目の前にいる。  水槽の中にいるときにはわからなかったが、彼女の長い髪は栗色というよりオレンジに近いだろうか、特徴的な髪色をしていた。  水を吸って垂れる長い前髪の隙間からジッとこちらを見ている。  そこに浮かぶ感情はうかがいしれないが、彼女の放つ殺伐をした雰囲気が変わらずだった。  はじめて見た時には鎌を手にした死神を連想させた彼女だが、二度目となれべその身体を観察する余裕もあった。  手足は長く、ほっそりとしてスレンダーな体躯だが、それに似合わぬたわわな乳房をもっている。双乳はその重さで垂れることもなく砲弾状に突き出されいた。 (大きさでいえばシオさんの方が上だろうけど、実物を前にしたその迫力は目を見張るものがあるなぁ)  そんな不埒なことを考えながら引きつる顔で愛想笑いを浮かべてみせる俺を、彼女はジト目で見ていた。  その視線が不意に外れると横へと流れた。流されずに残っていた自走式の磔台の陰から狗面の大男が飛び出してきた。  先ほどの黒人とは違い白色系の肌をした男の方だ。襲い掛かるチャンスをうかがい隠れていたのだろう、丸太のような剛腕を繰り出して彼女の顔面を狙う。  それを彼女は軽く首を傾げただけで避けてみせた。拳圧で長い髪が靡くほどの凄まじい威力だ。掠っただけでも大惨事なのだが、彼女の表情に相変わらずムスッとしたまま変化はない。  すかさず二撃目を放とうとする大男だが、それは叶わなかった。  次の瞬間にはその巨体は宙に舞っていたのだ。  彼女が蹴り上げたと理解した時には、男の身体はゆうに五メートルはある高さまで飛んでいた。 (いや、いや、おかしいだろう)  まるでダンプカーにでも引かれたような飛びようで、とても細身な女性の繰り出せる威力ではなかった。  仰向けで打ち上げられて空中で手足をジタバタしている姿は亀の子のようだが、それもすぐに背を下にして落ちてくる。  それをI字バランスのように突き上げられた彼女の右脚が受け止めた。  百キロ以上はありそうな肉の塊が五メートルの高さから落ちてくる。その衝撃は凄まじいもののであるはずなのに、彼女の身体は衝撃で揺れることすらなかった。  軽々と巨漢を片足で支える光景は、俺の中にある様々な常識を吹き飛ばしていた。 「ぐッ、ぐぇぇぇぇッ」  衝突の衝撃はすべて男に返ったのだろう。彼女の足を支点にして男の身体が大きく仰け反り、苦しげに手足を振り回わす。  だが、それもまるで見えないものに絡みつかれて足掻いているようにも見えた。  どんなに足掻こうともその状態から逃げ出せぬまま、メキ、メキと嫌な音を立てるたびに男の身体があり得ない方向へと曲がっていくのだった。 「ノッ、ノォォォッ」  野太い声が悲痛な叫びをあげたのを最後に、なにかが砕ける音とともに男は動かなくなった。  あらぬ方向へと折れ曲がった男の身体を、彼女はゴミでも捨てるように無造作に放り投げていた。 (いや、いや、いや……なんだよこれ、死神なんて甘い表現だったよ)  正直にいえば目の前で起こっていることのほとんどが理解できなかった。  常識の範疇にない存在、人間は理解できないモノを前にすると思考が止まってしまうのを、そのとき初めて知った。  悠然と水面を歩いてくる彼女――鷹匠 杏子の姿を呆然と見つめていた。  混乱する頭の中に沸き起こるのは、畏怖や恐れといった感情で、身体が竦んでピクリとも動けない。 「…………」  いつの間にかそ彼女が目の前にいた。裸体であるのを恥ずかしがりもせず、腰をかがめて俺の前で顔を突き出している。  口をパクパクと動かしているのをただ見上げていると、だんだんと彼女が不機嫌になってきたのがわかった。 「――痛ッ」  唐突に脚を蹴られて、その骨にまで響く衝撃に思わず涙がでてしまう。 「な、なにするんですかッ!?」  あまりの痛さに涙目になって、抗議の声をあげていた。 「……あれ?」  まるで呪縛から解き放たれたように思考がクリアになっていた。  あまりの出来事に頭がバグっていたのだろうか。彼女の蹴りのお陰でそれから脱することができていた。  だが、映りの悪いテレビを叩くかのような不条理な扱いと、腰に手を当ててドヤ顔で見下ろしてくる彼女を見ると素直に感謝する気も失せる。  不満げにする俺をなにやら面白いモノでも見てるような反応の癪にさわる。 (なんだかこの人……)  タギシさんの言葉では恐怖の対象であるかの説明だったが、それよりも凄く横暴な人のように感じられる。  不条理が人の形をして歩いているっというのが鎌を持った死神から修正された彼女の印象だった。  その彼女だが、どうやら今は喋れないようだ。人魚を模した拘束によって水槽が飼われていたため、呼吸の機器を施されていた弊害のようだ。  それを彼女の手振りだけで苦労しながらも、どうにか解読して俺は理解することができた。 「……手助けしてくれるお仲間……あぁ、下僕がいるのですね」  それを探すのを手伝えっというのが彼女の主張のようだ。  だが、俺の方でも涼子さんや玲央奈たちの安否も気になり、それに付き合っている余裕などないのだった。 (とはいえ、だからダメです……とは言わせない雰囲気だよな)  それに先ほど見させられた不条理なほどの彼女の強さも捨てがたい。  この施設から脱出するには欠かせない要素で、お互いに妥協して協力するのが最善だろう。 「はぁ、わかりました……でも、こちらも涼子さんの安全確保も必要なんです。それは譲れませんよ」  優先順位はすでに決まっている。強気な態度で主張する俺に、彼女は機嫌を悪くするどころか満足そうに頷いていた。  契約書代わりなのだろう、手を差し伸べてくると俺と握手を交わすのだった。 「その前に、なにか着るのも探しましょう……」  全裸姿でいることに彼女は躊躇しないが、俺の方が目のやり場に困ってしまう。  今夜は女性の裸を見続けた俺だが、その辺りの感覚は元のままのようだった。  ひとまず見つけ出したバスローブを杏子さんに差し出して着てもらうと、一緒にホールから通路へとでてみる。  すると、そこには武装した黒服の男たちが俺たちを待ち受けていた。彼らの手にはスタン警棒だけでなく銃器まで握られており、今度は容赦することなくそれを放って来た。 「うわぁぁぁッ」  本物の拳銃を前にして慌てて物陰に隠れた俺だが、杏子さんは反対に前へと飛び出していた。  文字通り銃弾が飛び交う中を跳躍して、一気に黒服集団の中に踊り込んでみせる。  その後は、味方への流れ弾に躊躇して引き金を引けずにいた者から次々と宙に舞うことになった。  今度はホールのような広い空間ではない、狭い通路で彼女に吹き飛ばされれば壁や天井にそのまま叩きつけられることになる。 「滅茶苦茶だ……」    男たちの血反吐が壁や天井から滴り、足元の水は赤く染まっていく。その中に倒れ込んだ男たちの手足はあらぬ方向に折れ曲がり、呻き声をあげている。  目の前に広がる光景は、まるで大型台風が通過した後のような凄惨さだ。彼女を相手することが、まるで災害のように語られていた理由を垣間見たきがした。  そんな無類の強さを誇る彼女だが、それでも無敵という訳でもないようだ。死角からの射撃にヒヤリとさせられることが何度もあり、その時は俺が彼女に注意を促し、モノを投げつけて相手の気をひくなどして少しは役に立てると証明してみせる。 「えらい騒ぎになっているな」  施設内は鳴り響いていた警報は止められたものの、水槽から流れ出した水で施設内は水浸しになっていた。  その上、どこかで火災でも起こっているのか黒煙まで充満しはじめて、混乱に拍車をかけていた。  施設内に設置された各種のモニターも、本来なら映し出されている各種情報は映し出されず、ただノイズ画面が映っており、それだけでも施設が正常に機能していないのがわかる。  その前に発生していた指揮系統の乱れも手伝い、取り押さえようと現れる相手も断続的ですんでいた。  それらが全てナナさんの手筈によるものであるのなら、流石というべきだろう。これ以上ないほどの脱出のチャンスを作って売れている。  そんなナナさんもまた押し寄せる大量の水に飲み込まれていったが、あの手際のよい彼女のことだから今は無事だと祈るしかない。 ――まずは涼子さん、そして玲央奈を見つけ出す……  その為に混乱の最中にある施設の中を探し回っているのだが、彼女らの痕跡すら探し出せず焦らずにはいられなかった。 「くそッ、どこにいるんだ」  気が付けば杏子さんともいつの間にかはぐれてしまっていた。  幸いなことに彼女が注意を引いてくれているお陰か、こちらに追手がくる気配は今のところない。  逃げ惑う会員らに交じり移動することができていた。  そんな俺の前に物陰から大きな影が立ち塞がるのだが、あのホールにいた狗面のひとりだと気づく。 「あぁ、やっと見つけたぜ」  飛び出そうとした俺にまだ座っているように促した相手だ。  面を上げて晒してきたのは、荒らしく顔立ちで野性的な眼差をした青年だった。 「貴方は……」 「あぁ、俺の名は犬咬 ケンジだ。アンタがさっきまで一緒にいた鷹匠所長の下……んんッ、部下だよ」 (今、もしかして下僕といいそうになったのか?)  わずかの時だが鷹匠 杏子と一緒にいたことで彼女の性格を垣間見れた。自由奔放、傲岸無知といろんな言葉が脳裏に浮かび、今なら彼女の部下である彼の苦労もなんとなく察しられた。 「なんで助けて……」 「あぁ、そんな事よりもアンタにお届けものだ」  そういって両脇に抱えたものを見せてきたのだが、そこにはグッタリとした玲央奈と美里さんの姿があった。  慌てて確認すると彼女らの胸は規則正しく上下しており、外傷もないようだ。どうやら意識を失っているだけのようで、ホッと安堵させられる。 「ありがとう、ところで涼子さんのことは……」 「すまない、咄嗟のことで二人の身柄しか確保できなかったんだ」  表情を曇らせた目の前の青年はすまなそうに頭を下げてくる。目つきの悪く陰の強い容姿だが、どうやら誠実な人のようだ。  そんな彼に対しては、二人を助けてくれたことを感謝こそすれ責める気など俺にはなかった。  涼子さんを心配する心をひとまず置いて俺は彼に感謝の言葉をかけていた。 ――ザ……ザザ……   『……やぁ、ルーキー。キミの方は無事だったかな?』  ノイズ画面を流していた周囲の設置モニターに、紫堂の声とともにその姿が映っていた。  そして、その足元には横たわる涼子さんの姿があるのだった。

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わか

紫堂による涼子の次なる激しい凌辱・・・ 本気で涼子を壊す調教、そして抗う術をなくし壊れていく次の展開が待ち遠しいです。