⑧ (Pixiv Fanbox)
Published:
2023-10-04 19:15:18
Edited:
2023-10-04 19:19:42
Imported:
2024-02
Content
今日は凄く良いことがあった。
近頃あまり気分の晴れることの無い日が続いていたが、明日は久しぶりに清々しい朝を迎えることが出来そうだ。
そんなことを考えながら、蓮太郎は自宅で何もせずテレビのバラエティ番組を眺めていた。
普段ならば夕方のこの時間は、退魔師の自己鍛錬に励んだり、学校の課題を済ませるようにしていたが、今日に限っては何も手に付きそうにない。
そうと言うのも、以前から――それこそ数年に渡って恋い焦がれてきた幼馴染についに好きだと自分の気持ちを伝えることが出来たからだ。
勿論その気持ちを無下にされていれば立ち直れない程のダメージを負っていたのは想像に難くないが、幸いなことに歌夜は蓮太郎の気持ちを受け入れてくれた。
ああ見えて恥ずかしがり屋な歌夜が、自分からこちらを押し倒すような事に及んできたのは驚いたが、それだけこれまで待たせてしまったというのもあるかもしれない。
だが、だからこそ途中で止めてしまったことに猛烈な後悔を感じる。
もし昨日、あのまま最後まで歌夜と愛し合っていたらどうなっていただろう。
歌夜も、そして姉の沙夜も、男であれば誰しも目を惹かれてしまうような美貌と肉体の持ち主だ。
自分などには勿体ないという気持ちもあるが、蓮太郎も男である以上、その身体に邪な感情を抱いてしまうこともある。
明日こそは、彼女の想いに応え、そして自分の想いにも応えてもらおう。
蓮太郎は決意を胸に抱くと、今日のところはゆっくり休むことにした。
早く明日にならないかと、いつもより早く風呂に入り就寝の準備をする、そんな時だった。
机の上に置いていたスマートフォンが、ブゥーブゥーと音を鳴らして振動を始めた。
「……ん?」
画面を見やると、ちょうど脳内を埋め尽くしていた女性の名が画面に表示されていた。
「わっ、歌夜姉からだ……!」
突然の歌夜からの電話に、つい驚きの声を発してしまう。
先程のこともあり、明日顔を合わせづらいなと思っていた矢先に、通話とはいえ歌夜の方から連絡をくれるとは思わなかった。
どうしようと迷うが、当然出ないという選択肢はあり得ない。
蓮太郎は意を決してスマートフォンを取り、通話ボタンを押した。
「……あ、もしもし。歌夜姉?」
スマートフォンを耳に当て、その向こうにいる女性に語りかける。
しかし、歌夜から返事は無かった。
「……? えーと、歌夜姉?」
もしや、歌夜のほうも気恥ずかしくて話だせないでいるのだろうか。
こちらに電話を掛けたはいいが、何を話せばいいか分からず固まっている歌夜の姿を想像すると、申し訳ないが可愛く思ってしまう。
とはいえ、返事が無いとそれはそれで不安になるのだが。
そう思っていると、何やら電話口の向こうから、ガタガタ、ゴソゴソと何かが動くような音が聞こえてきた。
「歌夜姉、聞こえてる?」
何をしているのだろう? と心配になりもう一度呼び掛けると、ようやく返事が返ってきた。
――しかし、その声は蓮太郎が望んだものとは全く違っていた。
「――よぅ、蓮太郎か?」
「……っ!? 優吾くん?」
その声こそ、近頃の憂鬱の原因とも言える、玄川家の居候であり新入りの退魔師の少年、優吾の声だった。
「なんで、優吾くんが歌夜姉のスマホから……?」
「ん? あぁちょっと借りてるだけだよ。ほら、俺自分の電話とか持ってないからさぁ」
「そ、そう……」
確かに、家庭の事情で玄川家に居候することになったらしい優吾は、自分用のスマートフォンなどを持っていないのも不思議ではない。それに、まだ子供というのもある。
しかし、わざわざ歌夜のものを借りて自分に連絡してくるとは、何の用件だろうか。あまり、良い予感はしないが。
「それで、何の用?」
「何してんのかなと思ってさ。一人寂しくしてんのかなぁって」
そんな風に暇だから雑談するというような仲では無いと思うが、自分は玄川姉妹と共に暮らしていることを自慢でもしているのだろうか。
「別に、寂しくないよ。明日になったら、また歌夜ちゃん達に会えるしね」
蓮太郎は強がりではなくそう答えた。
いくら物理的な距離が近くとも、心の距離は自分の方が圧倒的に彼女達と近いのだ。それを今日改めて確認し、胸に刻み込んだ。
「何も用が無いならもういいかな? 僕もうそろそろ寝ようと思ってたんだけど」
「なんだよ、つれねーなぁ。つーか、もう寝ちまうのか? こっちはこれからお楽しみなんだけどなぁ~」
「……なんの話?」
蓮太郎が聞き返すと、優吾はくっくっと喉を鳴らし、続けた。
「いやぁ? お前がそんな呑気にしてる間に、歌夜のやつはどうなってるのかなーっと思ってさ」
「っ!? 歌夜姉になにかしたの!?」
スマートフォンを強く握りしめると、その向こうからは不敵な笑い声が聞こえた。
しかし、よく聞けばその笑い声に混じり、なにか呻くようなくぐもった声が聞こえることに気づく。
「もしかして、そこに歌夜姉いるの?」
今優吾が使っているのは歌夜から借りたスマートフォンだと言っていたので、近くにいるのはおかしなことではないのだが、言いしれない不安が込み上げてくる。
「ん? あぁいるぜ。代わろうか?」
言って、優吾が近くにいるらしい歌夜に話しかけた。
「おい歌夜、蓮太郎が声聞きたがってるぜ?」
「ぐぅっ……ううっ」
苦しげな歌夜の声が、スマートフォンから漏れ聞こえてくる。
「か、歌夜姉……大丈夫!?」
心配して声を掛けるが、歌夜からの返事はすぐには返ってこなかった。
荒い息遣いが響き、やがてその呼吸を落ち着けた様子で、歌夜の声が聞こえてきた。
「あ、あぁ……蓮太郎か。私なら、大丈夫だぞ……。心配させて済まないな」
どこか無理をしているような声の調子に、やはり不安な気持ちが拭えない。
「優吾くんに何かされてない? 何か……悪戯を……」
蓮太郎の脳裏には、先日優吾からの悪戯で悶え苦しんでいた沙夜の姿を浮かぶ。
「いや……何もない、ぞ? ただ近くにいるだけだ」
「本当? でも、なんだか苦しそうな声だけど」
「ち、ちが……これは、なんでもなくて……」
蓮太郎が尋ねると、歌夜は焦ったような様子で否定する。
その慌てぶりが不自然で、ますます不安が募っていく。
「その、なんだ……私がアイツに何かされて、どうにかなると思うか? 気にし過ぎだ」
「それは……そうかもしれないけど」
歌夜の強さはよく知っている。だが、蓮太郎は歌夜が優吾に性的な行為を強要されている光景を目撃してしまっていた。
彼女のあの大きすぎる胸を好き放題揉みしだき、性器を擦り付ける少年の姿は、今もまだ忘れられない。
先程まで自分と抱き合っていた歌夜が、今別の少年に身体を許しているなどとは思わないが、隣に歌夜の身体を狙う男がいるという状況は、どうしても危機感が働くのだ。
「なんだよ、俺になにかされても平気って? 本当かなぁ~?」
「ッ!?」
蓮太郎の危機感を証明するように、二人の会話に挟まるように優吾が割って入ってきて、それを聞いた歌夜が息を詰まらせた。
「ぐぅ~~~~ッ!?」
すると、またもスマートフォンから苦しげな呻き声が聞こえてくる。
「歌夜姉!? どうしたの!?」
「おっ、ぐぅ……っ! な、なんでも、ないぃ……」
蓮太郎が叫び名を呼ぶが、歌夜は必死に堪えるように答える。
明らかに何かされているが、こちらを心配させまいとしているであろうことは、声の調子から理解できた。
「おい歌夜、弟クンが心配してんぞ? ちゃんと応えてやれよ」
「……っ! ぐっ、ぅくぅぅうっ♥」
優吾が話しかけると、歌夜はまたも苦しげに呻いた。しかし、その声には苦しさだけでなく、どこか甘い調子が混ざっている。
実際に何をされているかは音だけでは分からない。だが、またいやらしいことをされているのは蓮太郎にも理解できた。
「優吾くんっ! 歌夜姉に変なことをするのはやめろ!」
「あぁ? 何か言ったか? まぁ何されてるかは本人が教えてやれよ。なぁ歌夜?」
「うっ、ぐぅっ……♥ れ、蓮太郎……心配、するな……わ、私は、こんなヤツには……負けない、から……ひっ、んんんんん♥」
歌夜が言葉を絞り出すように答える。
だが、その言葉とは裏腹に、凛々しく清純な歌夜の口から発されたとは思えない甘い嬌声が、電話口から漏れ聞こえてきた。
(くそ……っ! どうなってるんだ……!)
蓮太郎の心配をよそに、電話の向こうでは淫らな行為が続けられている。
パンパンッ、パンパンッ……と、なにか肌を叩くような音も聞こえていた。
「くひっ♥ うぉ……優吾ぉぉ♥ と、とまれ……ぇええ! んひっ、んひぃぃぃ♥」
「お前の大好きなお姉ちゃんが、今どうなってるか想像出来っかー? あー教えてやりてぇなぁ。歌夜が今どんな顔してるか、とかさ」
「や、やめろ……それ以上するなら、僕が許さないぞ!」
蓮太郎は震える声で、そう叫んだ。
その声が電話越しに伝わり、優吾の嘲るような言葉が返ってくる。
「ひひひっ、許さないならどうすんだ? お前みてーな雑魚に何が出来るんだよ」
「ぐっ……。ぼ、僕が止める!」
力の無い自分で、何が出来るかは分からない。
だが、このまま歌夜が苦しんでいるのをただ黙って待っていることは出来なかった。
「歌夜姉待ってて! すぐに行くから!」
「れ、蓮太郎……」
「へぇ? だったら早く来ねーと、お前のお姉ちゃんが壊れちまうかもしれねえぞ? オラッ歌夜! もっとエロい声聞かせてやれよ!」
ばちゅんっ、ばちゅんっ!
「んぉぉっ♥ お、おぐぅうう! ぐひっ、ぐひいいいいい♥♥」
激しい肉のぶつかる音と共に、歌夜が一際大きな声で叫んだ。
「くそっ……た、耐えて歌夜姉……!」
蓮太郎は一刻も早く歌夜を助けるため、スマートフォンを放り出して走り出した。
部屋を飛び出し、家を出て、玄川家へ向かう。
幸い玄川家は蓮太郎の自宅からごく近く、走れば数分で着く。
「はっ……はぁっ!」
蓮太郎は焦りを露わにしながら、もう暗くなった道を必死に駆け抜けた。
「はぁ……はぁ……!」
そして、玄川家に到着してそのまま玄関の門を開け、家に上がる。
普段ならばこんな時間に、勝手に姉妹の家に上がるようなことはしないが、今はそんなことは気にしていられない。
一直線に歌夜の部屋に向かい、ドアノブに手を掛けた。
「……歌夜姉っ!」
勢いよく歌夜の名前を呼びながら扉を開く。
きっと、歌夜ならば自分が駆けつけるまでもなく、優吾に屈することなどなく、上手く説き伏せて反省させているはずだ。
そう信じて開けたドアの先には、だが、そんな希望を容易く打ち砕く光景が広がっていた。
「おほっ♥ おぉおっ♥ んお゛おおおおおっ♥♥」
部屋に入った瞬間蓮太郎の目に飛び込んできたのは、ベッドの上で四つん這いになった歌夜と、その後ろから腰を打ち付けている優吾が、露出した下半身を結合させている姿だった。
「え……」
獣のように交尾を行う二人の姿に、蓮太郎は呆然と立ち尽くした。
「んおっ! おっ♥ おほぉおおっ♥♥」
優吾が腰を振る度、歌夜は普段の凛々しさからは想像もつかないような野太い声で叫ぶ。
身体の小ささを補って余りある勢いで、優吾が歌夜に腰を打ち付ける。そのたびにベッドがギシギシと軋み、その力強さを物語っていた。
「ひぃいっ……ひ、ぎいいいいぃぃぃ♥♥」
「あ~エロ巫女まんこ気持ちい~!」
「あ、あ、あぁ……」
目の前で行われているあまりにも衝撃的な光景に、蓮太郎は頭が真っ白になり、声を掛けることすら出来なかった。
しかし、歌夜を蹂躙する優吾はそんな蓮太郎の様子を気遣うこともなく、それどころか彼が部屋に入ってくるのを待っていたかのようにこちらに目を向けた。
「おう来たかヘタレ雑魚野郎。これで、俺が歌夜に何してたか分かったな」
「れ……蓮太郎……?」
四つん這いのポーズのまま、部屋に入ってきた蓮太郎に気づいた歌夜が、首を持ち上げ潤んだ瞳でこちらを見る。
「ひっ……ひぅっ♥」
蓮太郎が入ってくる前からずっと犯されていたのであろう歌夜は、その火照った身体に玉のような汗を無数に浮かべていた。
数刻前まで自分と歌夜が抱き合っていた部屋の中は、今では雄と雌が交わる熱気と匂いが充満していた。
「歌夜姉……どうして……?」
「ち、違うんだっ、これは……優吾が、無理やり呪いで……ぐふうぅぅぅうん♥♥」
歌夜の言葉を遮るように、優吾が腟内をペニスで抉った。
「ひっ、ひぃいいい♥♥」
歌夜が甲高い声で叫ぶと、彼女のたわわな胸がぶるんと跳ねるのが見えた。
「余計なことは言わなくていいんだよ。お前はまんこ突かれて喘いでる顔を、こいつにたっぷり見せてやれって!」
「んおお!? んお、ふっ、へえぇぇええ♥♥」
優吾は歌夜の一房に結んだ後ろ髪を掴みながら、荒々しいピストン運動でその口を黙らせる。
ばちゅっ! ぐちゅん、どちゅっ! ぱんっぱんっ……!
(嘘だ、こんなの……。歌夜姉は、僕と……)
本当ならば、この部屋で歌夜と交わるのは自分のはずだった。
つい先程までの甘い妄想が、目の前の光景によって跡形もなく砕け散っていく。
「やめろ…………やめろ……っ!」
その絶望的な現実を認めることが出来ず、蓮太郎は震える声を絞り出した。
だが、優吾はそんな蓮太郎の声を嘲りながら、歌夜の身体をさらに責め立てる。
「へへへ、いいじゃねえか。どうせお前じゃこんな本気のセックス出来ねえんだからよ。女の喜ばせ方ってのを、そこで見学してろって」
「お゛っぐ♥ ふっか……っ、ふううう♥ み、見るな、れんたろ……こんな、姿……あ、ああああああ♥♥」
歌夜はベッドシーツをギュッと握り締め、堪えるようにしているが、激しいピストンの衝撃はそれを軽々と上回り、快感に蕩けた顔を晒してしまっていた。
そんな顔は強く高潔な歌夜には似合わない――そのはずなのに、蓮太郎はその顔から目が離せずにいた。
きっと自分では、あんな風に彼女を悦ばせることは出来ない。そのことが、嫌でも分かってしまう。
「違う……違うっ、こんなの……嘘だ……!」
蓮太郎は頭を振り、目の前の現実を拒絶する。
熱く滾った下半身の熱に突き動かされるように、拳をグッと握った。
「それ以上――歌夜姉に触るな、優吾ッ!!」
そして怒りに任せ、握った拳を振り上げて優吾へ詰め寄る。
たとえ暴力に訴えようとも、目の前の少年を許すことが出来なかった。
だが――。
「……ぐっ、うぅぅ……!?」
優吾に殴り掛かる寸前、蓮太郎は脚を止め、自分の胸を押さえつけた。
「ぐぅうああ……!? な、なに、こ……れ……。胸が、痛い……あ、あああ……っ」
胸を抑えたまま膝をつき、その場に蹲ってしまう。
心臓を直接絞り上げられるような痛みと、呼吸も出来なくなるような苦しさ。
突如として身体を苦しめはじめたその感覚に、蓮太郎はわけがわからないまま動けなくなってしまった。
「蓮太郎ッ!?」
「あーあー、辛そうにしちゃって。大好きなお姉ちゃんが寝取られて、ショックで心臓止まっちゃったのかな?」
薄れゆく意識の中で、悲痛な叫びと嘲笑の声が鼓膜を震わせる。
「歌夜、姉……」
愛する女性を汚される姿を見せつけられ、貶され、虫けらのように倒れる。
だが、その倒れる肉体は、優しい手によって支えられた。
「ごめんね、蓮くん……」
最後に聞いたその声は、歌夜ではなく沙夜のものだった。