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こちらはpixivリクエストにてリクエストいただいた小説になります。


以前書いた「怪力属性大型犬系社会人後輩サイボーグ(番外編)」をとても気に入って、この系統の話が読みたい!とリクエストをいただきました。


特に車破壊の描写を気に入っていただけたようで、身体もチンコもでっかいマッチョがクズ男とその車を存分に破壊しているとこが見たい!(意訳)とのことでした。


存分に盛り込んだつもりです。それではどうぞ!






怪力属性大型犬系社会人後輩サイボーグの後輩(前編)


「先輩、ちょっと外出ます?」


 愛車をスクラップにされて以来、俺はもう逃げようとか抵抗しようとか、そういう気力をすっかりなくしてしまっていた。もうこの地下で生きていくしかないんだと諦めたとでもいうのだろうか。そうしているとなんだか感情も穏やかになって、生活にも慣れてきた。そんな時に朝霜が提案してきた言葉がそれだ。


「そ……そと?」

「といっても、家の前ぐらいですけど。ずっと地下にいたんじゃ気が滅入るでしょ」


 地下に閉じ込めてるのはお前だけどな、とは思っていても言わない。ちなみに外に出たからと言って、朝霜から逃げられるとはもう露ほども思っていない。サイボーグの朝霜は逃げる車に余裕で追いつけるのだ。既に愛車を失った俺が山道を降りて街まで逃げることなど、万に一つも不可能だった。


(……でもまあ、そういうのもいいか)


 そこから俺は時々地下から外に出してもらえるようになった。もちろんずっと朝霜が一緒で、家の前ぐらいだけれど、まあ確かに青空を見上げて外の空気を吸うと気分転換にはなった。少し開放的な気分になって、俺を閉じ込めている朝霜との会話も少しは進む。


「……にしても、朝霜の家ってでかいよな」


 くるっと振り返って見上げる朝霜の家は、その辺の40坪足らずのマイホームとは比べ物にならないでかさだ。一部屋が広いし部屋数も多い。庭だってこの家がもう一軒建つぐらいにはある。朝霜が近寄って俺の横に立つ。


「まあ山奥ですしね。でも一人だとちょっと広すぎるんですよ」

「ああ……親御さん今海外って聞いたな」

「はい」

「そういや朝霜って兄弟とかいないの? 一人っ子?」


 隣を見上げて聞くと、朝霜は少し考えるようなそぶりをして頬をぽりぽりと掻く。


「いや~……一人っ子なんですけど……」

「けど……?」

「弟っぽいのが一応……」

「……? 一人っ子なのに弟……?」


 よくわからないと朝霜を見る。朝霜は口を開いたが、ピタッと動きを止めると急に真顔になる。


「……あ、朝霜?」

「噂をすれば……」


 朝霜がくるりと踵を返して空を見上げる。俺もそれに倣って空を見るが、ちょっと雲があるぐらいの気持ちのいい青空だ。朝霜は何を見ているんだ?


「…………あの、朝霜?」

「先輩、前に出ないで。……来た」


 朝霜の顔をのぞき込もうとしたら腕を前に出されて止められる。来た、との言葉にもう一度空を見上げると、先ほどまで青と白しかない空に、小さな黒い点のようなものが見えた。そしてそれがどんどんと大きくなっている気がする。


「ん? なんか……落ちてくる!?」


 そこからはもう一瞬だった。空にあった黒い点があっという間に大きくなって、俺達の10メートル前ぐらいに落ちてくる。直撃の瞬間地面がズズンと揺れ、土埃が大きく舞う。朝霜の「派手に来やがって……」という声が隣で聞こえた。もうもうと舞う土埃が少し落ち着くと、その中に影のようなものが見えた。


「朝霜セーンパイ!!」


 突如土煙がぶわっと霧散して、勢いよく中からその影が飛び出してきた。最初は熊か何かかと思った。何せそのシルエットは、人間よりはるかにでかいのだ。そうすると俺の知識で該当するのは熊ぐらいしかありえない。だが目の前のそれは二足で走ってくるので熊じゃない。そしてめちゃくちゃ速い! 熊レベルのサイズのものが自動車並みの勢いで突進してくるので俺は身構えることもできずに身体を縮こませる。


「岩淵! ストップ!!」


 朝霜が叫ぶと、突進して来ていたものが急激に減速していく。ドン、ドン、ドンという足音が緩やかに、でも大きくなって、俺達の一メートルぐらい手前で止まる。


「お前、そのガタイで突進してくるのやめろって言っただろ」

「あはは……すいません、つい……」


 突進してきたのは熊ではなかった。車でもなかった。人、だった。グレーのTシャツに濃い色のデニム。浅黒い肌と相反するような明るい金の髪。ただ、ものすごく……


「でっか……」


 ただとてつもなく、大きい。目の前にいる岩淵と呼ばれた人は、縦も横もとんでもなく大きかった。なにせ俺がまっすぐ前を見るとそこにあるのは彼の顔ではなく、なんと腹のあたりだ。少し見上げるとただでさえでかいだろうシャツをびっちびちに引き延ばしている樽のような大胸筋が張り出して大きな影を作っている。大胸筋だけでも俺二人分ぐらいの幅がありそうなのに、さらにその横にあるのが筋肉がみちみちに詰まったぶっとい腕だ。多分、俺の脚よりも太いし重い。腕を伸ばした状態でも袖の部分の隙間がなくなるほど二頭筋が盛り上がっている。つまり肩幅は俺三人分ぐらいありそうで、その上にある首もものすごく太い。さらにその上には……


(あ)


 顔まで見上げた瞬間、ばちっとこっちを見下ろす彼と目が合った。二メートルを遙かに超える筋肉隆々のすさまじい身体。勝手にごつくていかつい顔を想像していたのだが、意外にもその相貌は若かった。朝霜のような完全無欠のイケメンではないが、人なつこそうな気持ちのよい青年……といったところだろうか。ただ、目が、俺を見下ろす彼の目が、少なくとも初対面の人間に向ける目ではない。もっと格下、というか、別の生き物を見る目というか、


(……獲物を見つけた、肉食獣みたいな……)


「……岩淵、怖がらせるな」

「えっ、ああ……すいません。朝霜センパイ、こいつ……この人は?」


 横から朝霜の声が飛ぶと名を呼ばれた彼はぱっと表情を変えて朝霜の方を見下ろす。そこには先ほどの肉食獣のような雰囲気は一切なく、それこそ飼い主に懐く大型犬のようだ。


「この人は綿谷さん。俺の会社の先輩……だったけど、今は俺の恋人」


 恋人になったつもりも会社を辞めたつもりもないのだが、朝霜の中ではそうなっているらしい。でも会社については長期の無断欠勤だから、もしかしたら退職扱いになっているのかもしれない。そろそろ目の前の大男が誰なのか教えてくれないかという俺の視線に朝霜が気づいた。


「先輩、こいつがさっき言っていた弟みたいなやつです」

「えっ……」


 全然似てない、というのが顔に出たのか朝霜が苦笑する。


「血のつながりはないんですが……まあ、岩淵は親父が俺の後に作ったサイボーグなんです」


 だから弟みたいなものなんです、と朝霜はさらっと説明したがその事実をさらっと飲み込むにはちょっと衝撃がでかすぎる。


「えっ、待って……えっ……!?」


 朝霜と目の前のでかい彼を交互に見る。いや確かに、空から落ちてきて平然としているのだから人間ではないのはよく考えなくてもわかるはずだが、朝霜の他にもサイボーグがいるという発想がなかった。俺を遙か上から見下ろす岩淵は、先ほどと違いニコッと愛想よく笑う。


「岩淵丑雄です」

「あ、はい。綿谷です……」


 岩淵が手を……俺の二倍ぐらいありそうなでかい手を差し出してきたので反射で俺も手を差し出す。だがその指先が岩淵の手に触れる前に横から朝霜がものすごい勢いで俺の手をつかんだ。


「うわっ!」

「先輩、気軽にこいつと触れ合わないでください。握りつぶされますよ」

「つぶ……!?」

「やだなあ、朝霜センパイの恋人にそんなことしませんよ」

「こいつ、俺の後継機でパワーも身体もでかい強化型なんですけど、その分出力調整が苦手で本当になんでもぶっ壊しますからね」


 朝霜に腕を解放された後もそこまで言われては握手する気にはならなかった。手を引っ込めた俺を見ても岩淵はニヤニヤと笑みをたたえている。朝霜がそもそも何の用だと聞くと、朝霜の親からの手紙を持ってきたらしい。岩淵が手紙を朝霜に渡して礼を言われると、またへへっと照れるように頭をかく。その動きだけで太い腕の筋肉が重機のように動く。


「――そういえば朝霜センパイ、ここ来る途中になんかすげーゴミで散らかってたとこがあったんですけど、あれなんすか?」

「……ああ、あれか」


 朝霜によると、どうやら家に来る山道の途中で空き地になっているところがあるのだが、そこがどうもガラの悪い連中のたまり場になっているらしいのだ。夜に車で乗り付けて馬鹿騒ぎしてゴミは放置して帰って行くので、近くの住民も迷惑しているらしい。ちなみに俺がここに監禁された後の話なので俺が知らないのは当然みたいだ。朝霜が小さくため息をつく。


「騒がれると面倒なんだよな……」

「あ、じゃあセンパイ! 俺ゴミ掃除して帰りますよ!」


 二カッと岩淵が太陽のように笑う。朝霜はあまり表情を変えず「……いや、いいよ」と断ろうとしたが「センパイが困ってるの放っておけないっすよ! きちんと片付けまでしておくんで!」と岩淵に押し切られる形で了承した。


「んじゃ俺一度帰りますね! 朝霜センパイ、綿谷さん、また!」


 そういうと岩淵はまた大きな足音を立てながら着地地点へと走り、そこからまるでロケットのようなスピードで空に跳んで行った。目で追える速さではなく、後には土埃とともに大きなクレーターが残るだけだった。


「……なんかすいませんね。騒がしくて」


 朝霜が小さく息を吐く。あの会社でも有能な朝霜が、でっかい豪快な弟に振り回されているのを見るとちょっと面白かった。


「いや……まあでかくてびびったけど、気のいい弟さんじゃん」

「あいつ、あれで奔放なんですよ」

「ん?」

「…………なんなら見に行きます? あいつのゴミ掃除」




***







「んなわけねーじゃん!」

「ギャハハハハハ!!」


 夜更けにもかかわらず周囲に響く騒がしい声。市街地から山奥の朝霜の家へ続く道は途中までしか舗装されてはおらず、残りは砂利や土の、悪路とまではいかないがまあ快適には進めない道になっている。そのちょうど境目。そこには「進めないならここでUターンしろ」とでもいうように車が5、6台は止められそうなおあつらえ向きの空き地があり、喧騒はそこからあふれていた。乱雑に止められた一台のミニバンと、それに乗ってきただろう三人の若者がコンビニの袋を広げ、放置された車止めを椅子代わりに、あろうことか酒盛りをしていた。近くの電信柱の街灯がちょうど空地を照らしており、夜でも人の顔がわかる程度の明るさはあった。


「うわー……ドン引き」

「ちゃんと見たの初めてですけど、想像以上ですね……」


 その様子を朝霜と綿谷は近くの木の上から見下ろしていた。朝霜は太い枝の上でしゃがみ込み、綿谷はその朝霜にお姫様抱っこされる形で。見に行きます? と言われた綿谷は嫌な予感がしたので丁重にお断りをしたのだがまあまあ、という朝霜に半ば強引に連れてこられてしまった。無理やり連れ出すサイボーグに綿谷が力でかなうわけないので、残り半分は諦めである。二人からは酒盛りの姿が良く見えるが、逆からは枝葉がカモフラージュになって気づかれない絶好の立地だった。


「真ん中のは絶対ボンボンだな……」

「わかるんですか?」

「だってあのミニバン、今年発売されたモデルだもん。しかも一番グレード高いやつ」


 最近まで車を比較検討していた綿谷だからわかる。あのツヤのある青に近いブラックの塗装は最上級モデル限定のはずだ。三人の話を聞く限り、ミニバンは真ん中のタカトと呼ばれる男の所有物らしいが、二十歳そこそこの若者に買える値段ではない。十中八九親の金だろうと綿谷は言う。


「そういや岩淵……くんは?」

「その辺の茂みにいますよ。タイミング見てるんじゃないですかね」

「タイミング? ……そもそもなんでゴミ掃除を夜にするの? 散らかしてる本人がいる前で……」


 空き地でたむろする三人に動きがあったので綿谷は口を閉じた。一人が立ち上がって朝霜たちがいるのとは逆方向の茂みに向かっていく。


「ユウキどしたー?」

「ションベン!」


 ユウキと呼ばれた男が茂みの中へと消えていく。それを見て朝霜が静かにつぶやいた。


「……ゴミって言うのは、空き缶とかだけじゃないですからね……」

「え?」


「うわあああああ!!!」


 綿谷が朝霜の顔を見上げた瞬間、茂みからつんざくような叫び声が上がった。残った二人がなんだなんだと立ち上がる。茂みから出てくる人影が見える。――が、その影が尋常じゃ無くでかい。


「どーもこんばんは」


 茂みから現れたのは岩淵だった。昼間と同じ服装だが、右腕で先ほどのユウキと言う男の顔をつかみ宙づりにしていた。その体の大きさの違いと言ったら、大人と子供のようだ。今宙づりになっているユウキはちょうど岩淵の鎖骨あたりに頭があるのだが、バタバタしている足は岩淵の脛にも届いていない。痛い痛いと叫び続けているユウキは岩淵の手を引きはがそうと必死になっているが指の一本も剥がせやしない。そもそも腕の太さが三倍ぐらい違う上に、岩淵はサイボーグだ。たとえ重機を持ってきたとしても外れるかどうかは怪しい。


「ぎゃあっ!」


 残り二人の五メートルぐらい手前で岩淵が腕を軽く振るってユウキを掴んでいた手を放す。ユウキは弧を描いて地面に落ちて転がり、二人の手前で止まった。先ほどまでのバカ騒ぎが嘘のように、夜が静けさを取り戻す。一瞬で酔いがさめたタカトが転がったユウキと転がした岩淵を交互に見る。


「は……? 何……?」


 対する岩淵は文字通り見下したような笑みを浮かべてその場に突っ立っている。が、その威圧感はすさまじい。人間の平均を大幅に超える二メートル半の身長に、人の三倍近い肩幅とボッコボコに盛り上がっている凄まじい筋肉。十秒近い膠着の中先に岩淵が口を開いた。


「こんなとこで騒いだら駄目じゃねーっすか、ゴミも散らかして……近くのヒト迷惑してるんすよ?」


 この時点で、タカトは岩淵がまともではないと確信していた。家が金持ちなら人の機微をうかがう機会は多くある。今タカトの直感はこの男をやばいと告げており、どんな手を使ってでも逃げることを推奨していた。


「んだよテメェ……」

「やめろシュン!」


 だがもう一人の男はそうではなかったらしい。シュンと呼ばれた男はアルコールで気が大きくなっていた。ずんずんと岩淵に近づいていく。三人の中では一番ガタイがよく格闘技もかじっているシュンだが、それでも岩淵とは比べ物にならない。シュンの頭がようやく張り出した大胸筋の下に届くかどうかというレベルなのだ。


「どーせでかいだけのデクノボーだろ、おらっ!」


 シュンが腕を振りかぶって岩淵の腹に強烈なパンチを放つ。普通の人間相手なら顔に直撃して吹っ飛ぶレベルの威力。だがシャツ越しに岩淵の腹にあたったシュンの拳はどん、という鈍い音を立てただけだった。拳はその腹筋に一ミリもめり込みはしなかった。岩淵は微動だにせず、その様子を上からにやにやと見下ろしている。


「……あ? なんか仕込んでんのか!?」


 シュンはヤケになって岩淵の腹にパンチを打ち込んでいく。フック等を織り交ぜ脇腹も狙っていくが、何発くらっても岩淵に効いている様子はない。むしろシュンの拳の方がジンジンと痛み始めている。その様子を木の上から見物していた朝霜が抱きかかえている綿谷に聞かせるようにつぶやく。


「人間のパンチが効くわけないんですけどね~……あんなの、撫でられてるのと一緒ですよ」

「……朝霜もおんなじ感じ?」

「そうですよ。今度試してみます?」


 いや、いい……と言いながら綿谷は視線を戻した。岩淵に何度もパンチやキックを打ち込んだシュンだが、流石に息が上がってきてその動きを止める。


「お、終わりっすか?」


 対する岩淵は、最初と変わらぬ姿勢のまま自分に攻撃をしていたシュンを見下ろしていた。何十というパンチとキックを受けたはずなのに、まるで数分突っ立っていただけです、といったような態度。先ほどまで全く動かなかった岩淵がおもむろに左腕を上げる。シャツの裾をびっちびちに引き延ばすその腕は目の前の男の腕の三倍以上太い。岩淵は左手で、自らの腹辺りで息を荒げている男の頭を掴んだ。


「ぎゃあああああああああっ!!!」


 岩淵は軽く掴んだだけだが、サイボーグの「軽く」は人間とは比べ物にならない。万力のようなパワーで頭を締め付けられシュンはその激痛に叫ぶ。必死に岩淵の手を外そうともがくが、もちろん指の一本も引きはがせない。


「あんまり暴れると握りつぶしちゃうっすよ」

「ぎっ……がっ……!!!」


 岩淵はそのままひょいとシュンを宙へと持ち上げる。岩淵にとって80キロ程度の体重などポテチの袋とそう変わらない。極太の腕が揺れもせずシュンを同じ目線まで持ち上げる。激痛で顔をゆがませるシュンと目が合って、岩淵はニッと目を細めた。


「んじゃ、次はこっちの番っすね」


 岩淵がグレープフルーツほどもありそうな拳を握ると前腕にビキビキと太い血管が浮き上がる。腕を引くと人間の頭ほどもありそうな巨大な上腕二頭筋がさらにぼごっと膨れ上がり、シャツの裾がビチビチと裂けていく。岩淵が何をするか察してシュンの顔から血の気が引く。


「ぎっ……やめ……死……!!」

「腹に力入れとけよ~、まー無駄だけど」


 手足をバタバタさせてあがくシュンをものともせず、岩淵が目にもとまらぬスピードでその剛腕を腹に叩き込んだ。一瞬の衝撃。そのすぐ後、人を殴ったとは思えない水気のある音と、液体が立てるぽたぽたという音が山の冷たい空気に流れていく。


「か……は……っ……」


 ごぷ、とシュンの口から鮮血が漏れる。岩淵に掴まれたままのシュンは、この時点ではかろうじて意識を保っていた。サイボーグである岩淵のパンチはコンクリートですら容易く貫き、ブルドーザーだろうが吹き飛ばす。そんなパンチを人間が受けて肉体が無事であるわけがない。シュンの後ろでその光景を見ていた二人は、一瞬で息ができなくなるほどのパニックに陥った。――シュンの背中から、岩淵の極太の腕が生えている。


「あ……え……」

「しゅ……しゅ、シュン……!」


「あー……やっぱぶち抜いちまった」


 まるでそれが当然かというような表情と、高揚が抑えられない声。岩淵の破城槌のようなパンチはシュンの腹筋も内臓も背骨もまとめてぶち抜いた。腹から背中に貫通した拳には内臓の一部のような肉が絡みついており、そこからは赤い血がぽたぽたと流れ落ちている。岩淵が左手でつかんでいた頭を離し腕を下げると、シュンはのけぞりながら身体の中心を通る右腕に沿って滑り落ち、どちゃりと地面に落ちた。生死など確認するまでもなかった。


「もうちょい加減しねえと……」


 岩淵が右腕をぶんぶんふるうと血しぶきが周りに飛び散っていく。目の前で惨劇を見せられたタカトとユウキは腰を抜かして地面に座り込んでいた。突然現れた身長二メートル半の大男が仲間を一瞬で殺してしまったのだ。平静でいられるわけがない。あらかた腕の血を振り落とした岩淵が残りの二人の方を見下ろしてぺろっと肉厚な舌で唇を舐めた。


「さ~て、次はどっちにしますかね~」


 ズシズシと地面が揺れるような足音を立てながら岩淵が二人に近づいていく。二人は今すぐにでも駆けだして逃げたいところだが腰が抜けて這いずることもできない。そうこうしているうちに岩淵はより近い方にいたユウキを「次」にすることに決めた。方向を変えるとユウキにもそれがわかった。このままではシュンのように死ぬ、と思ったユウキは震える手を懐に入れた。


「くっ、くるなあっ!!!!」

「――おっ?」


 ユウキが取り出したのは拳銃だった。もちろん拳銃はその辺のちょっとオラついた程度の若者が持っていてはいい代物ではない。だがユウキはたまたまヤクザの抗争の跡地を訪れた際にそれを拾い、お守りのように大事に大事に持っていた。当然コピー品で古いモノではあるが、拳銃には変わりない。一発で人を撃ち殺すには十分な性能を持っている。だが。


「へ~、そんなの持ってんだ」


 岩淵はユウキが何かを取り出した瞬間一度立ち止まったが、その銃を向けられても恐怖も警戒も何一つなかった。まるでそれがモデルガンだとでもいうような気安さ。立ち止まったのも数秒だけで、再びユウキに向かって歩き出す。


「くっ、来るなよっ! 撃つぞ!」

「どこで手に入れたんすか?」

「うわっ、あ、あああああああ!!!」


 叫び声とともにユウキが引き金を引く。持っているだけで拳銃などろくに撃ったことのないユウキだが、的となる岩淵はもう十分に近い位置にいたし、なによりでかかった。パン、パンという破裂音が連続で響く。音は7回響いたところで終わり、後はカチカチというトリガーの音が鳴るだけだった。震えていたユウキの腕前でも弾は全弾岩淵に命中していた。胸から腹にかけて全体的に弾が当たったのがシャツの破れや穴から分かる。


「でもやっぱこんなもんだよな」

「っ……!!」


 もうユウキは声も出なかった。岩淵に弾丸は全て命中した。が、その弾丸は一発たりとも岩淵を傷つけていない。全て岩淵の皮膚の表面で止まっているのだ。衝撃でひしゃげた弾丸が、ぽろぽろと地面に落ち、砂利と当たって甲高い音を立てる。岩淵は弾が当たった胸をぼりぼりと搔きながら大股でユウキに近づいていく。そうして岩淵がユウキの目の前に立つと、座り込んだユウキは岩淵の膝にも届かなかった。カタカタと意味のなくなった銃を握りしめながら、ユウキが顔を限界まで上にあげる。その先にははるか上からユウキをのぞき込んでいる岩淵の姿があった。


「ひっ……あっ……」

「てかこんなもん持ってちゃだめっしょ」


 岩淵が屈んでぬぅ、と足元のユウキに手を伸ばす。シュンのように頭を掴まれると思ったユウキは反射で腕を上げるが、岩淵がつかんだのはその手に持つ銃だった。と言っても岩淵のでかい手では銃どころかそれを持っているユウキの手までもすっぽり握ってしまっている。ユウキは必死に手を引き抜こうとするが岩淵の極太の腕はまるでコンクリで固められたかのようにビクともしない。


「はなっ……はな……!」

「処分しねえと……な?」


 岩淵の前腕に血管が浮き上がり、プレス機すら上回るパワーでゆっくり拳が握りしめられる。炭からダイヤすら作れる圧力にちゃちな金属と人間の手が耐えられる訳がなく、岩淵の拳の中でベキベキと拳銃とユウキの手が砕かれていく。


「うぎゃあああああああああああ!!!!」


 手を握りつぶされるとんでもない激痛にユウキは暴れまわるが岩淵は構わず拳を握っていく。たまにこねるように握り方を変えるとそのたびに拳の下からどろどろになった血と肉塊がジュースのように地面にこぼれていく。十秒もすればユウキの右手首から先に手と呼べるものはなかった。岩淵が拳を開くと肉塊の残りとぐちゃぐちゃになった銃が無残に地面に落ちる。


「やっわいな~」


 おら立てよ、と岩淵が肉塊まみれの手で放心寸前のユウキの頭をつかみ持ち上げる。がくがくと小鹿のように震える膝でユウキを立たせた岩淵は、もう血まみれになった自分のシャツを掴んで破く。押さえつけられていたものから解放されたかのように岩淵の大胸筋がユウキの頭上でばるんと揺れ、汗混じりの体臭がゆっくりとユウキの元へと降りてくる。


「あんまり可愛く叫ぶから俺もコーフンしてきちゃったじゃん……」


 岩淵がそのでかい手をデニムの股間に当てる。頑丈なはずのデニムには岩淵の逸物が股間から左ひざにかけて亀頭とカリがわかるほどくっきりと形を浮き上がらせており、その大きさは少なくともユウキの腕ほどはあった。ブツが膨らむにつれ生地がミチミチと音を立て、今にもデニムを突き破らんばかりだ。このまま勃起でデニムを突き破るのは簡単だったが、岩淵はその前にカチャカチャとベルトを外す。


「このデニムいいだろ? 気に入ってんだ」


 そう言いながらチャックを開くと、もう限界だというようにボクサーに包まれた中身がせり出してくる。岩淵がデニムとボクサーをまとめてずり降ろすと、抑えがなくなった腕並みのチンコがばるん、と飛び出して水平より少し下の角度で揺れた。既にユウキの顔より長いが、まだ半勃ちにもなっていない。蒸れたチンコからはアンモニア混じりの強い男の臭いが漂っている。


「へへ……でかいだろ?」

「あ……あ……」


「じゃあお前、これ舐めろよ」


 岩淵は見下ろすユウキにそう命令するが、手を握りつぶされた激痛が続くユウキは意味のない声を漏らすばかりだ。岩淵はちっと舌打ちするとユウキの頭を左手で軽く掴む。頭蓋骨がミシミシいうほどのパワーで握られて脳から直でくる激痛にユウキは一瞬で覚醒する。


「ぐぎゃああ!!! い、ああああ!!!」


 激痛で叫び声をあげ、膝から崩れそうになるユウキだが、頭を掴まれているせいでそれもできない。顔を無理やり上に向けられ、そうしてユウキと目を合わせた岩淵は頭を握る手を少しだけ緩めてやった。


「二度は言わねえぞ? 舐めろ、つってんだよ」

「う……あ……」

「おら」


 岩淵が腰を突き出し、半勃ちにもなっていないチンコをユウキの顔に押し付ける。既に子供の拳ぐらいはありそうな亀頭がぐりゅぐりゅとユウキの頬を嬲っていく。きついアンモニア臭がユウキの脳をガツンと刺激する。岩淵が亀頭をユウキの口元に当てると、それだけで唇がめくれ上がり歯がみしみしときしむ。ユウキは力なく口を開けるも既にプラムより大きい岩淵の亀頭が入るにはまったくもって足りない。


「あぐ……ぐ……ぐ…り……」

「……ちっ、根性ねえな」


岩淵はユウキの頭を再度掴みなおすと、躊躇なく腰を突き出した。ベキャベキャという音を立てながらユウキの前歯がへし折れる。そのまま入ってきたどでかい亀頭がユウキの口を無理やり押し広げ、その勢いでがごっと顎が外れる。唇の端はあまりの太さを咥えきれず小さく裂けて血がにじんでいた。


「っ~~~!!」


 口からありえないサイズの異物を詰め込まれ大きく顔が歪むユウキは叫ぼうとするものの侵入してきた亀頭が口の中をいっぱいにしていてろくに声すら出せない。必死に動かしている舌は岩淵の亀頭を舐めるだけだ。


「おっ」

「ん゛……!!」


 ずぐっ、とユウキの口の中で亀頭が上あごを打った。まるで殴られたような衝撃とともにユウキの身体が上へと持ち上がる。先ほど膝から崩れ落ちかけていたユウキはほとんど自分の身体を支えておらず、岩淵の手も頭を固定はしているが持ち上げてはいない。60kg以上の重量を持ち上げることなど岩淵のチンコにとっては大したことではなかった。


「お~……悪くねーじゃん」


 岩淵が軽く手を引き寄せると喉を押し広げながら亀頭が奥まで達しユウキの気道をみっちりと塞ぐ。それでも岩淵のチンコはまだ半分近く外に出たままだ。ユウキは抵抗もできずに何とか呼吸をしようともがいている。もちろんそのもがきなど抵抗にもならず、岩淵が腰を前後させると振り回されるようにユウキの身体が揺れる。


「あー……やっぱ喉あったけ~」


 しばらく小刻みに腰を動かしていた岩淵だったが、まだ半分近く残っている根元も挿入すべくユウキの頭を掴みなおす。そして喉をぶち破らないように、反対の手でチンコの角度を調整しながら腰を大きくゆっくり前に突き出す。腕並みサイズの巨根がメリメリメリと食道を押し広げ、ユウキの喉がありえない太さに膨らみ、亀頭の形がぼっこりと浮き出る。そのふくらみは喉を超えなんと鎖骨近くまで達していた。当然気道は押し潰されていて、酸欠になったユウキはとっくに気絶している。


「おらっ、いくぞっ!!」


 岩淵が軽く腰を振るとドチュ、ドチュ、と激しい音を立てながらユウキの身体が揺さぶられる。ぶっとい巨根が突っ込まれている喉はもちろん、軽くであろうとサイボーグの岩淵に腰を打ち付けられたユウキの顔の骨は一瞬で原形をとどめないほど砕かれる。既に喉を破らんばかりの太さの竿がさらにビキビキと太くなりついに食道が耐えきれずに裂ける。そろそろか、と、岩淵はユウキの頭を両手で持ち直して、チンコを根元まで思いっきり押し込んだ。岩淵のでかいケツがきゅっと引き締まる。


「……全部飲めよ?」


 亀頭が喉でぶくっと膨れ上がり、鈴口からとんでもない量の精液が直接ユウキの体内に鉄砲水のように注がれる。胃はあっという間に満たされ巨根で栓をされ逆流もできない精液は無理やり腸へと押し流されてユウキの腹が目で見えるほどに膨らんでいく。たっぷり三十秒も注ぎ込んだ後、ふぅ、と息を吐きながら岩淵はその長大な逸物をずるずるとユウキの顔だったものから抜いていく。最後にじゅぽん、と音を立てて外に出た巨根は射精する前と変わらぬ固さを誇っており、血と唾液と精液でぬらぬらと怪しく光っていた。栓が抜けたと同時に、ユウキの口や鼻から逆流した精液がぼたぼたと噴き出している。それを見て岩淵は小さくため息をつく。


「もう駄目になっちまったか……」


 その時、低いエンジン音が響いた。岩淵がそちらに目を向けると止まっていたミニバンが動き出している。岩淵がユウキの相手をしている間に腰が抜けていたタカトは何とか車に這いずって近寄り乗り込んだのだ。それを見ていた岩淵は、ベキョ、と手の中のものを軽く握りつぶした。




続く


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