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今FANBOXで#1h創作チャレンジという投稿企画があり、それに乗る形で作成したお話です。お題「あなたが好きな秋の味覚」で、「服に見合う身体」の主人公で。1時間だと書きたいとこかけなかったので、これは今度続きを書きます!!! 「あなたが好きな秋の味覚」  ファミレスのガラスのドアは記憶よりずっと小さかった。臍の下にあるハンドルを持って、万が一にも壊さないようにゆっくりとドアをひく。自分が入れるように大きく開いて、頭をぶつけないようにして屈みファミレスの店舗に入った。同時に入店のチャイムが鳴る。蒸し暑い外に比べて店内はクーラーが効いてて涼しい。 「いらっしゃい……ま……」 (うわ、ちっさい……)  裏から出てきた店員の女性が、ドアの前で背を起こした俺を見あげて固まった。挨拶のとき一瞬見えた笑顔もあっという間に驚きの表情だ。まあ、2m超えるでかさだからな。びっくりするのは当然だろう。 「……入れる?」 「え……あ、あ、はい! ……い、一名様でよろしいでしょうか」  ちょっと待ったが一向にその女の子が動かなかったので、自分の胸までもない高さもないその子に向かって声をかけると、店員はしどろもどろだが動き出す。 「一名で」 「で、では、こちらへどうぞ」  店員の案内にしたがって店の奥へと入る。普通に歩いているだろう店員の遅さに合わせてゆっくりと歩きながら周りを見る。さすがに天井は高いが、平均身長に合わせて作られているからいろんなものが低い。あまり混んではいないが、すでにいる客たちも驚いた顔で俺を凝視している。 「こちらの席でよろしいでしょうか」  店員に案内された席は、窓と垂直に固定されたソファがテーブルをはさんで向かい合わせになっているタイプの四人掛けの席だ。俺はちょっと狭いかなと思いながらも、席に着こうと膝の少し上ぐらいしかないテーブルに手をついて、テーブルとソファの隙間に身体を押し込んでいく。普通の人の胴回りぐらいありそうな太腿が、テーブルの裏に当たって固定されているテーブルをガタンガタンと揺らす。 (狭いな……)  ソファをギシギシ言わせながらなんとか身体を押し込んでみるが、脚が長すぎて普通に立てようとすると膝がテーブルの裏にゴンと当たる。伸ばせばある程度ましだが、ソファもテーブルも動かせないのなんにしても窮屈だ。ちらっと俺が座るのをずっと待っていた店員の方に顔を向ける。俺が座っていても目線の高さは同じぐらいだ。 「あっちのテーブルを動かせる席でもいいかな」 「は、はい。申し訳ありません大丈夫です!」  俺が示したのは店内の中ほどにある、片側が固定されたソファで、もう片方に椅子が二脚あるタイプの席だ。このタイプの席はテーブルが動かせるので、もうちょっとソファとテーブルの間が取れるはずである。 「こちらで……テーブル動かしましょうか」 「ああ、いい。俺やるんで」  店員を制して邪魔な二人掛け用の椅子を大きく引き、四人掛け用のテーブルを軽く持ち上げる。空の段ボールを持っているようなものだ。そのまま大きく移動させて小さなソファをきしませながら大きく脚を開いて座り、テーブルを持ち上げて引き寄せた。脚を大きく投げ出して座る格好になってしまうが、このでかさだから仕方ないだろう。 「これでいいかな。すいません」 「い、いえ! あ、そ、それではお決まりになりましたらお呼びください!」  店員は勢いよく礼をして去ってしまった。やっぱこんだけでかいと怖いのかな。と思いながらも早く腹を満たすために薄っぺらいラミネートのメニューを開く。とにかく肉が食いたくて、ステーキやハンバーグが並ぶページをざっと広げる。 (・・・略) 「失礼します」  こと、とテーブルに丸い小さな皿が置かれる。その上に載っているのは、黄色のクリームとつやのある栗が鮮やかなモンブランのケーキだ。持ってきた店員に顔を向ける。 「俺、頼んでないけど」 「あの、店長から、先ほどのお礼にと」  そういう店員はさっき俺のパワーを見たからか少しおびえ気味だ。それを安心させるように笑顔を浮かべて礼を言う。モンブランは俺の手じゃ指二本でも摘まめてしまう小ささで(モンブランは普通のサイズだ)包み紙をはいでそのまま一口で食べてしまえた。グラスの水を一息に飲んで残った氷をかみ砕き席を立つ。会計のカウンターには店長らしき男性が佇んでいた。普通の身長はあるんだろうがそれでも俺の胸ほどしかない。 「モンブランどうも」 「あ、いえ、こちらこそありがとうございました!」  伝票を渡して宮前から取り返した金で支払う。ギリギリ二万で足りた。 (でもまだ腹八分目なんだよな……)  今後の食費が思いやられる。レシートを断って、またドアをくぐって外に出た。生暖かい風がクーラーで冷えた体に心地よく、ぐっと大きく伸びをした。

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