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 駅と学校の間には大きな川が通っており、その学校の生徒はいつもそこに掛けられている大きな橋を渡る。――その橋の下で、俊介はカツアゲを受けていた。


「オラ、早くカネ出せよ」


 コンクリートの橋脚に背を預け、俊介は通学かばんをぎゅっと抱え込む。多くの生徒が使う橋といえども、その下となると誰も通らない。橋からも堤防からも見通しが悪くて気づかれにくい。カツアゲには絶好の立地だ。


「黙ってんじゃねえぞ」


 がっと制服の襟首を掴まれてひねられると、否応なしに上を向かされる。見上げた先にいるのは同じ高校の不良たちだ。背の小さい俊介は入学後すぐに目をつけられて、日々ここで金をせびられていた。目の前にいる奴が襟首を持つ腕を揺さぶる。相手は特別体格がいいわけではないけれども、チビな俊介は抵抗もできずされるがままになっていた。


「また殴られんのはいやだろ? 早く出せよ」

「……も、もう、お金、ないんです。……勘弁してください……」


 小遣いはあっという間に消え、貯めていたお年玉も前回の分で消えてしまった。俊介にもうこれ以上出せるものはないのだが、うすら笑っていた不良たちの表情が変わる。


「っざけてんじゃねえぞ! んなの親の金でもスってこいや!!」


 橋脚に強く叩きつけられて肺から空気が吐き出される。ずるずると座り込んでしまう俊介の髪を不良がつかみ、無理やり上を向かせた。腰辺りで緩くはき崩した学ランのズボンと派手な赤色のベルトが俊介の眼に入る。その股間がぐいと近づけられ、上からねとりとした声が降る。


「それともまた金代わりに”しゃぶる”か……?」

「ろくでもねえことやってんな」


 突然低い声が響いて、不良たちは勢いよく振り向いた。そしてそこに立っていた男を見て驚愕する。俊介も不良越しにそれを見て目を見開いた。


 熊が出たのかと俊介は思った。人間の声がしたのにもかかわらず一瞬そう錯覚するほど、その男は大きかった。不良たちよりも頭一つ以上でかく、身長は確実に二メートルを超えている。なによりすごいのはその体だ。その辺のボディビルダーなんか目じゃないほどのものすごい筋肉。丸々とした肩は大きなメロンでも詰め込んでいるかのようで、その肩幅は不良二人分ぐらいありそうなほど広い。そこから続く大胸筋のボリュームはすさまじく、紺のTシャツをギチギチと引き伸ばし、その下に大きな段差を作っている。肩から伸びる腕は自分の脚なんかより確実に太く、二頭筋は力を入れていない状態なのに袖口が弾けそうなぐらい膨れ上がっている。腹の辺りは胸と対照的にTシャツにはゆとりがありそうだが、中には鋼鉄のような腹筋があるだろうことは想像に固くない。脚も丸太を削りだしたかのような太さで、こんなものに思い切り蹴られようものなら一瞬で背骨がおれてしまうだろう。


 そんな怪物が、目の前に立ちふさがっている。不良たちは人数では勝っているものの完全におののいている。そんな中短く刈り上げた頭に反り込みをいれた一人が虚勢を張る。


「な……ん、っだよ!かんけーねえだろ!!」

「関係あんだよ」


 高いところから見下ろす男の顔は、文句なしに格好よかった。整った目鼻立ちに形のよい唇。後ろを刈り上げたツーブロックの黒髪で、右眉にのみ真ん中を両断するような傷があったが、それすら男の魅力を引き立てたてている。ハリウッドの男優と言われれば信じてしまいそうなほどだった。それもあってか不良たちは激昂する。


「てめぇ!」


 反り込み頭が拳を振り上げながら男に殴りかかる。普通なら顔に当たるだろうパンチも、その男がでかすぎて肩にしか届かない。男は少しも身構えずにそのパンチを受ける。パン、という音がした。それなりに勢いの乗ったパンチのはずなのに、男は身じろぎもせず、反り込み頭を見下ろしてはっ、と笑った。


「なんかしたか?」

「ちっ……うわっ、はなせっ!」


 反り込み頭がひっこめようとした腕を、男がそのでかい手で掴む。手首どころか前腕を半分以上固定され、反り込み頭は腕を引き抜こうとしたり、反対の腕で男の拳を殴ったりしているが、男は意にも介さない。男は反り込み頭の腕を掴んだまま、拳を上へ上げていく。反り込み頭の腕が上がり、そして――反り込み頭の身体が、いとも簡単に宙に浮く。その男は最低でも六十キロはあろう人間を、片手でことも無げに持ち上げたのだ。


「ちくしょ……はなせよ!!」

「軽いな……ちゃんと食ってんのか?」


 反り込み頭はじたばたと抵抗するが、吊り上げた男の腕はびくともしない。それどころかその太い腕を揺らして反り込み頭をブランコのように揺らして笑う余裕がある。まるで大人に遊ばれている幼児のようだ。


「シュウヤを離せって言ってんだよ!!」


 男の後ろに回り込んでいた茶髪ロン毛の不良が、とびかかって男の太い首に絡みつき、後締めにする。太すぎる首に何とか腕を回したロン毛は力いっぱい絞めているが、男が苦しそうにする様子もない。すると男は反対の手を伸ばし、自分の首を絞めているロン毛の腕の拳をそれごと掴む。瞬間、ロン毛が叫び声を上げた。


「いでえええええええ!!!!!」


 すさまじい力で拳を握られたロン毛はめちゃくちゃに暴れるも、男は全く応えた様子がない。ぐっと腕に力が入って太い腕がさらに太くなり、袖口がびちびちと悲鳴をあげる。すると完璧にかかってしまえば普通引きはがせない後絞めが、まるでマフラーでも外すかのように解かれていく。男はロン毛の腕を掴んだままその数倍の太さはありそうな自分の腕を勢いよく前に引き下ろした。背中側にいたロン毛がぐわんと引っ張り上げられ、地面にたたきつけられる。人からしてはいけない音が橋の下に響いた。


「かっ、……はっ……」


 生きてはいるが、土の上でもがくようにうごめくのが精一杯のようで、立ち上がるのは無理だろう。男は腕一本で一人の人間をのしてしまった。


「お前もじたばたすんな」


 男はロン毛を引き剥がしている間も左腕で反り込み頭を吊り続けていた。全く疲れている様子もない男は、左腕を動かして反り込み頭と視線を合わせると、その腹に右の拳を当てる。自分の倍近いサイズの拳と凶器のような太さの腕を見て反り込み頭の血の気がさっと引く。


「お、おいまさか……」

「腹に力いれとけよ」


 拳を握りしめた男の腕が一層膨れ上がる。軽く腕を引けば、盛り上がった男の力こぶで袖口からぶちぶちと糸のちぎれる音がした。そして男は、目にも止まらぬ早さで反り込み頭の腹に拳をぶち当てた。


「げぶほっ……!!」


 拳は服も腹筋も突き抜けて、反り込み頭の体がくの字に曲がる。その瞬間男はぱっと手を離した。残った勢いで吹っ飛んだ反り込み頭は地面に落ちると同時に吐瀉物を撒き散らす。男は足元に崩れている二人を見下ろす。


「ったく……手加減したのに……」


 男が小さくため息をつく。その時パリンとガラスが割れる音がして、男はそっちに顔を向けた。最後の一人、俊介から金をせしめようとしていた金髪が、その辺に落ちていたビール瓶を拾い上げてコンクリの橋脚にたたきつけ、底を割ったのだ。あっという間に鋭利な切っ先をいくつも得たビール瓶、人間に刺さればただでは済まないだろう。ただ男はそれを呆れた表情で見下ろしている。


「あぶねえなあ……」

「てめえ……何の真似だ……正義の味方気取りか……?」

「……はあ? 違えよ。お前らが俺のダチに手出してるからだろ」

「ダチぃ!?」


 金髪が振り返って俊介の方を見る。信じられない、という顔だ。ずっといじめていた奴にこんな怪物みたいにでかい友人がいるなんて、普通は思いもしない。


「つーわけだ。おら、こい。まさか逃げたりしねーよな?」


 男の安い挑発に、金髪は簡単に乗った。割れた瓶を振りかぶりながら走り男の左胸めがけて突き刺そうとする。だが男はその瓶をやすやすと側面から掴んだ。淵部分を掴んでいるのに完全に手で瓶を包み込んでいる。金髪が両手で瓶を掴みどんなに力を入れても、瓶は一ミリも動かない。


「くそっ、このっ!」

「……そんで、凶器を使うのはいただけねえよなあ……」


 ぬっと金髪の前に、その顔よりでかい手が現れる。そして金髪がのけぞる前に手が金髪の顔を掴んだ。


「がっ、はなっ!」


 金髪は両手で男の手を剥がそうとするがどれだけ力をいれても指一本動かせない。金髪の視界には男の指の間からかろうじて男がこちらを見ているのが見える。


「そーら」

「ひがっ! は……が」


 男は金髪の顔を掴んだままゆっくりと金髪を持ち上げる。ばたばたと暴れる金髪の爪先が空をかいた。男は自分の目線にまで男の顔を持ち上げる。目線が揃うと、金髪の爪先は男の脛にも届いていない。


「見えるか?」


 男がもぎ取った瓶を金髪に見せつけるようにかざす。太いビール瓶のはずなのに、大きい手がそのほとんどを包んでしまっている。


「こんな危ないもん使うんじゃねえよ……」


 ビール瓶を握る男の前腕がごきゅ、と盛り上がる。手の中の瓶がみしみしと音をたて次の瞬間、ぱきゃ、と音をたてて砕け散る。男はそのすさまじい握力で、ビール瓶を握りつぶしたのだ。瓶は堅いものにぶつければ簡単に割れるが潰そうとすればそうはいかない。林檎やスチール缶なんかとは比べ物にならない力が必要になる。この男はそれをまるで紙コップを潰すかのようにやすやすとやってのけたのだ。指の間からそれを見ていた金髪が狼狽する。


「あ、あ……」

「処分しとかねえとな」


 男が手を開くと、粉々になった瓶の欠片が手のひらの上からこぼれていく。瓶の破片を握ったはずなのに、男の手に切り傷などは見当たらない。男は目の前に吊り下げている金髪に視線を戻して、戯れに腕を揺らす。


「ひっ、あっ……」

「お前も処分しちまうか?」

「や、めぎいいいい!!!!!」


 男が金髪の顔を掴む手にゆっくりと力を込めていく。ミシミシと男の太い指が顔に食い込んでいき金髪は悲鳴と共に暴れるがそれで男は止まりはしない。


「ほら、さっきの瓶みたいになりたくなきゃ五秒以内に謝れ。ごー、よーん、さーん」

「ぎがっ、がっ、すすい…ぎゃっ、す、すい……」


 もちろん金髪は死なないために謝罪の言葉を口にしようとするのだが、その間にも頭蓋骨がミシミシと音をたててすさまじい激痛が襲い、上手く舌が回らない。それでも男のカウントダウンは容赦なく進んでいく。


「にー、いーち……ゼロ。じゃあな」


 男が手に一気に力をいれ、金髪の頭がぐしゃりと砕け散るーーことはなかった。男の手には白目を剥いたまま静かに揺れる金髪の姿がある。カウントダウンの途中であまりの恐怖と痛みに、金髪は吊られたまま気絶してしまったのだ。


「ったく……根性ねえなあ」


 男が手を離すと、金髪はどさっと地面に崩れ落ちた。男の足元には三人の不良が転がっている。そしてその少し先には橋脚にもたれたまま座り込んだ俊介がいる。男と俊介の目線が初めてまともに合う。俊介はびしりと固まってしまった。一歩も動かず不良三人をのした男は、三十五センチはありそうなスニーカーを履いた脚を軽く持ち上げる。足元の不良の頭など簡単に踏みつぶしてしまえそうだったが、男は金髪を悠々と跨ぎ、たった二歩で俊介の目の前に立った。

 座り込んだままの俊介から見上げる男は壮観だった。なにせ目の前にあるのが自分の胴体ほど、下手するとそれ以上もありそうな太腿なのだ。サイズがないのか少し短めのハーフパンツから半分以上見えているそれは筋肉がこれでもかとついている。まるで大樹のようなそれを見ると、不良たちが何をしようと微動だにしなかったのも納得してしまう。すぐ上の股間は、何か詰め物でもしているかのように中のものがハーフパンツを盛り上がらせている。俊介は目を見張ったが、すぐに失礼だと気づいて目線を上げる。さらに首を反らすと呼吸と共に揺れるTシャツからさっきまでは見えなかった腹筋がちらちらと見え隠れしていて、それは当然のようにぼこぼこと盛り上がっている。両サイドにある腕はとんでもない太さにツタのような血管がまとわりついていて、既に隙間なく引き伸ばされれてたTシャツの袖は引きちぎれるのを裂けるように肩へとずり上がっている。そして屋根のように張り出た大胸筋の上に、その男の顔があった。二メートル超の高さから俊介を見下ろした男は、ぐっとその巨大な脚をまげて俊介に覆いかぶさるように近づく。俊介は緊張で息を止めた。


「ほら、立てるか?」


 グローブのようにでかい手が俊介の目の前に差し出される。俊介は男の顔をまじまじと見る。上から見下ろされている上に影になって表情はよく見えない。が、助けてくれたのだの自分を納得させて手を伸ばした。


(でっか……)


 掴もうとした手は大きすぎて男の手のひらに添えるかたちになってしまう。すると男の手が俊介の手をまるごと包み込んだ。先ほど瓶を握りつぶした握力を見た俊介は息をのむが、男はそのまま腕を引っ張りあげる。


「よっと」


 ものすごい力で引っ張りあげられ、膝に力を入れる間もなく俊介の体が宙に浮く。男はゆっくり腕を下ろすと、俊介の足が地についたのを見て手を離し体を起こした。立った状態でも男のでかさは際立っていて、俊介の目の前には張り出した大胸筋が鳩尾に大きく影を作っていて、男の顔を見るには首を思いっきり反らさなければならない。はるか上にある男の顔と目が合う。


「とりあえず移動するか」

「あ……はい……」


 俊介は倒れ付している不良たちを横目に見ながら、男について橋の下を離れた。ただ移動するのにも男はゆっくりと歩いているはずなのに脚の長さが違いすぎて、俊介は小走りでついていかなければならなかった。川原にある大きな木の近くで男が振り返り、俊介を見下ろした。


「怪我とかはないか?」

「あ、はい………あの」


 ようやく話す機会が得られて俊介は口を開く。


「……僕、あなたと友達でしたっけ……?」


 そういうと男はふはっ、と笑った。


「いや、あれは俺のハッタリだ。俺ああいうやつ大嫌いでよ。お節介だったか?」

「い、いえ! ありがとうございます!」


 俊介が頭を下げる。ランニング中に見かけて助けにはいってくれたという。


「じゃ、暗くなんないうちに帰んな。俺はちょっと用事片付けてくっから」

「用事……?」


 俊介が首をかしげると、男は俊介の頭越しにに橋の下に目をやる。


「もう二度といじめなんかしないように、釘刺しとかなきゃなんないからな」




 そのあと、彼ーー和宏が刺した釘がよっぽど効いたのか、不良たちは次の日から一週間学校にくることはなく、くるようになってもずっと何かに怯えているようで、それ以来俊介がいじめられることは一度もなかった。















 この続きの”釘刺し”を「弱肉強食-Extra-」としてFANBOXに支援プランとして投稿しています。(現在はアーカイブプランもしくはCi-enで閲覧できます。)土下座する不良の顔をでかい足で上向かせたり首掴んで持ち上げてもっかい腹パンして拳でぐりぐりしたりスマホ握りつぶしたり不良の顔をでっかい股間に押し付けたり巨大なブツをフェラさせたりする感じです。いじめ駄目絶対!


以下一部抜粋


「ちくしょう……なんだよあいつ……」

「俊介のやつ、あんなバケモンとダチって……」


 和宏たちが立ち去ってしばらくして、ようやく不良たちは体を起こすぐらいまでに回復した。それほど和宏の一撃一撃は重かったのだ。


「あいつ、次会ったらただじゃ……」

「ただじゃなんだって?」


 その声に全員が振り向いて、叫び声をあげた。行ったと思ったはずの和宏が戻ってきたのだ。まだ立つほどの体力まで回復していない三人は必死で和宏から離れるように後ずさるが、和宏はにやりと笑みをたたえて一歩踏み出す。それだけで不良たちが這いながら稼いだ距離が消えた。もう泣きかけている金髪が体勢を変えて地面に頭をすり付ける。



…………


 和宏はそのままスニーカーを前に押し出すと、ロン毛は無理やり体を起こされしりもちをつく。そして和宏は筋肉が詰まった馬のような脚を軽く後ろに引いた。


…………


「こふっ……!」

「おっと吐くなよ。汚え」


 首を絞めて胃液の逆流を無理やり止める。その間も和宏の拳は反り込み頭の腹に埋まっており、


…………


「お前たしかシュンスケにしゃぶれ、と言ってたよな?」



 顎を固定された金髪は首を下げられない。眼球だけを動かしてなんとか和宏の股間を視界に入れた。その膨らみを見て息が止まりそうになる。


…………


みるみる巨大化して口内を埋めていく肉棒に金髪はもう鬼頭を舐める余裕などなく、ふー、ふー、と鼻で何とか息をしている。その状態でもまだ目の前にあるチンコは半分以上口の外に残っているのだ。


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