調査協力(高画質) (Pixiv Fanbox)
Published:
2020-10-16 18:32:24
Edited:
2021-08-01 16:20:06
Imported:
2023-01
Content
「ホントにいいんでしょうか……?」
小さくつぶやきつつ、ラユルは扉の前に立つ。
全力疾走を終えたばかりのような乱れた髪に、多量の汗が肌を伝い高い体温で空気中を自らの香りで侵食するほど火照った体。
声をかけられそうな心配すべき見た目であるが、この状態にもしっかりと理由があった。
とある森林での調査協力。
非常に高湿度の一帯で、岩壁から霧や高音の酸素が吹き出す特殊な環境であった。
そこに群生している植物の採取…そして護衛の依頼を買って出たラユル。
調査自体は非常に安全なものであり、多くの不運によるトラブルを持ち前の明るさとフィジカルで突き抜け、無事に町へ帰還を果たしたのがつい先程。
事なきを得、あとは報酬金をもらうだけ…今夜のごはんに胸を躍らせていたところ、依頼主からとある『提案』を持ちかけられた。
もうひとつの調査目的
『高湿度の濃霧等による衣類への影響の再調査』。
件のエリアの環境が人体に無害であることは判明しているが、衣類に染み込んだ水分等の影響による検証は今もなお、様々な材質で進められているところであった。
そこで出発前、よければラユルが装着しているグローブとブーツをそれぞれ1つだけでも買い取りたいとの申し出があったのだ。
最初は困惑していたラユルだが、町を飛び出るほど跳躍しそうな驚愕の高額を提示され、帰還後に即こちらから土下座する勢いでお渡ししたのがつい数分前。
特に思い入れがある訳でもなかった平凡な装備が異例の金額でトレードされてしまった事実に鼓動も早まり、もう上の空状態で別れを告げようとしたところ…
さらにもう一点、踏み入ったお願いが。
「人体に付着した水分等も改めて調査したい」
これもまた、超高額の追加依頼。
実は帰還直前、見苦しい状態を正そうと綺麗に体を拭き髪を結い直そうとしたところ、強めの声で懇願されてしまった。
場面変わって今。
「おそらくはこの…肌についた水滴を採取したり…?」
それ自体は別に構わない。検温のような、健康診断のようなものだろう。
人体に有害な物質もないと事前に伺っており、現に今のコンディションも非常によい。
この付着した成分が検証の価値があるということも承知したが、非常にハードなフィールドワークであったため…
「(………におったりしてたら……どうしましょう…)」
だが、今の状態が非常によろしいとのことで、背中に伝いむずむずする水滴を拭うこともできない。
残念な事実ではあるが、実際に自らの汗と、芳醇な高湿度の霧をまんべんなく浴びたラユルの体は健康的な『女の子の香り』を発してしまっていた。
「(うう……恥ずかしい……へそを曲げられませんように…!)」
意を決して、依頼主が待つ扉に手をかけた。