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 FANBOX限定更新です。何度かやっている奇妙な結婚相談所シリーズです。

 ギミックなどは共通ですが、今回は妻になって夫とイチャつくのではなく教え子と不倫関係になるというものです。

 不倫そのものがどうというのは置いておいて、少なくとも後味は悪くないようにしてあります。


 それでは、以下本編をどうぞ


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「わ、わ……涼子《りょうこ》先生だ」

 朝6時半、目を覚ました俺は鏡の前で仰天していた。

 うららかな長い黒髮、ややツヤが落ちてきたもののハリはまだまだ若々しい肌、ワンピースのパジャマに包まれた大きな胸とお尻、細い腰。

 鏡に映っているのは30代後半の美人の女性。俺が中学生の時に憧れていた涼子先生にして――今の俺の姿だった。



 ――好きだった先生が結婚していた。

 その先生は俺が中学の時の国語教師で、とても優しくてふわふわした雰囲気のある女性だった。卒業の時に告白もした。その時、もし俺が大人になっても好きだったならまた来なさいと言ってくれた。

 そして大学を卒業し、有名企業に就職して一段落し現場にも慣れた12月初頭。いざ迎えに行こうとしたそのタイミングに開かれた同窓会で、人づてに聞いてしまった。とっくに結婚していると。

 その場で先生に電話をかけて、直接聞いた。先生の負担になると思い本気にしていたことは明かさず、こんなこと言っていましたね、と笑い話に持っていった。おばさんだしね、と俺を諦めさせるためか今の写真を送ってくれたが、より美人になっていた。

 もちろん俺が女々しいだけだ。中学生の言葉を真に受け、大切な若い時期を無為に過ごし、くるかもわからない教え子ずっと待ってくれているはずもないんだ。それに、待っているという言葉を信じて高校大学でも彼女を作らず、あなたと結婚するためにいい会社に就職してきました、と言われたら尻込みしてしまうだろう。

 多少なりとも歳を重ねた今なら、それらも客観的に理解できる。しかし理性は追いついていなかった。


 それから数日後、半ばゾンビのような足取りで会社に向かっていたはずの俺は、全く見ず知らずの路地に迷い込んでいた。遅刻確定どころかもう始業時間。慌てて会社には体調不良で遅刻しますと連絡を入れたが、さりとて出社する元気もなかった。

 そんな時目に入ったのは、一軒の結婚相談所だった。

 高校でも大学で彼女は作らず……というより出来ず、会社でもやはり女性との接し方がわからない俺は結婚というものが具体的にイメージ出来ない。婚活するような歳でもなく、恋愛相談する場所とも少し違う。なにかにかこつけて愚痴りたいだけなのだとは自覚はあった。

 だから立ち寄るのはやめようとしたのだが、不思議と脚が吸い込まれていってしまった。

 それも必然だったと知ることになる。なぜなら、その結婚相談所はただの相談所ではなく――結婚している人物の肉体と立場を乗っ取ることで、理想の結婚相手、理想の結婚生活を選択するという不思議な相談所だったからだ。

 振り返れば、そんなおとぎ話のような事を素直に信じる精神だったのは異常だった。しかしその時は本能に忠実となり、涼子先生のデータがないかを探し、難なく発見する。

 そして俺は涼子先生の夫になるべく、迷わず対象を決定したのだが――



「……」

 俺は、涼子先生の姿になってしまっていた。

 システムの障害か、俺の選択ミスか、向こうの誤処理か。原因はわからないが、俺は夫ではなく涼子先生その人になってしまっていたのだった。

 文句を言ってやろうとも思ったが、結婚相談所の場所や電話番号などに関する記憶が全くない。重要なところはもちろん、類推するために必要な情報――例えば以前の俺がどういう経路で会社に向かっていたかなどといった情報すらも消え去っていた。おそらくは意図的なものだろう。

「……先生」

 パジャマの下にブラジャーはしている。今も締め付けの実感があるし、なんなら昨夜お風呂上がりに自分で下着を選んだ記憶さえある。もちろん俺がこの目で見た光景ではなく、例えるなら一週間前の夕食を思い出すように、少しだけ手を伸ばす必要はあるものの、見つからないことは絶対にない。

 俺は改めて、真上から涼子先生の身体を見下ろす。先程はパジャマといったが、着ているのはふんわりとしたシルク生地の白いワンピースで、袖やスカート、襟の裾なんかには華美なレースが縫い付けられている。ネグリジェ、なんて言った方が正しそうだ。

 その襟を引っ張ると、女性らしい胸の谷間。Gカップという立派なサイズ、紫地に白レースを被せたやはりセクシーなブラジャーだった。

 俺はたまらず、ネグリジェを脱いでしまう。ショーツも記憶通り、ブラジャーとおそろいのデザインと柄で、とても似合っている。

 夢にまで見た先生の、憧れの先生の下着姿。確かに俺が中学の頃でもう10年近く前、記憶からは多少歳を重ねてはいたが全く色褪せることはなく、むしろ香り立つ妖艶さを手に入れていた。

 長い髪が垂れて、白い肌に流れていく。照れて下着を隠しているようだ。

 けれども、こんな素敵な女性は俺の物になってくれなかった。男として、抱いてやることはできなくなってしまった。

「はあ」

 だからこうして涼子先生本人になれたことを、俺は素直に喜べなかった。文字通り先生の全てを手に入れることは叶った。だが、望んでいた形ではなかった。

 すぐそこのベッドでは、まだあの人が――涼子先生の夫が、すやすやと寝息を立てている。

 涼子先生のお相手は普通のサラリーマン。大学時代からずっと付き合っていて、ドラマチックな障害や駆け引きはなくふたりが31歳になった時に入籍。同棲していたので生活もあまり変わらず、平穏かつ幸せな日々を送っていたようだ。

 子どもはもし出来たら、というような緩やかなもので、積極的に子作りをするでもなければ避妊もしない。ごく自然体で夫婦のセックスを楽しみ、その結果でどうなるかという考えで――

「くそっ……うぅ」

 抱かれている喜び、あの人の暖かい腕、女の快感が一気に俺の中に蘇ってくる。他人事やバーチャルリアリティでもない、俺自身の……いや、私自身の感情でもって、色づいていく。

 今の涼子先生は、人並みに幸せだった。

「……仕方ないか」

 羨望と嫉妬が沸騰しかけるが、拳を握りしめて鎮火させる。

 先生は俺をたぶらかしてなんかいない。中学生の苦く切ない思い出が俺を頑張らせてくれていた。それでいいじゃないか。

 なにより、俺がその涼子先生になった今、どれだけ残酷な形でも落とし前を付けられるのに、そうする気が起きないのがその証だ。

「先生。これからもずっと大好きですから」

 あの結婚相談所によって、俺や先生の身に降り掛かった出来事は不可解だ。しかし過去に戻ることは出来ない。俺は先生と、あるいは私は教え子と一緒に生きていくことになる。そうするしかなかった。

「……っと」

 ふと鏡越しに目に入った時計が、朝の支度をしろと急かしていた。俺は先生が何百回も繰り返してきた手順を思い描く。ネグリジェを着直して、ダイニングに降りていくのだった。




「――レ点なので、いっこ上の字を先に読むんですね。ふたつ連続しているときは、よいしょ、よいしょって降りて降りてなので、一番下から読むことになるんですね――」

 俺は眠たそうな生徒たちの前、教科書を読み板書をしながら授業をしていた。

 涼子先生は中学校で教師を続けていた。主に3年生の国語を担当しており、俺や涼子先生の母校でもない遠くの土地であるもののもう慣れていた。この学校にも、もう2年くらい勤めている。

「一、二点はちょっとややこしいですね。これは先に二の点が入って、これを一旦無視してくださいよーっていう印です――」

 昼休み直後の授業、おっとりとした涼子先生の声はとてもいい子守唄だった。先生もうるさく言わず、当時のクラスメイト達は眠っていたり、別の教科の宿題をやっていたりしていた。

 それはここでも同じ。この態度は教師としての情熱に欠けるだとか、生徒の成績がどうでもいいといった適当な方針ではない。子どもに無理やり真面目なフリをさせても意味がないという経験、授業が全てではないという考えからくるものだった。

 以前からそうなのだが、テスト前に要点をほどよくまとめたプリントを配布するので、多少授業や板書がなくとも問題ないようにしているというスタンスである。

 少々甘いような気もするが、ガツガツしても逆効果なのは確かなのだろう。俺は先生のやり方をトレースした。

「……っと、あら、そろそろ時間ですね。みなさん、起きてください」

 日直に号令をさせ、俺は荷物を持って教室を後にする。職員室に戻って次の時限の担当がないことを確かめてから、女子職員トイレに入っていった。

 中でおばさん先生と会釈する。ふうとため息をついて流しの鏡を覗き込むと、涼子先生が映り込んだ。

 化粧は薄め、長い黒髮はビジューのついたバレッタで纏めている。大きな胸を隠すような焦げ茶のフリルブラウスに黒いベロアのマーメイドスカート、肌色のパンティストッキング。

 既婚女性らしい、教師らしい派手すぎず彩度も低い上品で貞淑な服装だ。しかし唯一、豊かで美しいヒップラインを描くスカートだけは隠すつもりがないらしい。思春期真っ只中の男子生徒の何人かは、尻フェチに目覚めてしまうかもしれない。

「……いや、けどもうおばさんか」

 今の俺は――涼子先生はもう38歳。中学生達からすれば年齢が親と子ほどに離れていて、性欲の対象とは見られないだろう。そう、若い頃の私に馬鹿正直に告白してきたかつてのあの子――俺のように、真剣に恋心を抱く生徒なんていない。そう涼子先生は思っていた。

「はぁ」

 やはりまだ振り切れない。俺は想いに引きずられながらも、トイレの個室に入る。

 俺はロングスカートをたくし上げると、むわりと汗と蒸気が立つ。下着は見えないからと油断しており、ストッキングには総レースの黒いショーツが透けていた。

 それらも下ろし、陰毛まみれのアソコをさらけ出す。下半身から力を抜くと、割れ目の奥に力強さが生まれて勢い良くおしっこが排出されていった。

 涼子先生になって一週間ほどが経ったが、座る小便も、邪魔になる胸も、見にくい股間も未だに慣れない。そこを目の当たりにする時、触る時はどうしても童貞だった俺に戻ってしまう。

「……んっ」

 カラカラとトイレットペーパーを引き出して丸め、アソコを拭き取る。この行為も、なんだか照れくさい。

 使用済みの紙を便器へぽとりと落とし、水を流す。まずはショーツを穿き直し、食い込まないようぱちりとゴムを鳴らした。ストッキングも引っ張って伸ばしながら、ムラがないように整えていく。

 その過程で、どうしてもはしたない格好になるのも俺を悩ませる。ショーツの生地をつまんだり、ストッキングの中に手を入れがに股になったり。だいたい、優美なシルエットのマーメイドスカートを腰まで上げているだけでもずいぶんと挑発的。俺の知っている涼子先生からは想像できず、それだけでもエロティックだった。

「……だめ、なのに」

 自分が勤める中学校の教員女子トイレ。職場でありすぐ近くで多感な時期の子ども達が勉学に励んでいる中で、俺は性欲のスイッチに火が点いてしまった。

 こうなったら止められない。一説によると女性の性欲が最も高まるのが今の俺ほどの年代で、最近は夫も忙しくレス気味。オナニーも何度かしたが、身体が余っているのは間違いなかった。

 それに加え、ずっと涼子先生を想っていた俺の心。幾ばくかの年月が流れ女として成熟した先生が――先生の身体がいつでも自分の好きにできるとなれば、躊躇いなど風前の灯火だった。

「ぁ……っ」

 俺はブラウスの上から胸を揉む。誤魔化してはいるがやはり男子の目は向く。歩く速度を上げればゆさゆさと揺れるのが見て取れ、意図しなくとも胸が強調されることもあった。

 さわり心地はふわふわとしているのに、揉まれるとすぐに芯から反応した。すぐに乳首も固くなりブラジャーの裏地で悦んでしまう。

「んぁ……ふぁぅ、っ」

 俺は必死で声を抑えながら、スカートごとお尻を撫でる。ベロア生地は滑らかさを、先生のお尻は柔らかさを手に与える。刺激としてはかなり弱い方だが、板書の時に生徒たちへ見せつけているお尻を独占していると思うとあっけなく性感帯に成り下がる。

 さらに気分が乗ってきた俺は、スカートをもう一度たくし上げる。これだけでもエロい仕草なのに、今や本当にショーツやストッキングが丸見えになってしまうのは最高にそそる。

 昔の涼子先生はフレアスカートだとかもう少し若々しい服を着ており、その時にもウエストを調整したり少し屈むだけでドキドキしたのだが、その向こう側だ。

「……っぁ、っぅう!」

 ストッキングの中に手を突っ込んで、直接アソコをいじくり回す。前までの俺はそれこそ中学生のまま純朴で、涼子先生のここは想像したことは数度しかなかった。女性の秘密のところを妄想する罪悪感と、無垢すぎる恋心が先生から性的な要素を取り除いていたのだ。

 けど今は、陰毛の毛穴から膣の形まで鏡でじっくりと観察し、つぶさに触って悦んでいた。さらに先生の記憶も丸裸にして、オナニーのクセや弱点も全て把握し、的確に愛撫してやっている。

「っくぁ……んっ!」

 涼子先生を抱いているようで心地よかった。どうすれば鳴いてくれるのか、どうされると嬉しいのかを誰よりも正確に知るのと同義だ。最初は夫になりたくて後悔していたが、むしろ成功だったと思っていた。

「ぁ……っ!」

 けれども、ひと味足りない。なまじ夫とのセックスの快楽を知っているせいで、いくら女性としてのオナニーが興奮するとはいえそれ以上ではなかった。

 なら、何をトッピングするのか。

 それは男子生徒たちの眼差しだった。

「……っふ、ぁっ……!」

 ――おばさんになりかけている私を、若い子たちが見てくれている。当然教卓に立つ人間として視線は集まり、そのほとんどが女性である以前に教師として見ているだけ。そこに性的な要素はごく僅か。

 固執するわけじゃないけど、まだ女としての魅力が失われていないというのは嬉しい。最近夫に抱かれる回数が減ってきて、私が歳をとってきたからだなんて自信を失いかけていたんだけど、学校ではお尻や背中に突き刺さる視線を感じることがある。

 より一般化された本能として、性格や立場を超えたメスとしての喜びで――

「んっ……ぁあっ!」

 びくびくっと身体が震え――俺は絶頂した。溢れた愛液がショーツやストッキングに染み入り、じんわりと広がっていく。

「……ふぅ、ふぅ……」

 声は出さなかったし、途中で他の先生も来なかった。少々長めの離席にはなったけど、まさかトイレでオナニーしていたとは誰も思わないだろう。

「……」

 手を洗いながら、俺は涼子先生の顔を見つめる。

 欲求不満。今の先生……今の俺は、それだった。女ざかりの今、お預けを食らっている。いっそ、子どもを作ろうと提案してもっと営みを増やしてもらおうか。

 俺は熟れた女体を持て余し、妻としてそこまで考えるようになっていたのだった。



「――なので、この『於』とかは読まないんですね。ポイしていいです」

 涼子先生になってさらに数日。授業をしていた俺はあることに気が付く。あるクラスの男子生徒が一人、いつも熱心な視線を送ってきていた。

 その生徒は柊真《しゅうま》という学級委員で、国語のテストは常に100点近くをキープし、前述のとおり授業態度も非常に真面目な少年だ。今は引退しているがバスケ部であり身長も体格もそこそこ、中学3年生とはいえ大人じみた顔つきになりつつある。

 前までの涼子先生は、国語が好きでごく純粋にやる気があり、担任を持たない自分のところにも予習復習で訪れてくれる事が多い子という程度の認識だった。

 しかし俺の見立てだと、かつての俺のように――涼子先生に教師以上の感情を抱いている可能性があると睨んでいた。

 中学生で生徒と教師という関係である以上、想い人にアピールする方法といえば、成績での突出が思いつく。良い方でも悪い方でも気にかけてくれろうだろうが、それならより良い印象を与えられるに違いない好成績へと傾倒していくのだろう。

 そこまでは涼子先生も知識として、俺という経験として手元にあるのだが、それこそ10年前で生徒と10歳差、ちょっと歳の離れたきょうだいとか近所のお姉さんぐらいならまだしも、40歳近い今となっては中学生の生徒からすれば恋というには遠すぎる。

 まさか熱烈な視線を向けられているとは、予想していなかったようだ。

「ただもちろん文章としては意味のあるものなので、それは忘れないようにして下さいね――」

 俺は喋りながら、それとなく柊真くんの方を見る。

 ばっちりと目が合い、たちまち柊真くんは顔を赤らめノートへ視線を落とした。あからさますぎて俺は吹き出してしまい、楽しげな声に釣られて柊真くんは顔をあげる。

「……なので、この書き下し分ではなくなる文字がどういう意味合いを持って解釈されているのかっていうところが楽しいので目を向けてみてくださいね」

 授業を切り上げ、俺は職員女子トイレへ駆け込む。いつものマーメイドスカートをずらし、ストッキングとショーツ越しにアソコをこすって――

「――んんぁ、ぁあっ!」

 ――性欲が溜まっているこの身体に、柊真くんの眼差しは毒と言っても過言ではなかった。

 あんないじらしい子が、私を好きになってくれている。拙い手付きで私を求め、下手っぴな腰使いで責め立てられたら。

 そして同時に――あの子は、昔の俺でもある。空想の世界、私を健気に貪る柊真くんの顔はかつての俺と混ざっていった。

 そんな禁断の妄想に浸るとムラムラしてきて、どうしようもなくオナニーがしたくなってしまうのだった。



「――では、今日はここまで。お疲れ様でした」

「きりーつ、れーい」

「……っと、あ、すみません。どなたか漢字辞典を運ぶの手伝ってもらいたいのですけど」

 ある日のこと、俺は授業で使った辞典の片付けを手伝って欲しいと募る。持ってくる時はたまたま近くに居た男の先生が軽々と運んでくれたのだが、班ごとに配布しており数冊あるので今の俺には難しい、というより危険だと思い声をかける。

 そこに他意は無かったのだが、真っ先に手を挙げてくれたのは例の柊真くんだった。

「あ、はい……俺、やりますよ」

「ほんと? ありがとう、これだけお願い」

「いえ、全部持ちますよ」

 柊真くんは部活で培われたバランス感覚と筋肉でもって、簡単に持ち上げる。これも限られた機会で涼子先生にアピールしようという意図なのだろうか。もはや俺の方が色ボケになり、思い過ごしというおそれもあるが。

「……ありがとう、柊真くん」

「いえいえ」

 そう不安になったが、柊真くんはやはりどこか浮ついている。まあいずれにしたって気持ちに応えてあげることはできない。

 人妻の教師が、未成年である教え子に手を出す。数え役満、不倫どころの話ではなかった。

「涼子先生? 先生?」

「え、なにかな?」

「ここでいいですか?」

「う……うん、大丈夫。ありがとう」

 放課後の廊下を抜け、静かで狭い図書準備室で二人きり。意識するのは俺も同じだった。

 帰ったらオナニーをしなければ収まらない。いや、家まで我慢もできなさそうだ。このシチュエーションをオカズに、俺は卑しい雌の本能を鎮めなければならなかった。

「……先生、大丈夫ですか? 顔赤いですけど」

「ひゃっ!? え、あ……うん、なんでもないよ。平気平気」

「なんかぼーっとしてるし……俺、心配です」

「っ……」

 柊真くんは一歩近寄ってきて、顔を覗き込んでくる。

 しかしダメだ。先生から手を出すわけにはいかない。いくら可愛くて、優しくても許されない関係。俺は手の甲をつねり、スエードのローファーを一歩引いた。

 けれども、柊真くんは追随してきた。

 ――そこまでするならと、俺はそうすることを決めてしまった。

「……ご、ごめんね。最近男の人とこんな近くで二人きりになるのって、久々だったから……」

「そうですか……でも、涼子先生って結婚されていたはずでは」

「その……最近は夜遅くて、あんまり構ってくれないし……全然夜も……あ、えっと、えへへ……私、生徒相手に……気持ち悪いよねおばさんのこんな話」

 俺は下を向き、手を合わせてもじもじとする。

 ――あえて隙を見せる。元の涼子先生ならこんな打算的に動けないが……もしかしたら天然でやってしまう可能性はゼロではないものの、とにかく俺はわざと誘惑じみた言動をとってみた。

 涼子先生から、乙女でありながら大人の女性の一端を醸し出されて柊真くんは動揺したのか、口をぽかんとさせている。

「それで……なんだっけ、ああ、ありがとうね。後は私が片付けておくから……ごめんなさい。さっきのは忘れて」

 俺はしどろもどろになりながら、話を終わらせようとする。しかし柊真くんは微動だにせず、なにか逡巡しているようだった。

 決意したのか、柊真くんは足元を正して息を吸ってから、口を開いた。

「いえ……気持ち悪くありませんし、先生はおばさんなんかじゃありません」

「え……」

「とても素敵な女性です」

「あっ」

 柊真くんは俺の両手を――結婚指輪すらはめている俺の手をとって、きゅっと握りしめてくれた。

 もっとも勢いでしかなかったようで、柊真くんははっとする。しかし手は離さず、段々とお互いの体温が上がっていくのがわかった。

「……涼子先生、好きです。あなたが赴任したときから……ずっと」

 柊真くんは凛々しく真剣な瞳で、俺を打ち貫く。緊張が伝わってくるが、それだけの本気さも同居していた。

「や、やだ……こんなおばさん捕まえて……好きってのは先生としてってことでしょ、冗談は――」

「本気です。先生の事が好きです。恋しています」

「……うぅ」

 かかってくれた、しめしめというのが"俺"の気持ちで、涼子先生としては――どうしようもなく、嬉しい。

 俺の介在と作用によってなんとなく察してきていたが、柊真くんが私に恋をしている。何度も繰り返すが、年齢も立場も違い、どうあっても許される事のない関係だが――それらを顧みずになお、想いを伝えてくれる潔さと若さにキュンキュンと胸が高鳴っていた。

「……だめ、なのに」

 素肌を見せた時にがっかりされないか、やっぱり勘違いだったと撤回されないか、この子を包み込んであげられるか。

 正直に言えば涼子先生には不安しかなかったのだが、いずれも一つ過程を飛ばしているうえ、とっくに夫への操はない。倫理的な躊躇など存在していなかった。

 もう涼子先生は思いを受け入れ、この少年に抱かれることしか頭にない淫乱女教師に成り下がっていた。

「……涼子、先生」

 柊真くんの震える声で、涼子先生は気がつく。一度はこうして告白を受けて付き合い始め、プロポーズまでされて結婚した自分なんかより、柊真くんの方がよっぽど不安で不安で仕方がないのに。

 そう、俺は知っている。状況は違うが、俺が昔涼子先生に告白した時にはとてつもない勇気が必要だった。柊真くんの葛藤は、身にしみていたのだ。

 少しだけ心に余裕が生まれてくると同時、柊真くんがかつての俺に重なってくる。想いを遂げられなかった俺自身に。

「ふふっ……ありがとう。じゃあ……先生と柊真くんは恋人だね」

「! そ、それって……」

「うん。ほら、恋人同士じゃなきゃしないこと……してほしいな」

 俺は――私は目を閉じて、待つ。

「……」

「いいんですね……?」

「うん、いいよ――」

 唇に、熱いものが触れた。顎に手を宛てられ、腰に腕を回される。少しおぼつかないけれども、たくましい腕は私の身体を囚えて、がっちりと固定されていた。

 部屋のせいか、柊真くんの唇は埃っぽい味がした。数秒、私の潤いが移っていったのか、私が悦んだからか、どんどんとろけていく。

 意地悪のつもりだった。柊真くんは女性経験のない童貞くんで、キスの仕方も知らずに戸惑うだけだと油断していた。

 それなのに――こんな男らしいキスされちゃったら、もう私は――涼子先生は、陥落してしまった。

 結婚して以降、初めての夫以外とのキス。それこそ中学生時代を思い出すような甘酸っぱさが胸一杯に蘇って、涼子先生は柊真くんに恋してしまった。

 自分が不貞の人妻だという罪悪感も、俺にとっては最高のスパイス。柊真くんに報われなかった俺を託していて、まるで俺自身が涼子先生を寝取ったような達成感すら錯覚していた。

「……っ……本気、です。俺は」

「……うう、いけないんだよ、本当は。もう夫も居る女の人に、そんなかっこいいキスしちゃ。それに、生徒とも……バレたら、学校にも居られなくなるのに」

「構いません」

「あ……っ」

 柊真くんは俺を強く抱きしめて、耳元でささやく。

「少しお待たせすることにはなりますが……涼子先生のためにいい会社に就職して……迎えに行きます。絶対に」

「柊真、くんっ……!」

 ――涼子先生から、全ての迷いが消え去る。俺は柊真くんを強く抱き返して、さっきよりずっと情熱的な口づけをする。柊真くんは応えてくれて、それどころか俺は抱きすくめられた。

 柊真くんの指には俺の髪が絡まる。体重がかけられ、俺の胸がぴったりとくっついて形を変える。マーメイドスカートの裾も少しまくれ上がって、肌色のストッキングに包まれた俺の細い脚と柊真くんのスラックスを穿いた脚がもつれる。

 ぐらり、とバランスを崩して、俺はソファに――応接室のお下がりで、さらに傷んできて引っ込められていたソファに、押し倒されてしまった。

「……んっ……っふぁ」

「あ……その、ごめんなさい! ここまでするつもりはなくて」

 俺の艶っぽい声が届いたのか、柊真くんは慌てて起こしてくれようとした。しかし俺は頬を膨らませて、ソファに寝転ぶ。

「ここまでしておいて……そういうつもりじゃないの? この図書準備室……というか図書室は放課後解放してなくて人も来ないから、私……期待しちゃった」

「……け、けど……その、俺初めて……で」

「ふふっ……じゃあなに? 私以外で練習してくるの?」

「あ、いえ……決して。それに……ゴムも……」

 からかってやると、柊真くんは顔を真赤にする。

「大丈夫。最近はご無沙汰だけど、子どもは作らないように薬を飲んでるから」

 嘘だった。子宮が柊真くんの精子を欲しがっているだけだ。

 柊真くんは覚悟を決めたのか、俺の顔を見て頷いた。俺の胸に手を伸ばしてきて、しかし熱いものに触れたかのような早さで引く。再びおそるおそる手を宛て指が少し動いているが、揉んでいるとは呼べない手付きだった。

「ほら……もっと思いっきりやって大丈夫だよ。先生のおっぱいは壊れ物じゃないんだから……ぁっ」

 俺は柊真くんに手を重ねて、力加減を教えてやる。それですら柊真くんは恥ずかしそうだったが、さらに俺の顔が緩みか細い喘ぎ声が出てくるあたりにはちゃんと感じられるようになってきた。

「……んっ、ぁ……柊真くんの手、気持ちいいよ……」

 もう燃え上がっている涼子先生の身体は、多少弱い刺激でも十二分に反応してしまう。弱点が分かりきっていて容赦のない夫や自分ではない、その初々しさもリズムを生み出していた。

「……失礼、します」

「あ……そうだよね、ずっと服の上からじゃ面白くないよね」

 柊真くんは勢いづいたのか、俺のフリルブラウスのボタンを外していく。インナーのタンクトップごと脱がせられて、俺は上半身ブラジャーだけになった。情欲で汗ばみ蒸れていた空気がむわっと立ち上る。

 今日の下着は、まさかこんな展開になるとは想像していなかったので、白で装飾の少ないやや地味なもの。肌のハリもまだ保っているつもりではあるが、柊真くんがいつも目にしている中学生と比べてみると大違い。

 こっちの方が恥ずかしくなってきて、俺は腕を身体の前で交差させた。

「ごめんね……多分、思っていたよりずっとおばさんでしょ、私」

「いえ。とてもセクシーです」

「もう、上手なんだから」

 柊真くんは息を飲んでから、俺のブラジャーも外す。涼子先生のGカップが溢れ出て、ぽよんと跳ねた。かなり意識していたのであまり垂れてはおらず、出産も経験していないので乳首も比較的明るい色だ。

「は……っ、ぁんあっ」

 柊真くんはそろそろ理性のタガが外れてきたのか遠慮なく胸を揉み始める。すくい上げ重さを確かめたり、しっとりと貼り付く表面を楽しんでくれていたようだ。

 やがててっぺんにも侵攻してくる。乳輪をくるくると回した後、乳首をきゅっと摘む。ぴりっと胸の奥にまで痺れが走って、眉をひそめてしまう。

「……んっ、ぁ……こういうのってどこでおぼえるのかな?」

「動画とか……です」

「中学生は見ちゃいけないやつだよね……」

 柊真は鼻息を荒らげながら、俺の胸を弄ぶ。乳首は完全に膨れ上がっていて、ちょっと恥ずかしい。

 ――よく見ると、柊真のスラックスの前はパンパン。それを発見した瞬間、俺のアソコも一気に切なくなってくる。とろとろとよだれを垂らし、ショーツがぐちょぐちょになっていた。

「やっぱり、自分の事で精一杯だったかな。私が気持ちいいかどうか、全然気にしてなかったでしょ」

「え……」

「うそうそ。しょうがないよ、初めてなんだし。けどね……ふたりともとっても気持ちよくなる方法、あるよね」

「……」

 虚を突かれ硬直した柊真くんだったが、続く俺の台詞に合わせて視線が下りる。俺のスカート――股間でぴたりと止まった。

「そう……柊真くんはどうすればいいと思う?」

「俺の……を、先生のあそこに……」

「よくわかんないね。はっきり……って、授業みたいでやだね」

 俺はくすりと笑ってから、スカートのホックを外しファスナーも下ろす。肌に密着するデザインのマーメイドスカートを剥くように脱いで――肌色のストッキング越しの、白いショーツが丸見えになった。

「……あ、やだ……シミ、見えちゃってる」

 ショーツのクロッチは濃く色が変わっている。濡れているのがバレバレだった。

「あとは……柊真くんのしたいようにしていいよ。ここからは男の子の仕事だもんね」

「……はい」

 緊張の面持ちは崩さないまま、柊真くんはほとんど迷わずパンストに手をかける。そのままショーツも下ろして――ついに、柊真くんの目の前には涼子先生のアソコが晒されてしまった。

 陰毛はあまり手入れをしていない。しかし、盛大にはみ出したビラビラや、やや黒ずんだ割れ目の奥がよく見える。はしたなく愛液を垂れ流す膣も、それで濡れたお尻の穴も、ビンビンに大きくなっているクリトリスも。

「……ちょっと恥ずかしいね。夫以外の男の人に見せたことなんてないから……変じゃないかな」

「とても綺麗で……ええと、セクシーです」

 穴が空くほど俺のアソコを観察している柊真。まさに視姦で、ひくひくと動く膣口が本当に恥ずかしい。というか、俺だけこんなに照れているのがなんだか不公平じゃないか。

「ありがとう。ねえ……柊真くんも、裸になって欲しいな……」

「あ、すみません」

 柊真は急いで制服を脱いでいく。一瞬止まってからボクサーパンツも下ろすと、ガチガチに勃起したチンポが顔を出す。中学生としてサイズはわからないし皮が被っている。しかしそんなのどうでもいい。とにかくそれがたまらなく欲しかった。

 けどその前に、最後の仕込み。

「……ねえ、お願いがあって。私のこと、涼子、って呼び捨てにして。あとタメ口がいいな」

「……け、けど」

「彼女のお願い、聞けない? それともやっぱり、私のことは先生として好きなのかな」

「……わ、わかったよ、涼子」

 柊真に名を呼ばれ、俺の脳髄は一気に麻痺してくる。

 教え子を誘惑して、告白させて、そのままエッチして、しかも呼び捨てにさせる既婚の女教師。倫理観のかけらもない、色狂いおばさんだと誰もが後ろ指を差すような所業に違いない。

 だが俺は知っている。その本質が、ピュアな恋心であることを。俺は切なさも甘さも、全て身をもって体験していた。

「……おねがい」

「いくぞ、涼子……!」

「あ……んっ」

 俺は――私は股を開いて、その時を待ちわびる。流石に初めてだからか幾度か失敗したけど、そのうちにつるつるの亀頭が先陣を切っていった。

「ぁ……んっ、入ってきたよ、柊真くんの……」

「っう……ぁ」

「ぁ……んっ!」

 そして――にゅるりと、柊真くんのおちんちんが私の膣に埋め尽くしてきた。

 私はそれだけで軽く絶頂してしまい、きゅうっと柊真くんのおちんちんを締め付けてしまった。それもいけなかったのか、すぐおちんちんは脈動して――私のナカに、たくさんの精子を放った。

「んぁ……ぁっ!」

 けど、物足りなくなんかない。柊真くんが私で興奮して、私の膣で気持ちよくなってくれた証。それに、お腹の奥の奥、赤ちゃんのお部屋に精液が到達して、ぷるぷると中を這い回る感覚は久しぶり。とっても嬉しかった。

 柊真くんは感情がめちゃくちゃになっていたのか、涙を流しながら腰を押し付けていた。

「あ……っ、ふぁ……ごめん……なさい」

「あはは……出ちゃったね。けど私と違って若いんだから、まだまだ……でしょ?」

「はい……じゃないや、うん。もっとしたい……!」

「いいよ……もっと私を犯して――ぁああっ!」

 宣言通りとばかりに、柊真くんは抜かないまま、勃起を維持したままピストン運動を始める。つながったところからは二人のものが混じった体液がこぼれるよう。

 激しい動きで古びたソファは軋み、劣化したクッション材からは埃が立つ。柊真くんの呼吸と私の嬌声、それにいやらしい水音はシンクロして静かな図書準備室をみだらに染め上げる。

 学校のはずれ、誰からも遠ざけられたこの部屋は二人の愛の巣だった。

「んぁ、っ、ぁあぅ、ぁあっ!」

「っく、涼子……っ!」

 柊真くんにテクニックなんかない。望んでもいなかった。ただ若く青い性欲を私にぶつけて解消する道具になれればいい。無責任にも精液を吐き捨ててくれればそれだけで幸福だったはずなのに、柊真くんは私をいたわり名前を呼んでくれる。どうにかなりそうだった。

「涼子……出る……かもっ!」

「いいよ、っ、たくさん……ちょうらいっ……んおっ!」

 一層おちんちんが暴れ出す。二回目とはいえ性感に慣れていない柊真くんは、これが限界だったのだろう。それでも、きっと私を悦ばせるために我慢してくれていたはず。

 ――憧れの先生と二人きり。かつての俺にもそんな機会はなかったが、柊真は遥か上の関係にまでもつれてしまった。心をつなぎ、身体を撚り合わせ、時間を共にする。おそらくこのまま先生が捕まってしまっても、あるいはお互いが不幸になるとしても――その可能性すら一顧だに出来ず、本能のまま求め合う。

 最高に背徳的で、官能的で――

「――ぁぁあ、っイくっ……あぁああっ!」

「あぁあっ、りょうこ……おおっ、ううっ!」

 ――二人は、同時にイってしまった。

 二回目だというのに、すぐに着床にまで至ってしまいそうなほど特濃にして大量の精子が俺の子宮へ流し込まれる。俺の膣もうねり蠕動して、最後の一滴まで搾り取ろうとしている。

 全身は宙に浮くようで、最後にした夫とのセックスの数倍、数十倍の快楽が末端にまで響き渡る。若い子に求められた女の幸せと――昔の俺を救い解放してやったかのような、俺自身の感動。

 全てが一つになって華奢な涼子先生に襲いかかり、最高の瞬間に浸るのだった。


「ふう、えへへ……あ、たくさん出したんだね」

「……その、ごめんなさい」

 お互いの呼吸が落ち着いてから、チンポを抜く。どろり、ではないゼリー状ですらある精子がぷりんと飛び出して、俺の太ももを汚した。

 柊真は射精後特有の冷静さを得てしまったのか、しゅんとしている。もっとも勢いのまま女教師とセックスをして、中出しまで決めてしまったのだ。幾ら女側からいいと言われていたとしても、少しは後悔するのが自然だろう。

「あ、また敬語になってる。タメ口でいいって言ったでしょ?」

「あー……うん、そうだった……ね」

「ふふっ。そしたら、まずは服着なきゃ……あーあ、すごいね」

 俺は脱ぎ捨てられていたブラウスの胸ポケットからハンカチを取り上げて、まずは柊真の身体やチンポを拭いてやった。その後、自分の汚れを綺麗にした。

 しかし足りない。ティッシュなどは持ってきていなかったため、やむを得ずストッキングも使う。帰りの途中、コンビニで捨てていこう。

 やがて着替えを終えた俺は、ぼんやりしている柊真くんから一歩離れる。真面目で、それでいて悲しげな表情を作った。

「……さて柊真くん、大事な話。まずはね、しちゃいけないことを私はしちゃったの。誰かに知られたら本当に終わり。柊真くんも大変なことになる。だから……」

 すう、と息継ぎをして、柊真くんに背中を向けた。

「この出来事は夢だったってことにして全部なかったことにしよう。けどもし……もし、さっき言ってくれた通り、私がもっとおばさんになっても好きでいてくれるっていうんなら、私は受け入れるよ」

「……」

 これは涼子先生の気持ちであると同時に、俺の気持ちでもある。このままズルズルと秘密の関係を続けられるわけがない。リスクが大きすぎる。そもそも、柊真はもうすぐ卒業してしまうのだ。

 即答とはいかず、悩んでいた柊真。その答えは――

「俺は――」


 ◆◆◆◆


「お、久しぶりだねー」

 私は立ち上がり、近寄ってくる影へと手を振る。

「ごめんごめん、電車が遅れちゃって」

 その人は私の前に現れ、人懐こい笑顔を向けてきた。

「部活帰り?」

「あ、ごめん。汗臭かった?」

「うん……けど、とってもいい匂い」

 そう問いかけてくる彼――柊真くんの匂いで、私のお腹は疼く。


 ――あの日、柊真くんは結局待っていてくれと言った。しかし……我慢できなかったのは、こちらの方。また授業の用意にかこつけて図書準備室に呼び出し、してしまった。

 一度狂うと、あとは転落していくだけ。何度も学校でセックスを繰り返した。幸い学校にも夫にもバレることはなく、柊真くんは無事卒業を迎える。

 しかも同時期に、夫の単身赴任。そうなったら歯止めは効かなくなり、俺は毎週のように柊真くんを家に上げてセックスをしていたのだった。


「あ、こら……臭いって」

「いいじゃん……んっ、ぁっ……」

「あーあ……オナニー始めちゃったよ」

 俺は柊真の汗の臭いにあてられ、ひとりでに手が動き股間をまさぐっていた。

「柊真くん……私、我慢できない」

「俺もだよ。じゃあ、しよっか」

「やん……♡」

 俺は――私は、夫と私のダブルベッドに押し倒される。


 ――多少予想とは違っていたが、俺はあの結婚相談所を利用したことを最高に満足していた。不倫とかなんとかどうでもいい。俺は今、涼子先生を心ゆくまで犯し、かつての俺に抱かれているのだから。

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