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「今度の一年記念日、どこ行こっか?」


「う~ん……。今までは割りと近場だったし、ちょっと遠出してみる?」


「あ、いいね。私前から北海道とか行ってみたかったんだよなぁ」


 ある昼下がり、佐藤葉は恋人である小川葵と共に、授業の空き時間を大学構内にあるカフェのテラス席で過ごしていた。

穏やかな春の日差しや心地良い風は、彼女との間に流れる落ち着いた空気と相まって少しずつ眠気を誘ってくる。

すると、身体の奥底からこみ上げてくるものがあった。


「ふぁ……」


「わ、すっごいあくび」


「ん。ごめんごめん。ちょっと眠くなってきちゃって」


「ううん、大丈夫だよ。――次の授業までちょっと寝る?」


「あー……。いや、我慢する」


「そっか。寝たくなったら言ってね?次の授業のノートとっとくし……」


「うん。ありがと」


 溢れ出してきた涙を拭いながら優しさに感謝する。

彼女は思いやりがあるばかりかその容姿も、彼氏という立場からのひいき目を差し引いたとしても十分に魅力的だった。


 印象的な黒の長髪は丁寧に手入れされているからか艶やかで細く、今も日の光を浴びて頭頂部付近に天使のような輪っかを作りだしている。

近くに居ると揺れ動くたびそこから女の子特有の甘い香りが漂ってきて、長い付き合いながらまだ嗅ぐとうっとりしてしまう。


 そうして大人っぽく時に色っぽい雰囲気を醸し出す髪型ながら、顔つきはと言えば可愛らしいの一言に尽きる。

特に丸っこくて大きな目が特徴的だ。

垂れた優し気な目尻でありながら芯を感じさせる深茶色の大きい瞳は、常に濡れて潤みキラキラと輝く。

睨みつけられれば思わず引いてしまうような力がありつつも、ひとたび恋人へ向けるものになれば途端に可憐さが出る。

そんな自らの強みを理解してか、服装もゆったりした白いニットに薄ピンクのロングスカートと清楚で甘い。


 自分にはもったいないぐらいの恋人だ。

葉は心からそう思っていた。




 葵と出会ったのは、入学当初二人が入ったサークルからだ。

最初こそあまり関わりが無かったものの、彼女は葉がある事情で大学に行けなくなっていた頃、献身的に支えてくれた。

その時はまだ赤の他人と言っていいほど関係が薄かったにも関わらず。

こうして再び大学へ通えているのも、殆どが彼女のおかげであると言っていい。


 そんな優しさに惚れた葉からのアプローチで、約一年ほど前から付き合っている。




「……?」


 最近の事のように思い出せる記憶を振り返っていると、ふとどこからか賑やかな黄色い声が聞こえてくる。

まさしくアイドルへ向けられるような高い、だがどこか粘っこさも感じられるやや媚びた声だ。


「あっ……」


 思わず視線を向けると、学内でも名の知れた人物である大塚莉子が、数人の男女を引き連れてテラス席に面した道を通り過ぎる所だった。

両性の生殖器を持つふたなりである彼女は、そうして取り巻きを集めるに足る優れた容姿をしている。


 特徴的なのは、日に焼けて小麦色をした滑らかな肌と、金色のメッシュが入りパーマもかかった耳上ほどの短髪だ。

その耳元には複数個のピアスがつき、かなりいかつい。

さらに周囲の数人よりいくらか高い身長や、デニムジャケットに白Tシャツ、ゆったりしたカーキのボトムスといった服装も相まって、一見「チャラ男」と呼ばれる軽薄そうな男性に思える。


 だが彼女は、同時にかなり女性的な身体つきもしていた。

輪郭は滑らかで丸っこく、手指が細長く伸びてしなやかだ。

上半身の服は内側から大きな胸によって押し広げられ、下半身も緩いズボンから分かるほど尻が出っ張り、メリハリのついたボディラインが形作られている。

低くはあるがよく通る声も、一般的に女性から発されるものだった。


 そして何より美しい顔。

やや吊り上がった目がぱっちりとして大きく、鼻は小さくとも高い。

そこに柔らかそうな唇が加われば、若干の鋭さはかえって怜悧な魅力を引き立てた。

思わず従いたくなるような力強い美貌に、人が集まるのは自然とすら思える。


 ともすればちぐはぐさを覚えてしまうような、男性的な格好の女性というアンバランスな見た目だ。

しかし莉子には人と違うファッションである事への有無を言わせない説得力があり、妖しい色香もあり、普通の人間にはただ見惚れることしかできなかった。


「っ……」


 そうした美貌がこちらと横にいる人物を見つけ、片方の口角を上げた悪意ある笑みを浮かべる。

恐ろしいことが起こる予感に、葉はすぐさま視線を逸らし正面へ向き直った。


「葉?」


「あ、う、うん……」


「大丈夫?なんか辛そうな顔してるけど……」


「大丈夫だよ。ちょっと……昨日寝違えて首が痛かっただけだから」


「あ~そっか。痛いよね~……」


「うん……」


 思わず出た苦い顔を心配してか、向かいに座る恋人が軽く身を乗り出して言葉を飛ばす。

原因が今道を通り過ぎて行った彼女にあることは明らかだが、そんな表情をした理由は言うことができず、咄嗟に嘘をついてしまう。

彼と莉子との間には、大きな秘密があった。

愛する相手にすら言えないような、後ろ暗く陰湿な秘密が。


「ていうかさっき、大塚先輩に見惚れてたでしょ~?」


「へ?いや、違うって」


 辛い過去の記憶が思い起こされていると、葵は沈んだ空気を変えるためかにやついたいたずらっぽい顔で尋ねてくる。

首を振って強めに否定するが、彼女は笑みを崩さない。


「ほんとかなぁ。葉、結構見てたと思うけどね?そりゃ、私より綺麗な人だから仕方ないとは思うけど~」


 そのまま拗ねた風に唇を尖らせつつ、何かを期待するみたく視線を泳がせながらちらちらと見てくる。

やきもちを覚えつつも重たくは見せない可愛らしい仕草に、愛おしさが溢れ出すのを感じながら応じた。


「そんなことないよ。僕にとっては葵の方がずっとかわいいし……その……」


「その?」


「大切……だから……」


「ふふ。知ってる」


「……はぁ~」


 途中で恥ずかしくて詰まりながらも言いきれば、可憐な顔には満足げな笑みが浮かぶ。

敵わないと思いつつも、「あの時」とは違う温かな幸せに心は落ち着いた。


「ん……」


 だがそんな葉のスマホが、甘い空気をつんざくようにメッセージの到来を告げる。

友人達とは違うある相手の時のみ鳴る音は、やけに頭へ響いた。


「見ていい?」


「うん。いいよ~」


 断りを入れてテーブルの上に置いてあった携帯電話を手に取る。


「っ……」


 表示されていたのは、今最も来てほしくない相手からの、見たくもない呼び出しの文言だった。

「いつものとこ」とだけ書かれた文字列は、心臓を握られたかのような緊張感を与えてくる。

例え恋人といる時であっても、というか恋人と居るからこそ、無視することは出来ない。


「葵」


「ん?」


 なるべく悟られないようにしながら、名前を呼ぶ。


「今日うちで親の手伝いしなきゃいけないの忘れててさ、呼び出されちゃったんだけど……行っていいかな?」


「へ?……もちろん。葉が行かないと困っちゃうんでしょ?早く行ってあげな!」


「……うん」


 訊ねればあっさりと許可が出る。


「じゃあ、ごめん。急がなきゃだから」


「ん。気を付けてね~」


 そして葉は素早く荷物をまとめると席を立ち、大学の外へ向かって歩き出した。

急に居なくなることを責めも怒りもせず、優しく思いやってくれる彼女への罪悪感でいっぱいになりながら。







「ふーっ♡♡♡ふーっ♡♡♡」


「おら♡♡♡アタシの匂いちゃんと嗅げよ?♡♡♡葵ちゃんのこと忘れちまうぐらいにな♡♡♡」


「っ♡♡♡」


 葵と別れてから30分ほど経った頃、葉は大学から数駅離れた場所に建つラブホテルの一部屋、その広い浴室の中に居た。

いやらしくも忌々しいピンク色の照明に照らされながら、全裸で広い床へ足を開けっぴろげにして座り、壁にぴったりと背中をつけている。

そうして壁面へと追いやられているのは、顔に大塚莉子の股間から長く垂れ下がる金玉袋を押し付けられているからだった。

しかも、顔面の殆どを包み込むほど大きく、思わず息が荒くなってしまうふたなり特有の、男女どちらも関係なく誘惑するフェロモンに満ちた金玉袋を。


 さらにその持ち主は、彼に対して屈辱的な行為をするだけでなく、低く朗らかな声であまりに意地の悪い言葉を投げかけてきてもいた。

だがひどく挑発的で嫌悪感すら抱く相手に、逆らうことは決して出来ない。


 彼女と葉の秘密の関係は、一年半前まで遡る。




 莉子は絶えず周囲に人が居るほど容姿、人付き合いに関して優れているものの、実際は有り体にいってしまえば、いわゆる「ヤリチン」と言われるような性格だった。

しかも、数えきれないほどの相手と関係を持っている重度の。


 とはいえそうして複数人と関係を持つだけであれば、明確に悪いわけではないだろう。


 ただ彼女は関係を持ったが最後、相手の心と身体を日常生活ですら支障が出るほど徹底的に開発、調教し、自らが優位に振舞えるよう変えてしまうのだ。

さらにそこまで人を弄んだ挙句、飽きればなんの情もなくあっさりと一方的に関係を断ち切ってすらしまう。


 実のところ葉も昔毒牙にかかり、そして他の人々と同じように捨てられた内の一人だった。

大学に行けない時期があったのも、そのことが原因だ。


 普通そうして身勝手に振舞っていればどこからか悪評が立ち、すぐさま大学中に広まるはずだろう。

しかし莉子は、人を支配する技術があまりにも高かった。

その能力を悪用し周囲の様々な人物には容易く取り入って、多少の噂程度では揺るがない強固な信頼関係を築いている。

また肉体関係を結んだ相手には並外れた行為の上手さも利用して、他では決して味わう事の出来ない凄まじい快楽を与え、圧倒的な上下関係を作るのだ。


 すると「被害者」は崇拝に似た感情を覚え、原因がどれだけ相手にあろうと、自分に責任の全てを被せてしまい、結果、彼女はああしてのうのうと大学生活を謳歌するに至っている。

今現在どうにか元の生活に復帰し、恋人を作った葉ですら、まだうっすらとそんな感情が残っていた。

であれば、周囲の助けも得られず、復帰できないままの人物であれば噂を流すなどできようはずもない。


 そして、一か月前、そんな彼女から再び連絡が来た。

送られてきたのは以前行為に及んだ時、後で使うからと言われ撮影されていた自分のあられもない映像と、「これを彼女にバラされたくなかったらまたセックスしろ」という意味合いのメッセージ。

葉は辟易としながらも、誰にも、葵にも相談せず要求に従う事を選んだ。


 もし拒否すれば彼女に危害が及ぶのではないかという恐怖を感じ、再び使って貰えることへ対する悦びに気づかないよう目を背けながら。




「へへっ♡♡♡葵ちゃんとキスした口も、キスしてもらった顔もぜ~んぶアタシのキンタマで上書きしてやるからな~♡♡♡」


「んぶっ♡♡♡やめっ♡♡♡」


 莉子はしばらく密着させた後、葉の顔で睾丸を扱くように、腰をくねらせてやや強めに袋全体を擦り付けてくる。

裸でも寒くないほど暖房が効いた浴室のせいか、皺が刻まれた小麦色の肌はじっとりと汗をかきつつあり、蒸れてよりきつくなった青臭い匂いが顔面で拭かれていく。

加えて彼女はこの部屋に入ってからシャワーを浴びていないのだ。

半日と少し、ズボンの中で熟成されていた濃密なオスフェロモンも漂っている。


 また湿っぽい表皮に包まれた金玉も、快楽と粘っ濃い精子の放出を期待してうぞうぞと蠢いた。

激しい雄性器の脈動は、薄っぺらい袋を隔てたぐらいでははっきり分かってしまう。


「そんなに嫌がんなよ♡♡♡お前もアタシのキンタマといちゃつけて嬉しいだろ?♡♡♡」


「っ♡♡♡そんなっ♡♡♡ことっ♡♡♡」


「おら♡♡♡深呼吸しろ♡♡♡」


「す~っ♡♡♡んぁっ……♡♡♡」


「……♡♡♡そうそう♡♡♡メスはメスらしくアタシにマーキングされて悦んどけよ♡♡♡」


 嫌いな相手から無理矢理頭に性器を押し付けられる行為。

それは男性女性問わず、誰であろうと忌避すべき事のはずだ。

嫌悪感を抱くことはあっても、興奮などしようはずもない。


 しかしペニスは萎えつつも我慢汁を駄々洩れにし、上から降ってくる命令へは思わず従ってしまう。

例え一年半のブランクがあろうとも、一か月、数回の情事で再びそうなってしまうほどに、莉子の調教は心と身体に根付き、染みついていた。

さらに分かりやすい反応だけでなく、尻穴は太い異物が入れられることを望んでくぱつき、媚びへつらいたいという欲求が徐々に膨れ上がっている。

何より、葵への罪悪感すら、全身へ迸る発情に押し流されて少しずつ薄れていた。


 それほどまでに、莉子とその振舞い、そしてチンポによって与えられるものは凄まじい。

捨てられ唯一繋がっていた連絡先が断たれた時は、快楽が無くなった喪失感で殆ど何も手につかなかったのをはっきりと覚えている。

数か月間は生存のため必要なことと、もしかしたら呼び出されていないかという確認、抱かれたことを思い出しての、極めて長大なディルドを使用した自慰しかできなかった。

とはいえ結局その間は、再びメッセージが届くことも、満たされたことも無かったが。


 そんな状態へと戻らないため、また他でもない恋人のためにも、心を奪われることなどあってはならない。

どれほど気持ちよくされたとしてもだ。

人を人とも思わない人間に、また都合よく利用されてしまうのはなんとしても避けたい。


「よし♡♡♡こんなもんでいいだろ♡♡♡」


「はぁっ♡♡♡はぁっ♡♡♡」


「は~♡♡♡彼女持ちザコオスのメス顔チンポにキくわ~♡♡♡」


 だが、実際のところただ匂いを嗅がされただけで頭は蕩けてしまっていた。

まだこの部屋に入って数十分ほどしか経っていないにも関わらず息は絶え絶えで、今すぐ自慰をしたくてたまらない。

もしこのまま放りだされれば、家に帰ってすぐ、浅ましく激しいアナルオナニーに耽ってしまうだろう。


 そうした情けない様子を揶揄してくる莉子。

既に服を全て脱いでいる彼女は、飢えたけだものじみた嗜虐的な、だが憎たらしいほど美しい顔でこちらを見下ろし、蠱惑的な肉体を惜しげもなく晒してた。


 まず視界に入るのは、頭の近くにある大きな乳房だ。

よほど重たく柔らかいのか下着と言う支えを失った今やや垂れ、下側が雫型に膨らむ。

とはいえ垂れすぎているという訳ではなく、筋肉によって引っ張られて特に頂上の、淡い桃色の突起はつんと上品に上向く。

ただ、突起は左右に銀色の丸いピアスも携えており、全体として品だけでなく妖しい色香といかつさを併せ持っていた。

さらに下方の腹部へ広い影を落とし、その巨大さをありありと表す。


 とはいえ腹も巨乳の存在感には負けておらず、力強さと艶やかさのコントラストを作り出している。

仄かにデコボコした陰影は肌の色も相まって雄々しく、思わず縋り付きたくなるような甲斐性があった。

だというのに乳首同様ピアスのついた縦に長いへそや、肋骨に沿って絞られ、反比例するように骨盤へ向かって大きく広がっていくくびれがいかにも女性的で、シルエット自体はかなり悩ましい。

いかにも男女双方の性を併せ持つふたなりらしいと言える部位だ。


 しかし、最も目を惹くのはやはりチンポだった。

狙いすますようにこちらへ、巨大すぎて奥にある竿をいくらか隠してしまう相当黒ずんだ亀頭が向けられている。

半勃起という具合のそれは既に我慢汁が垂れ落ちるほど濡れており、ぬらりと妖しく煌めく。

加えてやたら上に出っ張ったカリは汁を保持しており、粘着質な水滴が小刻みに揺れた。


 そして未だ本調子になっていないは幹といえば、それでも葉のモノよりずっと太長く、黒人のように黒く、常にオスとしての威厳を醸し出している。

また全体へ大小様々な血管が駆け巡り、「棒」という言葉とは似つかわしくないほど表面が歪だ。

同様に金玉袋へも中身の血管が浮き出し、皺と相まってかなり下品な形状だった。

調教され、あれによって開発されきった身体は、視界に収めているだけでも呼吸が乱れていく。


「おら♡♡♡アタシのションベンかけてやるよ♡♡♡」


「うぁっ♡♡」


 そして、その向きには理由があった。

唐突に鈴口から、ホースで水を撒く時ほど勢いよく尿が放出され始め、水が滴り、流れる音が浴室内を反響する。

咄嗟に目を瞑ることは出来たものの、それで放出が止むわけはなく、温かな液体が頭へと降り注いでいく。

代謝がいいからか、溜め込んでいたからか、量は相当に多い。

浴室内にはすぐさまむせかえる様なアンモニア臭が漂う。


「全身マーキングしてやるからな~♡♡♡」


「やめっ♡♡んっ♡♡♡」


 やがて髪がぐっしょり濡れると、今度は首から下が狙われる。

特に性感帯である乳首へは執拗に。

与えられる刺激を、いたいけな蕾は愛撫だと認識する。

すると小水によるものだというのに、忌々しくも甘ったるい快楽が全身へと広がっていく。

というかむしろ、屈辱がかえって悦びを膨らませていた。


「もちろんここにもたっぷりかけてやるよ♡♡♡ザコチン便器にされんの、気持ちいいだろ♡♡♡」


「これっ♡♡♡だめっ♡♡♡」


 さらに放尿はペニスへと及ぶ。

そこは男性としての象徴であり、デリケートな部位であるはずだ。

しかも今後葵と愛し合う際に使う神聖な場所でもある。

他人に穢されていいわけがない。


 だというのに与えられる水圧に身を任せ、腰をびくつかせることしかできないでいた。

それどころか気持ちよさに目を細め、拒否するような、だが悩ましい声をあげる。


「おらおら♡♡♡そのままでいいのか~?♡♡♡アタシのションベンかけられて汚れたチンポで葵ちゃんとえっちすんのか?♡♡♡」


「っ♡♡♡」


 また何より莉子に指摘されるまで、本来であれば小水を遮らなければならない、ということも忘れていた。

便器さながらに、物のように、ただただ行われることを受け止めていたのだ。

脅されているとはいえ全く抵抗せず、まさしく奴隷と言うべき所作をしてしまった事実で、恋人に対し深い罪悪感が湧く。


「ふぅ~♡♡♡へへっ♡♡♡」


 そうして彼女は長きにわたる排尿で、メスの心と身体を隅々まで汚しきった。

満足げな笑みを浮かべるとすぐさまシャワーを浴び始め、全身をさっと清めていく。

きめ細やかな褐色の肢体は水を弾き、濡れて光沢を帯びる。

しっとりした輝きは肌の色も相まってやたら映え、光による白とてらつく褐色のコントラストが芸術作品さながらの美しさを引き立てた。

また肌は仄かに赤らんでいき、思わず見惚れてしまう艶めかしさを持つ。

上機嫌そうな表情も相まって、優雅とすら思える。


「はぁっ♡♡♡はぁっ♡♡♡」


 対して葉は浴室の片隅で、黄金色の液体を滴らせながら熱い息を吐くだけ。

ただただ無残で惨めだった。

だが裏腹に、肉体は強い興奮を訴えてきている。

四肢を緩い快楽が巡り、男性器や、何より乳首が感覚だけで分かるほど硬く張りつめていた。

湿った重たい空気や、跳ねてくる水滴が当たる刺激すらはっきりと知覚できてしまう。


 するとやがて、水が流れ、床を打つ音が止む。


「待っててやるから、ちゃんと身体綺麗にしてから来いよ♡♡♡」


「……はい」


「あと、あんま遅れたら手が滑ってハメ撮り葵ちゃんに送っちまうかもな?♡♡♡」


「うっ……」


 自分が原因であることを棚に上げた物言い。

そして無駄な時間を、自慰するのも許さないという明らかな意味を持つ言葉。

二つを吐き捨てると、莉子は早々に風呂から出て行った。


 残された「メス」は一人、言いつけ通り全身くまなく洗い、すぐさま後を追う。

言う事に従わなければ昔の事を彼女へバラされてしまうから、自分の穢れた過去を見せてしまうから、と全く抵抗しない言い訳を自分にしながら。





 目の前で莉子が、ベッドのへりに浅く腰掛け、大股を開いている。

彼女の腰回りはやや男性的だった服装に反して肉づきが良く、どこもかしこも柔らかそうだ。

特に太ももはマットレスに押し返されて潰れつつも、それが無くなると重力に従い量感を持って垂れ下がる。

太くはあるが、しかし決して太っているというわけではなく、むしろ安産型と呼ばれる優しく広い豊満さだった。

抱き着き、顔を埋めればどれほど心地好いかと想像してしまう。


 だが悪趣味な対比みたくその中央にある、一切のたるみ無く自らを持ち上げ、捻じくれた血管によって禍々しい姿をしたチンポ。

勃起しきって伸びた全長は30センチほどと、まさしく三本目の脚と言えるほどあまりにも長い。

加えて先端にはこぶし大のやたら色素が沈着した亀頭を着けている。

併せ持つ威圧感と相まって、ともすれば生殖器以外の、人間の部位ですらない何かと見紛うようなグロテスクな物体だ。

むちついた肢体に付いているモノとは到底思えない。


「んっ♡♡んぶっ♡♡んぼっ♡♡」


「ふ~♡♡♡」


 ソレを葉は、床へぺたりと座りながら手で自分の方へ向け、むしゃぶりついていた。

限界まで口を開きやっとの思いでナカへ入れ、空気を抜き密着させた唇でカリ首から鈴口までを扱いている。

往復の度よだれと我慢汁の混ざった粘っこい汁が溢れ出し、太ももを汚す。

水音は部屋中へ響き渡り、行為の下品さを物語っていた。

また握る指からは火傷してしまいそうなほどの熱と、全体が震えるほどの激しい血流が伝わってくる。


「自分の彼氏がこんな美味そうにチンポしゃぶるマゾメスだって知ったら、葵ちゃんはどう思うだろうな?♡♡♡」


「っ……♡♡んむっ♡♡もっ♡♡」


 上から降るあまりに下卑た言葉通り、行っているフェラチオは貪欲で熱烈だ。

しかも並みの風俗嬢では太刀打ちできないほどに下品で、オスの気持ちいいツボを押さえている。

だがそれは実際、一年半のブランクがあろうと数回の情事で呼び起こされるほど、彼女が念入りに調教した証だった。

責任を転嫁するような原因の物言いに怒りが湧くものの、葉自身、奉仕の技術をここまで身体が覚えてしまっていることに驚いている。


「あ~♡♡♡これ送ってやったらどう思うだろうなぁ♡♡♡へへっ♡♡♡もしかしたらチンポ無いのが寂しくなっちまうかもな?♡♡♡」


「っ!」


 そうした様子は、くつろいだ視線だけでなく、無機質なスマートフォンのレンズも見つめてきていた。

この期に及んで、もっと脅しの材料とオカズを集めようとしているのだ。

欲に忠実すぎる性格と、そんな欲を葵も持っているのではないか、という著しく屈辱的な決めつけに睨みを返す。

「お前と一緒にするな」とばかりに。


「お~こわ♡♡♡でもお前はアタシに逆らえないってこと、忘れんなよ♡♡♡飽きるまでたっぷり使ってやるからな~♡♡♡」


 しかし凄みを出しても、効いているわけではない。

むしろ莉子は笑い、抵抗する相手に無理矢理奉仕させることを心から愉しんでいるようだ。

撮影のアングルを変えて痴態を隅々まで収めていく。

また興奮からかチンポはやや痙攣し、心なしか先走りの量を増やす。


「んふ~っ♡♡♡むふ~っ♡♡♡」


 ふたなりの体液、特に精液やカウパーは強力な媚薬だ。

粘膜での摂取ともなれば吸収効率が良く効果は絶大で、当然口内は、昔行われた度重なる調教で開発されきり、ペニスや乳首と並ぶ性感帯の一つとなっている。


 今までは意識して当たらないようにしていたが、痙攣によって不規則な動きが行われるとなれば話は別だった。

巨大な亀頭が上あごを愛撫し、すると身体が震えてしまい頬肉や舌とも触れ合う。

摩擦によってもたらされる快楽は鼻息を荒くさせ、チン嗅ぎしつつ口淫をするいやらしい姿にしていく。

また、見られることで発情してしまうようにも調教されているのだ。

本能を刺激する性感が、理性に少しずつもやをかける。


「よし♡♡♡次は舌だけ使って先っぽ舐めろ♡♡♡」


「……はい」


 そんな葉へ追い打ちをかけるようにか、莉子は舌での奉仕を命令してきた。

他の場所より何度も念入りに汁を塗り込まれたそこは、特に敏感な部位だ。

だが、逆らう事は出来ない。


「んぇ……んっ♡♡♡」


 咥えていた先端を取り出しやたら粘々したよだれを飲み込むと、両手で向きは固定したままメスベロを伸ばして一舐めする。

結果広がるのは、メスベロにした原因と接触することへの悦びだった。

煮え滾るような熱さと、ぷにっとした柔らかさ、味蕾を包む青臭く苦い濃厚なオスの味が、幸せを脳や肉体へ流し込んでいく。

ある種感動してしまうような心地に、チンポを味わうことでなってしまう。

したくないのに、嫌なはずなのに、全身へは悦びを表すぞくぞくとした鳥肌が立っていた。


「はっ……♡♡♡ふぅ……♡♡♡」


「へへっ♡♡♡」


 「言われたことに従って」、繰り返し何度も尿道口周辺を舐り、尿道口をほじっていく。

湧き水が如く勢いで絶えず出続ける先走りは、行為に粘りとやたら品の無い音を足す。

さらに彼女のそれは乾かずともエグみの強いオス臭を振りまき、間近で嗅ぐものの鼻を曲げ、思考力を衰えさせた。

すると動きは自然に速度と勢いが増してしまう。

火照り、濡れそぼっていく舌に、うっとりとしたものを覚え始める。


「お前のメス顔チンポにキくわ~♡♡♡後でケツマンコに精液たっぷりコキ捨ててやっからな~♡♡♡」


「っ……♡んれぇ……♡♡」


 言葉通り太マラは興奮を激しくしており、摩擦の度長い砲身全体をより雄々しくびくつかせていた。

細かな身じろぎだけでなく、時折大きく縦に跳ねては雄大さを見せつけてくる。

同時に安い水鉄砲みたいな勢いで粘液を噴き出し、正面にある顔を汚した。


 匂いがごく間近から漂ってくると、当然先ほどよりも意識は陶酔する。

だが、痴漢めいたあけすけな言葉が理性を少し取り戻させた。

なるべくこの苦行を早く終わらせようと、ベロで先端を包むようにし、頭を動かしてローションガーゼさながらに扱く。


「おぉっ♡♡♡そんなに激しく舐められると射精したくなってくるなぁ♡♡♡」


「んっ♡♡んっ♡♡」


 作戦は功を奏したようだった。

明らかに体液の分泌量は増え、振動や、指から伝わってくる血管の脈動もかなり激しくなる。

相当感じているのだろう。

莉子の顔面を見上げれば、口角がやや上がったへらへらとした笑みが浮かんでいた。

快楽へ夢中になっていると思い、同じ動作を続けていく。


「あ~♡♡♡チンポイラついてきたわ~♡♡♡」


「ふぅっ♡♡♡ふぅっ♡♡♡」


 しかし、性感帯でそれをするのは諸刃の剣でもあった。

もたらされる快楽は相応に強く、幸福感で再び理性が薄まる。

また媚香はいっそう濃密さを増していき、劇物じみた匂いにも関わらず嗅いでいると身体が甘ったるくなっていく。

運動量もあるため呼吸は浅く短いものへと変わっており、結果として自らで自らを追い込んでいるようなものだった。


 チンポが欲しくてたまらなくなりつつある。

段々と口奉仕自体へ夢中になっていき、飲まなくていい我慢汁を啜ってしまう。

胃へと滴り落ちていく熱は素早く吸収され、肉体を芯からも発情させていく。


「ちゅっ♡♡♡」


「へへっ……♡♡♡」


 すると思わず、先端へキスを送ってしまった。

それも、ともすれば葵とする優しい啄むようなものを。

愛おしさが溢れて、せずにはいられなくなってしまったのだ。

撮影されていることも、聞こえてくる嘲るような笑い声も気にならなくなっていく。

しかも一度唇での逢瀬をすると、我慢が効かなくなる。


「ちゅっ♡♡♡んぇ~っ♡♡♡」


 欲望のまま再び口づけをし、続けてベロで鈴口を念入りにほじくった。

おびただしい量飛び出してくるよだれによって、ぬるぬるになっていく自分の口元が気持ちいい。

気づけば、奥底で眠っていたすけべなメスが表出していた。

最早、デカマラをしゃぶりたいという衝動が抑えきれない。


 本能が赴くまま、大口を開けて食らいつこうとした。


「んぁ~♡♡♡」


「おい」


 だが、そんな頭をしなやかで柔らかいがやけに力強い足裏が押し返す。

顔面の右半分が温かい肌に踏みつけられ、そのまま全身が少しずつ仰け反っていった。

肉柱を支えていた手を、今度は自らを支えるため後ろへと回す。


「ひゃいっ♡♡」


 同時に聞こえたドスを効かせた声へ、自然と甘え媚びた返事が出る。


 突然の事に驚いたが、段々と今の状況の整理ができていく。

自分は今、身体の一番上に位置する顔へ、最も下にあり地面と触れる足を乗せられているのだ。

ただそうした屈辱を、発情した思考は悦びと捉え、全身にぞわついた心地を広げる。


「アタシは舌で先っぽ舐めろって言ったんだ。しゃぶれなんて一言も言ってねぇぞ?」


「はひっ……」


 しかし明らかに怒気を孕んだ言葉は、一気に肉体全てを委縮させた。

降り注ぐ視線も鋭く、皮膚を刺すようだ。

あれほどまでにやついていた口は固く結ばれ、見る影もない。

急に消えていった快楽と粗相をしてしまった罪悪感が相まって、思わずどうすれば機嫌を直してもらえるかと考えてしまう。


「ごっ……ごめんなさい……」


「謝る気があんなら足舐めろ」


「はいっ……んぇ」


 そして命令へ恭しく従い、葉は莉子のふくらはぎあたりを持つと足裏へ舌を這わせだした。

仄かな塩気と、摩擦が多い場所らしくない滑らかな感触が返ってくる。

汗とフェロモンが入り混じった甘酸っぱい風味も鼻を抜けていく。


 すると「こんな時だというのに」、性感帯が擦れることで再び全身は気持ちよくなっていた。

オスに言われたまま動いているのも相まってなおさらだ。

マゾメスは、使われることに嬉しさを感じてしまう。


「指も、指の間もな。丁寧に舐めろよ」


「はい……♡♡んっ♡♡」


 応じるように、指と指の間へ真っすぐベロを通す。

そこは窪んでいて体臭が取れづらいのか、他の場所より風味が濃い。

結果性器ですらない場所だというのに、奉仕を続けていれば息が乱れていく。

また興奮が強くなっていく度、人相手にまるで遠慮のない命令を下せる彼女へ、崇拝のような感情を抱いてしまう。


「ぷっ……♡♡」


「……?」


「へへっ♡♡♡あ~♡♡♡おもしろ♡♡♡」


「えっ?」


 そうしてしばらく足舐めしていれば唐突に聞こえてくる、噴き出した音とからかう様な笑い声。

驚いて莉子の顔を見れば、先ほどまでの冷たい表情はどこへやら、ひどく意地の悪い笑みを浮かべていた。

愉しげに吊り上がった左の口角と、同じく外側の吊り上がった目尻は憎たらしいほど無邪気で、大きな丸い瞳からはからかいの感情が伝わってくる。


「アタシに怒鳴られた途端急にしおらしくなっちゃってよぉ♡♡♡さっきまでの威勢はどこ行ったんだ?♡♡♡は~♡♡♡笑えるわ~♡♡♡」


「なっ……」


 続く指摘に、自分はからかわれていたということを悟った。

急に怒声を発したのも、不機嫌になったのも全て演技だったのだ。

全身に広がっていた服従への高揚は消え失せていく。


「最低です……あなたって……」


 少しでも反抗を示したくて、睨みつけながら言う。


「あ?♡♡♡マゾメスがなに言ってんだ?♡♡♡」


「っ……」


「アタシの足、美味そうに舐めてたくせによ♡♡♡それにアタシが言った事にもすぐ従ってたよな?♡♡♡」


「それはっ……」


「気持ちよかっただろ?♡♡♡アタシに命令されんの♡♡♡」


「そんな……ことは……」


 だが、返ってくるのは図星を突いた言葉だった。

思わずしどろもどろになってしまう。


 確かに最初こそ、脅されているから仕方なく彼女に従ったものの、途中からは自らそうしていた。

まるで以前の、顔色を伺う都合のいいメス、使い潰されるオナホだった時のように。

そしてそれはひどく心地好くて、葵への罪悪感がほぼ消えかかっていた。

さらに今、弄ばれたという事実に少なからず興奮を覚えている。


「見てみろよ♡♡♡足舐めさせられて嬉しそうな自分の顔♡♡♡」


 追い打ちをかけるように差し出されるスマートフォンの画面。


『んっ♡♡ふぅっ♡♡んぇ♡♡♡』


「うぁ……♡♡」


 そこには、蕩けたように目を伏せながら、舌を突き出し鼻の下を伸ばしたただらしない表情の自分がいた。

薄い褐色に日焼けしつつも手入れされて滑らか且つ、黒いジェルネイルで飾られた小ぶりな足指の間へ熱心に奉仕している。

動きには、一切の迷いや拒否感が無いと分かった。

というか漏れ出るやや甘い息遣いから、むしろ望んで行っているように見える。


 幸せそうな姿に、思わず目を奪われた。

あられもない自らの痴態で、先ほどまであった高揚がぶり返してくる。

部屋に充満する濃密なオス臭が、肉体の火照りを助長していく。


「おら、マゾメス♡♡♡そろそろチンポ射精させろ♡♡♡」


「っ……♡はい……♡」


 そして下される命令に、官能が背筋から全身へ侵食した。

嫌なはずなのに乳頭が疼き、尻穴がひくつく。

再度こちらを向いたレンズ、鳴り響く撮影開始を知らせる音が、見られて悦ぶ浅ましい本性を呼び起こす。


「あむっ♡♡んぐっ♡♡」


 葉はあくまで「命令されたから」という大義名分を持って、先端を咥え愛撫を始めた。

彼にそうして理由を与えるのすら、莉子の思惑通りかもしれないと理解しながら。


 口内は相変わらず、亀頭を迎え入れただけでもかなりいっぱいだ。

しかも先ほどより少し膨らんだのか、何もしないでいても触れ合い、呼吸によって動くと媚薬粘液塗れの身で舐ってくる。

粘膜接触は気持ちよく、加えて体内で発生したいやらしい水音はやたら脳へ反響し、確実に理性を削り取っていく。

さらに鼻へ抜けていく匂いは、問答していた時間で我慢汁が乾いたからか相当強烈だった。

劇物といってもいい刺激が嗅覚を強姦する。


「んぶっ♡♡んぶっ♡♡♡」


「は~♡♡♡すぐ精子昇ってきそうだわ♡♡♡お前に濃いのたっぷり飲ませてやるからな~♡♡♡」


 空気を抜いて頬や唇をよりべったり纏わりつかせ、先っぽと竿の境目を重点的に扱きあげれば、よほど高まっていたのかすぐにチンポは痙攣を増やす。

全体が力強く猛り、無理やりにでも反ろうとするため、ともすれば釣り上げられてしまいそうだ。

絶えず、また勢いよく喉奥へ向かって放出されるようになってきたよだれはさながら撒き餌で、食いついた者をより夢中にさせる。


「むふ~っ♡♡♡むふ~っ♡♡♡」


「へへっ♡♡♡ブスなフェラ顔キくわ~♡♡♡」


 熱が胃へ落ちる度脳は茹で上がっていき、フェラチオは徐々に激しさを増し、思わず引っこ抜かんばかりに吸い付いてしまう。

すると頭を引くたび鼻の下が伸びきり、水分を啜る下品すぎる音が大きく響く。

また溢れ出す汁もまるで気にならなくなってきており、口元はべたべたで所々が泡立っているほどだ。

早くこの苦行を終わらせるためか、もしくは出来るだけ多くの精液を注いでもらうためか、自然にそうなっている。


「よし♡♡♡そろそろ出すからな~♡♡♡」


「っ♡♡♡んっ♡♡♡んっ♡♡♡」


 続けていればやがて、莉子の細長く柔らかな両手が頭に置かれた。

恐らく射精の瞬間、チンポを奥へと押し込むためなのだろうが、手持無沙汰を解消するように撫で回してくる。

髪の感触を味わうように、だが雑に。


 行為の相手をあまり人と思っていない彼女だ。当然褒めることなど殆どしない。

よっぽど上手く奉仕出来た時ですら、されないこともままある。

葉の記憶でも、覚えていられるほどの回数しかなかった。


 そんな彼女の、褒めにも似た行為。

反射的に肉体は深い悦びを生み出し、重たい多幸感を全身へと広げた。


「ふ~♡♡♡」


「もがっ♡♡♡」


 その瞬間、亀頭が粘膜をかき分けて本来異物が入らない、入ってはいけない場所へと無遠慮に侵入してくる。


「んっ♡♡♡♡」


「んぐっ♡♡♡♡――♡♡♡♡♡」


 そして大きく激しく脈動すると、濃厚すぎて塊になった精液が放出され始めた。

やたらに粘ついた汁は精飲のしすぎでこれまた性感帯となっている食道を舐め、ゆっくりと滴り落ちていく。

だがその速度よりも後から吐き出される量の方が多く、あっという間に口内はみちみちになり、鼻や唇から逆流した。

すると莉子はチンポを抜き、今度は全身へとぶっかける。

体温よりもずっと熱いそれは、食道へしたのと同じように肌という肌を愛撫していく。


 取れづらくべたつく液体を人に塗りたくっていく、ただただオスが気持ちよく射精し、満足するための行為だ。

まさしくオナホール扱いという言葉が的確だろう。


 だというのに葉は、そうして「使われている」事を実感し、ひどく強い法悦を感じてどこを触れられるともなくメスイキしていた。

まぶたを閉じて暗いはずの視界は白に染まり、思考力は著しく低下して快楽に支配されていく。

かつて自分を人以下まで堕としてしまったそれに、決して抗うことは出来ない。

うっすらと、再び莉子のメスとなる未来、結果与えられる至上の幸福が想起された。





「ふぅ♡♡ふぅ♡♡」


 佐藤葉はベッドへ仰向けに寝そべる莉子の腰あたりを跨ぎ、膝立ちになっている。

そして背後にある天高くそそり立つチンポを持った右手からは、歪な形をできる限り挿入しやすくするためローション塗れとなったナマのソレの感触がはっきりと伝わってきた。


 まず味わうのは熱だ。

硬く長すぎる勃起を維持するためか内部で激しく血液が渦巻いているようで、運動量の分温度も手のひらよりずっと熱い。

かける時やや冷えていた潤滑液すら既にかなり温められ、付着するとそこにじっとり汗をかく。


 ということは当然全体の脈打ちも著しく、第二の心臓と言えるほどの拡縮が絶えず行われていた。

ぬるついているのもあって、直接視界に入れていないと何か異形の触手へ触れているかのようだ。

膨らんだ血管によって節くれだっているのも相まって、余計にそう思ってしまう。

今からこの棒状の何かに体内を、メスアナルを蹂躙されるのだと思うと、恐怖とは裏腹に快楽への期待が膨れ上がっていく。


 加えて立ち昇ってくる淫香も凄まじい。

一度射精を経たからか、青臭い匂いには乾燥したイカを超えた磯臭さが混じり、鼻腔を甘ったるく蕩かす。

それは脳も例外ではなく、酩酊に似たクラつきが起こっていた。

恐らく理性や判断力といったものも、酔った状態みたく薄れてしまっている。

おまけに全身はやけに火照り、息もあまり整わない。


「おら、タラタラしてねぇでさっさとチンポ入れろ♡♡♡お前だって早く欲しいくせによ♡♡♡」


「なっ♡♡♡」


 葵の事を一瞬でも忘れてしまわないため、心の準備をしていれば、急かしてくるくつろいだオス。

彼女は少し枕を高くし、右手を頭の後ろにやってこちらを視姦しやすいようにし、全く動く気もない。

加えて左手で相変わらずスマートフォンを持ち、不貞行為の記録を取ろうとしている。

顔にはへらへらとした笑みを浮かべており、もはや再びチンポの虜となりかけている事を見透かすように余裕そうだ。


 あまりに憎たらしいが、同時に何もせずともメスを篭絡出来ると確信している姿へ悦びも覚えてしまう。

自ら敗北させて頂くのは、自分が下だと、オナホなのだと分からせて頂くのは、どれほど気持ちいいのだろうか。


「っ♡♡♡ふあっ♡♡♡」


 一瞬芽生えた感情を振り払うため、先端を尻たぶの間へと挿入する。

だがそうしてが身体の外側が掻き分けられる心地だけで、全身は悦びに打ち震えた。

ついにデカマラを受け容れられるのだと、腹の底がきゅんと疼く。


「はぁっ♡♡♡」


 であれば当然、先端が肛門へと辿り着けば思わず湿っぽい吐息が漏れた。

張り詰めた亀頭は肉がみちみちに詰まっていて弾性に富み、少し解れた入口と軽く潰れ合って熱烈なキスを交わす。

ある種感動的な熱情が頭のてっぺんから足先までを駆け巡り、「本番」の期待感を大きく高めていく。


 ここで一息に入れなければ埒が開かない、また、早く入れたいとも思った。


「んぅ゛ぅぅっ♡♡♡♡」


「あ~ケツマンコあっつ♡♡♡」


 すぐに少し体重をかけて、少しずつ肉ネジを咥えこんでいく。

以前たっぷり慣らされ、最近また慣らされつつある括約筋はそれに合わせて拡がるが、しかし巨大すぎるため圧迫感は凄まじい。

ただその感覚は心地好くて、肉体が歓喜の痙攣をする。

さらに肺から押し出されていくような空気は、自然に力が籠った声帯を通って濁った喘ぎ声となった。

液体が空気と混ざり破裂する卑猥な音も鳴る。


「あぁぁっ……♡♡♡ふといぃ……♡♡♡」


「へへっ♡♡♡」


 しかも先っぽですら太いというのに、チンポはカリに向かってまだまだ太くなっていく。

経験豊富な尻穴は、まるで先ほどのフェラさながらに締め付けを弱めず、結果として持ち主へは強烈な摩擦刺激をもたらす。

そこに一切の痛みは無い。

あるのはただ甘みだけで、度重なる媚薬精液の中出しと、調教の結果を表していた。


 過去の記憶が少し、鮮明に蘇ってくる。

腰を激しく打ち付けられ、だが腕が捕らえられて逃げることが出来ず、ただピストンを受け入れるしかなかった記憶が。


「んぉ゛っ♡♡♡ふぅッ……♡♡♡ふぅッ……♡♡♡」


 そうして挿入を続けていればやがて、高い峠を越えた。

仄かな達成感が湧きあがり、ようやく息をつける。


 だが、まだ亀頭を入れたに過ぎない。

莉子のモノは竿部分の方がずっと長いのだ。

葉の太腿は、依然としてベッドと垂直の角度だった。


「んっ♡♡♡」


 少し休憩した後、すぐさま再び腰を落とし始める。


「ぁっ……♡♡♡♡」


 すると上反りした物体は、陰核、前立腺へと当たり、そして自然に食い込む。

瞬間へそ下から充満していく快楽は凄まじく、自然とうっとりした声が漏れ出た。

全身は重たい気怠さに包まれるが、しかし決して不快ではない。

むしろその逆で、ただただ幸せだ。

自分で触れた時ここまではならないのに、チンポで弱点を圧迫されると他のすべてがどうでもよくなるようなトロけが噴出した。


「んぅっ♡♡♡ごりごりってぇっ……♡♡♡」


 おまけに括約筋は、鋼鉄じみた硬度かつ、血管により予想できない起伏を作り出す竿が愛撫してくる。

数えきれないほど抱かれてもついぞ慣れることのできなかったカタチによって、肉体の甘ったるさはあまりにも強い。

日常生活や自慰、そして葵との行為ですら感じることのできない嬉しさがもたらされた。


 本来性器では無い場所で行為に及び、これほどまで気持ちよくなれる自分は、本当はメスなのではないかと思ってしまう。

また、太マラを入れられいたく悦ぶことこそが本性なのではないか、とも。

他のあらゆる「佐藤葉」は、繕ったものにすぎないのではないか、とすら考えが及ぶ。


「はぁぁっ……♡♡♡ひッ♡♡♡うっ♡♡♡」


 振り払うべく身体を動かし続けるが、それらは消えることが無い。

むしろずっと頭の片隅で、堕落を囁いてくる。

過去の記憶、ラブホテルの部屋に鳴り響く肉同士がぶつかる甲高い音と、上擦った喘ぎ声を再生しながら。


「あッ♡♡♡お゛ぉぉっ……♡♡♡」


 追い打ちをかけるみたく幹は中盤に差し掛かるとより太る。

横幅を徐々に増し、底部に至っては尿道の張り出しがピークを迎え、背中側へ食い込んではいたく膣壁を舐り回していく。

脊髄のあたりからは濃密な官能がうじゃうじゃと湧き出していた。

妖しくも満ち足りた心地になり、四肢は役立たずになってしまう。


「~~~っ♡♡♡♡」


 そうして脱力すると、支えを殆ど失った肉体は自重によって少しずつ落下し、肉ネジが奥まで滑らかにはめられていく。

与えられる感覚は凄まじく、全身をまるで制御できない。


 自分の意思と関係なくぶつけられるそれに、何の抵抗もできず「使われる」悦びがありありと思い起こされる。

莉子と行為をする際はいつも、否応なく全てがめちゃくちゃになってしまいそうなほどの法悦がもたらされていたのだ。

先にある破滅がうっすらと見えるような、だがその破滅すらも愛おしく思えてしまうような、制御することのできない激しすぎる法悦が。


「はっ♡♡♡はっ♡♡♡」


 目を白黒させていればやがて、自然とチンポは先から根本まで余すところなく入りきった。

腹の底で熱と、尽きることの無い欲望を持った物体が蠢いている。

動きは腸壁を舐め、さらなる奉仕をせっつく貪欲なものだ。

ただそこにあるだけで、少しずつ冷静さが削り取られる。


 とはいえ著しい摩擦は止み、腰も落ち着けることができるため、どうにか呼吸を整えていく。


「おら♡♡♡止まってんじゃねぇ♡♡♡さっさとケツマンコでチンポ扱けや♡♡♡」


 しかしそんな中だるみの時間を、己が快楽のため数えきれないほど人を抱き、利用してきた彼女が許すはずもなかった。

どこか含みのある下品にニヤけた顔が、サボりを許さないとばかりに一挙手一投足を監視してくる。

また、視線は調教によって肥大化した乳首や、性的興奮が高まっているというのに萎えたままのペニスへは、特に鋭い。

後者は自分のモノと比較して、厭らしい優越に浸っているだろうことが分かる。


「うっ……はい……んぅっ♡♡♡あふっ♡♡♡」


 言われた通りに葉はピストンを開始した。

上体を前傾させて莉子の脇腹横、ベッドへと手をつき、尻に力を入れて締めながら上下させていく。

腸内はろくに時間をあけずともすぐチンポと馴染み、まるで恋人みたく密着しあっており、擦れ合う感覚がはっきり伝わってくる。

中でも張り出したカリは敏感な肉を捕らえ、卑猥な舌使いさながらにべろべろと堪能してきた。


 加えて潤滑液とおびただしい量の我慢汁で濡れそぼった結合部からはすぐに粘ついた水音が響き、同様に青臭い匂いも吐き出され鼻先へ立ち昇ってくる。

少ししか整えることの出来なかった息は一瞬で上がり、そうした淫香を大量に吸い込む。

すると全身はどんどん火照り、額には玉のような汗が浮かんだ。


「はっ……♡♡♡あぁぁっ……♡♡♡」


 続けて身体をくねらせ腰を前後させると、ナカでは性器同士が甘いキスを繰り返す。

横方向の摩擦はもたらされる感触も同様に甘ったるく、もっと感じたいとすら思う。

縦割れしたアナルは気分を盛り上げるように空気が破裂する音を絶えず鳴らし、自分もとばかりに太幹とくっついていちゃついていた。

逞しく、体内をきついぐらいに満たすオスマラの存在を突きつけられ、心の奥で目覚めつつあるマゾメスが興奮を否応なく昂らせていく。


「んぉっ♡♡♡ふぅっ♡♡♡ふぅっ♡♡♡」


 そうしてより感度が上がると肉体は時折痙攣し、どれほど行っているセックスが気持ちいいのかを見る者に表した。

表情も呼応するように目尻や口角、眉毛が下がりきったあられもないものとなる。

結果、ともすれば楽しんでいるような痴態をカメラの前に晒してしまう。


 だが実際葉は段々と、行為や羞恥によって得られる快楽へ夢中になりつつあった。

射精させる動きの中、何度かわざと竿へ前立腺を押し当てて潰し、カリへ腸肉を引っかけて掻き毟り、亀頭を深い所へ食い込ませ激しい圧迫感を味わっている。

開発されきっている身体は、そうするとあまりにも大きな報酬をもたらした。


 頭では確かにそんなことをしては駄目だと分かってるのに、しかし溢れんばかりに湧き出てくる衝動を押さえつけることはできない。

理性が、これまでの行為で殆ど機能しなくなっているのだ。


 むしろ心は先ほど挿入の時味わった押し付けられるような快感を、奥底では希求していた。

自分で動く、殆ど予想ができるものだけでは足りないとばかりに全身を疼かせてくる。

最早オスに本能のまま荒々しく抱かれることでしか、満足できそうにない。

脳裏へ過去の記憶が、鏡に映る、どれほど乱暴に犯されようとイき、よだれや涙を流す無様な「女」の様子がやたら鮮明に映し出された。


「へへっ♡♡♡」


 そんな浅ましい姿を見つめる大きな目。

欲望に支配されつつある彼とは異なり、彼女は相手を嘲る余裕すらあった。

かといって視線は理性的かと言えばそうではなく、ギトギトした脂っこい劣情に塗れている。

端から人間的な部分を捨て去った、けだものの目だ。


 正直な所、羨ましいと思ってしまう。

あんな風に気持ちいいことを貪れたら、どれだけ幸せだろうか。

快楽に蕩けきった頭は自然とそんなことが浮かぶほど、理性による歯止めがまるで効いていない。


「なぁ♡♡♡」


「んっ♡♡♡ふぇっ……?♡♡♡」


 考えていれば突然、愉しげな声がかかった。

騎乗位を続けながら耳を傾ける。


「さっきからアタシのチンポでオナニーしてんの、バレてっからな?♡♡♡マゾメスがよ♡♡♡」


「っ♡♡♡」


 続くのは、図星を突く言葉だ。

莉子は得意げでからかう様な笑みを浮かべている。

嗜虐的な表情は、見るだけで背筋がぞわついた。

ただ本来であれば恥ずかしいはずなのに何故だか、罵りも相まってへそ下あたりがきゅんと甘くなる。


「本当は抱いてほしいんだろ?♡♡♡」


「なっ♡♡♡」


 加えて心の中まであっさりと見透かされていた。

あまりにあけすけな問いで驚くが、品の無さと裏腹に彼女はあまりにも的を射ている。


「アタシに腰掴まれて、チンポでケツマンコのナカぐちゃぐちゃにして欲しいんだよな?♡♡♡そうだろ?♡♡♡」


「そんなことっ♡♡♡ん゛ぉっ♡♡♡♡」


 反論しようとすれば下から強烈に突き上げられ、欲しかった強制的に与えられる快楽を味わう。

無理矢理行われたというのに、頭の中へ広がるのは拒否感ではなく悦びだけだった。


「へへっ♡♡♡気持ちよくなりてぇなら言えよ♡♡♡正直に言えたらこれ、何回でもしてやるぜ?♡♡♡」


「はぁっ♡♡♡はぁっ♡♡♡」


「お前がイきすぎて気絶するまで……いや、気絶してもまた起きちまうぐらいマンコ突きまくってやるよ……♡♡♡また前みたく、オナホみたいに使ってやるからな~♡♡♡」


「ふぁ……♡♡♡♡」


 追い打ちをかけるように誘惑され、低く染みこむような声で囁かれると、意識がやけに粘ついたピンク色へと染まっていく。

するとその先にある快楽が勝手に想像され、そして過去事実としてあった記憶がフラッシュバックする。

欲望のまましたいことを告げれば、どんな気持ちいいことが待っているのか、葉は知っていた。

強烈な、何物にも、恋人との穏やかな幸せでも決して打ち勝つことのできないメスの快楽を。


 きっと最後には、また破滅が待っているのだろう。

飽きれば彼女に捨てられ、もしかしたら今度こそ日常生活に復帰することはできないかもしれない。

以降永遠に、決して満たされることの無い日々を送らなくてはいけなくなる。

当然そうした日々が、どれほど辛く苦しいものだったのかもはっきりと覚えていた。


「あは……♡♡♡♡」


 だが同時に、それを分かっていてもなお、今この瞬間の「気持ちいい事」は代えがたかった。

というかむしろ安寧を、愛を捨て去り堕ちていく背徳感と相まって、自分が思っている以上のものがきっと得られるだろう。

奥底で眠っており、呼び起こされた「オナホ」は、そう確信していた。

チンポに全てを破壊されることへの期待が、全身に甘美すぎる痺れを広げていく。


「気持ちよく、なりたいです……♡♡♡♡莉子さんに、めちゃくちゃにしてほしい、です……♡♡♡♡っぁ♡♡♡♡」


「……♡♡♡」


 考えていることを一文字ずつ紡ぐごとに、満ち足りた心地になる。

全て言いきると、思わず息が零れた。


 体内でデカチンが、満足げに大きく痙攣したのが分かる。

吐き出された我慢汁もかなり粘っこく熱い。


「なら、どう頼めばいいか分かるよな?♡♡♡ちゃ~んと誠意見せてもらわねえとな♡♡♡」


「……はい♡♡♡んぉ゛ぉっ♡♡♡♡チンポふといぃっ♡♡♡」


 彼女の求めることは、すぐに理解できた。

身体を浮かせ、少しずつナカから異物を抜いていくと、堕落を受け容れたからか先ほどまでより強い感覚が押し寄せてくる。

服従を示すために、膝が笑いそうになるのをぐっとこらえて続けていく。

意地悪く竿の中腹やカリが膣壁を舐ってくるが止めない。


「お゛ほぉっ♡♡♡♡」


 するとやがて括約筋が内側から大きく広げられ、やたら先端の膨らんだ肉ネジが外へと這い出していった。

ずっと熱され、自分でも発熱していたアナルがぽっかりと開いて、空気に冷やされていく。

へそ上から尻にかけて強烈な寂しさがあるものの、命令に従う為無視し、床へ降りる。


「っ♡♡♡」


 柔らかく身体を支えるマットレスと違い、地面は冷たく硬かった。

そんな場所へ膝をつき、ベッドの方を向いて正座する。

服に覆われておらず無防備な脛が当たって少し痛い。

また尻穴周辺はひどくぬるついており、かかとまでも汚れる。


「ふ~♡♡♡」


 視線の先では、莉子が身体を起こしマットレスのへりに座っていた。

少し前フェラチオをした時のように頭は見上げる位置だ。

吊り上がった強気な目から降り注ぐ視線は何かを期待するようで、玩具を見るように無邪気かつ遠慮が無い。

「どう遊ぼうか」という感情がひしひしと伝わってくる。


 気分の高揚を表すみたく全身には汗が浮かび、綺麗にムラなく日焼けした肌は艶めかしい陰影を映し出す。

特に下乳から腹部へ落ちる影は、とりわけ乳房の豊満さを強調していた。

麓はやたら暗く、しかも全体的に長く幅広い。

下から観察すると壮観の一言で、その淫猥さと慈母みたいな優しさに生唾を飲み込んでしまう。


 また、雄々しく輝く亀頭がそうした巨乳の谷間を隠すように見えていた。

たっぷりと肉によって磨かれ、同時に濡れそぼったソレは、まるで大量に宝石があしらわれた金の王冠みたく光を照り返している。

とはいえ色は鈍い紫であり、綺麗と言うよりもただただ禍々しい。

ともすれば悪魔めいた邪悪さを感じてしまう。

だが、確かに持ち主の威厳を象徴するものではあった。


 またそんな先端を支える竿の根本では、金玉がベッドからこぼれて垂れ下がっている。

清潔で楚々としたシーツの白に対して表皮はこれまた暗く、日焼けも相まってかもはや黒い。

きっとたっぷりハメ潮を吸ったのだろう。

およそ日本人の男性器とは思えないが、人との差異は彼女の魅力を引き立たせるものでしかない。


「はっ♡♡♡はっ♡♡♡」


 これからすることを思うと、自然に息が上がっていく。

どこも愛撫されていないというのに、全身はメスイキの直前に似た多幸感で占められていく。


 上体を前へ倒し、震える手指を床にくっつける。


「りっ、莉子さんのチンポでっ♡♡♡僕をめちゃくちゃにっ♡♡♡ぐちゃぐちゃになるまで犯してくださいっ♡♡♡♡」


 そして、頭をその手と同じ高さまで下げた。

土下座でハメ乞いをする自分の無様さに、異常な甘さが押し寄せてくる。

本来屈辱であるはずの行為は、葉に深い悦びと満足をもたらす。

乳首が痛いくらいに勃起し、ペニスが薄い汁を吐き出し、ケツマンコがぱくぱくと浅ましく口を開閉するのが分かった。


「へへっ♡♡♡」


「あっ♡♡♡♡」


 すると後頭部に、やや細長い何かが置かれる。

柔らかく暖かい滑らかなそれは、明らかに足の裏だった。

しかもいくらか体重が乗って重たく、額が硬い地面とより密着する。

それだけでなく足裏はゆっくりと動き、感触を、優越を愉しむみたく踏みにじってきた。


 一切遠慮のない行為に、人を人とも思わない行いに、胸が高鳴っていく。

オス「様」からオナホとして、快楽を得るための物として扱っていただけている事実に、まるで脳を直接愛撫されているかのような法悦が押し寄せた。


「っ♡♡♡ふぁあ――♡♡♡♡」


 激しい幸福は限界を迎え、頭を踏まれてのアクメに達する。

迸っていくのはただただ蕩けるような心地好さで、思わず熱い湯へ浸かったかのような至福の吐息が漏れ出す。

その間思考を支配するのは、莉子の存在と、踏んでもらっただけでこれなのに、もし抱かれたらどうなってしまうのだろう、という激しい期待だった。


「おら♡♡♡お望み通り使ってやるからさっさとマンコ出せ♡♡♡」


「んっ♡♡♡分かりました……♡♡♡♡」


 やがて、後頭部に置かれていたものは退かされ、新たな命令が下される。

葉は絶頂の余韻に身体をぐったりとさせつつも、言われたことに従い無理矢理ベッドへ上がった。

そのまま中央付近で枕の方を向き、足を閉じた四つん這いになり、上体を下げて穴が目立つように、また背の高い持ち主が挿入しやすいように尻を上げる。

続けてゆっくり揺らし、メスらしく道具らしく慈悲をねだっていく。


「上手に待てたらたっぷり抱いてやるからな~♡♡♡」


「あ……ふぁい♡♡♡」


 しかしすぐには応じられなかった。

彼女はそう言ってマットレスから立ち上がる。

何をしているか気になるが、言葉に従ってただ待つ。

すんでのところでおあずけを食らった尻穴の疼きは凄まじいが、その先にあるものが愉しみなのも確かだった。

部屋に充満する眩暈がするような濃いオス臭を吸い込み、肉体をよりぐずぐずの性感帯にしていく。


「よし♡♡♡こっち向け♡♡♡」


「はひっ♡♡♡」


 一分もしないぐらいだろうか。

後ろから声がかかり、体勢はあまり変えずに全身でそちらへと向く。


「っ♡♡♡あぁ……♡♡♡♡」


「へへっ♡♡♡またお前がアタシのオナホになった記念、たっぷり残そうな♡♡♡」


 そこには、壁に面したテレビ台と、その上にケースを用いて立てられたスマートフォンがあった。

画面はこちらを向いており、液晶には部屋の風景と、全裸で四つん這いの体勢をしたはしたない顔の男、佐藤葉がいる。

また他にもカメラアプリの、映像を撮影する際のインターフェースが表示されていた。


 これから再び、ハメ撮りをされてしまうのだ。

きっと莉子のオカズとして、そして新たな脅しの材料として使われてしまう。

ともすれば過去の日付なら、昔起きた事だと弁明することは出来たかもしれない。

だが今、葵という恋人が居るこの瞬間に記録されてしまえば、今度こそ言い逃れはできないだろう。

彼女を、傷つけてしまう。


「ふ~♡♡♡」


「うぁ……♡♡」


 だが、今自分は莉子のオナホールであり、ただ気持ちよく使って貰う事だけ考えていればいいのだ。

罪悪感を仄かに覚えるが、それもすぐ消え去る。


 気づけば、撮影が開始されたことを知らせる音が鳴っていた。

オスは早くも満足げな息を吐きながら、再びベッドへと上がってくる。


「ぁっ……♡♡♡」


 そして、細さや柔らかさと似つかわしくないほど力強い手に腰を持たれ、尻へ亀頭が突き付けられた。

熱くぬめった感触は、やや竦んだ身体に芯から甘美な震えを走らせ、萎えた劣情を強制的にぶり返させていく。

それだけで、「ソレ」には決して勝てないのだと理解する。

元からオス様に負ける運命だったのだと、諦めがつく。

すると肉体は、心は、快楽を全て受け容れることにした。


「ふっ♡♡♡」


「ん゛ぉ゛ぉぉっ♡♡♡♡♡」


 チンポが一気に、既に一度の挿入で解れきっていた、だが足を閉じているため少しきつい尻穴の奥まで押し込まれる。

オナホは、低い獣声と共に絶頂した。


 敗北の味はひどく美味だ。

脳に激しい幸せが走って理性や常識といった無駄なものが死に絶えていき、全て持ち主の事を考えるためにある場所へと塗り替えられていく。

幸福とはなんであるかが、植え付けられていく。

さらに、そうして強制的に変化させられることもまた幸せだった。


「へへっ♡♡♡」


「お゛ぉ゛ぉぉっ♡♡♡♡」


 続けて、馴染ませる時間など無く、入ってくる時と違いゆっくり折り返していく。

すると衝撃は無いものの、中ほどや先端の出っ張りがとにかく腸壁を絡め取っては擦りたくってくる。

特にひだがある部分は凄まじく、肉同士がべっとりと溶け合うほど念入りに押し付けられてから愛撫されていた。

粘膜でいちゃつく悦びに、めくれ上がってしまうのではというほどの密着と摩擦係数に、四肢へは力が入り、結果尻穴も締まってより快感はひどくなる。


 交尾音は、葉のフェラチオもかくやといったいやらしさだ。

ぐじゅぐじゅ、ぬぱぬぱ、にちにちと、あまりに下品な響きが大きく部屋中を木霊している。


「さっきまで嫌がってたのにっ♡♡♡ずいぶんうれしそうだなっ♡♡♡あぁっ?♡♡♡」


「はひっ♡♡♡♡きもちい゛ぃっ♡♡♡♡きも゛ちいぃですっ♡♡♡♡んぉ゛ぉっ♡♡♡♡」


 快楽は先ほど騎乗位していた時とは比べ物にならない。

巨根はただ出入りしているだけで通り道にある前立腺を潰し、中身を押し出してところてんさせてくる。

だとしても当然のようにアナルの方が気持ちいいが、放出感は合わさると全身を小刻みに震えさせた。

ただ、数秒ほど出すと我慢汁の一滴さえ出る気配が無くなってしまう。


 葉は、より気持ちよさを貪ろうと全身を出来る限り引き締めた。


「マンコもっ♡♡♡アタシのチンポのことすきっ♡♡♡すきって抱きしめてきてんなぁ?♡♡♡チンポ好きなメスがよぉっ♡♡♡」


「んぅっ♡♡♡♡あぁっ♡♡♡♡これぇっ♡♡♡♡」


「葵ちゃんにもこのマンコ味わわせてやれよ♡♡♡♡まぁチンポ生えてねぇだろうけどなっ♡♡♡♡」


「っ……♡♡♡いまっ♡♡♡♡あおいのことはっ♡♡♡♡いわないでっ♡♡♡♡」


 莉子はそんな浅ましい姿をなじり、あまつさえ恋人を引き合いに出してくる。

一瞬背筋に悪寒が走るのに、しかし早くも蕩けた頭は罪の意識を背徳の悦びに変えた。


「あ?♡♡♡言われてマンコ締まったくせになに言ってんだよ♡♡♡浮気して悦ぶビッチオナホがっ♡♡♡♡」


「だめぇっ♡♡♡♡はぁっ♡♡♡♡あ゛っ♡♡♡♡……チンポぉっ♡♡♡♡」


 図星を突かれると、何も反論することができない。

逃げるように、よりオスへ身を任せてしまう。


 そうした姿は濁ったオホ声と合わさって、しばらくオナホを堕とすため射精していなかった莉子の興奮が大きく煽られたようだった。


「おらっ♡♡♡」


「あ゛ひっ゛♡♡♡♡」


「は~♡♡♡とりあえず一発出すわ♡♡♡全部受け止めろよ~♡♡♡」


「っ♡♡♡チンポぉ゛っ♡♡♡お゛っきぃっ♡♡♡♡」


 彼女の言葉通り肉ネジは子種汁を放出するため膨張し、痙攣を増やす。

すると当然ナカへの食い込みは増え、快楽も増加していく。

しかも亀頭の膨らみは竿よりも著しく、厚ぼったく高くなったカリは性感帯を虐めぬいてきた。

同時にさらなる圧迫感も味わい、身体の中をいいように拡張され、成形される悦びが襲う。

使い心地が良くなるよう調整して貰えるのは、物冥利に尽きた。


「ふ~っ……♡♡♡」


「んぉっ♡♡♡ぬぷぬぷってぇっ♡♡♡」


 チンポは先端が抜けるか抜けないかの位置まで膣から這い出すと、絶頂のタイミングを探るみたくきつい括約筋を用いて己の敏感な場所を扱いてくる。

ごく浅い場所でのピストンは、セックスと言うよりもオナニーに近い。

相手を満足させることなど欠片も考えていないのだろう。


 だが、調教されきった肉体はそんな扱いにも関わらず全く不満を見せない。

むしろもっと気持ちよくオナニーして欲しいとばかりに、愛おし気に抱きしめる。

裏筋や段差を、べろりべろりと舐っていった。


「んっ……♡♡♡♡」


 やがて、何かを示すように腰がより強く掴まれる。

しなやかな指は痛いくらいに脂肪や筋肉を捕らえていた。


「ふんッ♡♡♡……あ~♡♡♡♡」


「お゛ひっ♡♡♡♡――♡♡♡♡♡」


 そして、オスマラは一直線に最奥へと侵入し、身勝手に欲望の証を射精し始める。

感じるのは、長大な砲身から粘っ濃すぎる液体を吐き出すための獰猛な脈動だ。

まさしく猛獣さながらに暴れ散らし、メス穴全体に種を撒いていく。

さらに腹はかなりの速度で重たくなっていき、身体を内側から膨らまされる幸せな苦しさが襲う。


 すると「オナホ」は、深いメスアクメへと沈み込んだ。

単純な快楽と中出しが相まって、心と肉体が一緒にイく。

感覚はひどく強烈で、思考することも身動きをとることも一切できないというのに、自由が効かない事による不満は全て消し飛んでいる。

白んだ視界の中あるのはただ、度を超して幸せであるということだけだ。


「……♡♡♡♡」


「お゛へっ?♡♡♡♡あ……♡♡♡♡イっ……♡♡♡♡――♡♡♡♡♡」


 しかも莉子は放出の最中でも腰を動かし、オスの悦びを貪欲に味わっていた。

前立腺を圧し潰して連続でイかせてきて、締まった膣穴で金玉の中に残る液体をできる限りコキ出していく。

彼女も相当気持ちよくなっているだろうに、動作はまるで衰えることが無い。

既に部屋へは結合部から先ほどより一層いやらしさを増した水音と、自慰を何度もした後のゴミ箱みたいな強い香りが充満していた。


 淫らな音と匂いに全身を犯され、オス様が絶頂させたい時に都合よく絶頂させられてしまう弱い自分、という事実に精神を犯され、深アクメが続く。

敗北は、彼我の歴然とした差はただただ気持ちよく、どこか落ち着くのすら感じた。

意識は白飛びしていき、薄くなっていく。


「は~……♡♡♡」


「ふぇっ♡♡♡」


 だがやがてチンポが脈動を止めると、腰から離れたしなやかな手が今度は二の腕を捕らえ、引っ張ってくる。

上体はベッドと平行より軽く起きつつ完全に浮き、膝から下のみがシーツへ接する体勢となった。

食い込んでくる指の力強さが安心を生み、アンバランスさがスリルを生む。

すると、徐々に惚けた視界はズレてシワのよったシーツや、鏡のように自分の姿を表示するスマートフォンを捉え始める。


「おらっ♡♡♡」


「あ゛っ♡♡♡♡ん゛い゛っ♡♡♡♡」


 そしてそれらは、行為の再開によってより鮮明になった。

快楽が、快楽で気絶しかけていたメスを強制的に揺り起こす。


 抽送は先ほどより浅く繰り返されるものの、腕から上半身全体が引き寄せられ、またそれによって莉子の腰には反動がついて衝撃はずっと激しい。

ナカの肉は振動で愛撫され、体液で濡れた尻たぶはまるで打楽器のように、ただそれにしてはやたらぬちょついた音を立てていく。

さらに肌同士が離れる度白濁した橋もかける。

結合部からは中出しされた精液が泡立った本気汁と化し、会陰や金玉を舐めながら滴っていった。


 動作はあまりに荒いが、多量の脳内麻薬で痛覚が麻痺しているのか、それともただ痛みが無いだけなのか、押し寄せるのはおびただしい快楽だけだ。

絶頂後で敏感な肉体に与えられる、苦しみ無く純粋で強烈な甘みは、緩みきった精神に少しずつチンポやふたなり、莉子への崇拝を根付かせていく。


「すきっ゛♡♡♡♡チンポっ♡♡♡♡もっとぉ゛っ♡♡♡♡」


「へへっ♡♡♡ちゃんとオナホはオナホらしくっ♡♡♡アタシが気持ちよくなれるようにマンコ締めとけよ?♡♡♡」


「はひっ♡♡♡♡」


 自然と溢れ出す言葉へ応じるように聞こえてくる、激しいピストンをしているにしてはやたら余裕のある低く頭へ響く声。

上から降ってくる己よりも尊い気がする存在からの命令は、すぐさま身体へ馴染み膣穴全体をデカマラに服従させる。

与えられた「オナホ」としての使命を果たそうと、尻全体へ力を入れてよりきつくきつく締めていく。


「ふ~っ♡♡♡お、そうそう♡♡♡出来のいいオナホは飽きるまで使ってやるからな~♡♡♡♡あとすぐイくザコメスも無様で好きだぞ~♡♡♡おらっ♡♡♡♡」


「お゛っ♡♡♡♡――♡♡♡♡♡」


 行動を褒められると、濃密な多幸感が噴き出してきた。

「飽きるまで」という身勝手な物言いが付いているというのに、これからも使って貰えると思うとそうなってしまう。

加えてひどく弱い性感帯である尻穴までデカチンポで嬲られているのだから、まだ両腕を持たれてのピストンが開始されてから一分と経っていないのにイく。

意地の悪い嘲笑は、不快どころか背筋からぞくぞくした悦びを発生させた。


「おっ♡♡イきマンコ締まるな~♡♡♡じゃあそのままずっとイっとけや♡♡♡ふっ♡♡♡」


「んぉ゛っ♡♡♡ふぁいっ♡♡♡♡イぎましゅっ♡♡♡♡あ゛っ♡♡♡グるぅっ♡♡♡♡ぁ――♡♡♡♡♡」


「……♡♡♡彼女持ちの男イかせんのキく~♡♡♡♡優越感でチンポバキるわ♡♡♡」


 全身を満たす重たい感覚が引きかけても、すぐ彼女の動きでぶり返す。

莉子が気持ちよくなるため強制的に絶頂させられているのだ。

肉体の生理現象すら支配されている事実に、絶対に勝てないのだからせめて寵愛をねだろうという考えが芽生え、思考を染めていく。

強い者に、佐藤葉という人間の何から何までが屈服してしまう。


「なぁ♡♡♡葵ちゃんはこんな気持ちよくしてくれないだろ♡♡♡」


「っ♡♡♡♡それはっ♡♡♡♡んぃ゛っ♡♡♡♡」


 そしてオス様はまた、触れられたくない部分にその下卑た手を伸ばしてきた。

最悪な二択を迫ってくる。


「あ?どうなんだよ?♡♡♡アタシと葵ちゃん、どっちとするセックスのがイイんだ?♡♡♡」


「あ……」


 うっすらと、だが確かに残っていた葵への気持ちから咄嗟に言いよどむと、あれほど激しかったピストンは嘘みたいに止まった。

互いの腰はべっとり密着しているというのに、快楽は急速に萎びていく。

結果無理矢理繰り返されたアクメは、その強引さに反してひどい不快感を後に引きながら薄れていた。


 しかも性格の悪い問いをすることに興奮しているのか、チンポはナカで忙しなくびくつく。

それが気持ちよく、決してセックスの悦びを忘れさせてくれない。


「わっ……」


 すると右肘のあたりを掴んでいた手が離れ、反対側が力強く引っ張られて上体がマットレスと垂直ほどに起こされる。

ちょうど、顔がスマートフォンのカメラと相対する角度だ。

欲求不満そうな表情のメスと、そのメスを弄ぶ気に満ち溢れたオスが遠巻きながらも映っているのが分かる。

また背中では豊満な胸が潰れて弾き返そうとし、体内では少しへそ周辺が膨らむほど肉ネジが腹側に食い込んでいた。


「んむっ♡♡♡」


 指が口内に突っ込まれてくる。

そのまま舌がフェザータッチで愛撫されていく。

人のデリケートな部分に手を突っ込むこれまた荒っぽい行いだが、動き自体は優しく甘ったるい。

むず痒くも満足感のある心地に、恋人の事を言われて戻っていた理性が再び蕩ける。

女の顔になっていく恥ずかしい一部始終が、ありありと記録されてしまう。


「おら、さっさと答えろや……♡♡♡もしアタシの方が良いって言えたら、このままキスしながらイかせてやるよ……♡♡♡♡あとたっぷり中出しもしてやる……♡♡♡」


「ふあぁ……♡♡♡♡んぇ……♡♡♡」


 追い打ちをかけるように、艶めいて色気のある声が囁いてきた。

加えてオス様の象徴がゆっくりと脈打ち、膨張していく。

卑猥なピンク色の毒が脳内に満ち、自分とは何者であったかを思い出させられた。


 「莉子のオナホ」として、彼女が最も気持ちよくなれる答えを出す。

ちょうど言葉を紡ぎやすいように、異物は口から出て行く。


「りっ♡♡♡りこしゃんですっ♡♡♡♡りこさんとのえっちの方がっ♡♡♡♡なんばいもっ♡♡♡なんじゅうばいも気持ちいれしゅっ♡♡♡♡んむっ♡♡♡」


「んふっ♡♡♡んぇ~♡♡♡♡」


 そして心の奥底からの本心を告げると、すぐさま顔が真左を向かされ、唇が重なりベロがねじ込まれた。

やけに長く、中央にピアスらしき硬いものがある彼女の肉舌は、むず痒い責めで敏感になっていた粘膜を嬲っていく。

先端で表面を引っ掻き、くっつきあって扱いてくる。


 また、下半身ではチンポが前立腺を潰し、腸壁を捏ね繰り回してきた。

身動きが取りづらい体位にも関わらず動作は撹拌機や削岩機のように激しく、性感はひどく刺激されていく。


「っ♡♡♡♡――♡♡♡♡♡」


 結果焦れていたのもあってとてつもない幸せが爆発し、一瞬でメスアクメした。

不満からの差によって、体感する快楽は大きい。

熱烈なキスもされているとなればなおさらだ。

全身は物みたいに力を無くし、そうして脱力するとよりアクメが深く、隙間なく沁み込んでいく。


「むふ~っ♡♡♡♡ふっ♡♡♡ふっ♡♡♡」


「お゛ぁ゛っ♡♡♡♡イっ♡♡♡♡ぃっ――♡♡♡♡♡ぅ゛ぅ゛~♡♡♡♡♡」


 しかも射精するための強く素早いピストンが始まると、終わりが見えなくなる。

与えられる法悦が、絶頂で消費する法悦よりもずっと多い。

思考することはできなくなり、すると当然肉体を動かすことなどできず、ただ獣じみた音が喉から出る。

唯一出来ることと言えば、著しく締まる肉穴を捧げる事だけだった。


「ん~♡♡♡」


「ぁっ♡♡♡♡う゛っ♡♡♡♡♡ぁっ――♡♡♡♡♡」


 「おチンポ様」から放出の前兆を感じ取り、イってもらえるのだと理解することもなんとかでき、それだけでイく。


「んっ♡♡♡♡んふ~♡♡♡♡」


「ぅぁ……♡♡♡♡でてるぅ……♡♡♡♡んひ――♡♡♡♡♡」


 であれば当然のように、実際に中出しが始まれば意識はどこかへと飛びそうになった。

おびただしい量の多幸感があらゆるものを圧し潰し、殺していく。

後に残るのはそんなものを与えてくれた持ち主様への服従と崇拝だ。

存在意義が、人としての誇りが書き換えられていく。

そうした洗脳とすら言える絶頂はしばらく、彼の深層心理へ根付くまで続いた。







「んっ♡♡♡ちゅっ♡♡♡んぇ♡♡♡」


 数時間後、「オナホ」はひくつく尻穴から時折精液を吐き出しながら、ベッドに仰向けで寝転んでいた。

顔面には汁塗れの萎えて柔らかい、だが20センチほどはあるチンポが置かれている。

彼はソレを大事そうに両手で包み、舌を這わせて掃除していた。

最早、今日の昼下がり恋人と仲睦まじく話していた男の姿は見る影もない。


 そうした無残と言える姿に目もくれず、大塚莉子はスマートフォンを弄っている。


「そうだ♡♡♡お前、葵ちゃんとこのまま付き合え♡♡♡そしたらしばらくは飽きないかもな~♡♡♡」


「はい……♡♡♡♡」


 彼女はふと思いついたように話しかけてきた。

提案してくるのは道徳を外れた不義理だが、感じるのは使って貰えることへの期待と、背徳感だけだ。

度重なる麻薬じみた快楽で、理性は壊れてしまったかのように働かなくなっている。


「二人でいる時に呼び出してやるよ♡♡♡んで抱いてやる♡♡♡」


「ふあ……♡♡♡♡」


「それでたっぷり中出ししたらまた合流させて……♡♡♡へへっ♡♡♡彼女とデートしてるのに、腹んナカにはたっぷりアタシの精液が入ってる……♡♡♡お前も興奮すんだろ?♡♡♡」


「ふぁい♡♡♡んぁっ♡♡♡♡」


 言われた光景は鮮明に頭の中で再現されるが、一切不快さを覚えない。

同時に足指で乳首を潰し、捏ね回されると、むしろ幸せが身体の奥底から膨らんでくる。

自分も、葵も、「葵と付き合っている佐藤葉」という存在も踏みにじられると思うと、ひどく興奮してしまう。

そうして自らの快楽のため人を弄ぶことのできるオスらしさに、惚れ惚れすらする。


「ちゅっ♡♡♡んちゅっ♡♡♡」


 愛おし気にチンポへキスする彼の目は濁りきり、最早健康的な人間のそれでは無かった。

恐らくこれから、持つ全てを、人生を莉子へと捧げてしまうのだろう。

しかし、彼自身はただただ幸せだった。

あらゆるものを捧げてもいいと思える快楽と、それをくれる絶対的な主を見つけたのだから。




 しばらく後、葵は妊娠し、葉と結婚した。

生まれた子供はふたなりであり、顔は大層莉子に似ていたという。

そして三人は、仲睦まじく「幸せ」に暮らしたのだった。



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