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少年は顔見知りのお姉さんが屠畜される現場を目撃した…

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~~以下はSSです~~

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SS作者:成崎直

原題:「ぼくがはじめて見た屠畜」

 ぼくがはじめて屠畜を見たのは小学五年生の頃。

 お母さんと、クラスメイトであるノリユキの家族の合わせて四人で花火大会に行ったときのことだった。

 花火大会が終わり、観にきた人が次々に帰りだしたとき。

 はじゃぎまくっていたノリユキは疲れたのか、お母さんにおんぶされて熟睡していた。

 そして、そのノリユキのお母さんとうちのお母さんが延々と井戸端立ち話を続けていて、話し相手がいなくなった僕は退屈していた。

 ぼんやりと会場から帰る人々の様子を目で追っていると、その中に見覚えのある人を見つけた。

 ――あさみさん。

 正しくは有吉(ありよし)あさみさん。

 ぼくが通っている塾で勉強を教えてくれる先生。ふだんは大学に行っていて、塾にはアルバイトで来ているらしい。いつも明るくて、優しい笑顔を見せてくれる、ほんのりいい香りがするお姉さん。

 でも、今目の前にいるあさみさんはいつもと様子が違っていた。

 メイド服を着ている。

 ふだんはワイシャツにスカートやらスーツやら、どちらかといえばフォーマルな感じの服を着ているので、あんなあさみさんの姿は初めて見た。

 それともう一つ。

 知らない男の人を連れていた。

 金髪に色黒で、筋肉質。甚平を着た、見た目にはあさみさんと同じくらいの年の若い男。

 そういえばあさみさんと塾でこんな会話をしたのを思い出した。


 ――「ね、あさみさんは好きな人いるの?」

 ぼくの問い。あさみさんは困ったような顔をしながら、「いるよ」と言った。

「え!」「あさみさん彼氏いんの?」「もしかして俺!?」他の生徒が次々にやってくる。

「違う、違う」彼氏面する生徒に笑いながら否定をするあさみさん。

「あさみさんの彼氏、どんな人なの?」

 ぼくが言った。あさみさんは顔を赤らめながら、

「う~ん……、そうだな……ボクシングをやってるんだけど、今チャンピオンを目指していろいろ頑張ってる」

「マッチョが好きなの?」

 誰かの質問。

「そう、……かもね。そういうたくましい人、嫌いじゃない……ね」

 何かに浸るように話すあさみさん。すぐ後、我に返ったように咳払いをすると、

「私の話はいいから、さっさと今日のドリル片付けて!」

 と、慌てて場の空気を戻そうとした……。

 ということは、横にいる男はあさみさんの彼氏なんだろうか。確かにあさみさんが言ってたような雰囲気ではあるけれど。

 いずれにせよ、ふだんと違うあさみさんの雰囲気に、ぼくは声をかけることもできず、ただその姿を目で追うことしかできなかった。

   *   *   *

 帰り道。

 歩きながら相変わらずお母さんとノリユキのお母さんは喋っていた。ノリユキの方はそんなこともおかまいなしに眠ったまま。

 家の近くの公園まで差し掛かったとき、不意に尿意をもよおした。

 みんなには公園で待っててもらい、ぼくは公衆トイレに駆け込んだ。

 用を済ませ、男子トイレから出ると、ベンチに座っているお母さんたちはぼくのことなんて忘れているように話を続けていた。

 半ば呆れながらみんなのところに戻ろうとしたとき、障害者の人が使う大きなトイレ(多目的トイレとか、だれでもトイレとか呼ばれているやつ)から変な声が聞こえてきた。

 「ああ、ん」とか、「んん、う」みたいな声。大人になってから思い返せばこれは喘ぎ声なのだが、当時のぼくはそんな言葉は知らなかった。

 トイレの扉がほんのわずか開いており、恐る恐る、そっと中を覗いてみる。

 すると……、

 中にはあさみさんと、あの彼氏らしい男がいた。

 洋式便器の横の広いスペースに、男が座っている。その上にあさみさんが座っていた。

 男はあさみさんの首に片腕を回して押さえている。

 いわゆるリア・ネイキッド・チョークと呼ばれる裸絞に近い形だが、力はそんなに入っていないように見える。

 もう片方の手であさみさんの胸を撫でていた。

 一方のあさみさんはというと、さっきと同じくメイド服を着ているものの、足は裸足で、その代わり口に何か黒い布を詰められていた。靴は、おそらく放り投げたのだろうか、二人からやや離れたところに乱雑な感じで転がっている。


 あさみさんの異常な姿に、ぼくはただただ固唾を呑んで見守ることしかできなかった。目の前に広がるその異様な雰囲気に呑み込まれて、ぼくの頭は真っ白だった。

 男があさみさんに向かって言う。

「たかが靴下でも、口に詰めるといつもより息ができなくなって、良いだろ?」

 すると、あさみさんが、

「んいい、いもいいい……」

 と何かを言った。口がふさがっているせいで、何が言いたいのかはまったくわからなかった。

「なに言ってんのかわかんねえよ」と男は笑い、あさみさんの口から靴下を取り出した。黒い布の塊が、あさみさんの口から糸を引きながら離れていく。

 ケホケホと席をした後、あさみさんは「はあ……」と大きく呼吸をした。

 男が靴下を脇に置くと、あさみさんは男の手首を掴み、そのまま自分も首元に持っていって擦るように動かした。

「ね、もっと絞めて……」

 ねだるあさみさんに男は加虐的に微笑み、あさみさんの顔を優しく掌で撫でながら、耳元で「気持ちよくしてやるよ」と囁いた。

 あさみさんが目を閉じると、男は腕であさみさんの首を押さえ、力を込めた。

「ん、ぐ……」

 と、あさみさんがうめき声をあげる。

 あさみさんの顔の色がほのかに赤みを帯びていく。

「どうだ? 男のぶっとい腕で首を絞められる気分はよ?」

「いい……! きもち、いい……!」

「そうかい。んじゃ、もうちょい強く絞めてやんよ」

 と、腕に力を込める。

「んっ……!」

 口をパクパクと開き、息を吸おうとしているあさみさんは見るからに苦しそうなのだが、その顔はどこか嬉しそうだった。

「お……?」

 男が不思議そうな顔であさみさんの下半身を見る。

「あ……」

 あさみさんは急に恥ずかしそうな顔になって、小さな声で呟いた。

「濡れてんな。触ってもいねえのに、服の上からわかるくらいびっちょびちょにしやがって。……よっぽど良いんだな」

「うん……すごく、いい……」

 ハアハアと息を吐きながら、あさみさんが言う。

「――そろそろ、やるか?」

 という男の問いかけに、あさみさんは「やって……! 殺してえ!」と高揚した。

「ちょっと待ってな」

 男は腕を一旦外し、体勢を崩さない程度に簡単なストレッチをしたり、指をポキポキと鳴らしながら、息を整えている。

 あさみさんも目を閉じて深呼吸している。なんとか落ち着こうとしているものの、息は荒く、笑みが自然とこぼれてしまっている。

「よし……」

 男は再びあさみさんの首に右腕を回し、今度は左腕も使って頭を固定した。

 だが、すぐに絞めず、あさみさんの体を舐めるように見た後、

「……これ、まさか着てくれるなんて思わなかったな」

 ポツリと男が声を漏らす。あさみさんは「?」という顔をした。

「メイド服。お願いしたときは引いてたのに」

 あさみさんはふふ、と笑って、

「チャンピオンへのご褒美」

「え……」

 男の顔が照れたように真っ赤になる。

 男は咳払いをすると、今まで出していた強気な声から打って変わって優しい声で語り出した。

「あさみ、俺……お前がいなかったらチャンピオンになんてなれなかった。全部お前のおかげだ」

「……」

 あさみさんは黙って聞いている。

「チャンピオンになって、初めて技をかける相手がお前で……良かった。ほんとはリングの外で技なんかかけちゃいけないんだけど……お前は特別だ。俺、頑張るからさ。お前が逝っても、チャンピオン防衛するからさ。なんも心配していらねえよ」

「……」

 あさみさんは黙って小さく頷いた。

「……最期に現役チャンピオンの絞め技、しっかり味わってくれよ……!」

 男はひときわ深く息を吸うと、思い切り腕に力を込めた!

「!」

 あさみさんはカッと目を見開き、声も出さずに両手の指で首を解こうとする。

「……う、かはあ……ッ」

 遅れて、あさみさんの声が聞こえてくる。

(わ……!)

 突然の凶行に、ぼくはうっかり声を漏らしてしまっていた。

 慌てて口を塞いだが、二人には聞こえていないようだった。

「ん、ぎ…………は、…………あっ」

 あさみさんは口から舌を出し、声にならない声を上げた。

 あさみさんは右手で首と腕の間に指を入れて、少しでも迫りくる腕の力から呼吸を守ろうとしているが、男の腕にも負けじと力が込められる。

 あさみさんの左手が男の顔の方に伸びる。

 男はなんとかそれを避けながら首を絞めるが、手を避けるたびに少し力が弱くなっている。

 すると、あさみさんが右手で左手首を掴んで自分の腕を抑え始める。

 恋人への気遣いなのだろうか、しかしその腕は苦しみのあまり震えている。

 腕を封印した代わりに、今までジタバタと動かしていた足の動きが大きくなった。

 裸足の足が、前後だけではなく上下にも踊り跳ねるかのように暴れている。

 あさみさんの顔はピンク色になり、前を見ていた目が白眼を剥き始めた。

 苦しみに耐えきれなかったのか、自分で押さえていた腕が解かれ、また男の腕を掴み始めている。

 しかし、それでもなおあさみさんは、呼吸をしたい欲求に争い、首元へと向かう手を外してはまた本能のまま手が首元に向かうという動きを繰り返している。

 そんなあさみさんの姿を見ていると、なんだかおちんちんが動くような違和感に襲われた。

 本能に負けたあさみさんの手が、首元の腕を引き剥がそうと動く。もはやあさみさんに抵抗する気力はなくなったようだ。

 白眼を剥いていたあさみさんの目が、また前を見据える。

 その時……、

 ――あさみさんとぼくの目が合った!

 思わず目を反らしたが、ぼくの姿が見えていないのか、特にこれといった反応はなく、あさみさんは足をモゴモゴ動かしながら、ぼくの方に手を伸ばした。

 まるで、こっちおいで、と言ってるかのように。

(それでも、ぼくは見ることしかできなかった)。

「あっあ…………」

 あさみさんの手から力が抜け、ぶらりと垂れ下がる。

 足は揃えた状態で、指の先まで力が入っている。ちょうど長座のような形で、小刻みに震えている。

 あさみさんの表情がこわばり、顔が左右に痙攣を始めた。

 男が、「くう……!」と声を出して腕の力を強めていく。

 あさみさんのぴんと突っ張っていた足から力が抜ける。

 手の痙攣も勢いが衰えていき、首を絞められているはずなのに首元ではなく上向きに手を伸ばしたりするなど、小刻みな動きからあらぬ方向へ大きく動くようになっていく。

「あ、ああ……」

 カッと目を見開き、前を見据えるあさみさん。もがきながら出していた声も、どんどん小さくなっていき、人の声というよりも喉から出る音のようになっていく。

「ぎい、……ぐいい、…………おぼ」

 もはやあの可憐な声のあさみさんとは思えぬ汚い音を出し、口からなにか白いものを吹き出した。

 あさみさんの体から徐々に力が抜けていき、痙攣が弱まっていく。やがて、あさみさんは動かなくなった。

 男は腕を解き、ぜえぜえと肩で息をした。

 男の顔は真っ赤で、滝のような汗を流している。酸欠状態になんているのか、しばらく動くことができない様子だったが、ある程度息を整えると、ようやく、ゆっくりとあさみさんを見た。

 あさみさんの白くて綺麗な顔は赤みのある紫色に変化していた。

 目はしっかりと開いていたが、焦点が定まらず、どこか遠くを見つめている。

 口からはちょろりと舌がはみ出ていて、口の端からはムース状、あるいは泡立てた歯磨き粉のような泡が溢れている。

 白みを帯びて、クリーム色のような色になった手足はだらりと垂れ下がり、また力なく伸びていた。

 男の荒い呼吸の音しか聞こえないトイレの個室に、ほんの小さくだが水音が流れた。

 見れば、あさみさんの股間からぴちゃぴちゃと水が溢れていた。

 わずかに黄色味がかった水が、あさみさんの服を汚しながら、公衆トイレの汚いタイルの床に広がっていく。

 あさみさんがおしっこを漏らしたのだ。


 はあはあ……、……と、息を吐きながら、男はあさみさんに声をかける。

「あさみ……、気持ち、良かったか?」

 はあ、はあ、はあ、……、……。

「あさみ……」

 凄惨な表情をしているあさみさんの顔に、男は優しくキスをした。

   *   *   *

 …………。

 ぼくの目の前で、あさみさんは殺された。

 それをずっと見ていた。

 気づくと、顔から足まで汗でぐっしょりと濡れていた。

 よろよろとドアから離れたものの、その場からしばらく動けなかった。

ごとごとん、と、

 多目的トイレの中から、誰かが動くような音(おそらく男が立ち上がったのだろう)が聞こえ、慌てて男子トイレの中に隠れた。

 男子トイレの扉を少しだけ開け、外の様子を覗き見る。

 多目的トイレから男が出てきて、あたりをきょろきょろと見回しながら、夜の闇に消えていく。

「…………」

 ぼくも、あたりの様子を伺いながら多目的トイレの中に潜り込む。

 多目的トイレの中には、あさみさんがいた。

 壁に背中を預け、こちらを足を伸ばして座っている。

 その姿はさっきと同じで微動だにしない。

 ぼくはゆっくりと扉に鍵をかけて、誰にも邪魔されない空間を作る。

 そして息を整えながら、あさみさんの姿を眺めた。

 死体になったあさみさん。

 今まで勉強を教えてもらっていたときには感じなかった不思議な気持ちになる。

 なんだか、あさみさんの体に触りたい。キスしたい。変な気持ちだ。

 当時はこの気持ちがなんなのかよくわからなかったが、今思えば間違いなくぼくはあさみさんの死体に性的興奮を覚えていた。

 ふと、自分のおちんちんが大きくなっていることに気がついた。

 触ってみる。

 なんだか気持ちいい。

 もっと触ってみる。

 もっと大きくなった。

 しかも、もっと気持ちいい。

 なんだろう、擦るのがやめられない。

 ぼくはあさみさんを見ながらおちんちんを触っていた。

 変な色になっていて、目をガン開きにしたままこっちを見つめて、ちょっと怖いけど綺麗なあさみさんの顔。

 テストで良い点を取ったとき、よく出来たねとぼくの頭を撫でてくれたあさみさんの手。

 無駄毛ひとつない綺麗なあさみさんの脚。

 今まで見たことない、こちらに向いているあさみさんの足の裏。

 黒いメイド服から出る、白くて美しいあさみさんの肌。

 あさみさんの全てがぼくを気持ちよくさせる。

「あっ……はっ……」

 まだ子供の、声変わり直前の声が漏れていた。

(気持ちい! きもちい! キモチイイイ……っ!)

 ビュッ! と、ドロドロした白いものがおちんちんの先から出てきた。

 なんだかおしっことは違うみたいだ。

「はあ、はあ……」

 息を切らしながら、パンツとズボンを履く。

 そして、

「あさみさん……」

 と、あさみさんの近くに歩み寄り、顔や手、さらに首から胸元に手を入れたりした。

 柔らかくて気持ちが良かったし、触っていると心が落ち着いた。

 ずっと触っていたかったけど、そういえばみんなを待たせてるんだった。

「……さよなら」

 ぼくはあさみさんの頬にキスをした。

 まだ身体には温もりが残っていた。

 当たり前だけど、あさみさんからはなんの反応もなかった。

 トイレから出ると、お母さんとノリユキのお母さんはまだ喋っていた。ぼくのことを忘れたように喋っていると前に思ったけど、本当にぼくのことを忘れているんじゃないか?と心配になってきた。

 ただ、ノリユキは起きていた。

 ノリユキはぼくの姿を見つけるなり、

「おせえよ! ウンコだろ!」

 と、でかい声で叫んだ。

「ウンコじゃねえーし!」

 と、ぼくもでかい声で返す。

 その声で、お母さんとノリユキのお母さんが勢いよくこちらを向く。

二人はようやく喋るのをやめた。

   *   *   *

 それから10年近くが経ち、当時のあさみさんと同じくらいの年になった。

 子供だったぼくも、すっかり大人の仲間入りを果たした。

 最近は便利な時代になり、スマートフォンのアプリで肉畜を探すこともできるようになった。

 ちなみに探す肉畜の条件は……、

 一、20代

 二、首を絞められるのが好きな人(あるいは窒息フェチの人)

 三、メイド服を着てくれる人

 四、裸足フェチに理解がある人

 ……言うまでもなく、あさみさんの最期の姿だ。

 なにかの本で読んだことがあるのだが、人は最初に性的興奮を覚えたものでその人の性癖が決まるらしい。

 女子大生、首絞め、メイドに裸足。

 どうやら、ぼくは一生、あさみさんから離れられないみたいだ。

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