【コミッション】女武者切腹秘話~四ノ章~<後編>【SS付き】 (Pixiv Fanbox)
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有償依頼で描かせて頂いた、切腹した女武者のイラストです。
まに様が書いたSSもつきます。是非とも一見ください。
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~~以下はSSです~~
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作者:まに
宵闇に染まる、三月家の居城である薄月城の中庭に、妖艶なる悪女の姿が映える。
彼女は自慢の黒髪を風になびかせつつ、美しくも意地の悪い笑みを浮かべていた。
「……良い姿であるなぁ」
目を細め、口をゆがめて、くつくつ笑い、言う。
諸悪の根源、小夜である。
普段であれば重い腰をそうは上げない彼女が今は、自らの足で中庭へと訪れてきている。格好は贅を凝らした着物であり動くことには向かないが、上機嫌な今の彼女にとっては些細な問題らしかった。
現に彼女は悠々と歩いている。
全ては中庭の中心に正座する二人の女性を、見下し、こき下ろし――その無様な最後を、己が目へしかと焼き付ける為なのだろう。
「……神波凪(かんなみ・なぎ)に、稲原政美(いなはら・まさみ)。今の姿、よう似合うておるぞ」
小夜の挑発に、二人は毅然として応じない。
褐色肌に短めなウェーブがかった黒髪の似合う、神波凪。
長い黒髪を一つに結った出で立ちの可憐な稲原政美。
二人は共に表情を崩さず、凜と前を見つめている。
「……ふ。その癪に障る態度。格好のせいか益々腹立たしい」
凪と政美が着ているものは、白無地の小袖と朝葱色の裃。
小袖の前合わせは、左前に着られている……つまり、武士が切腹の際に着用する死装束だ。
「だが、そうであるな、気分が良いとも、或いは言えるやも知れぬ……」
「なにせ貴様らの姿は、あの瑠璃の死に際の姿によく重なる」
二人の眉間が、同時に僅か、皺を寄せた。
「ふふ、気に食わぬ名か。そうであろう、お前らは今からその瑠璃が原因で死ぬのだからな」
高笑いと共に踵を返す小夜の背を、二人は睨み、心中で唇を噛み締めた。
凪と瑠璃が正座している場所は、正しく二人の死に場所として作られた切腹の座である。背後には白無地の屏風が立てられ、辺りは白い砂で覆われている。少し離して作られた命を絶つ為の座に二人が座る様子は、一目で彼女達の命が長くないことを示していた。
そしてこれもまた、正しく、二人は瑠璃の名に反応して平静を崩している。
「くく、やるせなかろう。貴様ら二人は千寿派にも私の派閥にも属さぬ中立の立ち位置だ。それがあの愚かな瑠璃のとばっちりを喰らい、命を落とすことになるのだからな」
小夜は扇子をぴしゃりと閉じたことが皮切りとなった。
政美が三方にのせられた腹切り刀に手をかけた。
瞬間辺りに緊張が走り、小夜を守ろうと女武者等が政美に刃を向ける。
「やめなさい!政美!」
政美より数才年上である凪が、声を張り上げ制止した。
憤怒に呼吸を荒げる政美を、小夜は冷たく見下ろしている。
「……そもそも、貴様らが生意気な反発をしなければこうはならなかったのだ。どうせ瑠璃や千寿が腹を切る際にもなんら動くことさえしなかった程度の忠誠。大人しく私の派閥に転がればよかったものを」
政美が刃を握る手に一層の力を込める。腹切り刀には柄がなく、刃の部分を紙も巻いていないため、政美の手からは血が滴っており、それが政美の怒りの強さを物語っているように見えた。
普段は比較的穏やかな性格をしている彼女からは考えられない取り乱し方に、小夜やそのしもべ達は逃れえぬ死の恐怖に気が触れた程度に考えていたことだろう。
だが、凪だけは政美の真意を理解していた。
だからこそ、背を向ける小夜を見届けてから、密かに目配せをして政美を落ち着かせる。
(……辛いでしょうけど、やめなさい)
政美はしぶしぶ腹切り刀を三方に置いて、元の位置に戻りながら、視線で凪に返事をした。
(でも……ここまで瑠璃を侮辱されては)
(今こそ耐えるのが、私達の仕事でしょう?)
* * *
――中立派などと、とんでもない。
それどころか二人の思想は完全に千寿派側であった。
神波凪は三月領南部、稲原政美は三月領西部に、それぞれ領地を持つ有力な国人領主の一族の出身で、三月家の重臣である。凪は国人領主の娘であり、政美は国人領主の叔母(先代の国人領主の妹)だ。
南国の血を引いている凪は、三月家の直轄軍で陸と海双方の合戦で指揮官として武功を挙げ、若くして三月家の名将として周辺の大名家から恐れられているほどの傑物である。技量もさることながら人望も厚い。現在は国境沿いの三月家直轄領で城代を務めると同時に、南部方面における三月家の水軍を含めた直轄軍の事実上の大将でもある。
一方、政美は女武者として腕が立つのもさることながら、文官としての才がある。若くして紛争で命を落とした自分の兄と、その心労で急死してしまった兄嫁の残した甥を支えようと部隊を除隊し、後見人となって混乱する実家を建て直した。その際の手腕を買われ、文官として改めて三月家に仕え、今は御蔵奉行として三月家の財を管理する立場の、これまた優秀な女性だ。甥からも当然母親のように慕われており、凪同様に人を惹き付けるものがある。
千寿・瑠璃親子からも信任が厚く、三月家の重要な役職に二人は就いている。
にも関わらず小夜が二人を即座に粛正しなかったのは、二人の声望の大きさもあったが、小夜派と千寿派の一連の対立において、一切積極的な動きを見せなかったからというのも大きい。
所謂静観、中立の構え。もしも千寿派であるというのならば在り得ない対応だ。だからこそ疑っていたものの、小夜派は二人が千寿派であることを確信できず、小夜派の中においてさえ、少なくない人間が敬意を抱いている二人に安易な手出しが出来なかった。
二人が中立の構えを取ったのには、当然理由がある。
何を隠そうその理由とは、瑠璃本人のたっての願いであった。
二人は、瑠璃と旧知の仲であった。
瑠璃が政長の側室になる前、女武者として政長の護衛隊に務めていた頃、凪は護衛隊の同僚であり、政美は後輩であった。苦楽を共にし、公的な関係のみならず、私人としても良好な関係を保っていた。
特に凪は密かに同性愛者であり、瑠璃と政美とは一時期恋人関係でもあった。
政美も姉御肌で面倒見の良い凪には良く懐いており、瑠璃に対しても敬意を抱いている。
当然二人は常に千寿派に属することを考えており、本来であれば今回の反乱においても、真っ先に小夜を討とうと千寿派に与したであろうことは言うまでもない。
だが、そんな二人に瑠璃は前々から頼んでいた。
どうか、千寿派とは距離を置くようにして欲しい。
厳密には、千寿派と小夜派のどちらにも属さず、中立を保っていて欲しいと、彼女は常々釘を刺してきていたのである。
今となっては、誰にも瑠璃の真意は分からない。
だが凪と政美の意見は概ね一致していて、瑠璃は遠からず起こる反乱のことを肌で感じていたのだろう、と。
瑠璃は度々、「もし何かがあれば千寿派に傾倒することなく、国の為民の為に混乱を抑える立場として尽力して欲しい」と言っていたので間違いないことだろう。
二人は瑠璃の願いを受け入れ、今日まで中立派として、事態の収拾に努めていたのだ。
その甲斐あって、ようやく千寿派の残党と小夜派の和議が成立した。
「さぁ……そろそろ始めようではないか」
――だが、小夜の宣告は無情に中庭を通り抜ける。
二人の唯一の誤算は、小夜の千寿派に対する憎悪の強さであった。
小夜本人が、自分の立場さえ鑑みず殆ど独断で千寿に組み成す者達の処刑に走ることになろうとは、さしもの二人も想定出来なかった。
和議を成立させた凪と瑠璃も、当然捕えられた。
だが、凪と政美は優秀な人材である。おいそれと殺すには惜しいとさしもの小夜も思ったのであろう。
小夜は捕えた二人に、自分の派閥に加わるよう勧誘した。
二人はそこで初めて、はっきり小夜を拒絶し、糾弾したのである。
どうせ、小夜派にならねば粛正される。
小夜派に傾倒するなど在り得ない。
ならば思いの丈をぶつけてやろう、と。
* * *
――そして全てを経て、今、二人は最後の時を迎えようとしていた。
方法は、切腹である。
「どちらからにする?ん?選ばせてやろう」
「……二人、同時に」
「殊勝であるな」
死に装束を身に纏う凪と政美に、最早選択肢などない。
せめて華々しく反抗して散るのもまた一興ではあったのだろうが、それもまた不可能であった。
和議が反故にされ、小夜の手中に囚われた自分達は無力な人質に他ならないのだ。
生き長らえれば必ず実家への足枷となろう。女武者から成り上がった二人には確固たる矜持があり、生き恥を晒すことは死よりも忌むべき事柄である。
何より、瑠璃の望みを叶えられなかった、これは償いでもある。
小夜への怒りを胸中に滾らせながら、彼女に対するせめてもの抵抗として、二人は潔く、諸肌を脱ぎ、その後、介錯人である女武者達の振り上げた刃の冷たさをうなじに感じながら、眼下の三方に載せられた腹切り刀を手に取った。
「……ふん」
小夜こそ鋭い眼で蔑むように見やったが、女武者達は真逆に息を呑んだ。
熟した女体でなければあり得ない、豊満な柔乳が露出する。
二人は共に小夜にも負けぬ美貌を持っているが、それに加えて柔乳は両手に溢れる大きさで、しかも肌艶がこの上なく良い。緊張で蒸れ、汗ばんで色の濃くなった乳肉の艶が呼吸に揺れる様は、たとえ同性であろうとも惹き付けられるものがある。
その上、幾ら小夜に仕えているとはいえ、彼女達もまた、女武者なのだ。
気高く生き抜いた二人の美人が柔腹を自ら裂いて果てる様を見られるというのだから、自然と昂ぶらないわけにはいかなかった。
彼女達の目には、意を決し、刃を自らの腹へと持っていく二人の熟した肢体から濃密な色香が立ち込めるようにさえ見えた。
――そして当の二人もまた、女武者達の見る通りに色情の昂ぶりを感じていた。
勿論心は痛んでいる。胸が苦しみに締め付けられ、瑠璃の頼みを果たしきれなかった自分達の不甲斐無さが重くのしかかり、小夜への憎悪と、逃れえぬ死への怖れに滲む汗が彼女達の艶めくうなじの色っぽさに一役買っているには違いない。
しかしそれでも、いざ命を絶つ状況になると、無意識に身体が高揚を覚えるのも事実であった。
二人が異常なのではない。戦う女として、いやそもそも雌として、破滅的な誘惑に心昂ぶるのは当然のことだ。
生を終えることに対する防衛反応か、二人は既に身体をじんわりと痺れさせ始めており、訪れる快感を想像して身構えている。
凪の、政美の、ほど良く肉付きの良い三十路の肉体が火照って熟れる。
はだけた上半身はすっかり汗ばみ、桃色の湯気が見えるよう。
引き締まった艶やかな太腿の内では、蒸れた秘部が溢れる蜜に蕩け始めていた。
死ぬ、腹を裂き、逝く、確固たる事実、予期される苦痛、想像するだけで身が悶えるようであり、気持ちは逸るばかりだ。
二人は瑠璃への贖罪の念を抱きながら、腹切り刀を構えた。
女武者達の喉がなる。
それを合図にするかのように、二人は殆ど同時に、己の腹部に刃の先端を当てた。
凪は、背筋に甘い痺れを感じた。
政美の孕み頃な子宮が切なく疼く。
自分達の熱さとはまるで反対の、冷たい、刃。
その残酷なまでの無機質さが、先端部の鋭利さと共に、彼女達の腹部に苦痛という名の快楽への渇望を与えた。
二人の手が止まる。
怖気づいたのではない。
人生でたった一度の切腹へと向かう、それは溜める行為であった。
真に美味なる食物を食べる際に思わずゆっくり口へと運んでしまうのと同じく、刃の先で腹部を凹ませたまま止まってしまう。
二人は、吐息を震わせる。
潤った唇が、覚悟に閉じられた。
すっかり熟れて桃色の差した腹部へ、二人の手は同時に刃を突き刺した。
中庭に、筆舌に尽くしがたい雌の苦悶が二つ連なった。
積もり積もった感情の発散と共に突き刺された刃は、撫で回したくなるような美女の柔腹をいとも容易く貫き、沈んでいく。
刃は二人の薄皮を突き破り、難なく脂肪層へと到達して、尚も進み、やがては内臓にその切っ先を触れさせた。
白刃の煌きは貫いた傷口を舐めるかのように侵入していき、滑らかに埋もれていくほど腹部への圧迫感と劈くように鮮烈な痛み、腹の底を苛む鈍痛を与えてくる。
壮絶な苦痛に二人は冷や汗をかく。
凪は生理的反射から前屈みに蹲り、顔を伏せた。
政美は反対に背を逸らし、刃の突き刺さった腹部を曝け出す。
小夜はその痛々しさに眉を潜めたが、その反応は的を射ているとも、的を外しているとも言えるのが興味深い。
腹部に異物を刺した痛みは、確かに壮絶な代物である。
しかし、二人は同時にそれ以上の強烈な快感を覚えてもいたのだ。
快楽神経が焼き切れるような気持ちよさであった。
二人の熟れきった肉体に、熱した鉄を押し付けられているような痛みがそのまま快感となって流れてくる。
力を込めて刃を入れていくほど、同時に信じがたいほどの恍惚が全身を痺れていくのだ。天国に上るような、というよりは、寧ろ底無し沼に身体を浸していくかのような。とびっきり濃縮された快感という快感が、傷口から全身へと広がっていく。
刃を腹部に捻じ込み、二人は苦悶に唸っていた。
そのまま声色に艶を灯らせたのは、二人とも殆ど同時であった。
蹲って切腹に励む凪は、丸まった背中を痙攣させながら喘いだ。汗ばむうなじを紅潮させて面を伏せる様子はまるで、秘部に性玩具を仕込まれているかのように淫猥だ。
現に凪の秘部は、腹部で刃を受け止めていくほど、蜜を溢れさせて何度も締まっている。
晒した豊乳に実った乳首は弄繰り回したくなるような存在感で硬く勃っていた。
全身に汗を滴らせ、俯き、喘ぐ、女肉の塊。
まるで性欲を滾らせる為の見世物にさえ思えるほど、快感に身悶える女性というものは艶やかである。特に凪は途方もない美女であり、そんな彼女が感じている様子を必死に噛み殺すみたいにして喘ぐ様子は、見る者の興奮を煽ってやまない。
無論、政美にしても、そうだ。
政美は凪とは真逆に、面を上げて、身を振り乱して切腹の苦痛快楽に踊っていた。
呻きとも喘ぎとも取れる甘い声を漏らしながら、乳を振り乱して、刃の沈んでいる美しい腹部を曝け出している。まるで男に秘部を突かれているかのように、政美の切腹姿は激しい。
命を落とす直前だからこそ、子宮が受精を意識して降りてくる。
青ざめ、脂汗まで滲ませる二人の切腹姿が、しかし極端に雌の芳香を振り撒いているのは倒錯的な魅力があるといえた。
品行方正な妙齢の美女が、蓄えた豊満な乳肉を震わせ、極上の肉体で快感を貪っている。
女武者達は、自分の秘部まで濡れていることに気付いた。
他では見られない淫靡な処刑を、固唾を呑んでただ見守る。
「ああっ……」
「ふぐっ……」
気持ち良い。
最早、凪も政美も考えていることは同じであった。
このひと時ばかりは、身体が快感に狂っている。
快楽に火照りきった豊乳を、柔腹を、むっちりした下半身を、彼女達自身が持て余す。
――政美が、片手で己の乳肉を鷲掴みにしたのが最初だった。
片手に有り余るなまちちが、掻き毟るような乳揉みに豊かに形を変えていく。
凪は、自分の袴に手を忍ばせて秘部を触った。自分の想像より遥かにぐずぐずと蕩けた秘部の感触に、触れただけで背筋がぞくついた。後はもう、我を忘れて本能のまま、マンズリをコくことに囚われた。
煮詰めきった雌のフェロモンを振り撒く、二人の姿はいやらしさの極みであった。
見ているだけで、濃い女の匂いが伝わってくる。身体の熱が、むっちりもちもちの柔逆さが伝わってくる。
女武者達の袴の中で、秘部がどうしようもなく疼いていた。
二人はそんなことも露知らず、最も快感を覚えられる要素を動かす。
腹部に刺さった刃である。
既に腹からは血が溢れているが、こんな程度で満足出来ようはずもなかった。
最も観衆の目を引いたのは、政美の行動であった。
腹部を曝け出したまま、刃を横へと引いたのである。
美しい肌色に鮮血の一閃が通り、内臓が甘く零れ出る。
腹を切る政美の表情は白目を剥いていながら、天を仰ぎ見るように恍惚を浮かべている。
政美の身体が痙攣する度に、内臓をぷるぷるさせながら乳の揺れるのがどこまでも色っぽかった。
(ああっ……こんなに、気持ち良い、なんてっ――)
政美は今際の際に、極楽を感じながら思った。
己の腹部を刃が横一文字に裂いていく恍惚は、死に逝く彼女でなければ味わえない代物である。全身が苦痛に悶える中での切腹は、例えば座り仕事の連続で悶々とした身体を思いっきり掻き乱す行為に酷似した欲求の解放があり、苦痛が大きいほど感じる恍惚もまた絶大であった。
切腹の座で、政美は痙攣という名の踊りに耽る。
すっかり横一文字に腹を切ると、政美は己の乳肉を揉みしだきながら最大限の恍惚を味わっているらしかった。
その様子に、小夜でさえも自分の口内が唾液を分泌していくのを抑えられないでいた。
――そんな時、皆は凪に視線を持っていかれることとなる。
「んっ――ああっ――♡」
蹲っていた凪が、上体をあげたのである。
その様子は悶々としており、まるで長く被っていて蒸し暑かった掛け布団を剥いだかのよう。
見ればその腹部は既に政美と同じく、一閃、裂かれており、血を垂れ流している。
政美と違うのは、彼女が更に刃を動かしたことにあった。
一度腹部から刀を抜き、持ち替え、そして今度は刀を鳩尾に突き刺して下に切り始めた。
――凪の腹は、彼女の手により十字へと裂かれていく。
見惚れる。
武士の切腹として目指すべき姿である十文字腹を成す凪に、誰もが視線を釘付けにされる。
凪はうっとりした表情に脂汗を浮かばせながら、それでもついには十文字腹を成し遂げた。
内臓が零れ、血の溜りが出来る。
凪はそんな最中に何度もビクついて、その場で勢い良く潮を噴いた。
それに合わせる様にして、政美は小水を漏らしている。
いずれも汁だくの、母性に溢れた完熟の果実が二つ、その腹部から真紅の実をはみださせながら、身を震わせて快感に喘ぐ。
二人はそして、絶頂した。
全身を貫く今生で最も強烈な快感に、背筋をびんと仰け反らせて――
「……やれ」
――同時に、小夜の不愉快そうな令がかかった。
二人の介錯人が、凪と政美の首へと刃を振り下ろす。
鈍い音。
二人の首が宙を舞い、丁度前へと、落ちた。
残された身体が、まるでなくした首を求めるかのように前へと倒れこむ。
どさり、力なく、前のめりにつっぷして。
――びくっ♡びくくっ♡
思考を失った二つの女体が、不規則な痙攣に暴れる。
一方、落ちた頭は対極的に動くことはない。
いやらしさを振り撒いて震える首なし死体のすぐ前で、凪と政美は互いに向きあい見詰め合っていた。
その目は精気なく虚ろであるが、互いを求め合っているように見えた――。
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エピローグ
雨音の気持ちが如何に逸ろうとも、覆せない現実がある。
千姫救出の為に雨音達護衛隊の残党は城下町へと馬を走らせたが、小夜派の執拗な追撃により、残った部隊も散り散りになり、敗戦からさらに多くの犠牲を出すことになった。また、追撃隊の目をかいくぐる為に遠回りや身を隠すようにして動かねばならず、辿り着くにはどうしても日数を要することとなった。
国内に点在する千寿派の隠れ家に馬を残し、生き残った幾人かの部下を連れ、雨音は千姫の下へ向かった。
変装は上々。一般の民に紛れた雨音に気付く者はいないだろう。
実際、雨音は無事に目的地へと辿り着く。
「……そんな」
だが、辿り着いた薄月城の城下町……街道に近い、城下町の外れにある人だかりが出来ている刑場で、雨音はその場に崩れ落ちた。
そこにあったのは、磔にされた千姫・瑠璃・亜矢の亡骸であった。
そして、護衛隊長である夏目とその妹の春香、雨音の部下である月恵と紅葉……さらに、源川紫乃&源川若菜母娘、神波凪、稲原政美など中立派の国人領主とその親類まで、刑場で晒し首か磔にされた姿となった。
雨音達は間に合わず、千姫達は既にこの世を去った後だった。
小汚い馬小屋である。
数ある千寿派の隠れ家は敵の目を欺く為にこのような場所が多い。
連絡手段に乏しい戦国の世では有事があった際に集合出来る場所として重宝される。
「……っ竹様、よくぞご無事でっ……!」
打ちひしがれていた雨音は隠れ家の戸が開くと同時に体に緊張を走らせたが、現れた人物の顔を見て心底喜んだ。
竹とその臣下達も、雨音達を見て表情に安堵を浮かべる。
「うう、雨音殿、良かったっ。こんなにぼろぼろになってっ……」
「何を仰るのですかっ、竹様こそっ」
「私自身は大したことないのっ、でも、でも、本当に良かったっ……!」
周りの目を気にせず抱き合った二人は、共に涙を流して喜んだ。
戦乱の地獄で唯一生き残った最愛の人の無事を、その時ばかりは全てを忘れて噛み締めた。
「……必ずや、小夜の首を千姫様達の墓前に捧げましょう」
数刻後。
毅然と言い切る雨音の表情に、迷いは一切なかった。
雨音は、竹らに全ての状況を伝えられた。
千寿派は貶められ、次々と殺されている。竹の母である翡翠と、付き人の雫も、竹の目の前で命を絶った。
「目的を果たすまで、このことは他言しないようにしましょう。なんとしてでも生き残り、小夜の命を奪ってみせるのです」
周りの臣下達は、迷いなく頷く。
竹もその目に信念を宿し、同じく頷いた。
「そして目的を果たしたのならば……」
「潔く全員自害し、共に、千姫様達に冥府で仕えましょう」
誰一人として、首を横に振る者はいない。
千姫の為ならば、命など一切惜しくはない。
彼女達は正しく決死の覚悟で、主君の仇討ちの盟約を交わした――。
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