ぬいぐるみ留美ちゃんの受難(ぬいぐるみ化)【R-18】 (Pixiv Fanbox)
Content
pixiv側へ掲載した「未来からの贈り物」の続き話です。
紗彩ちゃんパートで多少のR要素を含みますが、全体を通してはR要素薄めです。
-------------------------------------------------------------------------------------------
「留美ちゃーん、愛しの留美ちゃーん」
(むぐっ……紗彩ちゃん、いい加減にして……)
ぬいぐるみになってしまい、お友達の紗彩ちゃんにお持ち帰りされたあの日以来。
私は毎日、紗彩ちゃんの股間に顔を埋める事を日課にしていた。
……いえ、正確には無理やり日課にされていた。
今の私は完全にぬいぐるみでしかない。
元人間の女の子で意思もしっかりと残っている。
でもそんな事は関係ない、私以外の者から見れば只のぬいぐるみとしか映らないだろう。
「留美ちゃんどおー? あたしの股間の匂いー」
(うぇっ……も、もう、分かったから……)
「ああ、本物の留美ちゃんにもこうして股間の匂いを嗅がせたいー」
(いや……本物の私、毎日こうして無理やり匂い嗅がされてる……うぷっ!)
ぬいぐるみだから手足があっても只の飾り、手も足も出ない。
微動だに動く程度はできるみたいだけど、今の私に抵抗できる程の力なんてない。
座っている時に倒れる事ができる、動けてもその程度。
紗彩ちゃんに動かされている以上、今の私は彼女に成されるがまま。
人間の形をしていても、何もできなければ意味がない。
斜め上の非日常を望んでいたけれど、こんなの私が描いた非日常とは程遠い。
文字通り、只のぬいぐるみ。嫌でも実感せざるをえない。
「留美ちゃーん」
(も、もうやめて……窒息しちゃう)
お友達の紗彩ちゃん、彼女はどうやらそっちの気みたい。
私の事、日頃からこういう目で見ていたようで……。
毎日これでもか、と言うくらい股間を私の顔へ押し付けてくる。
いくらパンツ越しと言えども湿り具合も凄く、私の顔は愛液を吸って乾いての繰り返し。
きっと股間の臭いも、顔に染みついてしまっているに違いない。
「留美ちゃん、一体何処行っちゃったんだろうー。あれからずっと行方不明だものねー」
(え……もしかして紗彩ちゃん、心配してくれているの?)
こういう目でしか見てないと思ってたけど……きちんとお友達として、心配もしてくれてたみたい。
何だか少し心がホッとするね……。
「留美ちゃんが居ないと、もう百合百合できないじゃなーい。あたしの生活が潤わないよー」
(あ、やっぱりそっちの意味だったんだ……)
紗彩ちゃんはこういう子なんだ……うん、知ってた。
もうぬいぐるみとして長く一緒に居るんだもの、分かってたよ……。
「でも、留美ちゃんが居なくなってからこのぬいぐるみを拾ったんだよねー」
(え、まさか紗彩ちゃん、私の事に気付いた!?)
気付いてほしい気持ちは正直ある。
本物の私はここに居るの、このまま誰にも発見されず行方不明扱いだなんて。
でも、紗彩ちゃんに気付かれたらそれはそれで今までされた事もあるし、恥ずかしい思いもあって……。
「このぬいぐるみってもしかして、留美ちゃんなのー?」
(わっ! き、気付いてもらえた!?)
「なーんて、そんな事あるわけないよねー。留美ちゃんの言うような非日常なんて、そんな簡単に起こらないよねー」
……気付いてもらえなかった。
「さあて学校へ行くよー。留美ちゃんも1日宜しくねー」
学校へ行く時間、私の唯一の安心できる時間。
紗彩ちゃんの家に居る間の私は、ほぼ股間のお世話係り……。
ならば紗彩ちゃんのスカートのポケットに入れられて、学校へ連れて行ってもらえる方が断然マシだ。
(さすがにもうこの匂いも慣れたかな……)
紗彩ちゃん、ぬいぐるみの私と一緒だからなのかな。
彼女の股間は常に湿っているようで、ポケットに居るといつでもエッチな匂いを感じ取れる。
スカートの位置からでも彼女の胸の鼓動が聞こえて、何だか常に興奮しているのが伺える。
こんなに私の事を想ってくれるのって、嬉しいのやら少し怖いのやら……。
「わんわん!」
「ひゃあー! な、何ですかー!?」
(え、何? 犬かな?)
どうやら紗彩ちゃん、通り掛かりの犬に吠えられたみたい。
紗彩ちゃんはビクッと驚いて一瞬バランスを崩し、体を斜めにしてしまったようだ。
『ポトッ』
「ビックリしたー、犬に吠えられる事なんてあまりないのにー」
そして紗彩ちゃんは驚いた後、行ってしまった……私を落とした事に気付かずに。
(嘘、紗彩ちゃん、待って。私の事、落としてるよ……お願い、気付いて)
正直、紗彩ちゃんと一緒の生活はあまり良いと言えたものではない。
毎日窒息しそうな程股間に押し付けられて、まるで性処理人形のように扱われて。
それでも……今の私はもう只のぬいぐるみ、自分1人では何もできない。
お友達と一緒に居られる安心感、そういう気持ちもあったと思う。
(やだ、やだ……私を置いていかないで。1人にしないで……)
私が心で叫ぶも虚しく、紗彩ちゃんは遠ざかって行ってしまう。
いくら紗彩ちゃんが私の事を溺愛していても、ぬいぐるみの私の声が届く事はない……。
(あれ?)
急にひょい、と体を持ち上げられた。
もしかして紗彩ちゃんが気付いて拾ってくれた!?
「くぅーん♪」
(わわっ、さっきの犬だ!?)
どうやら私、犬にくわえられてしまったようで……。
犬は私をくわえたまま、何処かへ向かって行く。
(紗彩ちゃん、助けてーーー!)
私の心の叫びも無意味に終わり、犬にくわえられた私はそのまま連れ去られてしまった……。
(うぅっ……早く解放してもらえないかなぁ)
犬にくわえられて早数十分程。
あまり時間は経ってないと思うけど、身動きの取れない私にはとても長い時間に感じた。
『ポトッ』
(あ、開放してもらえた)
犬は近所の空き地に来たようで、そこで私を口から放してくれた。
「くぅーん♪ ペロペロ」
(ひいぃ!?)
犬に顔をペロペロされてる……慣れない舌触りが気持ち悪い。
もしかしてこの犬、私の顔に染み付いた紗彩ちゃんの匂いに反応している!?
動物って凄く鼻が良いって言うものね!?
(や、私、食べ物じゃないから……)
「ペロペロ」
犬は無我夢中で私の顔を舐め回してくる。
(ただ舐めてるだけ……なのかな。別に食べようとしているわけじゃないみたい?)
「ペロペロペロ」
(でも気持ち悪いものは気持ち悪いものー! は、早く私を開放して……)
もし普通のぬいぐるみに魂があったとしたら。
ぬいぐるみはいつもこんな悲惨な目に遭わされているのだろうか……。
そういえば小さい頃の私、近所の犬にぬいぐるみをペロペロ舐めさせてた事があったっけ。
もしかして私、小さい頃ぬいぐるみへやった事のバチがあたったのかな……。
「わんわんっ!」
(え、何?)
「カアーカアー!」
(今度は何ー!?)
いつの間にか犬の近くに現れた野良カラス。
(も、もしかしてこれって……いや、もしかしなくても)
「カアー!」
『パクッ』
(や、やっぱりぃー!?)
私は何1つ抵抗すらできないまま、無惨にもカラスにくわえられていた……。
(ひいぃ! もう勘弁してー!)
カラスは私をくわえたまま、大空へと舞い上がっていった。
(私、今度は何処へ連れていかれるんだろ……紗彩ちゃん、会いたいよぉ)
カラスの羽音が耳へ響く中、私は紗彩ちゃんの事を考えていた。
あんな変なお友達でも……居なくなるとやっぱり寂しい。
いざ離れ離れになってしまうと心細いし、今の状態の私は紗彩ちゃんに支えられていたんだと実感した。
自分1人じゃ何もできない、移動すらもままならず無力。
ああ、今の私って本当にもう只のぬいぐるみなんだ……。
『ゴォー! ビュウー!』
「カアッ!?」
(へ、あれ、私……)
突然の強風が、私をくわえているカラスを襲った。
カラスは強風に煽られてしまい、思わず口をパカッと開けてしまったようだ……。
(いやあああ! 助けてええええ!)
私の心の叫びも虚しく、ぬいぐるみの私は上空から地面へ落ちていった……。
『ポトリ』
(あー怖かった……あれ、痛くない)
空高くから地面へと落とされた私。
こんな状況、普通だったら大怪我どころではないかもしれない。
落ちる時は怖かったけど、でも落ちてから体は特に何ともなかった。
あ、そっか、今の私ぬいぐるみだものね。
軽いし中には綿が詰まっているだろうし、落ちても痛みは感じないんだね。
ぬいぐるみで良かった、ぬいぐるみだから怪我もしないで済んだ。
(って、良くなーい!)
思わず心で叫んでしまった私。
元はと言えば、ぬいぐるみにならなければこんな事にはならなかった。
今頃普通に学校へ通って、普通に紗彩ちゃんと過ごして、普通の人間の女の子として……。
私、本当に人間の女の子だったのかな。
間違いなくそうなんだろうけど、こうもずっとぬいぐるみでいると本当にそうだったのか自信無くしちゃう。
まるで人間の女の子だった頃の記憶が、全部夢の出来事だったんじゃないかって。
私は人間の女の子に憧れる只のぬいぐるみ、元々そうだったんじゃないかなって……。
「あー、かわいいぬいぐるみがおちてるー!」
(え、次は何?)
「だれかのおとしもの? なのかなー?」
きちんとした言葉が聞こえたから、今度は動物じゃなくて人間みたい。
どうやら地面に落ちた私を誰かが拾ったようだ。
『じーっ』
(うっ……目が合ってる)
私の顔を興味津々に見つめてくる顔は、とても幼い女の子だった。
「わーっかーわいい! このぬいぐるみさん、ニコッとしてる!」
(え、私、ニコッとしてるの?)
「かわいいえがおだー」
私自身、そんな自覚なんてなかった。
ぬいぐるみ生活も長く心はすっかり沈んでしまったし、とても笑顔になれる気なんて起こらない。
でも私の顔を覗き込んできた女の子は、私の表情を可愛い笑顔と言ってくれた。
もしかして私、ぬいぐるみになってからずっと笑顔のままだったの?
「おとしたひと、いないのかなー? どうしよう」
(紗彩ちゃん、近くに居たりしないかな……うん、無理よね。今の時間は学校だものね)
私の事を落としたかどうか、その事に気付いているのかすらも分からない。
「まっ、いいよね! もってかえっちゃおー」
(え、またお持ち帰りされちゃうの!?)
私は面識も無い幼い女の子に拾われ、そのままお持ち帰りされてしまった……。
「きょうからあたらしいおともだちがくわわるよ!」
女の子は部屋へ入ると、満面の笑みで私を机の上のスペースに置いた。
そこには同じくらいのサイズのぬいぐるみが沢山。
良く見ると全部女の子のぬいぐるみで、皆ニッコリと笑顔を浮かべていた。
(皆笑ってる……何だか少し怖い。まさか、私みたいに魂が入ってるなんて事……ない、よね?)
幼い子が女の子のぬいぐるみを沢山買ってもらって集める、そんな事は普通にありがちな事。
別に何もおかしくないよね? おかしくなんか……。
(そっか、私……あの女の子にすれば、ここにあるぬいぐるみのうちの1つにすぎないんだね)
私はただのぬいぐるみ。
もう人間の女の子ですらない……中学生の女の子、留美はもうこの世に存在しないんだ。
「おトイレいってこよーっと!」
女の子は一旦部屋を出て行った。
すると部屋は途端に怖いくらい静まり返る。
(何だか怖い……周りに私くらいのぬいぐるみがいっぱい。見られている気さえする……)
私が特別なだけで、普通のぬいぐるみに魂なんてありっこない。
だから見られていると思うのも、きっと私の気のせい。
私が不安な気持ちで怯えているから、だから視線が突き刺さる気がするのだと思う。
落ち着かなくちゃ、リラックスして……落ち着かなくちゃ。
(あのー……)
(え、だ、誰!?)
(驚いちゃった? ごめんね。あなた、新入りさん?)
(ぬいぐるみが喋ってる!? 喋ってると言うか私に話し掛けてきてる!?)
(それはお互い様だよね?)
私の近くに置いてあるぬいぐるみ。
ニコッとした笑顔が可愛らしく、ひらひらフリルのお洋服を着たお人形さんみたいなぬいぐるみ。
そんなぬいぐるみが、笑顔のまま口元を動かさず私に話し掛けてきてる。
(ま、まあ確かに……)
(あなたもぬいぐるみでしょ?)
(……う、うん、そうなの。私はただの……ぬいぐるみ)
そう、私はぬいぐるみ。
周りに置かれているこの子達と同じ。
布と綿で作られた、女の子の形をしているだけの……ぬいぐるみ。
(もしかしてあなた、人間だった?)
(え!? ど、どうして分かったの!?)
(だって、何だか少し様子がおかしいんだもの)
(分かっちゃうものなの?)
(周りと少しズレていれば気付いちゃうものかな。そうね、証拠は今のやり取りね)
まさかぬいぐるみに正体を見破られるだなんて……内心、かなりビックリした。
いっそもうぬいぐるみと思い込んだ方が楽、人間の時の記憶なんて忘れた方が……と思っていた矢先の事だった。
(まさか、あなたも元人間?)
(私は正真正銘、元々のぬいぐるみよ。勿論、ここに居る他の子達も全員ね)
(皆、生きてるの?)
(そうよ、普通の人間はぬいぐるみに魂がある事を知らないだけ。皆、1体1体きちんと命があるのよ)
(そうだったんだ……驚いた)
(あなたが人間だったならば無理はないわね。でも、今のあなたなら信じられるでしょ?)
(うん、信じられる。だって、私もぬいぐるみなのに生きてるんだもの)
本当に驚いた、まさかぬいぐるみに魂があっただなんて。
(なーんて言うと思った?)
(え?)
(ぬいぐるみに魂なんてあるわけないでしょ?)
(え、え?)
急にぬいぐるみの言う事が一転して、私は何が何だか分からなかった。
(私達、皆あなたと同じ元人間の女の子。あの子に拾われてここに監禁されてるの)
(監禁されてるの!?)
(だから私達ね、新しい子が来るのを待ってたんだよ。あなたに身代りになってもらえれば、私達はここから逃げられる。人間にだって戻れる)
(え、ちょっと待って。何言ってるのかわけが分からない)
(言葉通りよ。あなたを踏み台にして私達は人間に戻るの。ここにあなたを置いて、ね)
ぬいぐるみ達は皆ニコッと満面の笑みを浮かべている。
でも私にはその笑顔がとても怖く感じた。
(今日からはあなたがここに監禁される番よ)
いや、やめて、そんなの嘘よ……ねえ、嘘だと言って。
「だいじょーぶ?」
(えっ……あれ?)
気が付くと、さっきの幼い女の子が私の顔を覗き込んでいた。
女の子の部屋には鏡があり、ちょうど私の顔は鏡に映り込んでいる。
鏡に映った私の顔は、ニコッと笑顔を浮かべていた。
なのに、何で? この女の子は何で私にそう言うの?
「ぬいぐるみさん、なんだかげんきがないようなきがした。きのせいだといいんだけど」
(この子……もしかして)
ぬいぐるみの気持ちが分かる?
子供って時に不思議な力を感じたり発揮したりする事がある、そういう話を時々聞いたりする。
もしかしてこういうのもその類なのかな?
「いやなゆめでもみたの?」
(え……さっきの、夢だったの?)
ぬいぐるみ達が私を身代りにして踏み台にすると言っていた。
でも周りのぬいぐるみからは視線を感じる気はするものの、生気は感じない。
多分、視線を感じるのは私の気のせいなのだと思う。
やっぱりさっきの出来事は悪夢だった?
「ぬいぐるみさん、だいじょーぶだよ。わたしがついてるからね」
(あ……気持ちいい)
女の子は小さな手の上に私を乗せると、胸元でギュッとしてくれた。
もうこの女の子と一緒でもいい。
1人で寂しい思いをするくらいならば、私を大事にしてくれるこの子と一緒の方がいい。
「ぬいぐるみさん、おそとにおちてたんだよね。わたしがきれいきれいしてあげるね」
その後、私は女の子に浴室へ連れてこられた。
女の子はそこで私の事を丁寧に綺麗に洗ってくれた。
もう糸も解れちゃって綿が出掛かってる部分もあるけど、女の子はその後もボロボロの私を大事にしてくれた。
ぬいぐるみでも幸せならばそれでいいのかもしれない。
そんな生活がずっと続くかと思ってた、ある日の事……。
「きょうもいっしょにおでかけしようねー」
今日は陽射しが気持ちいい。
ぬいぐるみだと沢山太陽の光を吸って温かくなれるから、晴れの日は気分も良くなる。
名前も知らないこの子は、良く私の事を肩掛けお出掛けバッグに入れてくれた。
お出掛けバッグから顔を覗かせてのお散歩。
これがとても気持ち良くて、私の楽しみのうちになっていた。
「留美!?」
「おねーちゃん、どーしたの?」
いつも通りこの子とお散歩をしていると、突然誰かが私の名前を呼んだからビックリした。
「あ、ごめんなさい。あなたのそのぬいぐるみ、かわいいね」
「えへへー、かわいいでしょー」
「何だかあまりにも留美にそっくりだから、ビックリしちゃった」
何だかとても聞き覚えのある声……え、まさか。
(瑠璃!?)
私には2つ年下の妹が居る。
小学6年生の瑠璃は、私の可愛い自慢の妹。
まさかこんな所で出会えるだなんて……。
「るみちゃん? おねーちゃんのしりあいさん?」
「うん、あたしのお姉ちゃん。しばらく前から行方不明になっててね、毎日心配で捜してるんだけど……」
「そうなんだー? たいへんだねー、みつかるといいね」
「うん、ありがとう。留美、今頃どうしてるのかな」
瑠璃……ずっと心配してくれてたんだ。
「ねえねえ、おねーちゃんはおなまえ、なんていうの?」
「あたし、瑠璃だよ」
「るりちゃん? るみちゃんにるりちゃん……」
女の子は何かを考えているようで、その後……。
「ねえねえるりちゃん! このぬいぐるみ、るりちゃんにあげる!」
「え、これ、あなたの大事なぬいぐるみじゃないの?」
「さがしているるみちゃんにそっくりなんでしょー? このぬいぐるみでげんきだして!」
「で、でもー……」
「いいからいいから!」
女の子なりの気遣いのようで、女の子は強引に私を瑠璃に押し付けた。
「じゃあね、るりちゃん! おねーちゃん、みつかるといいね!」
「あ、うん、ばいばい」
あの子……あんなに私の事、大事にしていたのに。
妹の元には戻れたけど、でもこれじゃああの子は……。
ううん、あの子ならきっと大丈夫だよね?
だって部屋では沢山のぬいぐるみに囲まれているし、きっと私が居なくても寂しくないよね?
でも……私、もうただのぬいぐるみでしかないもん。
今更こんな姿で妹の元に戻れたって……。
「お姉ちゃん、捜したよ。大変だったね」
(え、瑠璃? 一体何を言って)
「留美お姉ちゃん、なんだよね?」
あ、そうか、分かった。きっとこれも夢なんだ。
もう私ったら。一体何処から夢を見ていたのだろう。
「お姉ちゃん? 大丈夫? 生きてる、よね?」
(これは夢だ、夢なんだ……)
「お姉ちゃん、もしかして夢だと思ってる? これ、現実なんだよ」
(え、夢じゃない……の? じゃあ何で? どうして瑠璃は私が留美だって分かるの!?)
「ぬいぐるみのお姉ちゃんはずっと笑ってる。でもあたしには、お姉ちゃんの中にある本当の表情……見えるよ」
(瑠璃……? それ、本当なの?)
「だからお姉ちゃんが大体何を思ってるのかも分かる。だってあたし達、姉妹だもの」
(え、何……つまりどういう事?)
「姉妹の不思議な力なのかな、それとも姉妹の強い絆、なのかな」
瑠璃、本当に私の事が分かるんだ。
(瑠璃、瑠璃……会いたかった! ずっと会いたかったよ!)
「お姉ちゃん、あたし、本当に心配だった。ずっとずっとお姉ちゃんの事、考えてた」
(ありがとう瑠璃、心配してもらえて嬉しい)
「でもお姉ちゃん、何でぬいぐるみになっちゃったんだろう」
(1つ心当たりはあるけれど……普通こんな事って)
「きっと変化球のような非日常を求めてたから、神様がお姉ちゃんに与えてくれたのかな」
(私はここまでの変化球は求めてない……)
うん、ぬいぐるみになるだなんて想像も付かなかったもの……。
「お姉ちゃん、ちょっとスカートの中、見てもいい?」
(え、何でさ!? ちょ、やめ)
「あ、イチゴ柄のパンツだ。やっぱり間違いなく本物の留美お姉ちゃんなんだ!」
(……こんな部分を決定打にされるのも何か複雑)
パンツの柄で本物認定されるだなんて……。
「お姉ちゃん、これからどうしよっか。元に戻るなら、自分自身で運命を変えるしかないのかも」
(運命を変える……?)
「例えば過去の自分へ警告をするとか。そうすればお姉ちゃん、未来が変わって元の姿に戻れるかな」
(過去の自分へ警告……? あ、そういえばあの時!)
私の脳裏にぬいぐるみになる以前の出来事が過った。
そういえば私、確かに警告を受けてた……これが未来の私なんだって。
「さ、お姉ちゃんはどうする? 過去の自分を信じてみる? それともこのままで居る?」
(でも運命って簡単に変えられるものなのかな?)
「それはどうだろう、お姉ちゃんの頑張り次第かも。ま、あたしはお姉ちゃんがこのままでもいいよ。可愛いもの♪」
(……私の存在って一体)
「冗談よ、冗談。せっかく街中でお姉ちゃんを見つけて、こうして女の子に接触して上手く戻してもらう事にも成功したんだもの」
瑠璃、もしかして……わざと私を返してもらうように誘導したの?
「さ、過去へ行ってらっしゃい。後はお姉ちゃん次第に掛かってるんだからね。元に戻れなかったら許さないんだから」
(え、行ってらっしゃいって一体どうやって過去へ)
その直後の事、私の体は光を放ち……その場から消えてしまった。
「ま、こうは言ったものの……確定運命、だものね。お姉ちゃんはきっと、ずっとこのまま……」
未来からの贈り物:冒頭へ続く(?)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9430089