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『選手全員の足の匂いを嗅げ』


それが影山の提案だった。


サッカーのコートは広く、試合中もっとも酷使するのは足。


そんな選手の足に、謝罪と敬意を示させるためだと影山は言った。


勝てる可能性が皆無だった男のチームに勝ち、テンションの上がった女子選手達は爆笑しながら影山の提案に賛成し、俺は順に嗅がされることとなったのだ。


うつ伏せの状態で背中には佐々木が座って床に抑えながら俺の口を両手で塞ぐと、そのまま俺の体を反らせるようにグッと持ち上げた。


佐々木の手で支えられているため、その体勢を維持するのは問題ないが、背筋を鍛えるようなキツい姿勢で息がしにくく苦しい。


口で呼吸ができないため、自然と鼻息が荒くなってしまう。


なんでこんなことになってしまったのか…



俺は怪我のせいで選手になるのを諦めざるえなくなったが、それでもサッカーが好きだったからホぺイロとして選手達の補佐をしている。


生憎女子チームの所属にはなったものの、毎日好きなサッカーに携わることだできる充実した日々を送り、選手達の活躍は自分のことのように嬉しく感じる反面、心のどこかで女子のくせに自分にはできないことができてる選手達に嫉妬していた。


そんな思いを抱えながら、つい先日、ホぺイロとして選手達の用具の手入れをしている時のことだ。


同じホぺイロの仲間と、次に選手達が戦う相手の話になったのだ。


女子チームが少ないせいで今回の相手は男チームであり、選手達が勝つ可能性はかなり低かったのだが、それでもホぺイロ達は選手を信じ、絶対に勝つと熱く話していた。


そこで俺はつい言ってしまったのだ。


「女子が男子に勝てるはずねぇのに、なんで負ける選手のためにこんなくっせぇスパイクの手入れなんてしなきゃなんねぇんだよな」


女子選手ですら世界で戦い活躍する中、自分で選択したとはいえ裏方でいるしかない現状。


自分に対する自虐も含めて言った軽口だった。


それを運悪く、選手の影山に聞かれてしまったのだ。


影山は本気で怒り俺に言った。


「私達は絶対に勝つ」と。


そこで俺も謝れば済んだものの、相手が一番虫の好かない調子乗りの影山だったのが悪かった。


つい俺も「勝てる訳がない」と言い返してしまったのだ。


すると影山はある提案をしてきた。


「私達が勝ったらあんたは私の言うことを何でも聞きなさい。逆に負けたらあんたの言うことを聞いてあげる」と。


俺は止まれなくなり、その提案に乗るしかなかった…





そして冒頭へと戻るのだが…


「はーい!じゃあ一番手は私のね!」


そう言って影山はスパイクを脱ぎ、試合を終えたばかりの汗でぐちゃぐちゃに蒸れた白のソックスの足裏を晒し、俺の方へと近付けて来た。


選手達の足が臭いのは、俺が誰よりも分かっている自信がある。


選手達のユニフォームを洗い、スパイクの手入れをするのも俺の仕事。


特にソックスは洗濯機では臭いがなかなか落ちないため、必死に手洗いで臭いを落とすのだ。


洗う前の選手達のソックスの山は、鼻で息を止めていないと気分が悪くなる程に酷かった。


匂いに多少は慣れているものの、こんなスパイク脱ぎたてで履いたままのソックスなんて未知数だ。


それに選手達の中で一番足の臭そうな影山だ。


正直、考えただけで吐き気がするくらいに嫌だが……


やらないと終わらないし、そもそもこの状態で逃げることはできない。


俺は覚悟を決め、鼻から空気を吸い込んだ。




続きは12月31日に公開予定

全文約7100文字

現在タバコプランにて先行公開中

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