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ポニー学園物語 5.ポニーの剃毛  ガンガンガン!  硬い木の扉を、別の硬いものが叩く音が近づいてくる。  ガンガンガン! 「う、うん……」  不快な音に浅い眠りを妨げられ、低くうめいて顔に手を置いて、拘束用ミトンを嵌められたままだと思い出した。  いや、着けられたままの装備は、拘束用ミトンだけではない。フェイスハーネスは外されているが、首とお腹のコルセットも、練習用ポニーブーツも、そしてひと晩じゅう私を悶々とさせた尻尾付きプラグも、そのままだ。  覚えてしまった肛門の性感と、その性感が生んだ肉の火照りを封じ込めるように栓をされたまま、だるい身体を起こす。 「ぃ、うッ……!?」  体重をかけられたプラグにお尻の穴をこじられて、一気に覚醒してしまった。 「ぅうぅ……」  ジンジンと疼くような妖しい感覚をそこに残したまま、ぎこちなく立ち上がる。  立っても、プラグの存在感は凄まじい。  洗面台に向かって歩くと、存在感がいや増す。  一歩、一歩、足を運ぶたび、私の柔らかい肉が動く。対してベルトで固定された固いプラグは動かないから、一歩ごとに緩くお尻をこじられる。 (こんな状態で……)  基本歩法を守って、歩くことなどできるだろうか。  不安を感じながら洗面台にたどり着き、ハッと気づいた。  拘束用ミトンを嵌められ、グーを握ったまま固められた手では、洗顔も歯磨きもできない。  愕然としつつも両手で挟んで水道の蛇口をひねり、同じように両手でコップを持って口をゆすぐ。  それから尻尾を濡らさないよう気遣いながら、洋式便器に座り用を足したところで、便器はあっても紙がないことに気づいた。 「えっ……どうしよう?」  とまどってつぶやくと、入り口のドアが開く気配。  泣く泣く拭くことを諦めてドアに向かって正座したところで、蓋つきのバスケットを手に藤島調教師が現われた。 「おはよう。よく眠れた?」 「おはようございます……実は……」 「あまり眠れなかったのね。理由はわかってるわ。でもね……」  私が言いかけると、藤島調教師がほほ笑んで口を開いた。 「腕の拘束とフェイスハーネスは必要に応じて解かれるけど、ふたつのコルセットとブーツは身体洗浄のとき、尻尾付きプラグは朝の処置のとき以外は外されないから、早く馴れることね」 「は、はい……」  応えては見たものの、ほんとうにこの苦しさと違和感に馴れることができるのだろうか。  そのことにも不安を感じたところで、牧童が朝食を運んできた。  バスケットの中身が朝食ではなかったのか。それではバスケットの中身は何なのか。  しばし考えて、昨日の藤島調教師の言葉を思い出した。 『決めたわ。明朝、処置の前に剃っちゃいましょう』  つまり、彼女が手にしたバスケットの中身は、『処置』と剃毛の道具なのだ。 『今はお毛けがあるからよく見えないけれど、剃っちゃうとそれはエッチな光景よ』  朝食のあと、私のお股はその状態に貶められてしまうのだ。  そうと知って、ドキドキしながら藤島調教師がちぎってくれたパンをかじり、口にあてがってくれたコップからミルクを飲む。  なぜ、こんなにドキドキするのだろうか。  ベルトが周りに食い込み、ムニっと押し出された媚肉を露わにされてしまうのに。 「うふふ……剃られることに期待しているの? さすがは見られて感じるポニーね」  そうだ、思い出した。私は人に見られて感じるポニーなのだ。人に見られて感じるだけじゃなく、乳首でもお尻でも感じるポニーなのだ。  藤島調教師の言葉で、その事実――純粋な事実ではなく、彼女によって精神に刷り込まれたもの――を思い出し、簡素な朝食を終えると、牧童が床の干し草を高く積み上げ、テーブル状に形を整え、傍に水で満たしたバケツを置くと、食器を持って下がっていった。  いよいよ始まる。  まだそれが何か知らされていない『処置』と、羞恥と屈辱の剃毛が。 「それでは、始めましょうか」  それを甘んじて受け入れる覚悟をしたところで、藤島調教師が穏やかにほほ笑んだまま宣言した。 「挿入(い)れるときと同じように、少しいきんでみなさい」  尻尾付きプラグをコルセットに留めていたベルトを外した藤島調教師の言葉に従うと、プラグをスポンと抜き取られた。 「ひうっ、はあっ!?」  とたんにゾワリと妖しい感覚――私はもう、その感覚がお尻の快感と知っている――が背すじを駆け抜け、艶めいた声をあげてしまう。 「うふふ……抜き取るときに快感を感じたかしら? それとも圧倒的な存在感を失って、頼りないような、寂しいような感じ?」 「は、はい……りょ、両方です……」  私が感じたとおりに素直に答えると、このたび藤島調教師はそれ以上の煽り言葉は口にせず、満足げにほほ笑んで牧童がテーブル状に積み上げた干し草を指差した。 「あお向けで、この上に」  そして私が命じられたとおりに横たわると、藤島調教師は手綱と同じ素材の革紐を手に取った。 「右手を右足首に、左手を左足首に、それぞれ添えなさい」  そのとおりにしようとすると、いわゆるM字開脚の姿勢になってしまうことに気づいて一瞬ためらう。すると、再び藤島調教師の声が降ってきた。 「右手を右足首に、左手を左足首に添えなさい」 「で、でも……」  長時間こじ開け続けてきたプラグを失い、お尻の穴がぽっかり口を開けたままになっているような気がする。先ほどの用足しのあと、そこを拭けていない。さすがにその醜態を晒すのは、恥ずかしすぎる。 「これが最後よ。右手を右足首に、左手を左足首に、それぞれ添えなさい」  しかし強い調子で言われ、それ以上逆らえなくなった。 「は、はい……」  そう答えておずおずと従うと、拘束用ミトンの手枷部分に設えられていた金属製リングを使い、左右別々に手首と足首を縛り合わされてしまった。  そして、ついに剃毛が始まる。 「ここ、手入れしたことないんでしょう?」 「は、はい……すみません……」 「謝ることはないわ。処女の子は、たいてい手入れなんかしていない」  そう言うと、おしっこを拭けていないことはあえて指摘せず、藤島調教師はハサミで私の陰毛をカットし始めた。 「ひっ、はっ……」 「うふふ……膣口と、ぽっかり開いたままのお尻の穴が、ヒクヒクしてるわ。ハサミが恐ろしい? それとも感じちゃう? 人に見られても、乳首でも、お尻でも感じちゃうミワ号は、ここも人一倍敏感なのかな? それとも……」  そこで陰毛をカットする手を止め、ニヤリと笑って私を見た。 「もう、私が課すことなら、調教でもエッチなことでも、なんでも感じちゃう?」  妖しく輝く瞳で見つめられて言われ、否定することができない。違うと言いたいのに、言うことができない。  それは、昨日の藤島調教師の言葉が効いているから。 『嘘をつくと言う行為は、調教師への反抗とみなされるものだけど……』  否定することで嘘をついたとみなされ、罰を与えられるのが怖ろしいから。  それ以上に、人に見られて感じるも、乳首が感じやすいも、お尻も感じるも、藤島調教師の言葉はすべて当たっていたから。  それは巧みに誘導され、そう思い込まされたせいだが、私はそうと気づいていない。 『嘘がつけないのね。そういうところも好きよ。もっともっとご褒美あげたくなっちゃう』  藤島調教師に好かれたいから。ご褒美――性の快楽と絶頂の幸福感が欲しいから。  私は藤島調教師の言葉を否定できない。  そして否定できないまま、繰り返し告げられる言葉が精神に刷り込まれていくのも、昨日と同じ。  (私はもう、藤島調教師が課すことには、なんでも感じてしまうのかもしれない……)  半ばそう思い込まされたところで、ハサミによるカットを終えた藤島調教師が、私の股間に濡れタオルをあてがった。 「理容師が男性の髭を剃るときは、熱い蒸しタオルを使うんだけど、女の子の敏感なここには熱すぎるからね」  その言葉にすら藤島調教師の思いやりを感じでしまうほど、私は彼女に精神を支配されている。  とはいえ、それは私自身にはわからないこと。  濡れタオルで皮膚と毛に湿りけを与えながら、藤島調教師はボウル状の容器に水を少量汲み、そこに粉石鹸を入れ、茶せんにも似た刷毛で泡立てると、それを私の股間に塗りつけた。 「ひっ……!?」  と声をあげたのは、痛かったからでも恐怖ゆえでもない。 「ひっ、あっ……」  敏感な場所に触れた泡まみれの刷毛が、そこで動き始めたからだ。 「あっ、んん……」  それは、剃る場所に石鹸の泡を塗るための行為。剃毛をするための準備。  そのことはわかっているのに、刷毛が蠢くたびに甘い吐息を漏らしてしまう。 『私が課すことなら、調教でもエッチなことでも、なんでも感じちゃう』  すでに半ば思い込まされていた藤島調教師の言葉が、さらに真実味を増していく。  実のところ、藤島調教師はそう仕向けるためにあえて淫らに刷毛を動かしているのだが、私にはそのこともわからない。 「んんっ、はぁん……」  膣口の周り、大陰唇にも刷毛を這わされ、ゾワリゾワリと快感が生まれる。 「はひゃあぁん……」  触れるか触れないかの強さで陰核を撫でられ、漏らす声に艶が増す。  やがて、刷毛を這わされている場所のずっと奥、肉体の芯に熱が生まれた。その熱でなにかが溶け、媚肉から熱いなにかがジュンと染み出した。 「いやらしいわね、ミワ号。ここが濡れてきたわ」 「そ、そんな……そ、それは……」 「ううん、濡れタオルの水分でも、石鹸の泡でもない。粘りけのある液体が、ミワ号の女の子の穴から溢れだしてる」  わかっていた。水だとか石鹸だとか言いわけしかけたが、ほんとうはそれが女の子の官能の証の蜜だと、知っていた。 「感じてるのね、ミワ号?」 「ああ……はい……」  だから、小さく嘆息して認めるしかなかった。 「ただの剃毛の準備で、感じていたのね?」 「はい……私は剃毛の準備で感じるポニーです……」  その言葉も、認めざるをえなかった。 「ミワ号は、私が課すことには、なんでも感じちゃうのね?」 「はい……私は先生が課すことには、なんでも感じちゃうポニーです」  認めるばかりか、言葉の最後に『……なポニーです』と付けて答えてしまった。  それほどまでに、私は藤島調教師に支配され、ポニーの自覚を植えつけられていた。  そのことをはっきりと認識したところで、藤島調教師がT字形の剃刀を手に取った。 「一応刃が横滑りしても切れにくい仕様だけど、格別繊細な場所だからね。けっして動いちゃダメよ」 「は、はい……」  震え上がって答えると、下腹部に剃刀が押し当てられた。 「ひっ……!?」  短く悲鳴をあげてすくみあがった直後、短く刈られていた毛が、ゾリゾリと剃りあげられる。  慎重に、ゾリゾリ。  ゆっくりと、ゾリゾリ。  下腹部、いわゆる『土手』の部分を、剃刀が動く。動くたび、私の陰毛が失われていく。 「ひっ……あっ……」  視界の下端に股間を捉えると、そこにはもう、黒い影は見えなかった。  しかし、まだ剃毛は終わらない。私の股間を完全なる無毛にすべく、藤島調教師はさらに慎重に剃刀を動かす。  剃りあげる部分の手前を指で押さえながら、熱く火照る媚肉の横を、ゾリゾリ。  その指の圧迫が、媚肉のすぐ脇で蠢く剃刀が、女の子の場所にゾワリとした緩い快感を生む。  ゾリゾリ。ゾワリゾワリ。  ゆっくりと、慎重に剃りあげられながら、少しずつ高められていく。  剃毛作業に集中しているのだろう。藤島調教師が、煽るような言葉をかけることはなくなった。  にもかかわらず。いやだからこそ、私は先の言葉を思い出し、心に染み込ませてしまう。 『ただの剃毛の準備で、感じていたのね?』  剃毛の準備だけでなく、私は剃毛そのものでも感じていた。 『ミワ号は、私が課すことには、なんでも感じちゃうのね?』  そのとおりだ。藤島調教師が課す行為すべてに感じてしまう。  たった2日で、私の肉体と精神は作り変えられてしまった。 (もう、戻れない……)  ふと、そんな思いが頭をよぎる。 (この人から、先生からは逃げられない……)  物理的にも、精神的にも。  そう考えた私は、訊ねられもしないのに、無意識のうちに口走っていた。 「先生、先生……私、お股の毛を剃られて感じるポニーなんですぅ……」  しかし、このたび藤島調教師は私の言葉に応えず、慎重に、ゆっくりと、剃刀を動かし続けた。  肉の火照りが身体の芯から全身に広がり始めたところで、剃毛が終わった。 「ご覧なさい」 「は、はい……」  言われてネックコルセットで動かしにくい首を可能なかぎり下げてみると、そこはツルツルに剃りあげられていた。 「ひっ……!?」  自らの股間の変わり果てた姿に、短く悲鳴をあげる。  すると、藤島調教師が妖しく笑って、バスケットから手鏡を取り出した。 「うふふ……それじゃよく見えないでしょう?」  そして、無毛にされた私の股間の前に、鏡をかざした。  はじめ、その鏡に映っているのが、自分のお股だと思えなかった。自分が見ているのは鏡じゃなく、別の誰かの股間の写真を貼り付けた板の用ように思えた。  それほどまでに、私のお股は姿を変えていた。  恥骨のあたり、いわゆる土手から完全に毛がなくなっているのは、上から眺めたときと同じ。そこだけを見れば、『童女のような』と形容できる。  ただし、その下はまったく『童女のよう』ではない。  ぱっくり口を開き、入り口付近のビラビラの肉襞と充血してヌラヌラと濡れ光る粘膜を晒しつつ、それでも飽きたらずトプンと蜜を吐き出すそこは、オトナの女のものだ。 「ひっ……!?」  その対比がとてつもなくグロテスクなものに感じ、再び短く悲鳴をあげるが、釘づけになったように視線を逸らせなかった。 (なぜ……どうして?)  見たくないのに、目を逸らすことができないのか。  その理由を、藤島調教師の感嘆の声が教えてくれた。 「ツルツルの無毛の恥丘は、無垢なる童女のよう。色素の沈着が薄く、まったく型くずれしていない入り口付近は、純粋な少女のもの。快感を知り、求め、熟れて火照る内部は、まさしくオトナの女。3種類の魅力が違和感なく同居しているここは、今のミワ号そのものね」  そうだ。今の私のお股は、私の在りようそのものなのだ。  だからこそ、自分の真実を見せられているように感じ、グロテスクと感じてしまったのだ。同時にそう感じつつ、目を離せなかったのだ。 「そんなミワ号のここ、大好きよ」  そして、藤島調教師はそう言ってほほ笑んでくれた。  そのことが嬉しくて、誇らしくて、照れたようにほほ笑み返し、私は応えた。 「はい、先生がツルツルに沿ってくれた自分のお股、私も好きです」

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