幼なじみはポニーガール (Pixiv Fanbox)
Published:
2019-06-07 08:46:33
Edited:
2022-04-06 06:50:56
Imported:
Content
「お待たせ、やっと講義が終わったわ」
コイン駐馬場の地面に膝をついてうずくまる赤毛の愛馬に、私は声をかけた。
しかし、私のポニーは答えない。
彼女は人ではなく、ただの馬。その自覚を愛馬がしっかりと持っていることを確認しつつ、
顔を隠すようにブリンカー(遮眼帯)に取り付けていたフェイスカバーを外す。
するとハーネスに締め上げられた顔があらわになった。
愛らしいその顔を見ながら、機械に歩み寄り清算ボタンを押し、財布から小銭を出して投入。
個人商店や屋台ですら携帯端末で清算する方式が主流になった昨今、なぜかコイン駐馬場だけは現金主義が生き残っている。
ポニーを所有するようになった当初、そのことにとまどいを覚えたものだが、今はもう慣れた。
ポニーに乗っていないときでも、財布を持ち歩くことで、乗用ポニー所有者であることの証にもなっている。
『それで利用者に特権階級意識を持たせ、顧客を満足させることが目的なのよ』
友人の誰かが言った言葉を思い出しながら表示されていた金額の硬貨を投入し終えると、ポニーの手綱をつないでいた金具が解除された。
「さあ、帰るわよ」
フリーになった手綱を左手で取り、右手に乗馬鞭を構えて告げると、ポニーがわずかに不満そうな表情を見せた。
それもそのはず、このコイン駐馬場には、ポニーガールを愉しませるためのしかけがある。
その愉しみを中断させられることを、彼女は不満に感じているのだ。
とはいえ、私の愛馬はポニーは躾が行き届いている。所有者たる私への絶対服従が身に染みている。
そして私は、コイン駐車場のしかけがもたらすもの以上の愉しみと悦びを、彼女に与えることができる。
「続きは、帰ってからよ」
私に鞭を突きつけられて命じられ、そのことを思い出したのだろう。
「あぅ……」
噛まされた馬銜《はみ》の端から涎をこぼして応えると、私の愛馬は特徴的な紅い瞳を蕩けさせた。
当初は『コイン駐馬場のポニーガール』というタイトルでイラスト単体で描き始めたのですが、描いているうちに小説版も書きたくなってタイトルを変更しました。
小説版は後日公開いたします。