小説 風紀委員会の叛乱 中編 (Pixiv Fanbox)
Published:
2022-07-08 09:00:00
Imported:
2022-07
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拘束架に囚われ、腰を突き出して身体を反らした姿勢で全身を固定され、お尻の肉の真横に手首がくるくらいに腕を後ろに回されたうえに、口も含めて頭全体を固められている。
そんな状態で、蓮香は小一時間放置された。
そして、房美が理佐を伴って戻ってきたのは、ミリ単位でしか動けない苦痛を蓮香が覚え始めた頃だった。
ただし、取り巻きの風紀委員はいない。いつもボディガードのように側に控えさせている柔道部兼任の大柄な女も、今は姿が見えない。
それはおそらく、拘束架に捕らえたことで、蓮香の抵抗を完全に封じているからだ。
さらに、理佐以外の者には見せられないようなことを、これから蓮香にしようとしているのだろう。
その、人に見せられない行為とは――。
「それじゃ、さっそく調教を始めましょうか」
それは、先ほどの房美の言葉。
『だって貴女は、理佐と同じように私の奴隷に堕ちるんだもの。悦んで私に従い、訴え出るなんて考えられないようになるのだから』
蓮香もそうなるよう、奴隷の躾を施そうとしているのだ。
「まずは、性の悦びを教えてあげるわね……理佐」
房美が告げると、理佐が一度は着た制服を、再び脱ぎ捨てた。
そして、奴隷の身分を示す乳首ピアスを揺らしながら、蓮香に近づいてくる。
「うふふ……」
身じろぎひとつできない蓮香に顔を寄せ、理佐が妖しく輝く目を細めた直後、胸になにかが触れた。
理佐の手が乳房に触れたのだと理解したところで、それがサワサワと動き始める。
ゆっくりと、触れるか触れないかの強さで、柔らかい肉を包むきめ細かい肌を撫でさする。
くすぐったい。
ただ、それだけ。
はじめのうちは、そう思っていた。
でも少しずつ、くすぐったさに奇妙な感覚が混じり始めた。
媚肉に金属の棒を食い込まされたとき、不快感と圧迫感のなかに生まれたものとよく似た――。
そこで、乳首の上を理佐の指が通過した。
「……んッ!?」
そこに微弱な電気が流されたような気がして、喋れない口でくぐもったうめき声をあげてしまう。
(こ、これは……)
指で触れただけでなく、理佐が乳首になにかしたのか。
とはいえ近づいてくるとき、理佐はなにも持っていなかった。服を脱いでいたから、なにかを隠し持っていたとは考えられない。
(で、でも……)
あきらかに、ただ触れられただけじゃない感覚が、蓮香の乳首を襲っている。
頭がまったく動かせないうえに、テーブル状に顎より前方に突き出た首の拘束棒のせいで見えない場所で、なにかが起こっている。
そう感じたところで、理佐が蓮香の目を見てニーッと嗤った。
「蓮香、おっぱいが感じるのね?」
「んっ(えっ)?」
「指で撫でただけで、すごく気持ちよさそうだよ」
「んぅう(まさか)……」
あの奇妙な感覚は、理佐の指が生んでいたのか。
そのことに、とまどった直後である。
「ンうッ……!?」
乳首がつままれた。
「こんなに乳首を屹立させて……蓮香、いやらしいんだね?」
「んう(りさ)、んむうぅん(なにを言っ)……?」
意味がわからず、言葉にならない声で訊き返そうとしたところで、理佐が指を動かし始めた。
つまんだ乳首を、指の腹でこねるように。胸の頂の豆が潰れるほどは力を加えず、どちらかというと、さするという表現が適切な加減で。
「んう(りさ)、んぅう(やめて)」
伝わらないとわかっていながら声を発したのは、そこに生まれる奇妙な感覚が強くなってきたからだ。
「んぅんむむ(やめなさい)!」
強めに言ってしまったのは、房美と理佐の言葉を思い出したからだ。
『まずは、性の悦びを教えてあげるわね』
要するにこの感覚は、房美が性の悦びと呼んだもの、あるいはその前兆。
『指で撫でただけで、すごく気持ちよさそうだよ』
『蓮香、いやらしいんだね?』
つまり理佐は、蓮香が性の悦びを覚え始めていると判断している。
性の悦びのなんたるかを蓮香は知らないが、肉体はそれを覚えたときの反応を示しているのかもしれない。
「んむぅう(お願い)、んぅう(やめて)ッ!」
しかし、理佐の指は止まらない。
言葉にならない声で中止を請うても、理佐は妖しい表情のまま、リズミカルに乳首をこね続ける。
ここにきて、理佐に自分の声を聞き届けるつもりがないことを、蓮香はようやく悟った。
そこで彼女選んだのは、理佐の指技とそれがもたらす性の悦びに抗う道。
それはこれまで、どんな強敵とも闘ってきた蓮香らしい選択だった。同時に、このたびにかぎっては、無謀な選択でもあった。
蓮香は、自身空手の達人である。格闘においては、相手がどれほどの強豪であっても、対抗する手立てを知っている。
自治会を立ち上げ風紀委員会と学院の旧習に抗ったときは、多くの学院生の助力を得た。
しかし、蓮香には性の体験も知識もない。房美の奴隷として性の悦びを徹底的に教え込まれた理佐に対抗しようとするのは、格闘技経験のない素人が、達人に喧嘩を売るようなものだ。
そのうえ、蓮香を助けてくれる人は、ここにはいない。
圧倒的な実力差のある敵に、単身闘いを挑んだ無力な者がどうなるか。
だがそのことに、蓮香は気づいていなかった。彼我の実力差もわからず、無謀にも強者に闘いを挑んでしまう弱者と同じように。
ゾワリ。理佐の指が乳首をこねるたび、奇妙な感覚が駆け抜ける。
ゾワリ、ゾワリ。駆け抜ける感覚に、妖しさが増してくる。
理佐の指技が、激しさを増すことはない。
さすると言うほうが適切なほどの力加減で、単調とも思えるほど一定のリズムで、左右同じように蓮香の乳首をこね続ける。
それは、蓮香に性の体験がないことを、理佐が見抜いていたからである。
経験豊富な女なら。豊富とは言えないまでも、一度でも性の快楽を知った女性なら、肉体の高まりに応じて刺激を強めていくのが常套手段。
だが未体験の乙女には、一見単調と思える弱い刺激で、ゆっくりじっくり性の悦びを覚え込ませるのが先決。
自然にそれを実践する理佐は、素朴なルックスに反してやはり性の道の達人なのだ。
達人の指技が、初心者未満の蓮香を責める。
それに抗いきれないと気づけず、性の素人は耐えようする。
だが間近で責める理佐にも、少し離れて見守る房美にも、蓮香が高まりつつあることは見抜かれていた。
「うふふ……」
自らの指技で蓮香が高まっていることに、理佐が口の端を吊り上げる。
黙って見つめる房美が、瞳を妖しく輝かせる。
「んふ、んふ、んふ……」
鼻でしかできない呼吸が、次第に荒くなってきた。
「んふ、んっ、んっ……」
漏れる吐息に、少しずつ甘みが混じってきた。
「ン、んふっ、んんッ……」
乳首に生まれる感覚も、ますます妖しさを増してきた。
「とっても気持ちよさそうね、蓮香?」
その変化を敏感に察知し、理佐がいじわるく指摘する。
「ほんとうにいやらしいんだね、蓮香?」
否定する術《すべ》を奪われた蓮香に、蔑む言葉を投げつける。
(違う、違う……)
しかし、そうと告げられない。
(私、いやらしい子じゃない……)
だが、そうと伝えられない。
「蓮香はエッチな子。淫らな子……」
告げず伝えられない蓮香の精神に、理佐の言葉が染み込む。
心の中で否定していても、それを言葉にできないせいで、少しずつ刷り込まれていく。
刷り込まれながら、性感を高められる。
「んっ、ン、んんッ……」
今覚えている感覚が、気持ちいいことなのだと、性の快感なのだと思い知らされながら。
「んんっ、ん、ふ、ン……」
実際に、乳首が気持ちいいと感じていく。
こうなるともう、襲いくる快感を押しとどめることはできなかった。
好むと好まざるとにかかわらず、受け入れるか拒絶するかには関係なく、蓮香は性の快楽に翻弄され始める。
(なぜ……どうして……?)
こんなに気持ちいいのか。
(いや……いやだ……)
全裸で拘束架に囚われた、みじめな状況で性的に高められるのは。
「よほど気持ちいいんだね、蓮香?」
蓮香の気持ちを知ってから知らずか、おそらく知ったうえで、理佐が声をかける。
「だって……」
片手が乳首を離れ、下へと移動する。
そして、理佐の指が媚肉に食い込む金属棒に触れたあと、蓮香の眼前にかざされた。
「蓮香のお股、こんなに濡れてるよ?」
その言葉が正しいと証明するように、理佐の指には、粘りけのある液体が糸を引いていた。
「んむう(それは)……!?」
それ以上、言い返すことはできなかった。
声が言葉にならないからではなく、自らの官能の証を目の当たりにし、言い返す言葉を失ったのだ。
実のところ、乳首への愛撫が始まる前から、蓮香のそこは潤っていた。
もちろん、性感が高まっていたからではない。快感の予兆のような感覚は覚えていたが、はっきり気持ちいいと思っていたわけではない。
それはただ、硬い異物が粘膜に触れたせいで、繊細なそこを保護するために分泌されただけ。いわば、肉体を守るための、生物としての自然な反応だ。
とはいえ、知識に乏しい蓮香は、そのことを知らない。
極限状態に置かれ、疑い気づくこともできない。
知らず疑えず気づけないまま、ひときわ大きい快感が襲いきた。
「ンぅんんんッ!?」
目を剥いてうめき声――それはもはや、喘ぎ声ともいえるものだった――をあげる。
「んう、んうんん(どうして)……?」
快感が大きくなった理由を考える暇《いとま》もなく、もう一度。
「ンふンむむッ!」
大きな快感に襲われたのは、蓮香に見せつけていた愛液まみれの指を、理佐が乳首に戻したからである。
ただ両手での愛撫を再開しただけでなく、高まりが充分だと判断し、指の力をわずかに強めたのだ。
加えて、自分が性的に高まっているのだと、蓮香が自覚したせいでもある。
自覚した、いや自覚させられないことで、高まりそのものを受け入れてしまったのだ。
そこから、肉の昂ぶるペースが急になった。
キュッキュッと理佐が乳首をつまみ、こねる。
「ンっ、んふ、んんッ……」
そのたびに、蓮香が甘い吐息を漏らす。
それには甘みのみならず、艶も帯びていた。
聞く者に、囚われの乙女が喘いでいると思わせるほどに。
そう、言葉になっていないだけで、蓮香の吐息はもはや艶声以外のなにものでもなかった。
そしてそのことは、蓮香自身にもわかっていた。性的な高まりのみならず、高まりのせいで艶声をあげていることも、はっきり自覚していた。
でも、止められない。性的な高まりも、その結果漏れる艶声も、止めようと思うことすらできない。
一見凛々しかった学院生自治会長は、ほんとうに奴隷に向く淫らなオンナの本性を隠し持っていたのか。
いや、違う。すべては、風紀委員長・大田黒房美が仕組んだことだ。
『私が生まれながらの支配者』
房美が蓮香の前で口にした言葉のなかで、唯一の絶対的真実である。
蓮香と出逢う前から理佐が奴隷だったことも、OG会を味方につけ承認を取りつけていることも、ただの事実にすぎない。
理佐が生まれついてのマゾであるか否か、蓮香も同じ資質を持っているかどうかは、房美にとってはどうでもいい。
彼女がそうだと決めれば、ものごとはそのとおりになるのだ。
それはもちろん、彼女の手練手管が可能にすること。
蓮香に対しても、房美はそれを駆使してきた。
自らに絶対服従の理佐を、1年にわたり蓮香の元に置いたこと。理佐を心の底から信用させたうえで、裏切りを演出したこと。
それで、蓮香は心を折られてしまった。
心を折られ、精神の防御壁をも壊されてしまい、見事に誘導された。
加えて、拘束架である。
囚われた者を完全に無力化する拘束装置が、蓮香の自信の源たる戦闘力を奪った。
さらに不必要な痛みを与えるほどではない股間の金属棒で、緩やかに媚肉が刺激し続けられる状態に陥らせた。
そのせいで、蓮香は乳首の愛撫で肉を昂ぶらされた。
そのうえ媚肉への刺激による生体反応をも、高まりを自覚させる手段として、理佐に利用させた。
それらすべての奸計が奏効し、蓮香は――。
「ンぅンんんんッ!?」
ひときわ、大きい快感に襲われた。
「んふ、んんんッ!」
ビクン、と身体が跳ねる。だが、ミリ単位でしか動けなかった。
ガクン、と膝から力が抜ける。しかし、拘束架に支えられて倒れなかった。
「うふふ……軽くイッたみたいね、理佐」
そのさまを見て、理佐が嗤う。
「絶頂。女の子が到達する悦びの境地。その小さな頂に、貴女はたどり着いたの」
蓮香が理佐の言葉を理解していないと判断し、房美が口を開く。
(えっ……これが、絶頂?)
言葉だけは知ってはいた状態に自分が陥ったのだと知らされ、とまどう蓮香。
(どうして……こんなひどい目に遭わされているのに……私は?)
その疑問に答えを見いだす暇《いとま》は与えられず、理佐の手による玩弄は続く。
その卓越した指技に肉を昂ぶらされ、今しがたより早いペースで追い上げられる。
「ン……ン(イ)ッうぅうッ」
また、イッた。
一度めより、絶頂するまでの時間が短い。
それは蓮香が肉体が、性の頂に至る道を覚えてしまったから。
「ンッ、ンぅ(イク)ぅうッ!」
再び、イカされた。
繰り返しイカされるごとに、絶頂の悦びが大きくなる。
それは、悦びを知った蓮香の精神が、本能的にそれを求めてしまうゆえ。
(これでは……このままじゃ……)
性の悦びの虜になってしまいそうだ。
そうとわかっているのに、予見できているのに、心のどこかでより大きな悦びを求めてしまう。
そして、快楽に翻弄される蓮香が、本能の求めに抗うことができなくなった頃。
「ンふッ、んぅんむむぅんッ!」
蓮がひときわ高く喘いで絶頂したところで。
「もういいでしょう」
ようやく房美が、理佐の手を止めさせた。
生まれて初めて味わった、性の快感だった。
初めての快感で、絶頂に追い上げられた。
あまつさえ、何度も繰り返しイカされた。
その余韻だろうか、身体が気だるい。立っているのがやっと。
いや、もしかしたら、拘束架がなければ立っていられないかもしれない。
ズルズルのドロドロになった肉体を、かろうじて拘束架に支えられている感じ。
加えて、ものごとを深く考えられない。
かつてない窮地にあるはずなのに、差し迫った危機感がない。
きわめてみじめな状態に陥っているのに、自らを危ぶむことができない。
そんな蓮香の前に、房美が立った。
「貴女も、理佐と同じにしてあげる」
どういうことなのか。奴隷にするというのなら、さっきも聞いた。
蓮香が回らない頭で、ぼんやりと考えたところで、右の乳首に冷たいものが触れた。
「ン(ひ)ッ!?」
ひんやりした感触に、くぐもった悲鳴を短くあげた直後である。
「……ッ!?」
乳首に、激痛が走った。
「ンむんムうううッ!」
目を剥いて叫ぶが、声は言葉にならなかった。
反射的に身体に力を込めるが、拘束架を揺らすことすらできなかった。
激しい痛みを与えたのは、間違いなく房美だ。しかし、なにをされたのかわからない。
下を見ようとしても、頭は全く動かせない。視線だけ落としても、顎の下のテーブル状の部分が邪魔で、自分の身体が見えない。正面には鏡があるはずだが、今は房美の顔しか見えない。
そうしているうちに、左の乳首にも冷たいものが触れた。
直後、右と同じように激痛が走った。
予見していたおかげで悲鳴をあげずに済んだが、耐えがたい痛みが襲ってくるのは同じ、
「グぅううう……」
口中に押し込まれた異物を噛み締めうめいていると、顔を上げた房美が唇の端を吊り上げた。
「おめでとう。これで貴女も、理佐と同じ身体になったわ」
そして房美が移動したあと、鏡に映った蓮香の身体には――。
「ン(ひ)ッ……!?」
金色に輝くリングピアスが、乳首を穿ち取りつけられていた。