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とある科学部大実験顛末記 後編  装置に繋がれて、実験室の壁飾りのように拘束された自分の姿を私、赤坂千早(あかさか ちはや)はぼんやりと見ていた。  あれから――。  数々の器具を取り付けられて壁に縫い付けられてから、目を塞ぐ黒いレンズの透明度をゼロに戻された。そのうえで、机の上に置かれたビデオカメラで撮影している映像を、レンズの裏側に投影されているのだ。  瞳からレンズまでの距離は、1センチあるかないかだろう。にもかかわらず、マスクのレンズごしに実像を見ているように焦点が合っているのは、なんらかの高度な技術によるものに違いない。  それがどんな技術なのか、青山楓(あおやま かえで)――実験として私をこんなみじめな状態に貶めたクラスメート――のような天才ではない私には、わからない。  実際、今の私の姿は、ほんとうにみじめなものだ。  身に着けていた制服も下着も剥ぎ取られ、大きさと形に自信がある胸は、露出したまま。  股間は貞操帯のような金属パンツに覆われているが、それはお尻の穴とおしっこの穴に挿入した器具を、装置に接続するため。  その装置から、足下に置かれた箱型の装置にホースが伸びているのは、楓がさせたいときに排泄させるためだろう。  その装置とホースで繋がれた別の装置からもう1本のホースが股間の器具に伸び、さらにすぐ上からマスクにホースが伸びているのは、楓によると食事と水分補給。さらに呼吸を確保するため。  胸を露出させられている代わり、その金属製の全頭マスクに覆われ、私の顔は見えない。  だから本来なら拘束されているのが誰かわからないのだが、額に取り付けられた小型ディスプレイに『中身はこの子ですよ』と言わんばかりに、私の顔写真が表示されている。  そんなみじめな状態で、これから私は数日の時を過ごさなければならない。  それは楓の工作と、変わり者で呑気かつ能天気な私の両親の性格のせい。  楓が実験の時間を伸ばすためにうちに電話をかけたところ、うちの親はなにを思ったか『何日でもこき使ってくださいねえ』などとのたまったらしい。  とはいえ、超厳重に拘束されていながら、身体はとても楽チンだった。  少し開いて折りたたんだ状態で、両脚を固定し拘束する金属製拘束具も。腕とお腹をひとつにまとめて縛る装置も。肩から胸にかけてを固定する金属製ハーネスも。内側のクッション材を空気圧で膨張させられ、全体で体重を支えるよう工夫されているからだ。  おまけに鎖骨のあたりまで達する金属製全頭マスクごと首を固定されているから、頭の重さを首で支える必要がない。  そのおかげでフワフワ宙に浮かんだような拘束されごこちと、耳穴に挿入された耳栓兼用イヤホンから流されている環境系BGMのせいでウトウトし始めたとき、不意に楓の声が聞こえた。 「あれ、脳波がアルファ波からシータ波に移行しつつあるねぇ……もしかして千早ちゃん寝ちゃってる?」 「あぅ……?」 「あ、起きた。供給空気に精神安定剤を混ぜてたんだけど……量が多すぎたかな?」  それで、こんなみじめな状態で落ち着きはらっていられる理由がわかった。 「いえ、量は多くないわね。むしろ少ないくらい。もしかして、寝ちゃったのは性格の問題?」  言われて、やはり呑気で能天気な両親の性格を引き継いでいるのかと、少しがっかりした。 「それとも、拘束された自分の姿を見ているから? だとしたら、とても嬉しいんだけど……」  これも天才ゆえの論理の飛躍か、またわけのわからないことを言って、映像の中で楓が私の前に立った。 「あら千早ちゃん、乳首ビンビンじゃない?」  あたりまえだ。陽が落ちてきて、気温が下がって肌寒くなり――。  そこで、ハッとした。山あいの田中(たのなか)町、陽が落ちる時間となり、外の気温は下がっているだろう。しかし、もはや楓の私室も同然となり、空調が完備された実験室は、むしろ少し暑いくらい。  そのことに気づいたところで、楓が嬉しそうに声を弾ませて告げた。 「やっぱりそうだ。千早ちゃんは拘束され、支配されて精神が落ち着き、肉体が興奮するMなんだ」 「ん、んぅう(ま、まさか)……」 「もしかして、違うと思ってる?」 「んぅうんん(あたりまえ)!」 「でもね……?」  そこで、投影されていた映像が切れると同時に、レンズの透明度がサングラス程度に上がった。 「でもね、ふつうの子なら怒って暴れるか、つらくてメソメソ泣いちゃうような状況で、千早ちゃんは落ち着いてるどころか、居眠りしちゃったんだよ?」  レンズごしに見る楓の笑顔は、なぜか妖しいものだった。 「それに寒くもないのに、乳首をビンビンにさせてた。ううん、それだけじゃなくて、身体の各データは、千早ちゃんの肉体がエッチになってることを示してる」  そう告げる楓の頬は火照り、眼鏡の奥の瞳は潤んで蕩けているように見えた。 「千早ちゃんがMだとわかって、嬉しいよ」  レンズごしに見つめられ、ドキドキして口中の突起を噛み締めたところで、楓が私から離れた。 「うふふ……時間はたっぷりあるんだし、いずれ千早ちゃんも自覚するわ。それより今は……」  そして楓がそう言った直後、股間の装置がブルリと震えた。  直後、おしっこが溜まっていた膀胱が軽くなる感覚。 「今、千早ちゃんのおしっこを回収しているの」 「ぅむ(えっ)……」 「うふふ……尿道に挿入した器具の中をおしっこが通過してるから、スッキリする感じはないでしょう?」  その通りだった。スッキリどころか、おしっこしている感覚もない。確実に膀胱は軽くなっているのに、残念な感じしかない。 「しばらくのあいだ、これが千早ちゃんのおしっこ排泄。そして、回収されたおしっこは……」  その言葉の途中で、口中に液体が流し込まれ始めた。 「紅茶を飲んでからだいぶ時間が経っているし、夕食の時間も近いから、水分補給を兼ねた流動食よ」  そう言われながら、ゆっくり流し込まれる水を飲み下しながら、ふと気になる。 (この流動食の水分って……?)  そのとき、私の疑問に答えるように、楓が言葉を続けた。 「この流動食の水分は、おしっこを循環浄化したものを……」 「んむむむ(ええええ)!?」  思わず叫んでしまい、むせそうになったところで、流し込まれていた流動食が緊急停止した。 「えっ? まさか、おしっこを飲まされてると思った? 言ったでしょう、おしっこを循環浄化しているのから、流動食に使用される水は純水に近い。水道水よりずっと清潔よ」  そういえば、この装置は恒星間航行の宇宙船の乗員の生命維持システムの試作品。飲料水を大量に積み込めない宇宙船では、必要な仕組みなのだろう。 「ほんとうなら、呼気に含まれる酸素を取り出す装置とか、排泄物から栄養分を回収するシステムとかも必要なんだけど、それはまだ開発中。今回は間に合ってないの」  残念そうに楓は言うが、最後のシステムだけは間に合わなくてよかったと、心の底から思う。  胸を撫で下ろしながら、『まともな食事を摂れなくなる』と言われたとおりの食事を終えた私は、亡失していた。  それから回収した栄養を食べさせられることはなくても、大きいほうの排泄も、おしっこと同じように問答無用で行われるのだということを。  そしてそれは、すぐに始まる。  ブゥン、とモーターが起動する音が、装置からの伝導で聞こえた数秒後。 「……!?」  お尻の中に、生温かい液体が侵入してきた。 (な、な、なにコレ!?) 「心拍数が上がったね。千早ちゃん、驚いてる?」  そのことに驚き、とまどった直後、楓の声。 「もしかして、浣腸されると思ってなかった?」  情けないことに、思っていなかった。  おしっこと違い、うんちは固体。強制的に排泄させ、装置に回収するには、そのままでは無理。浣腸で強制的に腸のぜん動運動を起こさせ、押し出させないといけない。  その説明を聞くあいだにも、腸内への液体注入は続いた。  液体は体温と同程度に温められているうえ、注入がゆっくりだから、始めのうちは違和感を感じるだけだった。  しかし、注入量が増えるにつれ、お腹が重たくなってくる。拘束されて初めて、苦痛を感じ始める。 「将来的には、もっと楽に便意を催させる仕組みを開発しなきゃいけないんだけどね」  そう言われた頃にはさらに注入が進み、その仕組みがないことを恨む気持ちが生まれるほど、苦しくなってきた。  注入される液体――グリセリン水溶液という名前は、あとで聞かされた――の効果で、お腹がグルグルし始めた。 「浣腸マニアのM女は3リットルくらい入るそうだけど、千早ちゃんは初心者だから、1リットルにしてあげるね」 「ぅえ(え)……?」  信じられなかった。3リットルも浣腸する人がいるなんて。  耐えられないと思った。私のお腹に1リットルも注入されるなんて。  しかし私の気持ちにかかわらず、液体の注入は進む。 「すごいよ、千早ちゃん。ますます乳首が屹立してきたよ」  どこか恍惚としたような声で、楓が告げる。 「浣腸も気持ちいいんだね。やっぱり千早ちゃんはMなんだね」 (違う。違うよぉ……)  否定しようとしても、伝えることはできない。  実のところ、浣腸される緊張感でそうなっているのだが、私にそのことはわからない。おそらく楓にはわかっているが、彼女はそうだと言わない。  だから私は事実に気づけないまま、自分がMかもしれないと疑ってしまう。 「ピクリとも動けないほど厳重に拘束されて、浣腸されて、感じちゃう千早ちゃんは、ドMなんだよ」  伝えることができないまま、楓は言い続ける。そのせいで『Mかも』という疑いを深めてしまう。  そのあいだにも、お腹への液体の注入も続く。  私にできるのは、屈辱の言葉と浣腸の苦痛に口中の突起を噛み締め、お尻を引き締め、猛烈な便意に耐えることだけ。 「1リットル入ったようね。注入が止まったわ」  とはいえ、お腹が楽になることはない。  苦しさの増加が止まっただけで、最大限の苦痛が継続している。 「うふふ……私がいいと言うまで、排泄(だ)させてあげないよ?」 (ムリムリムリ、今すぐ漏れそう! ていうか、もう苦しくてダメ!」  もはや喋ろうとする余裕もなく、口中の突起を噛み締め、お尻の穴をキュッと引き締めて、私は耐える。耐え続ける。  1リットルもの浣腸液を注入された私のお腹はぽっこり膨らみ、股間とお腹の拘束具が食い込んでいるだろう。肌からは脂汗が吹き出し、全身がヌラヌラ濡れ光っているだろう。  つらい。つらい。  苦しい。苦しい。 (もう限界!)  でも、人前でうんちを排泄するなんて嫌だ。 (考えて、おしっこと同じように、うんちも装置に回収されるんだよ。見えないし、臭いもしないよ。だから排泄しても平気だよ)  私の中に生まれたもうひとりの私の誘惑に、理性も羞恥心も自尊心も、あっけなく白旗を上げた。 (もういい、排泄(だ)す!)  猛烈な便意と苦痛に負け、お尻の力を抜き――。  しかし、なにも起きなかった。  お腹をグルグル鳴らすうんちは排泄されず、便意も苦痛もそのままだった。  そこで思い出す、股間の器具を着けられたときの楓の言葉。 『ねえ、わかってる? 千早ちゃんはもう、おしっこもうんちも、勝手にできなくなったんだよ?』  わかっていたはずなのに、覚悟はできていなくても、知っていたはずなのに。あまりの苦痛で、忘れていた。 「うふふ……つらいよね。苦しいよね。排泄したいよね。でも、千早ちゃんは、自分の意思では排泄できないんだよ」 (そうだ。私にはもう、排泄する自由すらないんだ) 「ううん、排泄の自由だけじゃない。千早ちゃんには、いっさいの自由がないんだよ」 (そうだ。私はあらゆる自由を奪われてしまった) 「私にすべてを奪われて、支配されて、管理されて、嬉しいでしょう?」 (そうだ。楓にはすべてを奪われ、支配され、管理されて、嬉し……って、え?)  苦痛のあまり思考能力を失い、言葉に乗せられかけたとき、楓が私の乳首をつまんだ。 「うふふ……ビクンと震えた。千早ちゃん、ゾクゾクしてるんでしょう?」  悔しいが、そのとおりだった。  耐えがたい苦痛のなかで乳首をつままれ、そこに痺れるような感覚を覚えていた。  どうしてそうなるのかわからないが、私ははっきりと快感を得ていた。 「それは、千早ちゃんがMだからだよ。拘束され、支配され、管理され、そのうえ浣腸され、苦痛に悶絶しながら感じてしまう千早ちゃんは、どうしようもなくMなんだよ」  レンズごしに妖しくほほ笑みながら、楓が告げる。  そうなのだろうか。ほんとうに、そうなのだろうか。  そして楓はなぜ、こんなに嬉しそうなんだろうか。  ふと、そんなことを考えたとき――。 「うふふ……もし私の前で、私に乳首を弄られながら排泄してイッちゃったら、千早ちゃんはM確定だね」 (えっ、それは……?)  その言葉の意味がわからず、問い返しかけたとき、不意にお腹が楽になった。  ついに、排泄が許されたのだ。 「ぅむぅんんンンンンんッ!」  猛烈な便意から、苦痛から、解放される。 「んムムンんむむむむんッ!」  圧倒的な開放感が、爽快感が、やってくる。 「んむぅんんんンンンんッ!」  同時に襲い来る、強烈な快感。  楓につままれ、弄られている乳首から。器具を挿入されているお尻の穴から。股間の拘束具に覆われている陰核(クリトリス)から。ビリビリと痺れるような快感が生まれる。  生まれた快感が全身に広がり、私を蕩けさせる。 「んぅうンンンんんんんッ!」  呼吸と食事を制御する突起をねじ込まれ、マスクに塞がれた口で喘ぎながら。 「ぅむぅんんンンンんんッ!」  厳しい拘束のなかで、動けない身体がビクンビクンと跳ねる。 「んぅんんッ……ンムンんんんッ!」  意識が飛ぶ。飛んだ意識が、跳ねて戻る。 (なにコレ!? なにコレ!? わらひおかしくなっちゃう!?)  とまどいながらも、圧倒的な快感の奔流に押し流されていく。 「あはは……千早ちゃん、イッてるよ! うんちしながら、イッてるよ!」  そのとき聞こえた楓の声で、自分がイッているんだと気づいた。  排泄しながら絶頂しているんだと、思い知らされた。  実のところ浣腸の前、流し込まれた流動食には、媚薬が混入されていた。  その効果で、浣腸されながら乳首を屹立させてしまった。屹立させた乳首をつままれただけで、感じてしまった。  そして排泄が許されると同時に、お尻の器具と陰核の直上に仕込まれていたしかけが、震動していた。  その装置の力を借りて、私はお尻と陰核でも感じてイッてしまった。  しかし、私は媚薬のことも、器具と拘束具のしかけも知らなかった。初めての強制大量浣腸で思考能力を奪われ、疑うことすらできなかった。  疑うことができず、拘束され、支配され、管理されただけで感じたと。浣腸され、乳首を弄られながら強制的に排泄させられただけでイッてしまったと、信じ込まされた。  すべては、私を一気にMに堕とすための、巧妙にしかけられた罠。 「排泄しながらイッちゃう千早ちゃんは、M確定だね!」  にもかかわらず初めての絶頂に酔い、ますます思考能力を失った私の精神に、楓の言葉が染み込む。  染み込んで、私の心をますますM色に染めあげる。 (私、わたし……厳重に拘束され、いっさいの自由を奪われ、支配され、管理され、排泄しながらイッちゃう、Mの女の子……)  はっきりと自覚しながら、私は意識を手放した。 「ぅ、ん……」  低くうめいて、私は目覚めた。  濃いめのレンズごしに、東向きの窓から差し込む陽の光。  もう、朝だ。  身体のどこかが極端に痛むということはない。少しだけ気だるさを感じるのは、激しく絶頂し、気を失ったまま眠ってしまった翌朝だからだろう。  恒星間航行宇宙船の乗員の肉体を数年単位で管理するための装置の試作品だからあたりまえかもしれないが、それでも楓の技術はすごいと思う。  強制的に排泄させられながら乳首を弄られ、なぜかお尻と陰核に強烈な快感を感じながら、私は絶頂に達した。  そんな私がMであることは、もはや疑う余地はないだろう。  そしてそのことを、楓は拘束されてすぐの段階で、見抜いていた。  いや、違う。 『大丈夫……てか、赤坂さんが適任なの』  私を実験に誘うときの、楓の言葉。  おそらくその時点で、楓は私の本質を疑っていた。  もしかするとそれは、ずっと前から。私がこの町に来てすぐの頃からだったのかもしれない。  でなければ、空気圧のクッションで多少は調整できるとはいえ、私にぴったりの器具や拘束具は用意できないだろう。  つまり、出会った頃から、私は実験対象に選ばれ、狙われていた。  いや、それも少し違う。 『だとしたら、とても嬉しいんだけど』  私がM的な兆候を見せたときの、楓の言葉。 『千早ちゃんがMだとわかって、嬉しいよ』  私がMであると確信したときの、楓の言葉。  そして拘束され、支配され、管理される私を見るときの、楓の妖しいほほ笑み。蕩けたような瞳。  性的な経験が少ない――というより、昨夜まではまったくなかった私にもわかる。あれは、女の子が欲情したときの表情だ。  私の身体を薬で痺れさせ、実験の準備を始めた当初、モノを扱うように作業していたのは、欲情を抑えるためだろう。作業の途中から瞳が妖しく輝き始めたのは、それでも欲情を抑えられなくなったのだろう。  つまり、私が拘束され、支配され、管理されて燃えあがるMであるのと対照的に、楓は拘束し、支配し、管理して萌えるS。  だとしたら――。  そこまで考えたところで、机に突っ伏して眠っていた楓が、むっくりと起き上がった。  家に帰ればフカフカで快適なベッドもあるだろうに、固い机に突っ伏して眠っていたのは、私をひとりで放置しておけないからだ。  楓にとって、もともと私は『大切な友人』でも『大切な実験材料』でもなく、『大切な伴侶(パートナー)』にしたい相手だったのだ。  そのことで、先ほど抱いた思いが、私のなかで確信に変わる。  楓に対する想いも変わる。  この学校でただひとり親しく接してくれる友人から、ただひとりの愛しい女性(ひと)へ。 「おはよう、千早……」  にっこり笑って、楓が声をかけた。  昨日『赤坂さん』から『千早ちゃん』に変わった呼びかたが、今朝は『千早』になった。  そのことも、今は嬉しい。 「さっそく、朝の食事とお通じを行うわね」  自分のことより先に、私の管理をしてくれることも、今は嬉しい。  膀胱が軽くなった。おしっこを強制的に排泄させられたのだ。  口中に流動食を流し込まれた。強制的に水分補給を兼ねた食事が与えられたのだ。  そして、強制的に浣腸液の注入。  同時に、楓が乳首に触れる。 「んぅうッ!?」  そこで、昨夜よりさらに大きい快感に襲われた。 「うふふ……うまくいってるわ。もう傷も塞がって、痛みはないけど、一番敏感で感じやすくなってる頃かしら?」  そう言って、それに軽く触れただけで私を喘がせ、楓が小型のカメラを取り出して私の胸をアップで映す。 「……ッッ!?!?」  その映像を、透明度を保ったままレンズに投影され、私は息を飲んだ。  色素の沈着が少ない、私の乳首。その両の胸の頂きの豆を、刺し穿ち、貫く黒い金属環。 「千早が眠っているあいだに、乳首ピアスを着けたの。素材はチタンだから、大きさのわりに軽く、重みの負担は少ないでしょう?」  無惨な状態の胸の映像の向こうに、妖しく笑う楓の顔。  しかし楓の表情は、昨夜と少し違う。  妖しいほほ笑みのなかには、いくばくかの緊張感がある。嗜虐的な光をたたえた瞳の奥には、わずかばかりの怖れがある。 「こんな身体にされて、千早はもう、戻れないね」  自信たっぷりに見せて言っているが、楓は怖れているのだ。乳首ピアスという残酷な処置を、私に拒絶されることを。  とはいえ、その心配は杞憂だ。  なぜなら――。 「んむぅんンンんんんッ!」  乳首ピアスを着けられた胸と、楓の顔を重ねて見ながら、私は瞬間的にイッた。  今朝の流動食に媚薬は混ぜられていないのに。まだ浣腸は始まったばかりなのに。股間の器具はいっさい震動していないのに。  楓に拘束され、支配され、管理されていないと生きていけない身体にされた。そのことを実感しただけで、私はイッた。 「ち、千早……!?」  そのことに、楓が驚く。  そして驚きは、すぐに喜びに変わる。 「千早っ! もう離さない!」  そう言われ、厳しく縛(いまし)められた身を抱きしめられ、楓の喜びを私の悦びに変えて――。  私は、さらに高いところに飛ばされた。 (了)

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