バキューム式自動徘徊晒し機試験運用中 (Pixiv Fanbox)
Published:
2021-07-31 15:00:11
Edited:
2023-12-31 23:39:30
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「こちらがバキューム式自動徘徊晒し機です」
「先の大戦が終結後、余剰となった機械歩兵の転用案コンペにわが社が提案したという?」
「はい。すでに仮認可は下り、今週より囚われた敵国のスパイを閉じ込めての試験運用が開始されておりますので、採用はほぼ間違いないかと」
「うむ、それは重畳だが……これでは需要が少ないのではないかね? なんというか……建設重機とか、警備用とか、もっと大量受注が見込めるものを……」
「営業部長のお立場として、そうお考えになるのは当然ですわ。ですがそういったものは、すでに大手が開発しております。わが社では、とうてい太刀打ちできませんわ」
「つまりそれで、ニッチな需要を狙って?」
「そうです。大戦中捕らえたスパイや国内の敵国協力者で、特別刑務所は満杯状態ですからね。その処罰に当局は頭を悩ませていましたので、わが社の案に飛びついてきましたよ」
「それなら高値で納入でき、大量受注は見込めなくても、1機あたりの利益率は高いと」
「そのとおりですわ」
「それはさておき、この受刑者……」
「はい?」
「いや……とうてい敵国のスパイなどという、凶悪な犯罪者には見えないのだが……」
「ほんもののスパイが、いかにもスパイ然とした容姿をしていると思います?」
「なるほど、そういうものかね」
「当局からわが社に連行されてきたときから、立ち上がることすら困難なバレエヒールのブーツを履かされていたことがその証です。おそらくまともに動けたら、わが社の警備員では取り押さえることも危険でしょう」
「一見可憐でか細い女性にしか見えないのに……」
「はい。今も媚薬を投与したうえで淫部を常に刺激しておかないと、なにをしでかすかわかりません」
「なんと……スパイとは恐ろしいものなのだな。ともあれ、開発は順調なんだね?」
「もちろんです。おそらく早期に正式採用が決定されるでしょう」
「うむ、ではよろしく頼むよ」
「はい、お任せください」
答えて開発状況を確認しにきた営業部長を送りだし、私はバキューム式自動徘徊晒し機に閉じ込められたスパイを見上げてつぶやいた。
「うふふ……貴女、ほんとうは凶悪なスパイなんかじゃないんだけどね。ただ、この私の誘いになびかなかったから、当局にスパイの協力者として密告しただけ。適当にでっち上げた証拠を添えてね。そのおかげで……」
そう言いながら私は、ゴム膜がみっちり貼りついた彼女の脚に頬を寄せた。
「おかげで、私は貴女を手に入れた。試験運用収容後も、貴女の身柄は売り込みのデモンストレーションに使用できるよう手配ずみ……もう、けっして逃さないわ。一生閉じ込めて、飼ってあげる」