SSつきイラスト 完全管理刑のソレ (Pixiv Fanbox)
Published:
2018-12-13 10:27:59
Edited:
2022-02-14 06:01:09
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「おはよう」
声をかけて、まだ誰も登校していない教室に入ると、掃除用具入れのすぐ横にソレは在った。
元は陸上部の選手だったが、最後の夏の大会の直後重大な校則違反を犯し、ソレはそうなった。
とはいえ卒業も間近に迫った今は、はじめからそこにそうして在ったかのように、誰もソレのことを気に留めない。
このクラスの委員長として、ソレの世話係を務める私以外は。
ブゥウン……。
私が通学用の鞄を机に置き、胸ポケットから取り出したリモコンのスイッチを押すと、誰もいない静かな教室で、モーターが低く唸り始めた。
ソレの朝の日課――肛門と尿道に着けられた排泄管理装置による、強制排泄を開始したのだ。
まずは、椅子の下に設置された装置から、肛門内に浣腸液の注入。具体的に何リットルかは聞かされていないが、一般女性ならとうてい耐えられない量の浣腸液を、ソレは腸内に注入されているらしい。
脚、腕、胸、首、それから頭頂部、全身を幾本もの革ベルトで拘束されているソレだが、お腹にだけはベルトがかかっていない。
それは大量浣腸で膨らむお腹を締めつけすぎないための配慮――と、委員長としてソレの世話を任されるようになった当初に聞かされた気がするが、もうはっきり憶えていない。
とはいえ、ソレのお尻の下の装置が動いているあいだに、私にはやるべきことがある。
リュック形の制鞄から緑色の液体が満たされたペットボトルを取り出し、ソレに歩み寄る。
掃除用具入れのロッカーから折りたたみ式の踏み台を取り出し、ソレの横に設置。上に乗って頭上の食餌管理装置上部の蓋を開け、ペットボトルの中身――水分補給兼用の流動食を注ぐ。
その作業を終えたところで、モーターの唸りが止まった。浣腸液の注入が終わったのだ。
機械による超大量浣腸、その苦痛は、そうとうなものだろう。しかし、ソレは苦悶の声すら漏らさない。
毎朝の日課だけに、大量浣腸に馴れているのか。
いや、違う。
今はまだ顔は見えていないが、その表情は苦痛に歪んでいるはずだ。声を出せるなら、おそらく悶絶しているだろう。
そう、ソレは声を出せない。鼻孔から呼吸用の管を気道に挿管され、隙間を生体用パテで埋められて、声帯を空気が通過しない状態に貶められているのだ。
シュッ、シュッ、シュッ……。
声は出せなくても、速く激しく呼吸管を通過する空気の音が、ギュッと握った手が、ソレの苦痛を雄弁に語っている。
とはいえ、その音は耳をすませていないと聞き取れない音量。手の動きも、注意深く観察していないとわからない小さなもの。
もし排泄管理が授業中に行われたとしても、はたして何人のクラスメートが気づくだろう。
そんなことを考えながら、食餌管理装置の蓋を締め、踏み台を折りたたんでロッカーにしまうと、再びモーター音が聞こえた。
浣腸に耐える時間が終わり、排泄が許されたのだ。
いや、許されたというのは正確ではないかもしれない。
肛門から腸内まで、尿道から膀胱まで、排泄管理器具を挿入されて隙間なく固定されたソレには、モーターが生む陰圧による強制排泄を拒むことすらできないのだから。
シュー、シュー、シュー……。
ソレから聞こえる空気の通過音が落ち着き、手が軽く握った状態になった頃、私は鞄からL形の透明チューブを取り出した。
そして、ソレの顔を隠すように閉じられたカーテンに手をかける。
そのカーテンの意味を、クラスメートたちは、授業中に気を散らせないためと説明されていた。
しかし、私はほんとうの理由を知っている。顔を隠すカーテンは、ソレのつらそうな表情を見ることで、残酷な行為に加担する罪の意識を抱かせないためのものなのだ。
とはいえ世話をするためには、開けなくてはならない。
カーテンを開けると、ソレと目が合った。
『残酷な行為に加担する罪の意識』
実際私もはじめのうちは、ソレの顔を見るたび、いたたまれない気持ちになった。
しかし今はもう、慣れてしまった。慣れるどころか、私は――。
「うふふ……」
すがるように上目遣いで私を見上げるソレを見て、自然と笑みがこぼれる。
「うふふ……」
薄く嗤って、鼻孔のチューブが気道に挿管されているのと同じように、食道まで挿入された口枷の管と、食餌管理器具のノズルをチューブでつなぐ。
そしてもう一度リモコンのボタンを押すと、ソレの口に流動食が流し込まれ始めた。
必要な栄養素を摂取するためだけの食餌、ただの栄養補給。食道まで達する管で舌をバイパスされ、ソレは味を感じることもできない。もちろん排泄管理同様、食餌管理を拒むこともできない。
ソレは、私と私が持つリモコンに、生殺与奪の全権を握られている。
そして私が持っているリモコンは、排泄と食餌の管理器具のものだけではない。
「うふふ……」
食餌管理を終え、チューブを外し、もう一度嗤って私はソレにもうひとつのリモコンを見せた。
管理装置のカード形のものとは違う、スイッチがひとつしかないピンク色のリモコン。私がソレのために用意した、秘密のエッチな装置。
それを見せられたところで、ソレの頬が上気した。
カチリ。
そのスイッチを私の指が押し込んだ直後、ソレの瞳が蕩けた。
シュッ、シュッ、シュッ……。
しばらくすると、ソレの呼吸が荒くなってきた。
「うふふ……それじゃ、またね」
性的な昂ぶりの兆候を見せ始めたソレに声をかけ、私は再び彼女の顔をカーテンで隠した。
私たちは、もうすぐ卒業。
一応授業に出席していることに加え、陸上部時代の華々しい活躍で罪一等を減じられ、春にはソレも卒業を認められるという。
そうなったとき、私はソレを引き取ろうと思う。
卒業後上京する折りに、ソレを――幼なじみで、かつてはいつも一緒にいたその子を連れていき、一緒に暮らそうと思う。
だって私にはもう、ソレは必要なモノだから。
「完全管理刑に処してください」
夏の大会で学園の陸上部始まって以来の好成績を残したあたしは、望むことを訊ねられ、思いきってそう答えた。
完全管理刑。それは学園における、最低最悪の恥辱刑である。
「完全管理刑に処したうえで、クラス委員長を世話係に指名してください」
その刑を望んだうえで、そう希望した。
本来なら、学園で表明してはならない性癖の発露。けっして口にしてはいけない歪んだ恋心の告白。
はたしてそれは、受け入れられた。
そうなりたいと望んだとおり、卒業までの数カ月間、あたしは愛しい女性《ひと》にすべてを管理してもらう権利を手に入れた。
そして今、あたしはその女性に生涯管理してもらう権利も手に入れようとしている。
とはいえ、それはまだ先のこと。あたしはまだ、知らないこと。
そのときのあたしは、愛しい女性が仕込んでくれた、小さく唸りをあげて振動する淫らな器具がもたらす快感に酔うことで精いっぱいだった。