小説 異世界の奴隷性女 第2部 3話 (Pixiv Fanbox)
Published:
2018-11-16 09:19:40
Edited:
2022-02-14 05:58:57
Imported:
Content
3話 拙い調教に堕ちる
ジャラ、ジャララ……。
木造の粗末な部屋、いや小屋の一室に、ホイストを巻き上げる音が響く。
ジャラ、ジャララ……。
鎖が耳ざわりな音を立てるたび、灯里の上半身が起こされていく。
あれから――。
肉体に受ける刺激すべてを快感に変換する魔法のピアスと、その魔法の増幅装置たる金属球との接合部を切断されてから、灯里はホイストのフックを拘束衣の背中のベルトにひっかけられた。
そして今、そのホイストを、巻き上げられているのである。
ジャラ、ジャララ……。
巻き上げが進み、灯里の背中がほぼ直立した。
そこで、イリアが彼女のお尻をずらし、寝台の縁に腰かけるような形に、体勢を変えさせた。
「あふぁ、あ……」
それだけで、激痛とそれが変換された快感のなかで絶頂した余韻が肉体に残る灯里は、艶を帯びた吐息を漏らしてしまう。
「かろうじて正気が残っているし、魔法の増幅装置たる金属球を外したから、少しは改善しているのでしょうが、やはりこれでは……」
そのさまを見て、呆れたようにつぶやいて、イリアはホイストの巻き上げを続ける。
ジャラ、ジャララ……。
吊り上げも進み、灯里のお尻が寝台から浮いた。
股間のベルトに身体の重みがかかり、いっそう深く割れめに食い込む。
「あぅ、うぁん……」
それで性感を高められ、吐息にいっそう艶が増す。
「うぁん、あぁん……」
食い込むベルトの快感に酔いながら、さらなる快感を求めてしまう。
灯里が自分の足で立とうとせず、股間のベルトに体重を預けているのは、そのせいだろう。
もちろん、灯里には脚の自由もない。上半身の拘束衣とベルトで接続された袋状の拘束具に脚も閉じ込められているから、立ち上がってもふらついてしまうだろう。
その結果股間ベルトに体重をかけ、同じことになったに違いない。
しかし、結果としてそうなるのと、自ら望んでなるのとは違う。灯里の精神は堕ちきっていなくても、肉体は性奴隷そのものだ。
「ふう……」
そのことを確認したからだろう。イリアが小さくため息をついた。
「こんな状態で、再調教なんてできるのかしらね……」
しかしそのつぶやきを、灯里は聞いていなかった。耳には入っていても、脳には届いていなかった。
「あふぁ、ああっ……」
イリアがなにを考えているかも知らずわからず、灯里は食い込むベルトがもたらす快感に酔う。
熟練の魔法調教師ラウラの凄絶な調教により、徹底的に奴隷根性を叩きこまれた肉体は、目の前にある快感を求めてしまう。
「あぅん、うあっ……」
股間のベルトに体重がかかるよう、灯里は袋状の拘束具に囚われた足を地面につけようとしない。
「うあん、ああん……」
イリアが寝台を引きずって横に動かすと、鎖のよじれで灯里の身体がくるくると回り始めた。
ジャラ、ジャララ……。
それでも巻き上げは止まらず、くるくると回る灯里の身体が、高く吊り上げられていく。
そして灯里が脚を伸ばしてもつま先が床につかなくなったところで、ようやくホイストの巻き上げが止まった。
「あぅう、あぅう……」
そのことにも気づかず、脚を折り曲げたまま、艶声をあげながら灯里がくるくる回る。
「あぅん、あふぁあ……」
やがて元々のよじれのぶん回りきり、反対向きに回り始めても、灯里の喘ぎは止まらない。
「なんというあさましさ、快感に対する貪欲さ。元は無垢な娘だったでしょうに……」
かつて聖女と呼ばれたアーサを奴隷堕ちさせ、今は帝国随一と呼ばれる魔法調教師の手腕に感嘆しながら、イリアが鞭を手に取った。
「ラウラ・コペンハーデの調教を覆すほどのことは、できないかもしれないけれど……」
イリアがそう考えたのは、ラウラの奴隷調教の本質を知らないからである。
売られていった先で、新しい飼い主を絶対的支配者として受け入れるような調教を、ラウラは施している。
だから灯里は、目の前の加虐者を支配者と思い込んでしまう状態に貶められている。イリアを新しい主人とする運命を、受け入れている。
しかし、そのことをイリアは知らない。
そして無理かもしれないと思いつつ、灯里を調教しないといけない事情がイリアにはある。
エレナとの約束どおり、灯里を正気に戻したうえで従わせ、聖女の再来に祭り上げるために。
「そのためにも、やらないわけにはいかないのよ……」
小さな声でつぶやき、イリアは唇の端を吊り上げて鞭を振りかぶった。
ビシッ!
初撃は、袋状の脚の拘束具に覆われた太ももだった。
「ぃあああああッ!」
ぶ厚い革の上から打たれたにもかかわらず、灯里は目を剥いて絶叫する。
それもそのはず。イリアが手にしていたのは、武器や猛獣の調教にも使われる本格的拷問用の一本鞭だった。
「ぅぎぃあぁぁ……」
ジンジンと熱を持って尾を引く痛みに、口枷のリングを噛みしめて悶絶する。
それほどまでに、拷問用の鞭は強力だった。
そして、増幅装置たる金属球は外されたとはいえ、あらゆる刺激を快感に変換する魔法のピアスは健在。
「ぅうう……はふぁあ」
そのせいで、熱を持って疼く痛みは、じきに性的な快感に変換される。
「はひっ、はぅうん……」
その快感に酔っていると、2発め。今度は腕から背中にかけて。
ビシッ!
「ぎぁああああッ!」
打たれた衝撃で、目を剥いて叫ぶ。吊られた身体が揺れる。
揺れた反動で、股間ベルトがいっそうきつく割れめに食い込む。
「ぅあぁあぁん……」
悶絶しながら、揺れてくるくる回る。ホイストの鎖とそれを吊る梁がギシギシと鳴る。
激痛から変換された快感と、食い込む股間ベルトが生む快感そのものが、灯里を啼かせる。
「はふぁ、あぁあ……」
そして、3発め。
ビシッ!
このたび鞭が打ち据えたのは、1発めの少し上。拘束具に覆われていない、太もも上部だった。
「ぃ……ッ!」
はじめ痛みと認識できないほどの、猛烈な衝撃。
「ぃぎぁああああッ!」
続いて、これまでの2発をはるかに凌駕する激痛。
実のところ、イリアがそこを狙って打ったわけではない。彼女が狙ったのは、1発めと同じ場所だ。
魔法戦が本職の彼女は、鞭の扱いに関しては素人。正確に打つには熟練の技術が必要な一本鞭で、狙ったとおりに打つは至難の業。
とはいえ、灯里の乳首には、痛みをも快感に変換するピアスが健在。
拘束衣の股間ベルトも、きつく割れめに食い込んだまま。
「あぃあぁ……あふぁあ……」
そのため耐えがたい激痛も、やがて快感に変わっていく。
食い込む股間ベルトが、さらに大きな快感を生む。
そして痛みが大きかったぶん、遅れてやってくる快感も大きい。
「はふぁ、あふぁああん……」
激しい痛みが残るなかで、より大きくなった快感に襲われる。
そのことで痛みでも感じることを再び自覚させられながら、さらにもう1発。
ビシッ!
今度はイリアの狙いに近い位置、拘束具の革に覆われた部分に炸裂した。
「あぅあぅあああッ!」
また激痛。
猛烈な痛みに縛《いまし》められ、吊り上げられた身を揺らして耐える。
「あっふぁ、あぁん……」
続いて、痛みのなかに生まれる快感。
その快感は、元の快感に上乗せされる。打たれた直後の激痛でわずかに冷めるが、すぐにそれを上回る快楽に襲われる。
吊られたまま暴れたことで、股間ベルトの食い込みがいっそうきつくなる。
その頃には、イリアの瞳に再び嗜虐的な瞳が宿っていた。
嗜虐者としての本能を剥き出しに、灯里を鞭で調教する目的より、鞭で打って痛めつける行為そのものに酔い始めていた。
ビシッ!
休む間もなく、胸の下で組んだ腕のさらに下、拘束衣から露出したお腹を打ちすえられた。
「ぃぎぁあああああッ!」
口枷ごしの、断末魔のような悲鳴。
日焼けしていない部分の白い肌に、赤いミミズ腫れが走る。
「おぅ(もう)、あぇえ(やめて)えッ!」
あまりの激痛に懇願しても、意味不明な喘ぎ声にしかならない。当然、イリアには伝わらない。
いや、伝わっていても、イリアが手を止めることはなかったろう。
彼女は調教師ではなく、嗜虐者だ。その目標は調教の完成ではなく、嗜虐心を満たすことだ。
嗜虐心が満たされるまで、嗜虐者の鞭が止まることはない。
それは本来、調教とはほど遠い虐待行為。
しかし灯里は、イリア以上の嗜虐者、カルラ・ベルンハルトの虐待でも悦びを感じるよう調教されている。
だから――。
ビシッ!
同じく革に覆われていない尻に、鞭が炸裂した。
あきらかに、拘束具の革に覆われていない部分を狙っての打擲だ。そしてほぼ狙った場所に打てているのは、イリアが一本鞭を扱うコツを覚え始めたということだ。
「あっふぁ、あっあっ……」
ビシッ!
「ぎぁあああああッ!」
イリアが激痛を快感が凌駕するかしないかの頃に次の一撃を加えるのは、あえてそうしているのか。それとも、その速度が今の彼女の連発速度の限界なのか。
いずれにせよ、偶然そのペースは、今の灯里を鞭でイカせるのに最適のものだった。
ビシッ!
「ぎぁあああッ! あっふぁ、あぁん……」
激痛のなかに快感が生まれたところで、次の打擲。
ビシっ!
「ぃぎぁああッ! あっあっ、あぅん……」
ひと打ちごとに、灯里は高みへと押し上げられていく。
尻肉に走るミミズ腫れが増えていくほどに、絶頂に近づいていく。
そして、一本鞭による打擲で、灯里の尻がミミズ腫れに覆いつくされたとき、イリアが狙いを変えた。
ビシッ!
それは尻と同じく、拘束衣から露出した乳房への一撃だった。
「ぎッ……ッ! ッ!」
一瞬、息が止まるかと思うほどの衝撃。
打たれた柔らかい肉塊が歪み、揺れる。
「ぎッ……ッ! あッ!」
続いて襲いくる、強烈な熱。
「ぎぁあああああッ!」
わずかに遅れて、耐えがたい激痛。
乳房は、オンナの性感帯である。感じやすい場所である。
それはつまり、多くの感覚神経が、皮膚の薄いところに存在しているということでもある。
それだけに、痛みも大きい。
痛みから変換される、快感も大きい。
「あああああああッ!」
圧倒的な痛みと快感の大波に飲み込まれ、灯里は一気に高められる。
ビシッ!
もう1発。
「ふぎッ……ァああッ!」
苛烈な痛み。そして快感。
「あああぁあああッ!」
それで、はるかなる性の高みへと、一瞬で押し上げられる。
厳重に拘束されたまま、吊り上げられた肉体がこわばる。
首が仰け反り、ビクンと跳ねる。
「あはぁあッ! ふひッ、グぅうううッ!」
ホイストの鎖と木の梁を鳴かせ、前後不覚に啼きながら――。
魔法のピアスと割れめに食い込む股間ベルトの助けを借りたにせよ、灯里は鞭だけで絶頂に追い上げられた。
「あふぁ……あっ、あぁ……」
ときおりピクンと震えながら、激しい絶頂の余韻に酔う灯里を、イリアは肩で息をしながら見ていた。
途中から、無我夢中だった。
自らに嗜虐的な一面があることは理解していたが、これほど虐待行為にのめり込んだことはなかった。
同時に、のめり込んだ行為で、女を絶頂に追い上げたことも、初めてだった。
もちろんそれは、ラウラの調教の成果である。
帝国随一の魔法調教師の手により、性の快楽を覚え込まされた灯里の股間には、拘束衣のベルトが食い込んでいた。
その股間ベルトに常に快感を与えられている状態で、あらゆる刺激を快感に変換する魔法の乳首ピアスを着けられた肉体を鞭打たれた。
そのせいで、灯里は拷問まがいの拙い調教で、絶頂に追い上げられた。
もちろんイリア自身、そのことは知っている。
とはいえ目の前で、しかも自分の手により、繰り広げられた痴態は衝撃的だった。もともと嗜虐的な一面を持つイリアを簡単に酔わせるほどに、刺激的だった。
(もしかしたら……)
かのラウラ・コペンハーデの調教を覆し、彼女の手で躾けられた奴隷の再調教に成功したのではないか。
傲慢にもそう思えるほど、目の前の奴隷少女を、鞭だけで鮮やかにイカせることができた。
その驕りが、イリアのなかに新たな欲望を生む。
(この子に、あらためて奴隷堕ちを宣言させたい)
嗜虐者としての本能が、そう思わせる。
そうなると、もう欲望を抑えることはできなかった。
「あっ、ふぁ……はぁ……」
絶頂に酔う奴隷少女の後頭部に手を回し、開口式口枷を固定するベルトのバックルに手をかける。
しかしそこで、口枷にも魔法的なロックがかけられていることに気づいた。
「これは、時限式の魔法錠……カルラ・ベルンハルトの元に届けられたところで、解錠されるよう調整されていたようね」
そのことを苦々しく思いながら睨みつけると、奴隷少女が口枷からゴポリと涎を溢れさせた。
「あうぅ……」
奴隷少女が低くうめいたのは、溢れて拘束衣から露出した胸を濡らした涎が恥ずかしいのか、それとも反射的に声が出ただけか。
ともあれ、意味のある言葉は発せられなくても、声は出せる。首を動かすこともできる。
そう判断して、イリアが問うた。
「おまえの主人は、誰かしら?」
「あぁ、あう……」
その言葉に答えようとして、奴隷少女の口が、再び涎を垂らした。
「おまえは、誰の奴隷なのかしら?」
「ぃいあぁまぇう(イリアさまです)」
涎とともに吐き出された声は、不明瞭だった。
そこで確認のため、質問を変える。
「私が新しい主人と、認めているのかしら?」
すると、奴隷少女は蕩けた瞳でイリアを見つめてうなずいたあと、もう一度口にした。
「ぁあぃあ(私は)、ぃいあぁあぉおぇいぇう(イリアさまの奴隷です)」
言葉ははっきり聞き取れなくとも、少女野の態度で自分を主人と認めたことを確信し、ゾクゾクするような満足感を覚える。
実のところ、それはラウラの調教の成果である。
イリアと同じ、いや彼女をはるかに上回る嗜虐者であるカルラを主人として敬うよう、熟練の魔法調教師が仕向けたことである。
とはいえ、イリアはそのことを知らない。
知らないから、自分がラウラの調教を覆し、彼女の奴隷の再調教に成功したのだと思い込んでしまう。
そしてその傲岸不遜な驕りは、イリアのなかに新たな野心を生んだ。
(もしかしたら……)
今と違う生きかたも、できるのかもくれない。
(いえ、きっとできる……かのラウラ・コペンハーデの調教を覆すことができた私ならば!)
その思いに囚われたイリアは、自らの内に生まれた野心を抑えることができなくなっていった。