小説 令嬢の愛玩女装奴隷 後編 (Pixiv Fanbox)
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2021-02-12 14:17:31
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2021-10
Content
後編
「ここにうつ伏せになって、脚を軽く開いて、お尻を高く突き上げなさい」
貞操帯を外された僕の前にエアマットを置き、蜜果が命じる。
1週間、硬い金属の奥に閉じ込められた僕のペニスは、いまだ縮こまったまま。
勃起への、その先にある射精への、なにより蜜果がしてくれることへの期待感が高すぎて、緊張しているのか。
それとも、ペニスが勃起のしかたを忘れてしまったのか。
ともあれ、あれこれ考える余裕もなく、エアマットの上に膝を置く。蜜果に支えられながら、後手に拘束された上半身を倒す。
正直、楽な姿勢ではない。だが、これから行われる行為の前には、そのつらさも些細なこと。
そこで、高く突き上げたお尻を覆っていた、制服のプリーツスカートがめくり上げられた。
「あ、や……ッ!?」
「うふふ……恥ずかしい?」
「うん……は、はい」
「そうね、みじめではしたないポーズだもんね……でも、絶対に姿勢を崩しちゃダメよ。もしお尻を下ろしたりしたら、次は鞭で叩くわよ」
ピシャリと一度、尻肉を平手で叩いて言われ、それだけで動けなくなる。
みじめではしたない状態なんだと意識させたうえで、その姿勢を保つよう強制されてしまった。
「そのかわり、頑張ってじっとしていたら、うんと気持ちよくしてあげる」
そのうえで、飴と鞭を駆使して僕を導く。
恐るべき手練手管である。
その術《すべ》を、蜜果は学んで身につけたのか。はたまた、生まれついての支配者の血がなせる業《わざ》か。
それは、わからない。その理由を考えることも、いや彼女が手練手管を身につけていることにすら、僕は気づけない。
わからず、考えられず、気づけない僕のお尻の向こうで、パチンパチンとゴムの音。それから、蜜果が医療用の薄いゴム手袋を嵌めた手を、僕の股間に伸ばす。
縮こまったままのペニスを、人さし指と中指、さらに親指でつまむように持つ。
「はっ、ひゃ……」
それだけで、変な声を出してしまった。
「うふふ……かわいい声ね」
その声を揶揄し、蜜果の手が動きだす。
けっして大きいほうではない、むしろ標準より小さい僕のペニスを、3本指で軽くつまんで扱き始める。
「あっ、ひっ……」
また声をあげてしまったのは、ペニスが気持ちいいから。同じくらい、ゴム手袋ごしであっても、蜜果が扱いてくれることが嬉しかったから。
「はっ、いや……」
思わず拒絶の声をあげてしまったのは、彼女の手の中でペニスが硬度とサイズを増していくことが、とても恥ずかしかったから。
そしてその言葉を、蜜果は聞き逃さなかった。
「嫌なの? じゃあ、やめようか」
扱きを止め、半勃ちのペニスをフニフニと弄びながら蜜果が訊ねる。
「あ、やめて……」
そう言いかけて。
「ちが、やめるのやめて……」
言い直そうとして口にした言葉に、蜜果がクスリと笑った。
「うふふ……焦っちゃって、かわいい。そんなに、続けてほしい?」
さも可笑《おか》しそうに言いながら、ますます硬度を増したペニスを握る。
「ねぇシロ、扱いてほしい?」
「は、はい……」
「じゃあ、きちんとお願いしなきゃね?」
もう、恥ずかしがっている余裕はなかった。
蜜果の手の中でどんどん勃起していくペニスが、それを許さなかった。
「お願いします……して、ください」
なにを、は言えなかったが、蜜果にはそれで充分だったのだろう。
僕に懇願させること自体が、彼女にとっては大切だったに違いない。
「うふふ……いいわよ。してあげる」
満足そうに嗤い、蜜果の手が再び動きだした。
完全に勃起した僕のペニスを握り、前後に。
顔をエアマットにつけたまま、膝を立ててお尻を高く突き上げた姿勢だから、正確には上下に。
2度、3度。
「ひっ、はっ……」
気持ちいい。ペニスが気持ちいい。
4度、5度。
「はひ、はぁ……」
ペニスの快感そのものに加え、高貴な令嬢が扱いてくれているという事実が、とてつもなく気持ちいい。
6度、7度。
「はっ、あっ……ど、どうして……?」
こんなに気持ちいいのだろう。
蜜果がしてくれているからというだけなのだろうか。それとも、ほかに理由があるのか。
僕がうわごとのように口走ると、蜜果がその理由を教えてくれた。
「貞操帯で禁欲していたからよ。お腹を空かせて食べるご飯が美味しいように、禁欲の末にしているから、うんと気持ちよくなれるの」
そうして禁欲により増幅された快楽は、自慰以外の性体験がない僕には強烈すぎた。
「ひっあっ……ッ!?」
襲いくる猛烈な射精衝動。
「あひっ……ッ!?」
イクと宣言する余裕もなく、僕は暴発させてしまった。
「あッ……ご、ごめんなさいッ!」
ゴム手袋ごしとはいえ、蜜果の手を汚してしまうことを謝罪しながら、僕はイク。
「うふふ……いいのよ。いっぱい射精《だ》しなさい」
そのことを赦されながら、大量の精をぶちまける。
圧倒的な射精の快感。
1週間溜めてきたものを、一気に放出する開放感。
かつて味わったことのない至上の悦びに包まれるが、それで終わりではなかった。
「全然ちっちゃくならないね」
1度の射精ではまったく硬度を失わない僕のペニスを握ったまま、蜜果が告げた。
「もう1回してあげよっか」
そう言って、僕の答えは待たずに、再び手を動かし始めた。
気持ちいい。1回めより、気持ちいい。
それは、射精直後でペニスが敏感になっているのか。
それとも、僕の精でヌルヌルになった蜜果の手の動きが、いっそう妖しくなっているからか。
わからない。わからないが、気持ちいい。
「あっ、ひ、ぁああ……」
僕を情けなく喘がせながら、蜜果の手が動く。
ヌルヌルの白濁液を塗すように、竿のつけ根から皮を剥いた亀頭まで。
先ほどより繊細に、僕が今まで知らなかった、新たな快楽を呼び覚ますように。ゆっくりと、絶妙な力加減で、自慰ではしたことのないやり方で。
それが、あっけなく僕を追い上げた。
「あっ、ク……イクッ!」
今度はそう宣言し、再び蜜果の手の中に射精する。
2回めとは思えないほどの大量射精を終えたところで、蜜果の右手がペニスから離れた。
だがそれで、彼女の手による行為が終わるわけではなかった。
2回の射精を経て、わずかに硬度を失いかけた僕のペニスを、蜜果が左手で握り直す。
ただ握り直すだけじゃなく、ヌルヌルになった亀頭を手のひらで包み込むように持つ。
超敏感なそこを、白濁液をまぶして擦られて。
「はひゃ、ああっ!?」
悲鳴じみて喘ぐと、お尻の穴になにかが触れた。
それがペニスを離れた右手の指だと気づいたところで、ヌルヌルのそれが動き始めた。
「シロのここ、綺麗だね」
言われながら、窄まりの襞の上を、円を描くように撫でられる。
「い、いや……そんなところ……」
「どうして? 気持ちよさそうに、ヒクヒクしてるよ」
「だ、だって、それは……」
気持ちいいわけではないが、ムズムズと変な感じがするからだ。
そう言いかけた僕の言葉に被せるように、蜜果が告げた。
「うんちをするときのように、軽くいきんでみなさい」
ペニスの快感に支配され、思考力が落ちていたのだろうか。その言葉に反射的に従った直後――。
「あひいッ!?」
蜜果の指が、窄まりをこじ開けて侵入してきた。
「ど、どうして……?」
あっけなく侵入を許してしまったのか。
「シロが、心の奥底で挿入を望んでいたからよ」
それは、嘘だった。
うんちをするときのようにいきむことで、人の肛門は緩く開く。そのタイミングを狙ってヌルヌルに潤滑された指を押し込まれたら、挿入は容易になる。
しかし、そのことを知っていたはずの蜜果は、そうと告げない。そして僕は、そのことを知らない。
告げられず、知らない僕の奥まで、指が侵入してきた。
窄まりをこじ開けられ、ゴム手袋の指で擦られて、変な感じが強くなる。
「はっ、ひぁ……」
それで奇妙な感じが強くなったところで、亀頭擦りを再開された。
「あっひゃあッ!」
「うふふ……かわいい声で啼くのね。お尻がそんなに気持ちいい?」
「ち、違……こ、これは……」
ペニスの快感だ。しかし、そうと言い終えることはできなかった。
「嘘。だってペニスだけ触っているときより、気持ちよさそうだもの」
あまつさえ、蜜果にきっぱり言いきられ、そうかもしれないと思ってしまった。
そうなると、お尻でも快感を覚えるようになるのは早い。
そもそも人の肛門には、少なからず性感帯が存在しているのだから。要は、お尻が気持ちいいと気づけるかどうか。
「あっ、ひっ、ああっ」
亀頭をヌルヌルの指で擦られて、ペニスの快感に喘ぐ。
「ああっ、あっ、あっ」
肛門に指を抽送されて、お尻の快感に気づかされる。
「はひゃ、あふぁあッ!」
前と後ろの快感が渾然一体となるなか、僕は三たび追い上げられる。
「はひゃあッ、イクうッ!」
また、射精した。
蜜果の左手の中で、射精させられた。
それでも、終わらない。
ペニスを弄る左手も、肛門を凌辱する右手も、まだまだ止まらない。
「ひぁあッ、また……またぁあッ!」
イッた。イカされた。
「ふひいッ、イッ……ぐぅううッ!」
ペニスとお尻を責められて、圧倒的な快楽に飲み込まれながら、6回めの射精へと追い上げられる。
「うふふ……ずいぶん具合がよくなってきたわね。そろそろ仕上げましょうか」
そこで妖しく嗤った蜜果の指が、肛門入り口から数センチ奥、ペニス側の1箇所を押した。
直後、ペニスの奥にムズムズとした感覚。
知っている。わかっている。これは射精衝動だ。僕は、6回めの射精をさせられるのだ。
しかし――。
「あっ、あっ、あああッ!」
ユルユルと弄られる亀頭の快感が、より大きくなった。お尻の快感も、いっそう強くなった。
圧倒的な快感が、再び僕を飲み込もうと押し寄せる。
これまでで一番気持ちいい。でも違う。なにかが違う。
「あひゃ……な、なにコレぇ!?」
思わずあげた声に、蜜果は答えてくれなかった。
答えてくれないことを、気に留めるゆとりもなかった。
「あひいッ……イッッグぅううッ!」
猛烈な快感に飲み込まれ、押し流され、僕はイク。
とはいえ、射精している感覚はない。いや、実際に射精していない。
僕は射精しないまま、かつてない快楽に襲われているのだ、
それは、射精させられすぎて精液が尽きたからか。それとも――。
それ以上考えられなくなった僕がエアマットの上に突っ伏し、ピクリとも動けなくなったところで、ようやく蜜果の手が止まった。
「それじゃ、また来週の金曜日に来なさい」
その日の朝、そう告げて、蜜果は僕を送り出した。
(昨夜のあれは……)
なんだったのだろうか。
(きっと……)
繰り返しイカされて理性を失い、心のブレーキが効かなくなって快感が大きくなったのだろう。
にもかかわらず、精液が尽きてしまっていたから、射精しなかったに違いない。
「うふふ……あれはね、ドライオーガズムよ」
閉じられた扉の向こうで、蜜果がつぶやいていたことを、僕は知らない。
「射精なしに絶頂する悦びを、シロに教えてあげたの」
高級マンションの玄関ドアの向こうでつぶやかれた言葉か、僕の耳に届くはずがない。
「ふつうの性行為では味わえない禁断の快楽を覚え、溺れてしまったら、シロはもう戻れなくなる。私から離れられなくなる……」
玄関を離れ、廊下を歩きながらつぶやかれたその言葉は、蜜果には珍しく間違っていた。
ドライオーガズムを教えられなくても――もっとも、僕はそれを教えられたことにすら気づいていなかったが――はじめから蜜果から離れられない。
セーラー服姿で蜜果に声をかけられたときから。いや、それよりずっと前。
彼女のセーラー服の虜になり、頻繁に身につけるようになった頃から。違う、もっと前。
蜜果という気高い存在を知り、恋に落ちたときから、僕の運命は決まっていた。
とはいえ、彼女がひとり言《ご》ちた言葉を、僕は聞いていない。
「ぁあ、シロ……」
僕の名を呼びながら、自ら嵌めた貞操帯の奥の、女の子の場所を熱くしていたことも。
寝室のドアを開け、設定した時間がきてロックが解除されたタイマー式金庫を見て唇の端を吊り上げたことも。
昨夜の僕の嬌態を思い出しながら、熱く火照り濡れそぼる肉を慰めようとしていることも。
すべて、僕が知るよしもないことだった。
「ふう……」
鏡の前に立ち、ひとつため息をつく。
あれから――繰り返しイカされ、搾りつくされた挙句にドライオーガズムの快感をも教えて込まれてから、ひと月がすぎた。
「ふう……」
もう一度ため息をつき、自らの胸に目を落とすと、そこには両の乳首を貫くバーベル形のピアス。
先々週、病院に連れていかれ、嵌められたものだ。
「今週は搾精の前に、ピアスを着けるわ」
そう言われて、僕は素直に受け入れた。
断ると、貞操帯を外しての甘美な行為をしてくれないような気がして。いやそれ以上に、蜜果の命令に逆らうという選択肢を持てなくて。
「ピアスの穴は、外せばじきに塞がる。着けてみてどうしても嫌なら外してあげるし、けっして不可逆な措置じゃないから、安心しなさい」
貞操帯の経験から、言葉とは裏腹に蜜果は容易にはピアスを外してくれないのだろうと予感しながらも、僕は言われるまま病院についていった。
「今から行く病院の先生は、ピアス装着の経験豊富だから」
蜜果がそう言ったとおり、医師の技術が高かったのだろう。装着の痛みは最小限だった。
「ピアス穴が安定していないから、今日はハードな搾精は避けましょう」
そう言われ、お尻を弄られることなく、2回射精させられただけで行為が終わったのは物足りなかったが、翌日には痛みを感じなくなっていた。
とはいえ、乳首ピアス装着の影響がないわけではない。
まず、見た目。乳首の両側に金属球があり、それをつなぐ金属棒が肉を貫いている光景は、きわめて残酷なものだ。
それより大きな問題は、乳首が格段に敏感になってしまったこと。
おそらくそれは、もともと敏感な肉の内部を、硬い金属が貫いているからだろう。
ピアスを嵌められた僕の乳首はわざと、あるいは意識せず触れたとき、肉の内と外から刺激される状態に陥っているのだから。
そのせいで、僕はつい乳首を弄ってしまう。
週に1度の搾精の合間に性欲が溜まってきたとき、それまでは貞操帯を叩き、掻いていた。
それがピアスを嵌められてからは、乳首を弄るようになっていた。
あたりまえだ。いくら貞操帯を叩き掻いても快感は得られないが、乳首を弄れば容易に得られるのだから。
もはやピアスを嵌められた乳首弄りは、僕の日課になっていた。
そのせいだろうか、ピアスつきの乳首は、以前よりぷっくり膨れて大きくなったような気がする。
快感を得られるといえば、もう1箇所。ペニス搾精責めのたびに弄られ、その快楽を覚えさせられた肛門だ。
さすがに自分で指を挿入することはなかったが、乳首を弄りながら窄まりの襞を撫でると、快感はひと回り大きくなった。
実のところ、それは蜜果の狙いどおり。
貞操帯を着け、ペニスに触れられなくしたのも。週に1度の搾精時、肛門の快感を教え込んだのも。乳首にピアスを嵌めたのも。
僕に乳首と肛門での自慰を覚えさせるためだった。
そのうえで、僕を蜜果好みの奴隷に堕とすための行為だったのである。
そしてもちろん、僕は蜜果の思惑を知らない。
知らないまま、これから体操服とセーラー服を身につけ、蜜果のマンションを訪れなくてはいけないのに、僕は乳首を弄ってしまう。
「んっ、ふぅ……」
片手で乳首を弄り、もう一方の手で窄まりを撫でながら、甘い吐息を漏らしてしまう。
それが、蜜果の奴隷に堕ちる一里塚なのだと気づけないまま。
「シロ、乳首で自慰しているでしょう?」
セーラー服姿で訪れた僕を玄関に出迎えた光希が、開口一番そう告げた。
「そ、そんなこと……」
「していないとは言わせないわよ」
思わず否定しかけた僕の言葉を遮り、後ろから抱きしめた。
そしてセーラー服の上衣の上から、ピアスに貫かれた乳首を指で押す。
「はふ……」
直後、ジーンと快感が駆け抜け、甘い吐息を漏らしてしまった。
「はふ、はっ……」
上下にはたくように弄られ、呼吸を乱してしまった。
自分でするときより、快感が大きい。
それは、自分じゃない他人にされているからか。その相手が、蜜果だからなのか。
「ど、どうして……?」
僕が思わず口走ったのは、快感が大きい理由がわからなかったからだ。
しかし蜜果は、僕の乳首弄りに気づいた理由を訊ねられたと判断したのだろう。
「うふふ……だって、ピアスを嵌めただけで、ふつうはこんなに感度がよくならないわ。それに、弄りすぎて乳首が肥大しているわよ」
実のところ、それは嘘を含んでいた。
乳首の感度がよくなったのは、触れられたとき、ピアスのせいで肉の外と内から同時に刺激されるからでもある。、
乳首が大きくなったのは、膨れて屹立した状態を保つように、ピアスが乳首を貫いているせいでもある。
たしかに乳首は弄り続けると肥大化するが、たった2週間、ピアスの穴が安定してからなら10日ほどの短い期間で、ひと目見てわかるほどは大きくならない。
とはいえ、蜜果が告げた言葉は、僕自身がそうかもしれないと思っていたこと。
それゆえ、僕は蜜果の言葉をあっさり信じてしまう。
弄っていたから乳首の感度が増し、肥大化してしまったのだと思い込まされてしまう。
「このぶんだと、お尻も自分で弄っているんでしょう?」
あまつさえ、もうひとつの行為まで指摘されてしまう。
「乳首とお尻で気持ちよくなっちゃうんでしょう?」
その行為で快感を得、一定程度満足していることも、見抜かれてしまう。
「そ、それは……」
違う、していないと言い返せなくなったところで、蜜果が僕の気づいていない事実を告げた。
「それって、女の子の快感だよ?」
「えっ……?」
「ペニスを弄らなくても、射精しなくても、気持ちよくなって満足できる。それは、女の子の悦びだよ」
「……!?」
言われて、愕然とした。
たしかに、そのとおりかもしれない。射精に頼らない快楽は、男のものではなく、女の子のものなのかもしれない。
しかし、続いて投げかけられた言葉は、とうてい受け入れられないものだった。
「女の子の悦びを覚えたシロは、もう射精しなくてもいいね? 一生貞操帯を嵌めたまま、射精を禁止されても生きていけるね?」
「そ、そんな……射精禁止だなんて!?」
「射精できないのは嫌?」
あたりまえだ。乳首とお尻を弄る快感が女の子の悦びだとしても、僕は男だ。一生射精できないなんて、耐えられそうにない。
僕が必死で抗議すると、蜜果が妖しく輝く目を細めた。
「じゃあ、射精できればいいのね?」
「えっ……?」
「射精さえできれば、貞操帯は着けっぱなしでもいいのかって訊いてるの」
「そ、それは……」
それでいいとは、言えなかった。
貞操帯は存外に快適だ。うんちはまったく問題ないし、おしっこも洋式トイレに座ってならできる。装着自体の違和感も、今はさほど覚えない。
とはいえ、この先ずっと着けっぱなしというのは、やはり不安が残る。
しかし、拒否することもできなかった。
(もしかすると、射精すらさせてもらえなくなるかもしれない)
そう考えると、嫌とは言えなかった。
(制服も体操服も取り上げられたうえで、2度と会ってくれなくなるかもしれない)
そのことが怖くて、拒絶の言葉を口にできなかった。
そんな僕を、蜜果が巧妙に追い詰める。
「さっき、私がなんて言ったか憶えてる?」
「しゃ、一生射精禁止って……一生貞操帯を嵌めたまま……ッ!?」
「そう、一生。私は、生涯シロと添いとげるつもりなのよ」
射精禁止、貞操帯を外さないという負の言葉を、添いとげるという正の言葉に言い換える。
「わかった? 私の覚悟」
わかった。わからされた。
正確には『わからされた気がした』というべきなのだろう。彼女の言う『添いとげる』は、一般的な意味ではない。
しかしそのときの僕は、憧れ恋し続けた高貴な令嬢に生涯添いとげるなどと言われ、気持ちが昂ぶっていた。
そのせいで、認識の相違に気づけず、僕の心は大きく傾く。
蜜果と添いとげられるなら、一生貞操帯装着など、些細なことのように思えてしまう。
それに――。
「しゃ、射精はさせてもらえる……の?」
「もちろんよ」
きっぱりと答え、僕を後ろから抱く腕に力を込めた。
「貞操帯を、着けたままでも?」
「ええ、そう言ったはずよ」
そう告げて、耳たぶに息がかかる距離でささやいた。
「今まで、私が嘘をついたことがある?」
なかった。ほんとうはいくつかの嘘があったが、僕はそれに気づいていない。
「今まで、シロを気持ちよくさせなかったことはある? つらい思いだけをさせたことがある?」
それは、ほんとうになかった。
たしかに貞操帯による禁欲期間はつらかったが、それはのちの快感を大きくするための性のスパイスでもあった。
「だったらもう、迷う必要はないわね?」
そのとおりだ。蜜果に従っていれば、一生彼女と添いとげられる。射精させてもらえる。気持ちよくしてくれる。
そうと気づき――ほんとうは気づいたと思い込まされて――僕は迷いを捨て、蜜果に懇願していた。
「射精さえできれば、貞操帯は着けっぱなしでもいいです……いえ、一生貞操帯を外さないでください」
「今日は、きっちり拘束するわね」
僕の右手首に革の枷遠巻きつけながら、蜜果が口を開いた。
「気持ちよすぎて、シロが暴れちゃうかもしれないから」
そんなことが、あるのだろうか。
痛くて、苦しくて暴れるんじゃなく、気持ちよすぎて暴れるなんてことが。
とはいえ、やめてと言うことはできなかった。
『今まで、私が嘘をついたことがある?』
先ほどの、蜜果の言葉。僕は、彼女が嘘をついたことがないと信じていた。
『今まで、シロを気持ちよくさせなかったことはある? つらい思いだけをさせたことがある?』
ふだんより厳しい拘束も、きっとつらいだけのものではない。僕をより気持ちよくさせるためにすることなのだ。
そう考えながら、左の手首。さらに、両の二の腕。ぶ厚い、でも上質で柔らかい革の枷を、きつく巻きつけられる。
それから蜜果が取り出したのは、手首や腕の枷より幅広の革拘束具だった。
「首枷よ」
その名を告げながら、蜜果が僕の首に拘束具を巻きつける。
するとそれは、鎖骨のすぐ上から顎の下まで、僕の首を覆い尽くした。
「うッ……」
首枷のベルトをきつく締め込まれ、苦しさにうめく。
しかしベルトのバックルを留められると、首枷の締めつけはわずかに緩んだ。
「首が締まりすぎたりしていない?」
問われてうなずこうとして、首の動きが著しく制限されたことに気づいた。
「はい、平気です」
うなずく代わりに言葉だけで答えたところで、蜜果が新たな装具を取り出した。
それは、頑丈そうな金属製リングを中心に、短いベルトが4本組み合わされたもの。
「両手を後ろに腕がコ形になるように組みなさい」
言われてそのとおりにすると、両の手枷をひとつにまとめ、ベルトの1本につながれた。
さらに反対側のベルトを首枷につながれ、コ形に組んだ腕を下ろせなくされた。
それから手枷と首枷をつなぐベルトと交差し、十字を描くように腕枷どうしをつなぎ、それぞれのベルトの長さを調整される。
「動ける?」
問われて腕に力を込めてみるが、手枷腕枷と首枷を相互につなぎ合わされたせいで、上半身全体が固められたように動かせなかった。
「どこかきつすぎたり、痛んだりしない?」
大丈夫だった。拘束そのものはきわめて厳しいものだが、身体を傷めたりしないよう充分配慮されていた。
僕がそう答えたところで、満足げにうなずいた蜜果が、新たな拘束具を取り出す。
「ボールギャグよ」
それは、複雑に組み合わされた革ベルトに、赤いゴム球が取りつけられた装具だった。
「よく見かける穴あき樹脂球のボールギャグは、涎を垂らさせて辱めるためのプレイグッズ。でもこれは、被装着者の口を完全に塞ぎ、言葉を奪うための箝口具なの」
その言葉におののく僕の口の前に、蜜果がボールギャグのゴム球をかざす。
「はい、あーん」
言われて口を開けると、ゴムの球を押し込まれた。
大きい。
「んグ、あ……」
苦悶しながら、なんとかゴム球を口に受け入れたところで、頬に食い込むほどきつく、後頭部でベルトを締め込まれた。
それでゴム球を吐き出せなくされて、頬から眉間のあたりでひとつになる逆Y字の縦ベルトを締められる。顎の動きを制限するように、下顎のベルトも留められる。
上半身の自由に続き、もはや言葉も奪われた。
「私の名前を呼んでみなさい」
蜜果に言われ。
「んぅうんむ(蜜果さん)……」
高貴な令嬢の名を口にするが、声はくぐもったうめきにしかならない。
予想以上に喋れないことに愕然としながら、彼女の手を借りていつものエアマットの上に腰を下ろす。
「ここにもたれなさい」
そう言って蜜果がぶ厚いクッションを置いたのは、後ろに倒れても後手に拘束された腕に体重がかからないようにするためか。
その後太ももの裏とふくらはぎをくっつけるように脚を折りたたまれ、伸ばせないよう左右別々にベルトで縛られたところで、クッションにはもうひとつの目的があったことに気づいた。
それは貞操帯に覆われた股間、特にペニスを閉じ込める金属ドームを、僕に見せること。
スカートを腰のあたりまでめくり上げられても、ただ仰向けに寝ただけなら見えないはずのそれが、背中の下にクッションがあることで自然に視界に入っていた。
そして折りたたまれて固定され、M字開脚を強制された両脚のあいだに膝をついた蜜果には、ペニスのドーム以外のものも見えている。
「うふふ……」
妖しく嗤う蜜果が、いつもの医療用ゴム手袋を両手に嵌めた。
セーラー服の上衣の裾をたくし上げ、胸も露出させてから、樹脂製ボトルに入った透明の液体を手に取った。
「んぅう(それは)……?」
不自由な口で思わず問うてしまったが、僕はそれを知っている。
ローションだ。
「うふふ……」
粘土の高い液体を手に塗しながら、蜜果が嗜虐的な光を宿した瞳で僕を見る。
捕らえた獲物をどうやって食べようか、舌なめずりする猫科の肉食獣のような目だ。
対して僕は、捕らえられた草食の小動物だ。いや、もっと憐れでか弱い存在だ。
草食の小動物なら、必死の抵抗を試みることはできる。逃げる機会を探すことならできる。赦しを請い、助けを求めて、声をあげられる。
しかし厳重に拘束された僕には、それら生き物として最低限の行為すら許されていない。
そのみじめな境遇を自覚したところで、蜜果の手がピアスつきの乳首に触れた。
ゾワリ、と快感が駆け抜ける。
「んっ、ぅう……」
ボールギャグで塞がれた口で、くぐもって喘ぐ。
「んぅ、んむ……!?」
思わず身をよじりかけてまったく動けず、身体をピクリと震わせる。
そこで、もう一方の手でお尻の窄まりにに触れられた。
ローションまみれの手で、妖しい手つきで襞を撫でられて、ここでも快感が生まれる。
「ぅう、んむぅ……」
くぐもった喘ぎ声をあげるあいだにも、お尻の快感が大きくなる。
それと比例するように、乳首の快感も大きくなる。
ピアスに穿たれた乳首を指で押され。
「んむっ、んぅう……」
肉の内と外から快楽を掘り起こされ、くぐもって喘ぐ。
そこで、窄まりの中心も、ツンツンと押された。
もう、わかっている。毎週何度もそこを弄られ、馴らされている。
挿入するよの合図だ。
蜜果の意図を察し、言われずともうんちをするときのように軽くいきむ。
するといつものように、蜜果の指があっけなく挿入された。
「んっ、ふぅうん……」
今日一番の快感が駆け抜け、喘ぎ声が鼻に抜ける。
「んむぅ、んぅん……」
指のつけ根まで挿入され、さらに快感が大きくなる。
「んふぅ、んむぅん……」
奥まで挿入された指を抜ける寸前まで引かれ、もっと大きな快感に襲われる。
ジーンと痺れるような快感が、下半身に広がる。
肛門のみならず、ペニスの奥にも痺れに似た感覚が広がる。
気持ちいい。ひとりでしているときと同じように、いやそれよりずっと、気持ちいい。
気持ちいい、気持ちいい。ペニスには触れられないまま、乳首と肛門に生まれる快楽が、全身を包み始める。
でも、ペニスを封印されたまま気持ちよく射精するという状態には、まだまだほど遠い。
そう感じながらも、乳首と肛門の快楽はどんどん大きくなってくる。
「んぅう、んむぅん……」
塞がれた口から漏らす喘ぎ声に、艶が混じってきた。
「んむん、うむぅん……」
押し寄せる快感に、頭が蕩けてきた。
そのときである。
「んぅんんんッ!?」
蜜果の指が、肛門内の1箇所を押した。
そこは毎週の搾精責めの仕上げに、押される場所である。
打ち止めで射精しなくなっているのに、僕は最後にそこを押されてイカされる。
これまでずっと、そう思っていたのだが――。
「前立腺、知ってる?」
薄く嗤ってそこを押しながら、蜜果が口を開いた。
「なにかは知らなくても、言葉くらいは聞いたことがあるでしょう?」
「んっ、んぅんッ!」
ペニスの裏側の奥のほうが締めつけられるような、キュンキュンする感じに襲われながら、カクカクとうなずく。
「ここがね、シロの前立腺」
そう言いながら、もう一度。
圧倒的な快感の中に生まれる、射精寸前のような感覚を再び与えながら、蜜果が告げる。
「んむぅんんんッ!」
その言葉に、僕は悲鳴混じりのうめき声で答えることしかできなかった。
それほどまでに、僕は大きな快感に襲われている。
ピアスで快感を増幅されているとはいえ、乳首だけではこれほど気持ちよくなれないだろう。
ピアスつき乳首の快感に、お尻の快感が上乗せされ、さらに前立腺をマッサージされているから、これほどの快感が生まれているのだ。
とはいえ、それはあとで考えてわかったこと。大いなる快楽に翻弄される僕には、そこに思い至る余裕すらなかった。
「前立腺の絶頂には、ドライオーガズムとウェットオーガズムがある……」
そんな僕の前立腺をリズミカルに押しながら、蜜果が言葉を続ける。
「いつも責めの仕上げにシロにあげているのは、ドライオーガズム。射精を伴わない絶頂」
つまり、最後に射精しなかったのは、打ち尽くして空になっていたのではなく、そういうイカせかたをされていたのだ。
「対してこれからシロにあげるのが、ウェットオーガズム。射精を伴う絶頂よ」
そして、蜜果がそう告げた直後、締めつけられるようなキュンキュン感がいっそう強くなった。
「んぅ(ああ)ッ、んう(これ)ッ!?」
射精寸前の感覚だ。
圧倒的な快感に襲われながら声をあげた直後である。
「ンむぅううううッ!」
これまでで――今まで生きてきたなかで――一番大きな快感が押し寄せた。
「んムンんんんんッ!」
押し寄せる快感の大波に飲み込まれ、あっさり押し流された。
そこで、ペニスの奥のどこかを、熱いなにかが通過する感覚。
「イキなさい、シロ!」
高揚した声で蜜果が告げ。
「ゥムぅうううンッ!」
押し寄せる快感に艶めいてうめいた直撃、貞操帯の小さな金属ドームに設えられたノズルから、白濁液がドロリとこぼれ出た。
あきらかに、僕のペニスが吐き出したものだ。
にもかからず、射精した実感はない。ぶちまけた開放感や、爽快感もない。
だが、快感はあった。その快楽は大きかった。
身も心も蕩かせるような、これがあればほかになにもいらないと思えるほどの、大いなる悦びに包まれていた。
そしてその悦びは、まだまだ続く。
ただ続くだけじゃなく、ペニスを刺激されて射精したときのように、いったん途切れることもない。
「んふ、んんぅんんッ!」
またイカされた。
「ンむぅううううんッ!」
三たび、ドロリと射精させられた。
「ぅンんむぅうううッ!」
繰り返し、絶頂させられた。
それでも終わらない、止まらない。
僕はもはや、前立腺を押されてイクだけの、イキ人形。
抵抗できず、逃げられず、中止を請う術《すべ》すら奪われて、弄ばれながらイカされ続ける、蜜果の愛玩奴隷。
そうと教えられるまでもなく、自分がその身分に堕ちたことを実感しながら――。
僕は蜜果が満足するまで、イカされ続けた。
それから、約半年がすぎた。
冬服だと汗ばむ季節になった頃、身頃が白い中間服と、夏用スカートを与えられた。その後しばらくして、半袖の夏服もわたされた。
今、蜜果の中学時代の制服は、すべて僕の手元にある。
そして僕の身柄は、蜜果の手元にある。
そう、僕は今、蜜果のマンションで暮らしている。一緒に暮らしながら、彼女の愛玩奴隷として所有されている。
もともと住んでいたアパートを引き払ったことは、当然のことながら両親も知っている。愛玩奴隷になったことまでは伝えていないが、蜜果と暮らしていることも知られている。
生涯勝手の地位を得て家を出たとはいえ、蜜果は棚埼家の令嬢。その人と同棲するということに、両親は驚いた。同時に驚きながらも、同棲を認めた。
当然だ。僕の地元では、棚埼の名にはそれだけの重みがある。
そんな蜜果との暮らしのなかで、実際に貞操帯を二度と外されないということはなかった。
メンテナンスと称し、定期的に貞操帯内部や、身体のどうしても触れられない部分を清掃するためだ。
もちろんその際、僕が自分のペニスに触れることも、見ることも禁じられている。そのためメンテナンス中は両手を拘束され、目隠しもされている。
そうしてメンテナンスを受けたあとは、また貞操帯でペニスを封印されての生活。
それにも、もう慣れた。馴らされた。貞操帯を着けられたまま、乳首と肛門で気持ちよくさせられ、前立腺でイカされる行為は、癖になっていた。
もう、一生ペニスなんか弄らなくていい。
この先もずっと、蜜果の愛玩奴隷でいたい。
僕はそう決めて、彼女にその証がほしいと懇願した。
その結果、蜜果が与えてくれたのが、僕の正体と本質を刻印したタトゥーである。
胸からお腹にかけて『変態女装奴隷』。
貞操帯の金属ベルトが交わる部分の少し上に『淫』。
その文字のせいで、僕は蜜果以外の人の前で、パンツはおろかシャツすら脱げない身体にされた。いや、してもらった。
それもまた、僕の財産である。
蜜果の制服や、嵌めてくれた貞操帯と乳首ピアスと同様、彼女から贈られた宝ものである。
それら宝ものとともに、僕は蜜果の愛玩奴隷であり続けるだろう。
これまでも、これからも、僕たちのどちらかが、命つきるまで。
(了)