小説 矯正牧場の馬奴隷 8章 (Pixiv Fanbox)
Published:
2020-09-11 08:22:12
Edited:
2023-01-04 23:33:38
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8.絶対服従の証
「ぅ、んん……」
低くうめいて、夏海は目覚めた。
目を開けて、なにも見えない。
「ぁううッ!?」
一瞬パニックに陥り、声をあげて身をよじる。
しかし、身体は動かなかった。
椅子に座ったような姿勢から、まったく動けなかった。
(まさか……暗闇の中を歩いていて、どこかに転落して……?)
とはいえ、身体のどこにも激しい痛みを感じない。大怪我をしたということはないだろう。
加えて、全身に力が入っている実感もある。脊椎を損傷したわけでもなさそうだ。
ただ全身を固定されて、動けなくさせられているだけ。実際、両の手首と足首から先は、かろうじて動かせる。
(つまり、これは……)
崖などから転落したわけではない。
加えて、アームバインダーの拘束を解かれ、両手を椅子の肘かけに置いたような姿勢を取っているということは――。
「お目覚めのようね」
夏海がひとつの結論を導き出しかけたとき、不意に声がかけられた。
三原班長の声だ。
そのことに気づき、やはり脱走に失敗したのだと理解し愕然とする。
「188番、とんでもないことをしでかしてくれたわね」
それは、脱走を企てたことだろう。
「まったく、第1矯正収容所始まって以来の大事件よ」
つまり、実際に脱走を試みた囚人は、夏海が初めてだということだ。
しかし、その試みは失敗に終わった。
「そもそも、ここから逃げられると思っていたの?」
そうだ、思っていた。実際、途中までは、成功していた。
しかし、夏海は失敗した。
フェンスから出てしばらくして発見され、おそらく電撃銃を撃ち込まれて捕らえられた。
とはいえ、あのとき脱走は露見しておらず、誰も追ってきたりはしていなかったはずだ。
もし電撃銃で撃たれたとしても、相当な遠距離から。射程距離の短い電撃銃で、しかも夜間、強い雨が降りしきるなか正確に狙撃できるだろうか。
しかし、聞かされたのは、予想外の事実だった。
「うふふ……」
次第に光に慣れてきたところで目を薄く開けると、三原班長が薄く嗤った。
「その首輪ね……」
それは、初日に嵌められた電子錠式の首輪のことだ。
「電子錠のボックス部分に、位置情報の発信器が組み込まれているの。囚人がどこにいるか、看守は携行している端末で、数メートルの誤差で把握できるのよ」
「ぅえ(えっ)……?」
「あと、尻尾つき肛門カバーの裏のアナルプラグには、電撃装置が仕込まれているわ。矯正収容所の敷地から一定距離以上離れると、警告ののち懲罰の電撃を与える仕組みなのよ」
「ぅええ(ええっ)……?」
「警告の電子音、聞こえなかった?」
聞こえていた。ただ、それがアナルプラグが発する警告音だとは気づかなかった。
その結果、夏海は肛門に電撃を喰らって失神させられた。
その後首輪の発信器で位置を把握され、身柄を確保された。
そして今、四方をコンクリートの壁に囲まれた部屋で、椅子に縛りつけられている。
着けられていたアームバインダーとボディハーネスを外され、芦毛色の特殊ラバースーツとポニーブーツの姿で、椅子に縫いつけられている。
額、首、胸の上下、お腹。腕は肘掛けに乗せられて、手首と肘の近く。脚は左右別々に、太ももと膝のすぐ下、それに足首。椅子に設えられた革ベルトで身体各所をきつく縛《いまし》められ、手足の指以外はピクリとも動かせない。
馬銜は噛まされたままで、意味のある言葉を吐くことはできない。そのかわり、涎は垂れ流し放題だ。
傍らのテーブルに置かれた、スーツと同色で仮面のような形の目隠しは、先ほどまで着けられていたものだろう。
そんな状態の夏海の正面に、三原班長が立つ。
「どうして、脱走しようとしたの? もしかして、189番の妄言を信じてしまった?」
そうだ。それで自分の惨状を知らしめることが、女弁護士による矯正収容所撤廃運動の一助になると思った。
しかし、それは無駄な行動だったようだ。
「たしかに、ごく一部でそういう運動が起きているのは事実。でもあんなものは、なんの影響もないわ。しかるべき機関がすでに動いているので、すぐに事態は鎮静化するでしょう」
「うぉんあ(そんな)……」
そうと聞かされ落胆する夏海を、三原班長がさらに追い詰める。
「夜が明けたら、緊急会議が行なわれるわ」
つまり、その会議で、夏海の処分が決められるということだ。
「脱走は、叛逆罪のなかでも、最高ランクの重い罪。188番の刑期は、おそらく15年程度に延長されるでしょう」
「ぅおんあ(そんな)……」
長すぎる。刑期延長自体は予想していたが、長くとも2倍、4年程度と予想していた。
それが、15年だなんて。
出所時には、夏海はすでに30歳代。そこから格闘家として再起するのは、ほぼ不可能だろう。
それ以前にこの矯正収容所、いや矯正牧場で15年も馬奴隷調教を受け続け、まともな人でい続けられる自信がない。
そう考えて愕然とする夏海を、さらに打ちのめす言葉を、三原班長が投げつけた。
「加えて、矯正教育の成果を判定する基準が、これまでより格段に厳しくなるわ。調教を完璧にこなすことが標準。本来ならミスとは言えないほどのわずかなミス、たとえば手綱の指示に反応が一瞬遅れただけで、懲罰と刑期再延長の対象となる」
それもまた、想像以上の厳しさだった。
そうなると、一生出所できないかもしれない。生涯を、ここで馬奴隷として過ごさなくてはならない恐れもある。
「うぉんあぉ(そんなの)……」
いやだ、いやだ。絶対、いやだ。
しかし、それを回避する手段は、夏海にはない。
どんな厳しい罰でも、甘んじて受け入れるしかない。
刑期短縮を狙い、したたかに耐えてきた心は、ポッキリと折れてしまった。
(もう、なにもかもおしまい……)
絶望した夏海がうなだれる。
これまでなにがあっても前を見てきた少女が、すべてを諦めて下を向く。
「でも、それを避ける方法が、ひとつだけあるわ」
「うぇ(えっ)……」
三原班長の言葉に、夏海が顔を上げた。
「うぉんぉうぃ(ほんとうに)……?」
「ほんとうよ」
だとしたら、ほんとうに回避する方法があるなら、なんでもする。
その思いが夏海の表情に出たところで、三原班長があらためて口を開いた。
「今回の脱走事件には、収容所側にも落ち度があった」
それは、点検にきた看守が、扉の閂をかけ忘れたことだろう。
加えて、189番の起こした騒ぎだ。あれで夏海の心は、大いにかき乱された。
「それに、188番はひとりの職員も傷つけていない」
それには、ゲートを出る寸前、警備の看守が呼ばれて立ち去ったことが幸いした。
「そのことを情状酌量の材料とし、脱走は偶然が重なった結果の出来心でしてしまったこと、今は反省していると態度で示せば、大幅な刑期延長は避けられるでしょう」
その言葉は、夏海にとってひと筋の光明だった。
永遠に続く地獄の責め苦から救ってくれる、たった1本の蜘蛛の糸だった。
いまだ三原班長は自分に近い存在だと信じて疑っていない夏海は、迷いなくその糸にすがりつく。
「そのためには、絶対服従の証となる装具を、自ら望んで着けること」
それがどういうものなのか知らないまま、三原班長の言葉を受け入れる。
「それらは一見、とても残酷な装具。でも、完全に不可逆的な措置じゃない。今までの装備よりつらいこともあるけれど、きっと大丈夫。188番なら、耐えられるわ」
受け入れて、装具の装着を了承する。
三原班長の思惑を、読むことができないまま。
絶対服従の証となる装具を、三原班長がテーブルの上に並べていく。
まず、片方の端に金属製のノズルが取りつけられ、もう一方の端がわずかに膨らんだ、最大径1センチ弱のゴムチューブ。
「これは、尿道用排泄管理器具。尿道に挿入後、チューブ全体を膨らませて尿道を拡張、隙間なく密着させるとともに、先端のバルーンを膨らませて固定。それで小水がいっさい漏れなくしたうえで、先端のノズルから排泄させる仕組みよ」
続いて、先端が丸く成形された、金属製の巨大な筒。その丸い部分が終わったあたりから、3分割のゴム部分。さらに、土台と言っていいのか、筒の最下部には、鍵つきの蓋が取りつけられている。
「これが、肛門用排泄管理器具。固定する仕組みは、尿道用とほぼ同じよ」
三原班長はこともなげに言い放ったが、アナルプラグの最大径よりはるかに太いそれが、挿入出来るとは思えない。無理やりにでも挿入されれば、肛門が壊れてしまいそうだ。
いや、巨大な肛門用器具に目を奪われていたが、尿道用の器具だって太すぎる。
しかし、三原班長の考えは違った。
「人の尿道には、これくらいの太さなら充分余裕がある。個人差はあるけど、肛門は括約筋を完全に弛緩させれば、10センチ近くまで広がるわ。挿入時に弛緩剤と麻酔剤入りローションを使えば、どちらもまったく痛みなく挿入できる」
その話がほんとうだとしても――いや、三原班長が断言するからには、きっとほんとうだろうが――挿入したまま長期間過ごせば、元に戻らなくなるのではないか。
「人の回復力を舐めてはいけないわ。まぁ外してすぐ元どおりというわけにはいかないけれど、若い188番ならしばしの我慢で回復するわ」
自分がまだ夏海に信用されているとわかったうえでそう告げ、三原班長が次の装具――というより薬品の樹脂製ボトル――をテーブルの上に置いた。
「人体に無害な、生体用接着剤。これを特殊合成ラバースーツと肌のあいだに流し込み、全身にいきわたらせると、接着完了後は鍵があっても脱げなくなる。もちろん専用の剥離剤はあるけど、市販はされてないから、出所まで絶対服従の誓いを立てたと解釈してもらえるわ。加えて……」
そこで三原班長が見せたのは、強力なことで有名な市販の瞬間接着剤
「これを拘束具の鍵穴に流し込み、鍵を差し込めないようにすれば、誓いはさらに補完される。もちろん、出所時に鍵そのものを破壊すれば、拘束具を外すこともできるわ」
そして最後に、三原班長はスタンプのような器具を取り出した。
「憶えているかしら。特殊合成ラバーに囚人番号を刻印した装置よ」
その装置の背面には、今は『188』の数字ではなく『馬』という文字が表示されていた。
「特殊ラバーの素材は生体由来のタンパク質。その素材に番号を刻印するための装置で、人の皮膚にも刻印できる。これで額に『馬』の身分を刻印すれば、絶対服従の証は完璧よ。もちろんこれも、永遠に消せない不可逆的な措置ではないわ」
それは、美容整形のことだろう。現在の技術をもってすれば、刺青でさえほぼ消せると聞いたことがある。
「もう1度、188番の意志を確認するわ。これらの装具を着けて、絶対服従の証を立てる?」
真摯な表情で訊ねられ、テーブルの上に並べられた装具の数々を眺める。
正直、恐ろしい。ほんとうに着けていいものか、大きな不安がある。
(でも、大丈夫……三原班長は、ここでただひとり信用できる人)
しばしの逡巡のあと、自分に言い聞かせるように心のなかでつぶやいて、夏海はしっかりとうなずいた。
「それじゃ、始めるわよ」
三原班長がそう言ってカード状のリモコンを操作すると、夏海を縛りつけ固定する椅子が、ゆっくりと動き始めた。
「……ッ!?」
驚き息を飲むが、きつく縛められた身体は、ピクリとも動かせない。
抵抗する術《すべ》もないまま、軽やかなモーター音とともに、椅子全体が後ろに倒される。その動きと連動して、座面から脚の部分が、左右に開かれていく。産婦人科の診察台に座らされたように、大股開きの姿勢を強制される。
そして90度近く股を開かされたところで、三原班長が夏海の両脚のあいだに置いた椅子に座った。
特殊ラバースーツは着たままだが、ボディハーネスがない今、その股間部分は完全にオープン。三原班長の眼前には、夏海のもっとも秘しておきたい場所が晒されている。
恥ずかしい。
そこを見られるのは入所初日以来2度めだが、あのときは耐えがたい責め苦のなかにあった。
今もこれから残酷な装具を着けられるのだが、その処置はまだ始まっていない。
「クぅう……」
久しく忘れていた羞恥心が蘇り、馬銜を噛み締める。
しかし、目を閉じることはできなかった。なぜか、処置を見ていなければいけない気がした。
その視界のなかで、三原班長が医療用の薄いゴム手袋を嵌める。
パチン、パチンと音をさせてから、尿道用の排泄管理器具に、粘度の高い液体を塗りつける。そして同じ液体を、夏海の股間にも――。
「ぃうッ!?」
冷たいものがそこに触れ、短く悲鳴をあげたところで、三原班長が薄く嗤った。
「これが、麻酔剤入りローションよ。持続性はない代わり即効性があるから、すぐに痛みを感じなくなるわ」
三原班長の言葉のとおり、そこに麻酔剤入りローションを塗り込められる感触が、次第に弱くなってきた。キュッと押されても、圧迫感を覚える程度にしか感じなくなった。
その頃合いを見はからい、そこに器具が押し当てられる。
ニュル。
そんな感じで、本来固形物が通過する場所ではない穴に、ゴムの器具が侵入してきた。
「ぁ、ぁ……あ」
異様な挿入感に、馬銜を噛み締めた口から声が漏れる。
それがゆっくりと侵入してくるほど、そこにむず痒いような感覚が生まれる。
(こ、これは……?)
知っている。さんざん覚え込まされた。
これは性の快感の予兆だ。
とはいえ、すでに肛門で快楽を得ることに馴らされた夏海は、前の排泄孔で快感を覚えること自体にはとまどったりしなかった。
痛みを感じる神経と快感の神経は違うのか、そのため麻酔が効いても性的な刺激には反応するのかと考えただけ。
実のところ、夏海が感じているのは、陰核《クリトリス》への刺激である。露出している部分は小さな豆でしかない陰核は、根っこが尿道に接するように広がっているのだ。
そしてローションに混入された麻酔剤は、それが直接触れた部分にしか効いていない。
そのため緩い陰核の快感を覚えながら、尿道に器具を挿入される。
それが膀胱に達したところで、ハンドポンプが接続され、先端のバルーンが膨らまされ始めた。
それで器具を固定、抜けなくしてから、尿道部分全体も膨張させられる。
「あ……ぁ、あ」
尿道を拡張しながら膨らむ器具が生む圧迫感に、声をともなって息が漏れる。
「ぁ、あ、ぅん……」
陰核の根っこを緩く刺激され、声に甘みが混じる。
そこで頃合いと判断した三原班長がハンドポンプを取り外し、接続部分からけっして空気が漏れないよう、極小のネジを専用工具で締め込んだ。
これでもう、専用工具を持たない者が、夏海の尿道用排泄管理器具を外すことはできなくなった。
器具先端のノズルのロックを解除しないと、夏海は放尿できなくされた。
そのことに感慨を抱く暇《いとま》すら与えられず、次なる装具の装着が始まる。
先ほどと同じ麻酔剤入りローションが、肛門に塗り込められる。
その妖しい指の動きが、開発されつくした肛門性感を呼び覚ます。
とはいえ、このたびの塗り込めは、快感を与えることが目的ではなかった。
麻酔剤が効き始めた段階で、三原班長が注射器を手にした。
「弛緩剤よ」
そう言われた直後、肛門周りの肉に針が刺される感覚。しかし、ローションに混入された麻酔剤のおかげで、痛みは感じなかった。
さらに2度、3度。
それから、注射器を置き、麻酔剤入りではない通常のローションを手にまぶすと、肛門へのマッサージが再開された。
指が挿入される。
反射的に肛門を引き締めかけたが、括約筋は反応しなかった。
それで弛緩剤が効き始めていることを知ったところで、指の抽送が始まる。
最初の麻酔剤は追加された大量のローションで薄められたのだろう。そこの感覚が鈍くなることはない。
弛緩して抵抗がなくなった肛門を、ローションまみれの指が嫐《なぶ》る。
くちゅ、くちゅ……。
内部にも大量のローションが入り込んでいるのか、指の動きに合わせ、粘着質な水音が聞こえ始めた。
くちゅ、ぴちゅ……。
水音が大きくなる。そこに生まれる快感も大きくなる。
「うふふ……」
そこで、三原班長が妖しく嗤った。
「188番の肛門、私の手首まで飲み込んでるわよ」
「うぉ(うそ)……」
不自由な口で思わず言ってしまったが、嘘ではないとわかっていた。
「もう、充分ほぐれたわ」
夏海が受けていた処置は、そう言って三原班長が手にした凶悪なほどに巨大な器具を、そこに挿入するためのものなのだから。
「うふふ……」
もう1度嗤った三原班長が、肛門から手を抜く。
「ふぁあッ!?」
それでゾワリと快感が駆け抜けたところで、彼女の手より太い器具が、そこに押し当てられた。
(太い! 大きい!)
しかし、挿入はあっけなかった。
弛緩しきった括約筋を押し拡げながら、それが侵入してくる。
ヌルリ、ヌルリとゆっくり。
ゾワリ、ゾワリと快感を生みながら。
そして奥まで挿入されると、尿道の器具のときと同じようにハンドポンプを接続され、内部のバルーンを膨らませられた。続いて、外部の土台部分も膨張された。
そうして内と外のバルーンで括約筋を挟み込んでから、肛門を拡張するように、真ん中のバルーンも膨らみ始めた。
きつい、きつい。
括約筋が弛緩していてもなお、感じる猛烈な圧迫感。いったい自分の肛門は、直径何センチにまで拡張されるのだろう。
「はふ、はっ、はっ……」
馬銜を噛み締め、肩で息をして圧迫感に耐えていると、やがて空気の注入が止まった。
肛門の完全密封を終え、ハンドポンプが外される。
さらに尿道用器具のときと同じように、空気漏れ防止のネジが締め込まれてから、拘束椅子が元に戻される。
そして産婦人科の診察台から椅子に戻りきったところで、身体を椅子に縛りつけるベルトが外され始めた。
ポニーブーツを履かされたままの足、膝、太もも。そのあたりから、肛門の器具の存在感が増し始めた。
「ぅうぅ……」
それで苦悶していると、三原班長が腕を肘かけに縛りつけるベルトを解きながら、口を開いた。
「使用した弛緩剤は即効性が高いけれど、持続性はあまりないの。そろそろ効果がきれてきたようね」
その言葉で力を取り戻した括約筋が、巨大な器具を食い締めているのだと理解する。
とはいえ、理解したところで、事態が好転するわけではない。むしろ、弛緩剤が効果を失っていくほどに、器具は存在感を強めていく。
そしてすべてのベルトが解かれる頃には、夏海の括約筋は、持てる力をすべて取り戻していた。
きつい、きつい。巨大な器具が、きつすぎる。
苦しい、苦しい。この苦しさに耐え続けられるだろうかと、不安に囚われる。
そんな夏海に、三原班長が右手を差し出した。
「立って」
そう言われて彼女の手を取ろうとして、腕をうまく動かせなかった。
カクカクとぎこちなく手を持ち上げながら、1カ月以上アームバインダーに閉じ込められていたことによる後遺症を思い知らされる。
(もし……)
15年もアームバインダーで拘束され続けたら、腕の動かし方を忘れてしまうかもしれない。いやきっと、2度とまともに手を使えなくなるだろう。
さらなる不安に襲われ、絶対に刑期を延長させないという思いを新たにし、どんなに苦しくても耐え抜き、三原班長の処置を受け入れると心に誓って立ち上がる。
そこで、三原班長が樹脂製のボトルを手に取った。
人体に無害な、生体用接着剤。特殊ラバースーツと夏海の肌を接着する薬品。
これをスーツの中に注入されてしまうと、専用の剥離剤を入手しないかぎり、馬奴隷の囚衣たる特殊ラバースーツを脱げない。
そのことを思い出し、コクリと喉を鳴らした夏海のスーツの施錠式ファスナーが、カチリと解錠される。
「冷たいかもしれないけど、動いちゃダメよ」
ファスナーを途中まで下ろされて言われ、スーツをくつろげたところに、ボトルの液体を流し込まれた。
言われたように、ヒヤリと冷たい。だが、接着剤のような感じはしない。着用時に全身に塗り込められたローションと、感触的には大差ない感じ。
そんな生体用接着剤をボトル半分ほどスーツの下に注入され、一部露出した背中上部には三原班長の手で塗り込められる。
彼女の手もくっついてしまわないか気になるが、その心配はないようだ。
「この接着剤は、生体由来のタンパク質どうししか接着しないの。私はゴム手袋を嵌めているし、仮に肌に付着しても、この接着剤は遅乾性だから、すぐ拭き取れば平気なのよ」
三原班長がわざわざ言ったのは、夏海が手のことを気にしていると察したからだろう。
(やはり、三原班長は……)
自分のことをわかってくれている。常に気にかけてくれている。
ここでただひとりの、信頼できる人物だ。
そのことであらためてそう思い込み、いや思い込まされたところで、背中のファスナーが閉じられた。
それから三原班長はゴム手袋を外し、胸や腰のあたりに溜まっていた接着剤を、手を使って下方に送り込み始めた。
上から下へ。特殊ラバーのスーツの表面を撫でながら、股間のオープン部分から、こぼれ出さないように注意深く。
その妖しい手つきが、ゾワリと快感の予兆を生む。
加えて、夏海の尿道には、排泄管理器具が挿入固定されている。尿道を拡張するように膨張固定され、陰核の根っこを緩く刺激している。
さらに、肛門用の排泄管理器具だ。アナルプラグの常時挿入で性的に開発された肛門の括約筋が、今は全力で巨大な器具を食い締めている。
猛烈な圧迫感とともに、アナルプラグのときより大きい肛門性感が、そこに生まれている。
「くっ、ふっ……」
それで甘い吐息が漏れ始めたところで、接着剤の送り込みが終わった。
中途半端に肉を昂らされた夏海を立たせたまま、三原班長が新しいボディハーネスを手に取った。
ベルトとコルセットの部分は、今ままでのものと同じ。ただし、股間の金属部分の形状が違う。
その前部分、本体からわずかに浮かせて取りつけられていた、小水排泄孔つきの金属板はない。そのかわり、尿道用排泄管理器具のノズルを引き出すための穴が開けられている。
後ろ部分の肛門をかわすための開口は、巨大な排泄管理器具に合わせて大きくなっている。
その裏面に微妙な凸凹があることにも気づくが、その意味を考える暇は与えられず、ハーネスの装着が始まった。
左右2個ずつ金属製リングが設えられたコルセット状の部分をお腹に巻きつけられ、背中でベルトをきつく締め込まれる。
胸の上側のベルト、さらに首の横を通る肩ベルトを背中に回されて締め込まれる。
緩く開いた脚のあいだに手を差し込まれ、お尻の方にぶら下がっていた金属板を持ち上げられる。
カチッ、と聞こえた音は、肛門用排泄管理器具とお尻の開口部が噛み合った証。
その直後、女の子の肉がムニっと金属板に押しつけられた。
「……ッ!?」
押しつけられた金属板が、媚肉を緩く開かせる感覚。
おそらく、金属板裏面の凸凹のせいだ。媚肉に押しつけられたとき、そこを左右に開かせるような形に、成形されていたのだ。
(こ、これでは……)
排泄管理器具を挿入固定された尿道と肛門のみならず、媚肉も常に刺激される状態に貶められてしまう。
今さらそうと気づいても、あとの祭り。
カチッ、と尿道の器具も、金属板と噛み合った。
カチリ、と金属板が施錠固定された。
カチリ、カチリ、カチリ……。
ハーネスのベルトすべてが施錠される。
それからアームバインダーで再び後手に拘束され、その拘束具も施錠。
すべての南京錠と、スーツやブーツのファスナーの鍵穴に瞬間接着剤が流し込まれ、鍵を外すことはできなくなった。
そして最後に、刻印装置。
装置を額の眉間に近い位置に押し当てられ。
バチッ。
「うッ!?」
鋭い痛みにうめいたときには、夏海の額には、彼女の身分を示す『馬』の文字が刻印されていた。