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夏の合宿.4 「えええええーっ!?」  愛美先輩に芦屋先生と三木さんの実年齢を教えられた私は、思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。 「ね、びっくりでしょう? 私も初めて知ったときは、裕香と同じ反応だったわ」  それはおふたりの年齢が、私の母とあまり変わらなかったからである。  にもかかわらず、服を着ていても脱いでいても、ぱっと見20代後半の容姿を保っているなんて。 「現代医学の力、恐るべし……」 「うーん……たしかにおふたりは医師と看護師だけど、医学の力というのは違うかも」  私が腕組みをして自分の言葉にウンウンとうなずくと、愛美先輩は苦笑して首を横に振った。 「えっ、そうなんですか?」 「うん。これは私の仮説なんだけど……おふたりは、学園時代からのコンプリッツェじゃない?」 「はい」 「おふたりはコンプリッツェとして、学園時代そのままの秘密の世界を共有し続けている。そのうえ、お互いに相手の理想のコンプリッツェであり続けようと常に意識している。それが若さを保たせているんじゃないかって」 「だ、だとしたら……私も、私たちも……」  その言葉に私が答えかけて、でも途中で恥ずかしくなって口ごもると、愛美先輩がほほ笑んで告げた。 「私たちも、そうなれるといいね」 「えっ……?」  私の言葉の続きを言われてちょっと驚き、愛美先輩を見る。  穏やかな笑顔。  でも瞳には、妖しい光が宿っている。  頬は紅潮し、緩く開いた唇は艶めいて――。  そこで、愛美先輩の唇がなまめかしく動いた。 「続き、しよっか?」 「えっ……?」 「お風呂での続き」 「あ、はい……」  言い合うあいだにも、愛美先輩の顔が迫る。  同じように、私も先輩に迫る。 「裕香……」 「愛美先輩……」  お互いの名を呼び合い、目を閉じる。 「裕香……んっ」 「愛美せんぱ……むっ」  呼び合う途中で、衝突するように唇が触れた。  驚いて唇を離し、視線を絡ませてクスリと笑い合う。 「裕香……初めて?」 「はい……愛美先輩も?」 「うん、実は……」  そのことが、嬉しかった。  私の初めてのキスを、愛美先輩に捧げられることが。愛美先輩の初めてのキスの相手が、私であることが。 「裕香……」 「愛美先輩……」  お互い同じ想いで、再び唇を近づける。  チュッと軽いキス。  またすぐに唇を離すが、そこで私たちの情熱が一気に噴き出した。 「裕香ぁ」 「愛美先輩ぃ」  熱に浮かされたようにお互いを呼び合い、強く抱(いだ)いて唇を求め合う。 「んぁ……」 「んむ……」  くぐもった艶声を漏らしながら、唇を貪り合う。  おそらくそれは、拙いキスだろう。  でも拙くても、いや拙いからこそ、私を求める愛美先輩の想いが伝わってくる。愛美先輩を求める私の想いも伝えられる。 「んんっ……」 「んうっ……」  拙くも熱いキス、口づけ、古い言葉なら、口吸い。  そう、これは口吸いだ。  愛美先輩が欲しい。その想いを込めて、彼女の唇を吸う。  私が欲しい。愛美先輩の想いを感じながら、その求めに応じる。 (好き。愛美先輩が、好き)  そのとき、私は初めてはっきり思った。  尊敬でも、敬愛でもなく、恋愛感情を愛美先輩に対して抱いた。 (でも私たち、女の子どうしだよ?)  そして、そう考えてためらったのは一瞬。 「裕香、好き!」  唇が離れた刹那、愛美先輩の口が紡ぎ出した言葉に、私のためらいは吹き飛んだ。 「愛美先輩、私も!」  すぐさま先輩の求めに応え、もう一度積極的に唇を求める。  しかし、愛美先輩はもっと積極的だった。 「んあっ!?」  緩く開いた唇を舌でこじ開けられ、思わず目を見開くと、近すぎて焦点が合わない愛美先輩の顔。 「んぁあ……」  情欲にまみれた瞳で見つめられながら、そのまま舌の侵入を許してしまう。  いや、そもそも私には、舌の侵入を拒むつもりはなかった。 「んぅん……」  それは、侵入してきた舌に口腔内を蹂躙されても、変わることはない。  それどころか、侵入してきた愛美先輩の舌を、積極的に迎え入れてしまう。 「んぁ、んっ……」  お互いの舌を絡ませ合い、私たちのキスは、恋人どうしが交わすようなディープなものに移行していく。  コクリ。  愛美先輩の唾液を飲み下しながら。  コクリ。  先輩に唾液を飲み下されながら。 「んぁ、あぁ……」  濃厚で甘いキスに、蕩けていく。  貞操帯で封印された肉体の奥に、熱が生まれる。  その熱に浮かされて、頭がぼうっとして、なにも考えられなくなる。 「んんぅ……ふはっ」  それは、唇が離れてからも同じ。  優しく誘(いざな)われるようにベッドに押し倒されて、貝殻つなぎで両手を押さえつけられた。 「あぁ、もう……」  逃げられない。逃げるつもりもない。  頭の上で両手を重ねられ、それを片手で押さえつけられる体勢に移行しても、私は動かない。  あらかじめそうしようと用意していたのだろうか。手首にいつか使った革の枷を嵌められているあいだも。嵌められた手枷の金具どうしを、ベッドの桟を通して革紐で結ばれても。私は抵抗しなかった。 「うふふ……」  そして私を両手を頭上に掲げた姿勢で動けないようにして、愛美先輩が妖しく嗤う。 「うふふ……」  嗤いながら、パジャマ代わりに着ている体操着の上衣をたくし上げる。 「い、いやぁ……」  ノーブラの旨を露出させられ、思わず声をあげてしまうが、ほんとうに嫌なわけじゃない。 「うふふ……ひとりで脱がされたら恥ずかしいよね?」  そのことがわかっているのに、愛美先輩は自分も体操着を脱いでくれた。  そしてトップレスの姿になって、あらためて私に覆いかぶさる。 「裕香、もうなにをされても逆らえないね」  あお向けで手を上にあげたせいで、いっそうなだらかになった私の胸に、愛美先輩の指が触れた。  細く白くしなやかな指が、胸の膨らみとは対照的にぷっくり膨れて屹立した乳首を指で撫でる。 「はふぁあん……」  それだけで、私は艶のある声をあげてしまった。 「うふふ……かわいい声」 「だってぇ、愛美先輩が……」 「あら、私は裕香のここを軽く撫でているだけよ?」 「それが、それがぁ……」  気持ちいいんです。そう言いたくて、言えなかった。  でも、愛美先輩には伝わっていた。  そして、先輩はけっして私を虐めて困らせたいわけではない。ちょっとだけ羞恥心を煽り、もっと気持ちよくさせたいだけだ。  その目的のために、愛美先輩は私の胸を責める。 「うふふ……ますます硬く、コリコリにしこってきたわ」  そう言って私の羞恥心を煽りながら、乳首を愛撫する。 「あっ、ふぁ……」  触れるか触れないかの強さで円を描くように撫でられ、甘い吐息を漏らしてしまった。 「ふぁ、はぁん……」  撫でていた指にわずかに力を込めて乳首を押しつぶされ、吐息に艶が増した。 「はふあっ、あぅん……」  押しつぶした乳首をピンと弾かれて、喘いでしまった。  気持ちいい。気持ちいい。  気持ちよすぎて、なにも考えられない。  ただ、乳首を指で愛撫されるだけで、こんなに気持ちいいなんて――。 「あっふぁ……あぐっ!?」  そのとき、口に布をねじ込まれた。 「うぐっ!? んむぅん……」  その布を反射的に吐き出そうとすると、それを阻むように布を噛まされた。 「頭、上げて」  それがセーラー服のスカーフだと気づいたところで、そう言われて従うと、頭の後ろでキュッと結ばれた。 「窓、空いてるからね?」  つまり、声が漏れないように猿轡を嵌められたというわけだ。 「あっぅあ(だったら)……」  窓を閉めたらいいのに。  一瞬そう考えて、これも羞恥心を煽るための手練手管なのだと気づいた。  貞操帯装着者だとバレないか、剥き出しの肛門を視姦されないか、そのドキドキで蕩けてしまう私を、もっと気持ちよくさせるための。  とはいえ気づいたところで、私にはなにも変えられない。 「目も見えなくしちゃおうね?」  そう言われて、もうひとつのスカーフ――たぶん、私のもの――で目隠しをされても、抗うことはできない。  両手の拘束を解くことも、窓を閉めることも、猿轡と目隠しを外すこともできない。  そしてもちろん、羞恥心が快感を増幅させる体質を変えることも。  なにも見えず、なにも喋れず、なにもできないまま、私は愛美先輩の指で高められていく。 「んぅ、んぅうん……」  乳首を指でつままれて、猿轡の奥でくぐもったうめき声を漏らした。 「んむぅ、んぅむん……」  つまんだ乳首をこねられて、うめき声が艶めいた。 「うぃおぃいおぉ(気持ちいいのぉ)……」  悦びを声にできないのに、いや、声にできないからこそよけいに、肉体の内にこもる快感が増幅されている感じ。  それにはおそらく、目隠しをされたことも影響しているのだろう。視覚を失ったぶん、それを補うために触覚が鋭敏になっているのだ。  キュッ、キュッ、キュッ、と乳首をつままれる。 「おぅ、ぅあ、あぅん……」  そのたびに、艶めいてうめく。  うめくほどに、快感が大きくなる。  クリッ、クリッ、クリッ、とつまんだ指の腹で乳首を擦られる。 「あうっ、あうっ、ぅあぁん……」  うめき声が大きくなる。  快感もますます増幅される。  グイッ、グイッ、グイッ、とつまんだ乳首をつねられる。  ふだんなら軽く痛みを感じていたかもしれない強めの刺激。  でも今は、それすら快感につながってしまう。  気持ちいい。気持ちいい。  気持ちよすぎて、もうなにもわからない。 「んぅん、んあっ、ぅあんむ……」  自分がどんな声をあげているのかも、どれほど腕に力を込めて、枷と革紐を鳴かせているのかも、全く気にならない。  もうすぐ、そこにたどり着ける。  はるかなる性の高み、恍惚の世界、圧倒的な幸福感があるところに、乳首だけで――。  そこで、手枷をベッドの桟につないでいた革紐が解かれた。そしての肉体を抱くように支えられ、上半身を起こされる。  絶頂直前で寸止めされて、残念な気持ちが半分。 「うふふ……目隠しは外しちゃダメよ。今から、裕香に素敵なものをあげる」  その言葉に、どんなことをしてもらえるのかと期待半分。  視界と言葉を奪われたまま、わずかの時間待っていると、背中に冷たく硬いものが触れた。 「手を上げて」  言われて素直に従うと、腋の下にもそれが触れた。 (なんだろう……?)  その正体が気になった次の瞬間――。 「ひうっ!?」  熱く火照る乳房が、冷たく硬い金属に包まれた。  背中から肩にかけてもなにかが触れて。  カチリ。  胸のあたりから、聞き慣れた施錠の音。  後頭部の結びめを解かれ、スルリと目隠しのスカーフを外されると――。 「ふへ(えっ)……?」  私のおっぱいは、銀色に輝く金属製のフロントホックブラに覆われていた。  ブラならカップに相当する部分が、半球形のお椀。ブラのサイドベルトが、金属製のベルト。チェーンのストラップはふつうのブラと違っていて、首の横から胸の谷間にかけて、V字にかけられている。  そしてフロントホックの代わりに、股間の貞操帯と同じ円形の金属板と南京錠。 「乳房貞操帯よ」  顔を上げると、愛美先輩が口を開いた。 「明日1日、そのまま過ごしてもらうわね」 「は、はい……」  そしてもう一度乳房貞操帯を見てうなずくと、愛美先輩がにっこり笑った。 「裕香はもう貞操帯の魅力の大半を知っているけれど、まだ知らないものもある。それを、乳房貞操帯が教えてくれるわ」  そして愛美先輩は私の猿轡と手枷を外し、妖しい光をたたえた瞳を細めて告げた。 「さあ、明日は早いわ。今夜はもう寝ましょう」

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