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「義信…わたしには、義信しかいない。

 ほら、見た目は優奈だし、

 わたし、優奈として振舞うからー

 もう一度、付き合ってー?」


義信の家に乗り込んできた優奈が言うー。


優奈は、元カノの理沙に憑依されていたー。


そのことを知った義信は戸惑う。


最近の優奈が、

まるで理沙のように感じられたのはーー

中身が理沙だからー。


「--ふざけるな…優奈を返せ」

義信が静かに、

けれども怒りのこもった声で言う。


「--優奈の身体から出ていけ!」

義信が叫んだー。


”ーー理沙ちゃんも覚えておきなさいー

 欲しいものは、力で奪い取るのー。

 欲しいものは、一瞬でも手を離しちゃいけないのー。”


大好きな父を奪ったー

父の浮気相手の言葉を思い出す。


そうー

もう、わたしは離さないー

大事なものを絶対に、この手から離さないー


「…出て行け?」

優奈が義信を睨みつける。


”理沙のヤツ、まさか優奈の体を乗っ取って

優奈の体で好き勝手するなんて…”


義信はそんな風に思いながら、

理沙を引っ張り出して説教してやりたい気持ちでいっぱいになったー。


だが、今、行動を起こせば傷つくのは優奈だ。

身体を乗っ取られているー

それは、つまりー

優奈が”人質”にされているのと同じようなことだー。


目の前の優奈が信じられないような悪態をつくー。

優奈が絶対に浮かべない表情ー

優奈が絶対にしないであろう仕草ー。


優奈は、身も心も理沙に乗っ取られているー。


「それって、、私に死ねってコト?」

優奈が義信を睨みつける。


あの優しい優奈がこんな表情をするなんて…


そんな風に思いながら

義信は聞き返した。

「なんだって?」

とー。


”沈黙”

義信の部屋の時計の針の音だけが聞こえる。


義信は、理沙に対して死ねなんて言ってないー

ただ、優奈を返してほしいだけだ。


すると、優奈が口を開いた。

バカにするような笑みを浮かべながらー。


「…よ~く考えてよ。

 この女を乗っ取った時、わたしの体は死んじゃったの。


 と、いうことは分かる?

 わたしがこの女から出て行っても、

 戻るべき体がないの」


優奈が複雑な表情で言う


「…!!」


確かにそうだ。

理沙を追い出すということは、理沙を殺すってことか・・・。


義信は歯を食いしばるー。


理沙は、執念深いし、

もう、二度と付き合いたくない。

優奈にも手出しをさせるわけにはいかないー。


けれどー

”死んでほしい”などと思ったことはない。


「……だ、、だからって

 じゃあ、優奈はどうなる?」


義信は叫ぶ。


このままにしておけばー

優奈の身体は生きていても、

優奈の心は死んだも同然だー。


どんな理由があっても、

理沙をそのまま優奈に憑依させておくわけには、いかないー。


優奈はもう十分傷ついているーー

したくも無い恰好をさせられーー

言いたくもない発言をさせられーーー

人としての尊厳も傷つけられているーー


「……私より優奈を選ぶの?」

優奈が自分の事を他人事のように言う。


「--わたしは、、こんなに義信を愛しているのに!」

優奈が叫ぶー


「…だからって…

 やっていいことと、悪いことがあるだろうが!」

義信が言う。


「はっ…私はどうなってもいいんだ。

 あぁ~あ…」


優奈がイライラしながら髪を掻きむしる。


「わたし、この体で好き放題遊んじゃうよ?

 男を誘惑したり、お酒を朝まで飲んだり、 

 風俗店で働くのもいいかな?」


優奈が色っぽく言う。

優奈に憑依した理沙の挑発が続くー


「ほら、優奈可愛いから、

 いっぱい稼げるよ。

 その辺の中年のおっさん捕まえてもいいし」


優奈がイヤらしい笑みを浮かべるー。


あの優奈が、こんな表情をするなんてー


「---そんなこと、絶対にさせない」

義信が、優奈のほうを見つめる。


「---…」

優奈が義信のほうを見つめるー。


そしてー

「…ふざけんな!」と、

優奈が怒声をあげる。


「私の時はそんな風にしてくれなかった!

 いつもいつもいつも私を避けるようにして!

 で、気づいてみたら優奈優奈優奈??

 ふざけんじゃないわよ!」


そう言うと、優奈が義信にビンタを食らわせたー

義信はその衝撃で、思わず後ずさってしまう。


「--頼む。。

 優奈を、、解放してくれ。

 少しは、、優奈の気持ちを考えてくれ!!」

義信はなおも叫ぶー。


「優奈の気持ち~?」

優奈がニヤニヤしながら言う。


「--義信と一つになりたい!

 義信を愛して愛して愛して、、

 好きな人を離したくない…

 ふふふふ…ふふふふふ…

 これが今の優奈のきもち!」


優奈が笑いながら言う。


「違う!それはお前が勝手に思ってるだけだ!」

義信は、優奈に胸倉をつかまれながらも必死に叫ぶ。


「--あははっ…

 優奈の身体はもうわたしのもの!

 だから、わたしの思ってることが

 優奈のきもちでしょぉぉ????」


義信を揺さぶる優奈。


「ほら!!わたしが優奈だよぉぉ??

 義信!

 ほら!!!わたしがぁ!優奈!」

怒り狂った形相で叫ぶ優奈。


「やめろ…理沙…!」

義信は、優奈を振りほどく。


振りほどかれた優奈が、

近くの棚にぶつかるー。


それでも、

優奈は怒り狂った表情で

義信に襲い掛かってくるー


無理やりキスをしようとしてくる優奈。


義信への異様な愛情から、

優奈に憑依した理沙の行動は

常軌を逸脱していたー


「--みんなみんなみんな、わたしの前から

 消えてくの…!

 お父さんも、お母さんも、、義信も…!みんな!!」


優奈が今度は泣き叫びながら

義信のほうを見る。


「わたしを…置いていかないで!!

 わたしを……一人にしないで…」


優奈は、その場で泣き崩れてしまうー。


「---理沙…」

義信は、憐みの目で理沙を見る。


義信も、別に理沙のことが嫌いなわけじゃないー

ただ、このーー

常軌を逸脱した束縛や愛情ー

それに耐えきれなかっただけだー。


「--理沙…。

 そういう…そういうところだよ…

 俺が理沙から離れたのは…」


義信が悲しそうに言う。


「---……」

優奈は泣きじゃくったまま義信のほうを見る。


「---理沙のそういうところに…

 俺は耐えきれなくなったんだ…


 反対の気持ちになってくれよ…!

 相手のことも少しは考えろよ…!


 束縛される俺の気持もそうだし、

 今、そうやって理沙に好き放題されてる

 優菜の気持もそうだよ!


 自分のことばっかで、理沙は

 相手のことを何も考えてない!


 少しは、相手のことも考えてくれよ!!」


義信が、思いを吐き出すと、

優奈は、ギリギリと歯をかみしめながら

立ち上がったー


「--義信は…わたしがどんなに辛い思いをしてきたか、知らないから!」


「ーーー知らないよ!でも、過去に何があったとしても

 今の理沙は、自分から人を遠ざけてる!」


義信が言うと、優奈は泣きながら笑いだした。


「---…そうやって…そうやって…

 わたしを邪魔もの扱いしてーーー


 どーせわたしは邪魔者ですよ」


優奈は不貞腐れた態度で、

突然、義信の家のキッチンのほうに向かって歩き出した。


「---なにを?!」


乱暴に棚を開けると、

優奈は中から包丁を取り出した。


「--な、、なにをする気だ!?」

義信が叫ぶ。


「---ふふふふ… 

 もう、、もういいもん!!」

優奈が泣き笑いの表情で呟く。


包丁を、自分に向けるー


「おい!!!やめろ!!理沙!」

義信が叫ぶ。


「---泥棒猫といっしょに、死んでやる!」

血走った目で叫ぶ優奈。


「ふざけるな!!理沙!!

 その身体はお前のものじゃないんだぞ!!!」


義信の叫びにも反応しない優奈。


「理沙!!!

 優奈だって色々大変なのに頑張ってるんだよ!!

 やめろ!!やめるんだ!」


それでもー

優奈は自分の腕を包丁で傷つけ始めた。

クスクスと笑いながら。


優奈の腕から血が流れるー


頬に傷をつける優奈。


「やめろ!!!やめろ!!おい!」

義信は戸惑うー。


このままじゃ、

優奈も、理沙もー


優奈は首筋に包丁を向ける。


「--泥棒猫といっしょに、死んでやる!!」

大声で叫ぶ優奈ー


ダメだ!止められないー!


義信はとっさに優奈にとびかかったー。

助けるには、これしかーー


突然とびかかってきた義信に驚く優奈ー。


そしてー

義信と優奈が倒れるー


「----う…」

優奈が慌てて起き上がるー


そして、義信のほうを見て

「死んでやる!」と叫ぶー


だがー

義信から反応がない。


「---…義信…?」

優奈の表情が歪むー。


「--よ、、義信??」


義信の身体からー

血が流れているー

優奈が自分に向けていた包丁が

飛び掛かった際のはずみでー

義信に刺さってしまっていたー


「よ…義信…!ちょ、、ちょっと…!」


優奈は悲鳴を上げたー。

優奈に憑依している理沙は戸惑うー


そして、慌てて電話で救急車を呼ぶのだったー


・・・・・・・・・・・・・・・・


義信に刺さった包丁は、

思った以上に深く貫かれていた。


手術室に運ばれていく義信ー

義信はもうろうとした意識の中、呟いたー


「---ゆうな…」


とー。


「-----」

手術室の前で優奈は悲しそうに

義信の無事を祈っていたー


「---ゆうな…」


「---……」

歯をギリギリと食いしばる優奈。


義信はー

”優奈”の名を呼んだ。


”理沙”とは呼んでくれなかったー。


「--どうせ…どうせ…わたしは…」

優奈は拳を握りしめるー。


「---…泥棒猫には勝てない…」


そう呟く優奈の表情には、

どこか諦めの色が浮かんでいたー


手術は進むー


そしてー


義信は気づけば、

真っ白な世界にいたー


「あれ…?俺…?」

義信が周囲を見渡すと、そこには

優奈と理沙がいたー。


「優奈!?理沙!?」

驚く義信。


理沙が舌打ちをしながら呟くー


「---もう、いいわ」

理沙の言葉に、義信は「え?」と呟くー。


「-ーー優奈優奈優奈優奈…

 もう、、いいよ。

 わたしの負け」


理沙はそう呟くと、義信と優奈に背を向けた。


優奈が、心配そうに義信のほうを見る。


「---……その代わり…

 ちゃんと泥棒猫ー、優奈を幸せにしてあげるのよ」

理沙はそれだけ言うと、

振り返って義信のほうを見たー


「このまま死ぬなんてだめ。

 ちゃんと、生きなさい」


「あ…」

義信は、自分が刺されてしまったことを思い出す。


「--義信、わたしの力をわけてあげるからー

 ちゃんと、生き帰りなさい」


理沙はそれだけ言うと、再び背を向けて歩き出した。


「---理沙!

 優奈の身体から出るって…

 お前は、どうするんだ?」


義信が言うと、

理沙は立ち止る。


そして、失笑したー


「---言っておくけど、諦めたわけじゃない。

 優奈から出てくのは

 ”この世界じゃ勝ち目がない”ってわかったから。


 わたしは先にあの世に行って

 義信のために家を買ってデートスポットを見つけて

 いっぱいいっぱい準備しておくから…

 ふふふふふふふふ」


不気味に笑う理沙。


そして、さらに付け加えた。


「--早く戻って、

 優奈と幸せな日々を過ごして。

 で、優奈には、生きてる間に満足してもらう。


 死んだ後の世界では

 義信はわたしのものだからー」


理沙はそれだけ言うと、

クスクス笑いながらー

そのまま光の中に吸い込まれていったー


”とにかく、早く、戻りなさいー”


理沙の言葉ー


義信は、目を覚ましたー


手術は無事に終わりー

義信は一命を取り留めたのだった。


「義信…」

そこにはー

正気を取り戻した優奈がいたー


”負け”を悟った理沙は、

優奈に事情を説明して

捨て台詞を残したあとに、

優奈から抜け出し、

そして、消える前に一時的に

手術中の義信に憑依して

言葉を投げかけたー。


理沙がなぜ、優奈を解放したのかは分からないー


執念深い理沙のことだー

本当にあの世で、義信が来るのを待ち構えているのかもしれないー


けれどー


「----優奈…いろいろ迷惑かけてごめんな…」

義信が悲しそうに言うと、

優奈は、いつもの優しい笑顔で「大丈夫…無事でよかった」と

言葉をかけてくれたー。


「それにー

 わたしこそ、なんか、ごめんね」

憑依されていた間の自分が何をさせられていたのかは分からないー

けれどー優奈はそう口にせずにはいられなかったー。


包丁云々の件の事情を説明するのは大変だったが、

なんとか優奈を悪者にせずに、済んだー


義信は退院し、

大学では優奈とまた、幸せな日常が戻ってきたー。


ある日、義信は

理沙の墓を訪れた。


「-------」

自分の身体を捨ててまで優奈に憑依するなんてー。

義信はそのことに怒りを感じていた。


けれどー

最後には優奈を解放してくれた。


理沙が何を考えていたのかは分からない。


けれど、義信の気持は複雑だった。


「---理沙。俺のせいで、狂わせてしまってごめんな」

義信はそう呟いたー


もしー

もしも、自分と付き合ってなければ

理沙はあんな風にはならなかったのかもしれないー


もしー

優奈と付き合ってなければ

優奈は、理沙に憑依されたりせずに済んだかもしれないー


義信は、少し悲しそうな表情を浮かべながらも

呟いたー


「言われた通り…優奈を幸せにするよ。」

義信はそれだけ言うと、

「ま、、何を言っても、理沙のことだから

 嫉妬するんだろうけどな」と

苦笑いしながら、理沙の墓に背を向けて

そのまま出口に向かって歩き出したー


待たせていた優奈と合流する義信。


「--じゃ、いこっか」


「うんー」

義信の言葉に、優奈は優しく微笑んだー


・・・・


・・・・・・


・・・・・・・・


理沙が、優奈を解放したのは、

”優しさ”かー


それともー、

去り際に義信に語った通りの”執念”かー


それはー

義信が遠い未来、人生を終えて

あの世に行くまで、わからないーーー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


元カノの報復リメイクの最終話でした~!

最後の展開は原作とはかなり変えています~!


原作では、理沙がやけにあっさり引いてしまって

ゲーム版(フォロワー様との合作でゲーム版も作りました)の

実況動画の感想では”元カノ諦めはやっ!”みたいな

感想もあったので、

リメイク版ではより執念深くしてみました~!

いかがでしたか~?


また、他の作品のリメイクにも挑戦してみたいと思います。

ありがとうございました!!


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