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1枚の写真が、彼の手元にあったー。


ライトアップされた観覧車の前で

ほほ笑むカップル。


「---明美…」

彼は悲しそうに呟いた。


「---俺は、、きみと過ごした日々を、忘れないから…」

目から涙が零れ落ちるー。


写真のように、ほほ笑む彼女の笑顔はー

もう、2度と見ることができないからー。


彼女はーー

”憑依”されて、変えられてしまったからー


・・・・・・・・・・・・・・・・


去年の12月ー。


「--来年も、一緒にここに来ようね」


ライトアップされた遊園地ー。

彼女の明美(あけみ)が嬉しそうにほほ笑むー。


夢にまで見た幸せな時間ー。


男子高校生・倉本 康成(くらもと やすなり)は、

「あぁ…約束するよ」と優しく微笑み返したー。


小学生時代から一緒の学校で

幼馴染の間柄だった藤森 明美(ふじもり あけみ)と、

付き合い始めてから3か月ー。


康成は、彼女になった明美と

最高の時間を過ごしたー


けれどー

その、幸せは、もう、その手にはないー。


「---うざい」


敵意を向ける明美ー。

明美の笑顔は、もう、そこには、ないー。


「--明美…!」

康成が明美を呼ぶ。


しかしー


「--気安くわたしの名前を呼ばないで!」

明美が声を荒げるー


茶色に染まった髪ー

短いスカート

派手になった化粧ー


明美は、変わってしまったー。


いいやー

変えられてしまったー。


明美は悪くないー。

何も、悪くないー。


それなのにー


どうして、こんなことに。


・・・・・・


・・・・・・・・・・・・


1週間前ー。


「--わ!」

背後から急に押されて驚く康成。


振り返ると、そこには彼女の明美がいた。


「どう?びっくりした?」

明美が笑う。


「おいおい~!急に押すのは勘弁してくれよ~!」

康成が笑いながら言うと、

明美は「ごめんね!おはよ!」と可愛らしく微笑んだー。


康成の彼女・明美。

明美は明るく、元気な性格で、

真面目で優しいことから先生からの信頼も厚く、

友達も多い。


ちょっとお茶目でいたずら好きなところが

また可愛らしい。


一方の康成は、ごく普通の男子生徒。

イケメン…というほどではないが、

よくいそうな顔立ちだ。


明美とは幼馴染で、

小学生時代からずっと同じ学校だった。


小さいころからよく遊んでいて、両親も親しい。


そんな明美を、中学卒業を控えたぐらいから、

異性として意識をし始めた。


明美はどう思っているか分からない。

けれど、高校1年生の2学期が始まった直後に

勇気を出して明美に告白した結果ー


OKを貰えたのだー


2年生になった今も、同じクラスで

順調に彼氏彼女の関係を続けている。


「---おうおう!今日もイチャイチャしやがって!」

男子生徒の柳沢 零次(やなぎさわ れいじ)が

茶化しながら声をかけてくる。


零次は、中学時代からの知り合いで、

同じ中学からこの高校に来たのは

康成と明美、そしてこの零次と、もう一人の計4人だったー。


「--イチャイチャってほどじゃ…」

康成が言うと、

零次が「照れるな照れるな!」とニヤニヤしながら

肩を叩いた。


スポーツ刈りのガタイの良い男子で、

少々うるさく、お調子者ではあるものの、

根本的には良いやつだ。


「---藤森さんも、こいつを

 あんまり甘やかしちゃだめだぜ~?」

笑う零次。


「こいつ、すぐ調子に乗るからな~」

零次がニヤニヤしながらべらべらと喋っている。


「--ふふふ、甘やかすつもりはないから

 だいじょうぶ!」

明美は笑いながらそう答えたー


何気ない日常ー

明美と過ごす日々ー


それは、これからも続いていくものだと

ずっと思っていたー


教室に入ると、

不良生徒の長谷部 勝(はせべ まさる)と

陰険なお嬢様女子・哀川 裕子(あいかわ ゆうこ)が

何やら口論していたー。

男子の問題児と女子の問題児という感じで

いつも衝突していることが多い。


関わらないようにしながら康成が座席に座る。


「ーーーあ、今日は帰り、遅いんだっけ?」

明美の言葉に、康成は頷く。


生徒会副会長でもある康成は、

放課後に生徒会の話し合いを控えていた。


「--あぁ…今日は一緒には帰れそうにないな~」

康成が言うと、

明美は「ザンネン!」とほほ笑んだ。


「まぁ、今日はちょうどわたしもバイトがあるし、

 帰ったらお話しようね」

明美はそう言うと、自分の座席に向かっていくー。


「---もうすぐ文化祭だからな~」

2学期が始まり、文化祭の日が近づいている。


その話し合いで、何かと康成は忙しかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・


放課後ー


生徒会長の篠塚 沙耶香(しのづか さやか)が、

文化祭についての話し合いを進めている。


この沙耶香が、同じ中学出身の”もう一人”だー。

沙耶香は中学時代は凄いくらい感じだったのだが

高校に入ってからはまるで別人のようになり、

生徒会会長を務めるほどになったー


「---あ…倉本くん」


生徒会の話し合いが終わり、帰ろうとした康成に声をかけてくる沙耶香。


「--ん?」

康成が振り返ると、

沙耶香が「あ、明美と最近どう?」とほほ笑む。


沙耶香は明美とも仲が良く、

とても親しい感じだ。

中学時代は、康成とも明美とも接点はほとんど

無かったのだが。


「--ま~、順調かな」

康成が笑うと、

「生徒会の話し合い多くてごめんね!

 明美もさみしがってるでしょ?」と沙耶香が気を遣う。



「--あぁ、いや、大丈夫大丈夫。

 彼女がいるから、話し合いでませーん!なんて

 言ったら書記の高藤にボコボコにされちゃうよ」

康成がふざけた雰囲気で言う。


高藤とは別のクラスの生徒で、

リア充爆発しろ!といつも叫んでいるやつだー。


「---ふふ、それもそうね」

沙耶香が笑う。


「--あ、じゃあ、俺はそろそろこれで」

康成がそう言って

生徒会室から外に出ると

沙耶香は少しだけさみしそうな表情を浮かべたー



そうー

この日まではいつも通りだったー。


悲劇が起きたのはーーーー


次の日ー

金曜日だー。


その日はー

康成の誕生日だったー。


まるで、その日を狙ったかのようにー


その事件は動き出したー


”憑依”で変えられてしまった明美ー


その、悲劇の始まりの日だー。


・・・・・・・・・・・・・・・


「おっはよ~!誕生日、おめでと~!」

明美が笑うー。


「わわ!ありがとう!」

康成が言うと、明美が”昼休みに渡したいものがあるから

屋上に来てくれるかな~?”とほほ笑んだー。


「もちろん!何貰えるのか楽しみだな~!」

康成が笑いながら言うと、

明美が「どんな反応してくれるか楽しみだな~」と

ニコニコしながら教室へと入って行ったー


授業が始まるー


中間試験のテストが返却されるー


2位ー間宮 結乃(まみや ゆの)


1位ー藤森 明美(ふじもり あけみ)


社会科の先生は、なぜか

男女別の上位3人をいつも発表しながら

返却するー


「やった!一番!」

明美が嬉しそうに答案用紙を受け取る。


そんな様子を微笑ましく見つめながら

康成は屋上で何貰えるのかな~などと

ニヤニヤしながら考えていたー


昼休みー


「---お前、朝からずっとニヤニヤしてたけど?」

友人の零次が笑いながら言う。


「---えっ!?うそっ!?顔に出てた!?」

康成が言うと、零次が「傍からみたらやばいやつだぜ!」と

肩を叩きながら笑う。


「ま、どーせ誕生日で藤森さんから

 何か貰えるかとか、想像しちゃって

 ニヤニヤしてたんだろ?」


「うるせー!」

顔を赤くしながら叫ぶ康成。


零次が「お?顔がトマトみたいになってるぞ!」と

茶化す。


茶化しながらも、零次は時計を見ると

「邪魔して悪いな。待ってるんだろ?彼女が」と

言うと、真剣な表情で言った。


「俺はお前たちを応援してるからな」


とー。


「ーーあぁ、ありがとな」

康成が言うと、零次が小包を取り出した。


その小包の中にはハート形のチョコ。


「なにこれ?」

康成が言うと、

零次が「誕生日プレゼントだよ!」と

康成の肩を叩いた。


「---って…

 なんで♡形チョコなんだよ!

 しかも今日はバレンタインじゃねーぞ!」


康成はそんな突っ込みを入れながらも

それを受け取り、屋上へと向かったー


屋上ー


「ーーあ、!待ってたよ~!」

明美が嬉しそうに手を振る。


「お待たせ~!

 零次のやつが、ハートのチョコなんか

 俺に渡してくるからさ~」


苦笑いしながら康成が言うと、

明美が「仲良しだね~!」とにこにこしながら言う。


そしてー

康成に箱を手渡す明美


「誕生日、おめでとう!」


明美が笑うー


「な~にかな!」

康成が嬉しそうに箱を開けると、

箱からーーーー


ピエロのようなものが飛びだした。


「うわぁぁぁ!?」

思わず驚いてしまう康成。


「あはははははは!びっくり~~~~!」

明美が笑う。


明美が渡したのはびっくり箱だった。


「--この~!騙したな!」

康成がドキドキしながら言うと、

明美は「ごめんごめん、一度こういうのやってみたくて~」と

テヘペロしながらほほ笑んだー


「はい、こっちが本物の誕生日プレゼント」


明美に渡されたのはーーー


謎のキラキラした物体だった。


「なにこれ?」

康成が言うと、

明美はにっこり微笑んだ。


「--ひ・み・つ!」

笑いながら屋上から立ち去って行く明美。


「ひみつ!?っておい!な、ナニコレ!おい!」

康成が笑いながら明美を追いかけるーーーー


・・・・・・・・・・・・・


放課後ー


今日は一緒に帰る約束をしていたー


明美が図書委員の仕事で少し遅くなるらしく

昇降口の前で待つ康成。


「4時ぐらいには出れるよ」


そう言われていたものの、

明美が出てくる様子がない。


「---おそいなぁ…」

康成が呟く。


4時10分ー

4時20分ー

4時30分ー


いつまで経っても明美が出てこない。


心配になってLINEを送っても返事がないー


康成は、不安になって

「一応、図書室見に行くか~!」と呟く。


「まさか…

 また、明美のドッキリか!?」

などと、思いながらー


・・・・・


だがー


ドッキリなどではなかったー


図書室ではーーー

明美が虚ろな目で立っていたー


「----わたしの彼氏は…この人…」

写真を見つめながら、呟く明美ー


その写真はーーー


「---こいつは、、彼氏じゃないーー」

ビクン ビクンと震えながら呟く明美ー


明美はー

何者かに憑依されてーー

今、まさに、思考を塗りつぶされようとしていたー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


長編憑依小説デス!

今回はプロローグの部分から!


いつも③とか、長くても⑤ぐらいで

終わるお話がほとんどですが、

初めてなが~いお話にチャレンジしてみることにしました~

FANBOXでは、普段できないようなことにも

チャレンジしてみたいな…と思うので☆


不定期で書いていきますので

ぜひ楽しんでくださいネ~!


ゾクゾク要素も盛りだくさんにしていけるように頑張ります~!☆

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