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3年目が始まり、

入れ替わったままの二人は、

次第に”元の自分”として振る舞うよりも、

”今の身体”としての振る舞いが自然な振る舞いになっていきつつあったー。


そんな状況を前に、翔太を以前から知る菜々美は、

複雑な感情を吐露するー。


そうこうしているうちに、最後の1年最大の行事である

修学旅行の日を迎えようとしていたー。


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>僕とわたしの不思議な青春㊻~振る舞い~

最後の1年が始まったー。 色々な別れと出会いの季節ー。 入れ替わったままの二人は、将来への不安を強めていきながらも、 引き続き、協力し合って乗り越えていくことを決意するー。 次第に、”元の自分”ではなく、”今の自分”としての生活が 当たり前になっていく二人ー。 そんな二人の進む未来はー…? ★前回はこちら↓★ ・...

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★主な登場人物★


遠藤 翔太(えんどう しょうた)

C組生徒。大人しく、奥手な性格の持ち主。綾と入れ替わってしまう。


星村 綾(ほしむら あや)

C組生徒。可愛らしい雰囲気に、明るい性格の持ち主。翔太と入れ替わってしまう。


神田 哲真(かんだ てつま)

C組生徒。翔太の中学時代からの友人。女子は苦手。


山井 穂乃果(やまい ほのか)

C組生徒。綾の親友。入れ替わりを知ってからも変わらず接してくれている。


伊藤 菜々美(いとう ななみ)

C組生徒。翔太が小さい頃親しかった子。翔太たちに協力してくれている。


★脇役も含めた人物紹介はこちら↓★

<人物紹介>僕とわたしの不思議な青春~登場人物図鑑~

長編入れ替わりモノ 「僕とわたしの不思議な青春」の 登場人物図鑑デス! 連載前に予告として掲載した、 主人公たちのクラス名簿の内容に加え、登場する教員や その他の人物もご紹介しています~! ※ネタバレは控えめ(漫画や小説の最初の方のページに書かれている  人物紹介ぐらいの内容…)デス~!  最初にクラス名...

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修学旅行当日ー。


”ご、ごめんーわたし、迷っちゃったみたいー”

待ち合せ場所に早めに到着していた翔太の親友・哲真は

綾(翔太)からそんな電話を受けていたー。


「でー…出た、翔太の方向音痴ー」

哲真はそう言いながらも、「今、どこにー?」と、

確認の言葉を口にするー。


”え~、えっと~…あー”

綾(翔太)は、今いる駅の名前を伝えると、

哲真はチラッと時計を見るー。


だいぶ早めに到着したこともあって、

”まだ”迎えに行って戻って来ても大丈夫そうだー。


そんな風に思いながら、”迎えに行く”と伝えて電話を切ると、

哲真は「ちょっと悪いー。迷子が出たから迎えにいくことになった」と、

既に到着していた同じカードゲーム部の部員でもある

足立 幸也に対して、そう言葉を口にするー。


「ーーははー大変だなー。わかったー。気を付けろよ」

幸也はそれだけ言うと、哲真は「悪いな」と言いながら

そのまま引き返して、綾(翔太)を迎えに行こうとするー。


そこでー、ちょうどやってきた

綾の親友・山井 穂乃果と鉢合わせすると、

「ーーおはよー。あれ、集合場所あっちだよねー?」

と、穂乃果は集合場所から逆の方向に向かって歩く哲真に

向かってそう言葉を口にしたー。


「ーん?あぁ、翔太がさー、迷ったみたいでー

 あいつ、方向音痴だからー」

哲真が迎えに行こうとしていることを口にすると、

穂乃果は「あ~~~~」と、呆れ笑いのような表情を

浮かべながら

「ー身体が変わっても、そういうところは直らないんだね」と、

そう言葉を口にしたー。


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「ーー本当にごめんねー」

哲真の助けを得て、ようやく集合場所にたどり着いた

綾(翔太)が申し訳なさそうに言葉を口にすると、

「ーいいっていいってー」と、哲真は笑いながら言葉を口にしたー。


「ーあ、遠藤くんーおはよ~」

哲真が綾(翔太)を迎えに行っていた間に

集合場所に到着した翔太(綾)も笑いながら手を振るー。


「ーーー」

ふと、綾(翔太)の私服を見ながら、

翔太(綾)は”ー全部、わたしの持ってなかった服だなぁ…”と、

心の中で笑うー。


最初は、綾(翔太)は、元々綾が持っている服を着ていたし、

今回と同じく、私服の学校行事だった

1年の遠足の時は、とても恥ずかしそうに

翔太(綾)に”何を着ればいいのか”相談してきていたことを

懐かしくすら思うー。


「ーー遠藤くん、最近どんどんおしゃれになってきたんじゃない?」

翔太(綾)がそう言うと、

綾(翔太)は「え~…?そ、そうかなぁ~えへへー」と、

照れ臭そうに笑うー。


今では”自分で好きな服”を買って、自分なりにおしゃれをしているー。


そんな綾(翔太)を見てー、

翔太(綾)は翔太の成長のようなものを感じると同時にー

”わたしの身体がわたしのものでなくなりつつあるー”

そんな現実に、少しだけ寂しさも感じたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


新幹線に乗って、修学旅行の目的地である京都に移動を始める

生徒たちー。


「ーあまり騒ぎすぎちゃだめだからね~?」

担任の若松先生が苦笑いしながら言うと、

「まぁまぁ、いいじゃんいいじゃんー」

と、今年から英語の担当になった元ギャルの先生ー、

杉内先生が、若松先生にそんな言葉を投げかけるー。


「ーいや、しかし、羽目を外しすぎるのは良くない」

授業がつまらないといつも言われている

国語の井上先生が言うと、

「イノちゃんは頭が固いなぁ~」と、杉内先生が

笑いながら呟くー


「い、イノちゃん!?」

井上先生は、困惑した様子で眼鏡を掛け直すと、

しばらく戸惑ったような表情を浮かべるー。


そんな先生たちの会話を他所に、生徒たちは

楽しそうにそれぞれ談笑していたー。


「ーー綾ちゃん、めっちゃ可愛いやんー」

綾(翔太)の隣に座る、綾の親友・笹野翔子が

そう言葉を口にするとー、

「え~、翔子ちゃんも可愛いよ~」と、

綾(翔太)は照れ臭そうに笑うー。


「ーあ、その鞄のキーホルダーもかわいい!どこで買ったん?」

翔子の言葉に、綾(翔太)は「あ~これはね~」と、

嬉しそうに、話をし始めるー。


もはや、完全に”女子”と言ってもいいー。


そんな様子に少しムスッとした様子を見せる、

少し離れた座席の菜々美ー。

翔太を小さい頃から知る彼女は、”翔太”には”翔太”に

戻ってほしいとそう願っているー。


「ーーおぇぇぇ…!」

少し離れた座席ではお調子者で行事好きの栗原 誠一が

乗り物酔いで吐きそうになっているー。


その隣の座席の、以前綾に告白したことのある男子・須藤 渉が

「うわっ…く、栗原!吐くなよ!?絶対吐くなよ!?」と、

必死にそんな言葉を発しているー。


「はははー賑やかだな」

そんな風に呟くのは、翔太(綾)の隣に座っている

男子生徒・敷島 郡司ー。


「ーーそうだねー」

翔太(綾)も笑いながらそう言葉を口にすると、

郡司は「それにしても、僕と香奈枝の中学はさー、

修学旅行、京都だったから、また京都なんだよなー」と、

苦笑いするー。


「ーあはは、そうだったんだ~

 僕はーーー」

翔太(綾)はそう言いかけて、少し言葉を止めるー。


”綾”の中学は、修学旅行は大阪だったー。

しかし、今の綾は”翔太”の身体ー。

翔太の中学時代の修学旅行はーーー


「ーーー僕はーーえ~っと、どこだっけー?」

そう言えば、聞いたことがなかった、と思いつつ、翔太(綾)が

苦笑いすると、郡司も「もしかして、忘れたのかー?」と、

苦笑いしながら言葉を口にしたー。


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京都に到着しー、1日目の自由行動が始まったー


翔太(綾)、綾(翔太)、哲真と穂乃果の4人で

予め学活で話し合ったルートに沿って観光を始めるー。


京都の街並みを歩きながら、普段とは違う光景に

目を輝かせる綾(翔太)と翔太(綾)ー。


「ーーははー俺たちだけになったから、

 やっと本当の名前で呼べるなー」

哲真がそう言うと、

「ーあはは、そうだねー」と、綾(翔太)は

苦笑いしながら、

美味しそうな京都のお菓子を見つめるー。


「ーお、翔太ーこれとかどうだー?」

そう言いながら、哲真が別のお菓子を指差すと、

綾(翔太)は「ーーわ!おいしそうー!」と、

嬉しそうにそのお菓子を手にするー。


そんな二人の様子を見ていたそのお店の

おばあさんが、哲真の方に向かって笑いながら言うー。


「ー彼女さん、”翔太”って言うのかいー?」

とー。


気さくそうな昔ながらのおばあさん、という感じの店主の言葉に、

哲真は「えっー!?あ、いえー、あ、あだ名ですーははー」と、

笑うー。


「ーーあ、あと、あいつは彼女じゃなくてー

 そう、友達ですー!」

哲真が慌てた様子で言うと、それを聞いていた綾(翔太)が

苦笑いするー。


「ーーおやおや、彼女さんじゃなかったのかいー?

 悪かったねぇー」

おばあさんはそう言うと、哲真と綾(翔太)に

「これ、少し味見してみるかい?」と、お菓子を特別に

少しだけ分けてくれたー。


綾(翔太)が、「美桜に買って行ってあげようかなー」と、

”綾”の妹の美桜の名前を口にしながら、

味見させてくれたお菓子をひとつ購入すると、

おばあさんにお礼を言いながら、二人は店を出たー。


「ーわりぃ…人前で”翔太”はまずいよなー」

苦笑いする哲真ー。


「ーあはは、たしかにわたしの見た目で”翔太”は変だもんねー。

 二人の時は全然大丈夫だけどー」

綾(翔太)はそう言うと、

少しだけ、自分の一人称がすっかり”わたし”になってしまっていることを

改めて実感するのだったー。



一方ー、

二人が買い物していた隣の小さなお店で

お土産を見ていた翔太(綾)と、穂乃果ー。


「ーー綾は大丈夫ー?」

穂乃果がそんな言葉を口にすると、

翔太(綾)は「ーえ?何が?」と、微笑むー。


「ー”方向音痴”移ったりしてない?

 その身体でもう2年も過ごしてるからー」

穂乃果が冗談めいた口調で言うと、

翔太(綾)は「ーあはは、それは身体の問題じゃないんじゃない?」と、

笑いながら、「さすがに、方向音痴にはなってないかなぁー僕は」と、

付け加えるー。


「ーーーあ、”僕”」

穂乃果が笑いながら指摘すると、

翔太(綾)は笑いながら「ーあ!やっちゃったー!」と悪戯っぽく笑うー。


綾になった翔太ほどではないものの、

翔太になった綾も、”翔太のフリをしなくてもいい場面”でも、

最近は”わたし”ではなく”僕”ということが少し増えているー。


「ーー慣れって怖いよね~

 わたしも、だんだん、男子の生活の方が

 当たり前になってきてるしー」

翔太(綾)がお土産を見つめながらそう言うと、

穂乃果は少しだけ寂しそうに笑いながら

「ーーま、そんなことよりー!」と、寂しさを紛らわせるために

話題を変えたー。


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京都の観光名所のひとつ、”金閣寺”にやってきた4人ー。


「ーーやっぱすげえなぁ」

哲真が、金閣寺を見つめながらそう言葉を口にすると、

穂乃果も「綺麗だよね~」と、笑いながら金閣寺を見つめるー。


少し離れた場所では、綾(翔太)と翔太(綾)が

何やら話をしながら、金閣寺を見つめているー。


「ーーーーーー」

穂乃果はチラッと哲真の方を見つめるー。


「ーーーでもさ、こうしてアンタと仲良くなれたのも

 あの二人のおかげだよねー」

穂乃果はそう言いながら、少し離れた場所の二人を見つめると、

哲真は「ははー、まぁ、そうかもなー」と頷くー。


綾の親友・穂乃果と、翔太の親友・哲真ー。

当初、二人は”ただのクラスメイト”でほとんど接点はなかったー。

そもそも、哲真はあまり女子が得意ではなく、

穂乃果と話し込むような機会はなかったー。


けれどー、お互いに自分の親友の入れ替わりを知りー

二人を通じて、一緒に行動したりする機会も増えたー。


「ーーーあのさー。前に言った”鈍すぎる男子”のことだけどさー」

穂乃果が金閣寺を見つめながらそう言うと、

哲真は「ん?あぁ~、そいつ、気付いたのか?」と、笑うー。


穂乃果は”好きな男子”がいるのだと、そう言っていたー。

その男子が”鈍すぎて困る”ともー。


「ーーううんー。まだ気づいてないー。

 ホント、馬鹿すぎるよねー」

穂乃果が苦笑いしながら言うー。


哲真は「はははー。まだ気づいてないのかよ、そいつー」

と、そう言葉を口にすると、

穂乃果は「すぐ近くにそいつ、いるんだけど」と、

金閣寺の方を見つめながら、思い切って言い放ったー。


「ーーーえ」

哲真は、穂乃果の視線を辿って金閣寺の方を見つめるとー

しばらく沈黙してから、ようやく口を開いたー


「ーーえ…????

 好きな相手って、金閣寺だったのかー?」

真顔で言う哲真ー。


「ーーー…はぁ?」

穂乃果は、哲真の予想外の反応に声を上げると、

「もういい!あんた、そこの池に沈んで」と、

そのまま不満そうに立ち去ってしまったー。


「えぇ?なんでだよ!?」

哲真が戸惑いながらそう叫ぶと、

翔太(綾)と綾(翔太)の方に向かった穂乃果の後を

追って走り始めたー。


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”銀閣寺”ー。


金閣寺と違って、銀色に輝いているわけではない

その建物を見つめながら

綾(翔太)が道を歩くー。


「大丈夫ー?疲れてない?”わたしの身体”ー

 結構すぐ疲れるからー」

翔太(綾)が心配しながらそう言うと、

「ふふー大丈夫大丈夫ー。楽しいが勝ってるからー」

と、綾(翔太)はそう返事をしたー。


「ーーうぉぉぉぉぉ!この渋さーやっぱたまんねぇ!」


ふと、聞き覚えのある声が聞こえてきて振り返ると、

銀閣寺を見つめながら叫んでいる

行事好きでお調子者の栗原 誠一と、

その横で「底知れぬ力を感じる…!」と、

中二病の米沢 海斗の姿が見えたー。


その近くでは、呆れ顔の女子ー

福井 寧々と守屋 智花の二人の姿があったー。


「ーね~~~!寧々、金閣寺の方が行きたかったんだけど~!」

自分のことを”寧々”と呼ぶ、寧々が不満そうに呟くー。


「ーーーー」

表面上、優等生な智花は沈黙しながらも少し不満そうだー。


「ーーお、お前たちもここにいたのかー」

哲真が、たまたま鉢合わせした同じクラスの別の行動班の

面々に声を掛けると、

誠一は「ー銀閣寺の渋さ!何分見てても飽きなくてさ!」と

嬉しそうに騒ぎ始めるー。


「ーーーーあの二人と一緒とか、災難ねー」

穂乃果が、智花に声を掛けると、

「ーーー変わってくれる?」と、少し不満そうにしながら笑ったー。


まだ銀閣寺を見るのだというそのグループを残して

翔太と綾たちは次の場所へと向かうー。


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その後も、翔太たちは京都の各地を巡り、

自由行動終了直前には、京都タワーに寄って、

そのまま集合場所で他の行動班たちと合流したー。


そしてー、宿泊地となる旅館にたどり着くー。


「ーじゃ、ゆっくり休んでね」

翔太(綾)が笑いながら手を振るー。


「うんー”遠藤くん”もー」

周囲に生徒がいるため”中身”ではなく”身体”の名前で呼ぶと、

綾(翔太)はそのまま女子の部屋へと向かうー。


同じ部屋にいるのは

翔太を小さい頃から知る菜々美と、

綾(翔太)と仲良しな笹野翔子、野坂優菜ー、

入れ替わりの事情を知るお嬢様・神宮寺真莉愛と、

美術部員の倉守 詩音、そして綾の親友・穂乃果ー。


「部屋の中では”綾”で通すからね?」

穂乃果の言葉に、綾(翔太)は「うん」と、頷くー。


スキー教室の時は、”女子部屋”には緊張したー。

けれど、今は違うー。

特に気を遣わずに、むしろこの方が自然に過ごせるー。


「ーあ~、ウチのグループは銀閣寺は行かなかった~」

翔子が笑いながら言うと、

優菜は「途中でちょっと、迷っちゃったしねー」と、笑うー。


綾(翔太)は、二人が買ったおみやげを見ながら

「わ~!かわいい~!」と、嬉しそうに騒いでいるー。


そんな様子を見ながら、菜々美は不満げな表情ー。


”ーーー完全に、”星村 綾”じゃんー”

菜々美は、心の中でそう毒づくー。

彼女は、”遠藤 翔太”はそのままでいてほしいと、

今でもそう願っていたー。


「ーー不満そうな顔してるよ?」

綾の親友・穂乃果が菜々美にそんな声を掛けると、

「ーーまぁーー少し不満かな」

と、菜々美はそう言葉を口にしたー。


「ーーふふーでも、気持ちは分かるけどねー。

 すぐに100%受け入れることなんて、

 わたしでも難しいしー」

穂乃果はそう言うと、綾(翔太)が、

楽しそうに女子同士でトークしている姿を見つめながら

「ーまぁ、それでもーわたしは”推せる”けどねー」と、苦笑いしたー。


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賑やかな晩御飯の時間が終わりー、

翔太(綾)と哲真は、色々雑談しながら

部屋へと戻るー。


「ーー男子の部屋なんて、居心地悪いだろ?」

哲真がボソッと言うと、

翔太(綾)が首を横に振るー。


「ーううんー今はそんなことないよー。

 慣れたというか、楽しいしー」

と、そう言葉を口にする翔太(綾)ー


「はは、そっかー。

 でも、星村さんも無理はするなよ?

 まだ、”男子歴”2年なんだからー」

哲真が冗談めいた口調で言うと、

翔太(綾)は「ありがとー」と、微笑み返すー。


そんな会話を終えて

翔太(綾)の前から離れると、哲真は、

持ってきていたカードを取り出したカードゲーム部の足立幸也の方を見て、

「ーーお、そろそろやるか?」と笑いながら

二人でカードバトルを始めるー。


1年の時、いじめられていた丸岡 富雄は、

翔太(綾)ともそれなりに仲の良い敷島 郡司と

何やら彼女トークをしている。


富雄は、合唱コンクールの時にピアノの腕前を披露した

湯川 梓と、

郡司の方は、同じ中学出身の報道部所属の岡崎 香奈枝と

付き合っていて、どちらも上手く行っているようだー。


「ーーお、それいいじゃんー」

自由行動の際にお土産で購入した金閣寺のオブジェを見て、

かつて綾に告白したことのある須藤 渉が言葉を口にするー。

「ーーあ、これ?なんか綺麗だったからー」

翔太(綾)がそう言葉を返すと、

そのまま、二人はお土産トークをしながら、それなりに盛り上がったー。


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就寝時間を迎えた1日目の夜ー。

しかし、生徒たちはまだ、それぞれ修学旅行の夜を堪能していたー。

大体、1日目の夜はみんな元気だー。


「ーーーー大丈夫?」

綾(翔太)が少し心配そうに友人の野坂 優菜に声をかけるー。


優菜は、1年のスキー教室の際に、

おばあちゃんを心配してホームシック気味になっていたー。


そのことを思い出したのだー。


「ーうん。大丈夫ー。みんながいるからー」

優菜は少し寂しそうにしながら微笑むー。


「ー寂しくなったらウチが抱きしめてあげるから安心して」

翔子が笑いながら乱入してくるー。


そんなやり取りを見ながら、綾(翔太)も楽しそうに

冗談を口にするー。


”ーーーー”

その様子を、布団に入りながら見つめていた菜々美は、

”今日1日”綾になった翔太を見ていて確信したー。


”やっぱり、心はもうすっかり女子”だとー。


「ーーーー…遠藤くんー」

不満そうにしながらも、菜々美はそのまま布団にもぐって

眠りにつこうとするー。


美術部所属の倉守 詩音も、綾(翔太)たちの会話に加わって

色々話をし始めー、部屋の中は賑わいを見せているー。


「ーーー…もう、すっかり”綾”だねー」

綾の親友・穂乃果は、少し離れた場所で

スマホをいじりながらそう呟くと、

その近くにいたお嬢様・神宮寺 真莉愛が、

「ー入れ替わったまま生活を続けるとー

 だんだんそうなっていくものなのですわねー」と、

静かに呟くー。


「ーーーーまぁ、でもあの二人で良かったのかもね」

穂乃果が小声でそう言葉を返すー。


きっと”入れ替わる組み合わせ”次第では

こんな風に、上手くはいかなかったと思うー。


入れ替わったのが、あの二人で良かったのかもしれないー。

最近は、そう思い始めたー。


複雑な気持ちは、消せないけれどー

それでもーー


穂乃果は少しだけ寂しそうにしながら微笑むと、

「ーーあ、そうだー。ちょっと男子の部屋の方に遊びに行ってこようかな」

と、真莉愛に向かって言葉を口にしたー。


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一方ー、男子部屋では

枕を投げ合って哲真と、幸也が騒いでいたー。


「ーあはははー」

翔太(綾)が少し苦笑いしていると、

枕が飛んできて、近くにやってきた哲真が

”ーなんか、ごめんなー”と、小さく呟いたー。


綾に気遣っているのだろうー。


がー、翔太(綾)は少しだけ笑うと、

哲真に対して「えいっ!」と、枕を優しく投げつけたー


「ーーうぉっ!?やりやがったな翔太!」

笑いながら、綾(翔太)のほうを見つめる哲真ー


”あまり、気を遣いすぎなくて、いいからねー?”

と、小さく呟くと、哲真は少しだけ笑いながら

修学旅行の夜を、満喫するのだったー。


㊽へ続く


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★3-Cの日常★


修学旅行1日目・夜ー

もう一つの女子部屋では、

自分のことを可愛いと思っている寧々と、

気の強い女子生徒・高倉 美咲が

”どっちがおしゃれか”で言い争っていたー。


「寧々のほうが可愛いし~!」

寧々がそう言い放つと、

美咲は「あんたはなんか、こうー狙い過ぎなのよ!」と反論するー。


その横では報道部の香奈枝と、誰にでもスキンシップの

激しい霧崎 理子が何やら雑談をしながら盛り上がっているー。


表向き優等生の智花は、不満そうに一人静かに過ごしていてー、

可愛いけどネガティブな湯川 梓はあたふたしているー。


一方ー、その隣の”もう一つの男子部屋”ではー、

お調子者の栗原誠一と、中二病の米沢海斗がずっと騒ぎ続けていて、

勉強一筋の渡辺 大樹は一人で舌打ちー。


「俺は寝るぜー」

人生は暇つぶしと豪語する藤沢 孝弘は一人でサッサと寝てしまいー、

クラスメイトたちから印象が薄いと言われてしまっている

中尾 俊太は先ほど部屋の外に出てから行方不明だー。


「ーーーははー騒がしいなぁー」

去年の3年生ー…留年して翔太たちと同じクラスになった

五十嵐 慎吾は苦笑いしながらそう言葉を口にしたー。


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コメント


修学旅行のお話に突入しました~!☆

修学旅行は1回しかありませんし、

1話では書き切れないので、今回は”前編”デス~!

(駆け足で書けば書けちゃいますケド、勿体ないので~笑)


次回も引き続き、修学旅行を楽しんでくださいネ~!


★関連話★

(こんな話題あったかな?の参考にしてみて下さいネ~!)


スキー教室 ⇒第22話

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