Home Artists Posts Import Register

Content

2XXX年ー

人類は自分の身体を持たず、作られた人間の身体に憑依することで、

永遠にも近い生を手に入れていたー。


そんな社会で、現在は”絵梨花”として生きている彼はー、

”違法生存者”である純恋と出会うー。


”肉体と魂の分離”を拒み、ボディレスが当たり前になったその時代で、

自分の身体で生きる純恋と出会った彼はー…


☆前回はこちら↓☆

<憑依>ボディレス社会①~身体持たぬ社会~

2XXX年ー 世界は”ボディレス”の社会になっていたー。 現金を持たない”キャッシュレス”など、とうの昔に超えた 遠い未来ー。 ついに、人間は”己の身体”など持たぬ時代になっていたー。 「ーーへへへー全く好きだなぁお前はー  いっつもそういう感じの身体じゃねぇかー」 親友の拓真(たくま)が、呆れ顔でそう言葉を口に...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー君は、違法生存者なのー?」

”絵梨花”がそう言葉を口にすると、

先程”絵梨花”が助け出した女ー・純恋は

不愉快そうに表情を歪めたー。


「ーーーーー…わたしはただ、自分の身体で生きているだけです」

とー、そう言葉を口にする純恋ー。


しかし、”ボディレス”が当たり前の社会で生きてきた”絵梨花”ー

いや、誠也にとっては理解できなかったー。


「ーーいやいやいや、え?なんでー?

 自分の身体で生きるなんてー、何も意味ないじゃん」


”絵梨花”はそう言うと、

10歳の時に自分の身体と魂は分離されー、

それ以降は、人工的に作り出された”中身が空っぽ”の人間の身体に

憑依し、生活するー。

そんな、”この世界では当たり前”のことを言い放つー。


「ーー純恋さんみたいに、悪い人に追われてたって、

 ”ボディレス”なら、身体を捨てて乗り換えれば済むだけの話なのにー

 自分の身体でなんか生きてるから、そんなことになるんじゃー?」


”絵梨花”が、そう言い放つー。

”絵梨花”は、困っている人を見捨てるようなタイプではないし、

友人の”拓真”からも”お前は優しいからな”などとよく言われるぐらいには

優しいタイプだー。


しかし、そんな彼でも

”ボディレス社会”が当たり前になっていて、

それを拒む人間は、理解できなかったー。


「ー自分の身体でそのまま生きてたら、病気になったら

 終わりなのにー!

 怪我もそうだよー。


 わたしみたいに、”憑依した身体”で生きてれば

 病気になっても、怪我しても、乗り換えれば済むのにー


 ーー自分の身体で生きるなんてー…」


”絵梨花”は、心底”理解できない”と、言った様子で首を振るー。


”本体”は管理センターに、安全な状況で冷凍保存されているー。

そのため、幽体離脱した自分の魂はいつまでも消えることなく、

身体を次々と乗り換えることができるー。

今の社会は、それが当たり前だー。


「ーー自分の身体で生きるのってー、そんなに悪いことなんですかー?」

純恋が目に涙を浮かべながら言うー。


「ーーーーー!」

まさか泣き出すとは思っていなかったのか”絵梨花”は表情を歪めると、

「ーー自分の身体で生きたいって思うだけで、犯罪者みたいな

 扱いを受けなきゃいけないんですかー?」と、純恋は涙ながらに

”絵梨花”に訴えかけて来たー。


「ーー…そ、それはー」

”絵梨花”は戸惑うー。


生まれてきた時から、ボディレスが当たり前だった誠也にとっては

そんなこと、一度も考えなかったー。


10歳になったら自分の身体から切り離されて、

あとは、他の身体に憑依してずっと生きるー。

当たり前のように、そう育ってきたし、

”自分の身体で生きたい”なんて、考えもしなかったー。


だがー、いざ、”それが悪いことなのか”と聞かれると、

何とも答えられなかったー。


「ーーーー…で、でも…それじゃ、

 大昔みたいに病気になったり、事故に遭えば、それで死ぬってことだしー

 そんなの、馬鹿らしすぎるよ!」


”絵梨花”はそう言葉を口にすると、

純恋は目に涙を浮かべたまま、”絵梨花”の方を見つめるー。


「ーーあなたは自分の身体で生きたいって思ったことはないんですか?」

純恋の言葉に、”絵梨花”は「ないよー」と、呟くー。


「ーーそんなこと、考えたこともないー。

 だって、人間はこうやって生きるのが当たり前なんだからー」

”絵梨花”がそこまで言うと、

純恋は目に涙を浮かべまま、言葉を吐き出すー。


「ーーそれが、絵梨花さんの望みならー

 ーーーわたしは別に、それでもいいと思いますー


 でもーーー」


純恋はそこまで言うと、顔を上げて”絵梨花”を見つめたー。


「ーわたしはー、わたしの身体で生きたいんですー」

涙をこぼしながらそう言い放つ純恋ー


”絵梨花”が困惑の表情を浮かべていると、

インターホンが鳴ったー。


ガクガクと震え出す純恋ー。


「ーーお願いー…助けてー

 捕まったらわたしー…」


純恋を追っている人間たちの正体は

”違法生存者取締委員会”ー。


ボディレス社会においてー

”自分の身体で生きようとする者たち”を取り締まる団体だー。


「ーーー……捕まったら、どうなるの?」

”絵梨花”は、横目で純恋を見つめながら言うと、

純恋は「ーーー消されますー」と、それだけ呟いたー


「ーーーー」

”絵梨花”は表情を歪めるー。


”自分の身体で生きよう”なんて馬鹿なことを考えるから

こんなことになるんだー。

こんなことに巻き込まれるなんて、災難すぎるー


”絵梨花”は、そう思いながら

ホログラム映像のようなものに向かって「はい」と、

応答するー。


これが、この時代の”インターホン”だー。


”ー違法生存者取締委員会の菊田(きくた)と申しますー”

そう言いながら、菊田と名乗る男が警察手帳のようなものを見せると、

”違法生存者がこのあたりに逃げ込んだのですが、見かけていませんか?”と、

そんな言葉を口にしたー。


”絵梨花”は、ガクガクと震えながら怯えている純恋の方を見つめるー。


”馬鹿”だとそう思ったー。


ボディレスで生きれば、こんな風に終われることもないし、

好きな性別・姿になれるし、

今の自分の身体に飽きたら乗り換えることもできるし、

病気も事故も事件も恐れる必要はないー。

それに、人生の時間も”本体”がダメになるまでー…

そう、本体は冷凍されている以上、ほぼ永遠に生きられるのだー。


それなのに、この純恋という子は、

自分の身体で生きたい、と、魂の分離も拒み、

こうして逃げ続けているのだー。


「ーーー馬鹿すぎるでしょ」

”絵梨花”はそう言うと、

純恋は覚悟を決めたかのように震えながら目を閉じるー。


がーー


「ーーわたしは家にずっといたので特に見かけてませんー。

 お力になれなくて、申し訳ありません」


”絵梨花”は、そう言葉を口にすると

違法生存者取締委員会の菊田は”そうですか。ご協力ありがとうございました”

と、そのまま立ち去って行ったー。


「ーーーふぅ」

溜息をつく”絵梨花”ー。


「ーーな、なんでー…?」

目に涙を浮かべながら、純恋は”絵梨花”の方を見つめるー。


「違法生存者を助ければ、あなたもー」

純恋の言葉に”絵梨花”は少しだけ笑うと、

「ー何でだろうー」と、自虐的に呟きながら

イスに座ったー。


「ーー”ボディレス”で生きればこんなに楽なのにー、

 馬鹿だなぁ、って思うんだけどー

 でもーー…なんか、放っておけなかったー」


”絵梨花”はそれだけ言うと笑うー。


怯えている純恋を見て、このまま引き渡すことに

罪悪感を感じてしまったのだー。


「ーーーーありがとうございますー」

純恋は震えながらそう言うと、

”絵梨花”は「しばらくわたしの家にいてもいいよー」と、

だけ言葉を口にしてから、「あ!」と、思い出したかのように笑うー。


「ーあと、わたし、”純性別(じゅんせいべつ)”は”男”だけど、

 それでも大丈夫?


 ーーまぁ、ほとんど女の身体を渡り歩いてるし、

 中身も女みたいなものー…だってわたし自身は思ってるけどー」


”絵梨花”の言う”純性別”とは、

”生まれた時の性別”のことだー。

今は”絵梨花”を名乗る誠也は、元々は男だったからー、

今の場合、”純性別”は男、”性別”は女となるー。


「ーーー本当に、本当にありがとうございますー」

純恋は、目から涙をこぼしながら

”絵梨花”に、感謝の言葉を口にするー。


まさか、”助けてもらえる”などとは思わなかったー。


「ーーあははー

 そんなに泣かない泣かないー」

”絵梨花”は、それだけ言葉を口にすると、

純恋のほうを見て優しく微笑んだー。


”自分の身体で生きたい”ー

そんな考えは”馬鹿な考え”だと、”絵梨花”は思うー。


けれどー、それでも本人がそう生きたいのであれば

それはそれで、好きにさせてあげればいいんじゃないかー、

と、そんな風に思ったのだー。


”消される”ー

純恋はそう言ったー。


けど、消されるほど重罪とも思えないー。


そんなことを思いながら”絵梨花”は、

少し安堵の表情を浮かべている純恋を見て、

今一度微笑んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーえぇ、マジかー?」

”拓真”がそう言葉を口にするー。


「ーーうんー

 わたしもびっくりしちゃったー」

”絵梨花”が、親友の”拓真”に対してそう言い放つと、

”拓真”は「へ~…でも、違法生存者って本当にいるんだなぁ」と、

そう言葉を口にしたー。


数日後ー。

”絵梨花”は、親友の”拓真”と共に、

新しくできた駅前のお店に遊びに来ていたー。


”拓真”の”中の人”は元々女性であるからか、

スイーツには目がないー。


「ーーこれ、美味しいなぁ!」

”拓真”が嬉しそうに笑うのを見て、

「ふふー。わたしもー”今回の身体”は甘い物も

 すっごく美味しく感じるー」と、

”絵梨花”は嬉しそうに微笑んだー。


前に憑依していた身体は、イマイチ甘い物が口に

合わなかったー。

が、今回は存分に甘い物を楽しめそうだー。


「ーーでもさ、その”違法生存者”どうするつもりだよー?」

”拓真”の言葉に”絵梨花”は、

「しばらくはわたしの家に居候みたいな感じかなぁ…

 そのあとどうするかは、あの子に聞いてみないと」

と、そう言葉を口にするー。


「ーはは、そっかー。

 俺も手伝えることがあったら、手伝うよ」

”拓真”はそう言うと、静かに笑うー。


「ーーうん。ありがとうー。

 あ、大丈夫だと思うけど、誰にも言わないでね?」

”絵梨花”がそう言うと、”拓真”は笑いながら

「ははー、言うわけないだろ?お前まで捕まったりしたら

 親友を失っちまうし、そんなことするメリットもないしー」と、

そう言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


”絵梨花”は、救出した純恋との生活を続けたー。


”絵梨花”も少なからず”違法生存者”に偏見を持っていたものの、

一緒に暮らすうちに相手のことも、

ある程度、理解を示すようになっていたー。


親友の”拓真”も、純恋のことを何かと心配してくれるようになり、

追われている身で外に出ることのできない純恋に対して、

お土産を買ってきたりしてくれることもあったー。


「ーーいつもありがとうございますー」

純恋がそう言葉を口にすると、

”絵梨花”の家にやって来ていた

”拓真”は、「いやいや、いいさー」と、笑みを浮かべるー。


「ーわたしからも、お礼を言わないとねー。

 わざわざ来てもらっちゃって」

”絵梨花”も、そう言葉に口にすると、”拓真”は笑いながら

「ーいやいや、本当にいいってー。親友が拾った子を助けるのは

 当然だろ?」と、そう言葉を口にしたー。


「ーーーあ、そうだー。

 ”絵梨花”ー

 今度、俺、”身体変える”からー」


”拓真”が思い出したかのようにそう言葉を口にするー。


「ーーえ? その身体、どっか壊れた?」

”絵梨花”がそう言うと、

”拓真”は「ん~~…なんつーか、最近よくめまいがするからさ」

と、笑みを浮かべるー。


「ーあはは、そっかー。じゃあ違う身体に憑依した方がいいね」

”絵梨花”も、当たり前のように笑うー。


「ー次は、たまには女になってみるかなぁ~…

 元々女なのに、俺、男の身体ばっか使ってるし」

”拓真”が笑いながら言うー。


”拓真”の本名は”麻耶”ー

生まれた時は女だったものの、憑依できる年齢になってからは

男の身体にばかり憑依しているー。


「ーーあはは、ホントに?じゃあ、女子会でもしよ!」

”絵梨花”が笑うと、”拓真”は「ま、実際身体を選ぶときに

やっぱイケメンを選ぶかもだけど」と、そう言葉を口にするー。


「ーーあ、あのー」

そんな二人の会話を聞いていた純恋がふと言葉を口にするー


「めまいなら、原因が分かれば多少良くなるかもー」

とー。


純恋も、前にめまいに悩んでいた経験があるらしく、

そんな言葉を口にするー。


がー


「ーははは、大丈夫大丈夫。”身体”変えればいいだけだからー」

その言葉に、純恋は少し複雑そうな表情を浮かべるー。


しかし、”拓真”が”いい”と言っているため、

それ以上は純恋は何も言わなかったー。


やがてー、拓真は帰路につき、

”絵梨花”と純恋が二人になるー。


「ーーーーーーー絵梨花さんもーーー

 いつか、また”身体”を変えるんですかー?」

純恋が少し寂しそうに言うー。


「ーーーえ?」

”絵梨花”が、少し不思議そうにそう反応すると、

「う~ん、まぁ、今までもたくさん乗り換えて来たしー。

 大丈夫。身体が変わっても、わたしはわたしだから」と、

笑いながら言うー。


「ーーーー」

けれどー、純恋は寂しそうに口を開いたー。


「ーーわたしは、いつまでも絵梨花さんでいてほしいですー」

とー。


「ーーー…え」

”絵梨花”が戸惑いの表情を浮かべるー。


「ー…絵梨花さんは、”自分の身体”に愛着を持ったことはないですかー?」

純恋の言葉に、”絵梨花”は表情を歪めながら、考えるー。


「ー愛着…かぁ…

 でもーーほら、洋服だって破れたりしたら新しいの買うしー…

 それと同じような感じかなぁ…

 体調悪くなったら、新しいのに変えるのは当たり前のことだし」


”絵梨花”は言うー。


それは、ボディレス社会では当たり前の考えー。

この世の中において、純恋の言っていることは

”破れたタイツを履き続けてほしい”と言っているのと同じー。


「ーーー…ーー…そう、ですよねー」

純恋は、改めてボディレス社会と”自分”の考えの違いを思い知らされると

少し寂しそうに、自虐的な笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー


”現在、逃亡中の入れ替わり生存者の相原 純恋さんに

 違法生存者取締委員会は懸賞金をかけることを発表しましたー。

 有力な目撃情報には基本金として100万円ー

 確保に至った場合は1000万円の懸賞金が支払われますー”


ニュースを見つめる”絵梨花”ー。


純恋は不安そうに”絵梨花”のほうを見つめるー。


「ー大丈夫。ここにいれば大丈夫だよ」

”絵梨花”はそう言葉を口にするも、

純恋は不安そうに”絵梨花”のほうを見つめたー。


③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


次回が最終回の予定デス~!☆


今とは全く異なる人々の暮らしを描いていると、

なんだか不思議な気分になります~笑

もしもボディレス社会になれば、私も身体を乗り換えて

永遠に創作活動できそうですネ~笑


今日もお読み下さりありがとうございました~!☆★!

Files

Comments

No comments found for this post.