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「ーーーアンタ見てるとさ~、不快なんだよねぇ」

陰険そうな雰囲気で、そんな言葉を投げかけるー。


その周囲には2人の友人が、同じように笑っているー。


”いじめ”

どこにでもある光景ー。


鋭い視線を投げかけられ、怯えた様子の

森下 史香(もりした ふみか)は、身体を震わせながら

「ご、ごめんなさいー」と、そう言葉を口にするー。


史香は、何も悪いことはしていないー。

けれどー、それすらも分からなくなるぐらいに、

”いじめ”は彼女の心をすり減らし、そして、痛めつけていたー。


「ーーー全然心がこもってないんだけど~~?」

いじめっ子のリーダー格・上杉 葵(うえすぎ あおい)は、

笑みを浮かべながら史香の方を見つめると、

「もっと、心を込めて謝りなさいよ~」と、史香の髪を引っ張りながら笑うー。


葵の友人二人も、そんな様子を見つめながら楽しそうに笑うー。


「ほらほら、本気であたしたちに謝るつもりがあるなら、

 土下座でもしたらどうなの?」

葵が、そう言いながらなおも史香の髪を引っ張るー。


がーー

その時だったー


「うっ…!」

突然、史香がビクンと震えて、変な声を出したー。


「ーーーあ?」

葵は、表情を歪めながら史香の方を見つめると、

史香は突然小刻みに震えだしたー。


”怯えているー”

そう思いながら、笑みを浮かべる葵ー。


がーーー、

いじめられている史香も、また不気味な笑みを浮かべていたー


身体を突然、小刻みに震わせ出したのは、

”怯えている”からではなかったーー


「ーーーあぁ……最高ー♡」

史香は、突然、目に涙を浮かべたまま

気持ちよさそうに笑うとー、

「ーーもっと、いじめてー」と、笑みを浮かべたー。


史香はたった今、”憑依”されたー


”いじめられたい”

そんな、危険な願望を持つ男にー。


「ーーへへへ…夢、叶ったぜー」

小声で呟く史香ー。


史香の言葉を聞き取ることはできなかったものの、

その違和感に表情を歪めた葵は、「アンター、何を言ってー!?」と、

声を荒げるー。


史香に憑依した男はー、

先週のやり取りを思い出しながら、史香の口で不気味な笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


先週ー。

彼は、とあるファミレスに足を運んでいたー。


「ーーーしかし、お前ってどこ行っても人気者だよなぁ」

そこで合流した、

久しぶりに会った幼馴染、川田 晴彦(かわだ はるひこ)が

そんな言葉を口にしたー。


「ーーはははー、そんなことないさ」

晴彦からそう言われた社会人3年目の男・島野 純也(しまの じゅんや)が

少しだけ照れくさそうに笑うと、

晴彦は「いやいや、聞いたぜ?3年目にしてもう、部長から信頼される

エース級の活躍ぶりだって」と、揶揄うように、そんな言葉を口にしたー。


ファミレスの店内ー

久しぶりに会った二人は、昔話は最近の近況報告に花を

咲かせながら、ひと時を過ごすー。


純也は、小さい頃から”人気者”だったー。

何度クラス替えをしても、必ず人気者になっていたし、

男女問わず友達も多く、付き合っている彼女も途切れないー

イケメンで、勉強もできて、スポーツも万能、

それでいて、家事などの日常的な事柄も完璧にこなすー。


幼馴染の晴彦から見ても、羨ましくなってしまうぐらいに、

純也は昔から人気者だったのだー。


「ーーーはははー誰から聞いたんだよ、それ」

純也はそう言いながら、注文したポテトを一つ、口に運ぶと

「俺は別に、人気者とかになりたくないんだけどなー」と、

少し愚痴るように言葉を口にしたー。


「へへへーまたまた…

 小さい頃からずっと人気者のお前が言っても説得力ないぜ?」

晴彦がそう言うと、純也は「いやー」と、苦笑いしながら首を

横に振るー。


「ーー俺さ、最近ー

 ”いじめられたい”ってずっと思っててさー」

純也のそんな言葉に、晴彦は「はぁ?何だよそれー」と、笑うー。


「ーーいじめられっ子になってー

 毎日クラスの奴から嫌がらせされたり、ばい菌扱いされたりー

 なんか、そういうのって興奮しないかー?」


真顔で言う純也ー。


その言葉に、晴彦は思わず「いやいやいやいや」と、

首を横に振ると


「え?お前、何言ってんだよ?疲れてんのか?」

と、少し表情を曇らせながら言ったー。


「ーーははーーー

 あ~~…誰か俺をいじめてくれねぇかなぁ」

そう言いながら、メロンソーダを口に運んだ純也を見て、

晴彦は苦笑いするー。


”こんな奴だったっけなー?”

少し心配そうに、純也の方を見つめる晴彦ー。


しかし、純也はそれ以上はその話題は口にせず、

学生時代と同じように、楽しく雑談しながら過ごしたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーククククー

 もっともっと、俺ーいや、わたしをいじめてよー」


先週の出来事を思い出しながら、史香に憑依した純也は

いじめっ子の葵にそう言い放つー。


「ーはぁ…?アンタ何言ってー…」

葵がそう言うと、史香は興奮した様子で、

「ーほら、いじめてよー… ほらっ!」と、

葵に迫るー。


葵と、周囲にいた二人は戸惑いの表情を浮かべながら

後ずさるー。


「ーアンタ…あ、頭おかしくなったんじゃないの!?」

葵がそう言い放つと、

史香は「へへへーいいからさー…早く、いじめてよー」と、

ニヤニヤしながら立ち上がるー。


「ーーーあぁ…いじめられたいー…

 あぁ…興奮するー」

うっとりとした表情で言い放つ史香ー。


そんな史香を前に、先ほどまで威勢よく史香をいじめていた

三人は、戸惑いの表情を浮かべるー。


史香に憑依した純也は笑みを浮かべるー。


純也は小さい頃から、大人に褒められて、褒められて、褒められてー、

そして同級生たちからも慕われてー…

そんな人生を送って来たー


だがーー

”完璧”な人生を送りすぎたからだろうかー。

純也の中では、彼自身も気づいていないような”ゆがみ”が

少しずつ大きくなっていっていたー。


そしてーー

入社1年目のある日のことだったー。


”別の人間のミス”を、同じ部署にいる40代の女性社員が

純也のミスだと誤解し、

純也を厳しく叱責してきたことがあったー。

彼女は常にイライラしている感じの思い込みの激しい女性で、

その日も、純也がミスをしたと誤解し、

激しく純也を罵倒したのだー。


だがーーー

それは、純也のミスではなかったー。

そもそも、その女性社員側のミスであり、彼女は

純也を勝手に悪者だと思い込んで叱責したことで

大恥をかく結果となったー。


それが原因で、その女性社員は、純也のことを目の敵に

するようになったー

陰険な彼女は、嫌がらせを繰り返したー。

そう、いじめと言ってもいいー。


「ーーこれ、お願いね」

わざと、書類の山を押し付けて来る女性社員ー。


ゾクッーー

純也は、書類を受け取りながら自分が

今まで感じたことのない興奮を覚えたことに気付くー


”なんだ、今のはー??”


そしてー、それ以降も

彼女から嫌がらせを受けるたびに、純也は

今までの人生で感じたことのない快感を覚えたー。


入社1年目に迎えたバレンタインデの時もそうだったー。

その女性社員は”義理チョコ”を、”わざと”純也以外の男全員に配り、

純也にはそれを配らなかったー。


「ーーーーー」

が、純也はその状況に興奮したー。


「ーーーー……ふふーーー」

思わず笑ってしまう純也ー。


「ーー俺だけ、チョコなしかー」

一人でそう呟くと、純也は

「ーーーあぁ、興奮するなぁ」と、静かにそう言葉を口にしたー


がーーー

”それ”は、突然の終わりを迎えたー。


純也自身は、全然気にしておらず

寧ろこっそり喜んでいたものの、

その女性社員による”純也イジメ”を見かねた他の社員が

会社のコンプライアンス部に通報ー、

結果、その女性社員は左遷されることになり、

地方の子会社に出向させられたー。


「ーーすまなかったねー。島野くんー」

申し訳なさそうにそう言葉を口にする部長ー。


こうして、”40代女性社員”によるいじめは終わったー。


だがーーー

純也は、その頃から”もっといじめられたい”という

願望も持つようになりー、

”そういうお店”にも自分で通い始めるようになったー。


しかしー

純也は”満足”できなかったー。


お金を払ってイジメてもらうー。

それはあくまでも”ビジネス”だー。

天然のいじめではないー。

あの、左遷された女性社員のように、

”自然”ないじめをもう一度味わいたいー。


彼は、そんな願望をここ数年、ずっとずっと、抱き続けていたー。


そしてーーー


「ーーーーーーーーー!!!!!」

純也は、先週ー、幼馴染の晴彦と会ったその日の夜に

見つけてしまったー

”憑依薬”をー。


他人の身体に憑依し、乗っ取ることができる薬ー。

それを目にした純也は、すぐに思ったー。


”この薬を使って、いじめられっ子に憑依すればーーー”


イジメられることができる、とーーー。


普通の人ではたどり着かないような、そんな考えにたどり着いた

純也は、気付いた時には

ネット上で見つけた憑依薬を注文していたー。


そして、今日、念願が叶ったのだーー


「ーーくくくくくっ…

 そういや、さっき、土下座しろって言ってたっけ?」

史香はそう言いながら、

「本当に、ごめんなさいーくくくっ」と、

嬉しそうに土下座をするー。


葵は、そんな史香の態度を見て逆上すると、

「キモいんだよっ!」と、叫びながら史香に蹴りを加えるー。


史香はそのまま壁際に押し飛ばされる形で、

壁によりかかると、ニヤニヤと笑いながら、

「あぁーー…いい、すごくいいー♡」と、

興奮した様子で叫ぶー。


昨日の夕方ー

届いた憑依薬を早速使ってみた純也はー、

それが本物であったことに驚きを隠せずにいたー。


心のどこかで”どうせ偽物”だろうー、

と、そんな風に思っていたのだー。


そしてー、今朝、

憑依薬を使用した純也は、

早速、幽体の状態のまま、近くの高校へと向かったー。


”ーーどこかに、いじめられてるやつ、いねぇかなー”

少しニヤニヤしながら、そんな言葉を口にする純也ー


”いじめ”と言えば、やはり学校だー。

学校でいじめられている子を見つけて憑依してー、

”いじめられよう”と、純也はそんな危険な欲望を抱きながら

ターゲットを探し始めるー


やがてーーー


”お…、あの子ーーー!”

気の強そうな女子数名に連れられて、

今は使われていない教室に入っていく女子生徒ー。

そんな光景を見つけるー。


それこそが、たった今、憑依した

いじめられっ子の史香ー、

そして葵たちいじめっ子の三人組だー。


”あの子…いじめられてそうな感じだなー”

そう思いながら、その子が入って行った教室の中に入ると、

純也の読み通りー、

その子は髪を引っ張られたり、ブスと言われたり、

散々な目に遭っていたー。


「ーーすげぇ」

”いじめ”とは無縁だったからだろうかー。

憧れの表情すら浮かべた純也は、笑みを浮かべるー。


原因は分からないが、その少女は散々罵倒されているー


「ーーへへへへ…俺があの子に憑依すれば

 俺があの子の代わりにいじめられるってことだよなー?」

ニヤニヤしながら、そう呟いた純也は

一瞬、他人の身体を奪うことに躊躇しながらもーー

史香に、憑依したー。


そして、今に至るー。


罵倒されて、叩かれて、髪を引っ張られてー、

史香は、あまりの気持ち良さに笑いだしてしまうー。


「くくくっーあはっ!ははははははっ!」


そんな史香の様子を見て、葵の背後にいた

葵の友達の一人が、”不気味なもの”を見る目で

史香を見つめながら言うー。


「ねぇ、コイツヤバいよー」

その言葉に、いじめっ子のリーダー格・葵は、

困惑した様子で、史香から手を離すー。


それでも、史香に憑依した純也はお構いなしで、

「どうしたの?もう終わりー!?

 俺ー…いや、わたしをもっともっともっと、いじめてよ!」と、

狂気的な笑みを浮かべながら迫るー。


「ーーま、マジでキモいー」

葵は、吐き捨てるようにしてそう言い放つと、

そのまま二人の友人を引き連れて”撤収”するー。


いじめを受けていた教室に一人残された史香ー。


史香は、ゾクゾクしながら自分の身体を抱きしめるー


「ーーこの快感ーー…へへへっー

 今日から俺はいじめられっ子かー」

ニヤニヤしながら、いじめを受けていた教室の前の方の壁についていた

小さな鏡の方に歩いていくと、

史香は”自分の顔”を見つめながら満足そうに微笑むー。


「ーへぇぇ…へへへー…

 可愛いけど、大人しそうなー

 いかにもいじめられてそうな顔だなー」


顔をニヤニヤしながら触ると、史香は

そのまま「くくくっー」と笑ったー。


「ー今日からい~っぱい、いじめてもらおっとー」


そう、囁きながらー…。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


”いじめられたい”という願いを叶えるために

あえて”いじめられっ子”に憑依するという

とんでもない憑依モノデス~★笑


次回以降もゾクゾク要素多め(?)なので、

楽しんでくださいネ~★!


今日もありがとうございました~!

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