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生徒会選挙の際に、会長の座を巡り対決した

クラスメイト・守屋 智花の裏の顔ー。


それを知りつつも、翔太(綾)は智花としっかり話をし、

智花を巡るトラブルを無事に解決させた。


そんな中、バレンタインデーが迫り、

クラスでも、そんな話題を口にする生徒たちが増えていたー。


しかしー…そのバレンタインデーを前に

”歪んだ感情”を膨らませていた転校生・渡海 和之はー…


☆前回はこちら↓☆

<入れ替わり>僕とわたしの不思議な青春㊷~表と裏~

新年早々ー、 クラスメイトのお嬢様・神宮寺真莉愛の父親に会うため、 神宮寺邸を訪れた翔太と綾ー。 そこで、趣味人格転移の研究をしているという真莉愛の父・寛治と 情報交換を行った上で、以降、協力を得られることが決まったー。 もちろん、すぐに元に戻れるわけではないし、 現実的に”身体を元に戻す”ということが...

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★主な登場人物★


遠藤 翔太(えんどう しょうた)

C組生徒。大人しく、奥手な性格の持ち主。綾と入れ替わってしまう。


星村 綾(ほしむら あや)

C組生徒。可愛らしい雰囲気に、明るい性格の持ち主。翔太と入れ替わってしまう。


神田 哲真(かんだ てつま)

C組生徒。翔太の中学時代からの友人。女子は苦手。


山井 穂乃果(やまい ほのか)

C組生徒。綾の親友。入れ替わりを知ってからも変わらず接してくれている。


渡海 和之(とかい かずゆき)

2年の春に転校してきたC組生徒。綾に執着している。


★脇役も含めた人物紹介はこちら↓★

<人物紹介>僕とわたしの不思議な青春~登場人物図鑑~

長編入れ替わりモノ 「僕とわたしの不思議な青春」の 登場人物図鑑デス! 連載前に予告として掲載した、 主人公たちのクラス名簿の内容に加え、登場する教員や その他の人物もご紹介しています~! ※ネタバレは控えめ(漫画や小説の最初の方のページに書かれている  人物紹介ぐらいの内容…)デス~!  最初にクラス名...

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バレンタインデーが近付きつつある、ある日の休日ー。

綾(翔太)と、クラスメイトの笹野翔子、野坂優菜の二人は、

バレンタインデーに備えた買い物をしつつ、

フードコートで昼食を食べていたー。


「ーーこのチョコ、可愛いよね~」

綾(翔太)が、優菜が購入したチョコを見つめながら言うと、

優菜は「ー可愛いチョコがあるとついつい買っちゃうー」と、

笑いながらそう言葉を口にするー。


そんな二人の会話を見つめていた翔子は

少しだけ笑いながら言うー。


「ーー綾ちゃん、何だか去年より楽しそうー。」

翔子の言葉に、綾(翔太)は「えっ…?そ、そうかなぁ?」と、

苦笑いするー。


「ーーうんー

 だって去年は何か、あまり慣れてない感じだったしー、

 ウチ、綾ちゃんこういうの苦手なのかと思ったぐらいやしー」


翔子のその言葉に、

綾(翔太)は去年のバレンタインを思い出すー。


確かに去年はー、”女子”として迎える初めてのバレンタインで、

色々戸惑っていた気がするー。

あれから1年ー。振り返ってみると、自分自身の心境も

随分変わったー。


「ーーあはははー…そ、そうだったかなぁ~」

綾(翔太)がそんな風に誤魔化すと、

翔子は、優菜の方を見つめながら「やっぱあれやなー」と、

ニヤニヤと笑うー。


「ーーふふ、そうかもねー」

優菜も、少しだけ笑うと、翔子や綾(翔太)のほうを見つめたー


「ー好きな人、できたんやろ?」

とー。


「ーーえぇっ!?」

綾(翔太)は顔を赤らめながらも、

照れくさそうに笑ったー


”本当の理由”は、話せないー。

”入れ替わってから、時間が経過して、女子としての生活に慣れたからー”

などとは、言うことはできないー。


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バレンタイン前日ー。


「ーー楽しそうだなー翔太ー」

翔太の親友・哲真が、カードゲーム部の活動が終わり、

部室を二人で片付けている最中にそんな言葉を口にしたー。


「え?何が?」

机を片付けながら、重そうにしていると、

哲真が「いいよ、俺がやる」と笑いながら、

「ーーほら、明日のバレンタインー。

 クラスの女子と盛り上がってるだろ?」と、

そう言葉を口にしたー。


「ーあははー…ま、まぁー

 せっかくだし、今年は楽しもうかなってー

 去年はまだ戸惑う気持ちの方が強かったからー」


綾(翔太)が、そう言うと、

哲真は「はははー。前向きになるのはいいことだよなー」と、

笑みを浮かべるー。


「ーーあ、そうだ!明日は神田くんにも

 とっておきのチョコを用意してあるから、楽しみにしててね!」


綾(翔太)がにっこりと笑うー。


最近の”綾(翔太)”と話していると、

まるでー、”本当の女子”と、話をしているような、

そんな感覚に襲われることがあるー


一瞬、戸惑うような表情を浮かべた哲真ー。


そんな反応を見て、綾(翔太)はー、

「あ、ごめんーわたしからのチョコなんてー…

 中身は男なんだし、いらなかったかなー…」と、

苦笑いすると、

「あーー…僕からの、ねー」と、

つい、”綾モード”の一人称になってしまったことに気付き、

綾(翔太)は言い直すー。


「ーーーー気にすんなよー」

哲真が、そんな綾(翔太)のほうを見て呟くー。


「ーお前の話しやすい方でいいよー。

 ”僕”って言いたいときは”僕”でいいし、

 ”わたし”って言いたいときは”わたし”でいいし、

 自然にわたしって出ちゃうときは、気にしなくていいー」


哲真のその言葉に、

綾(翔太)は「神田くんー…」と、少し驚いたような表情を浮かべるー。


「ー翔太ー。お前がどんなになっても

 元に戻れても、戻れなくても、

 俺はお前の”親友”だからー。


 だから、気にすんなー」


哲真はそれだけ言うと、綾(翔太)の方を見て笑ったー。


”何となく寂しい気持ちはあるけどー、

 一番大変なのは、お前と星村さんだからなー

 俺も、受け入れられるように頑張らないと、なー”


部室の片づけを終え、綾(翔太)と別れた哲真は、

そんなことを心の中で思いながら、少しだけ寂しそうに笑ったー。


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「ーー星村さん ありがとうー」

笑顔でそう言葉を口にするー


「星村さんー、本当に本当にありがとうー」

今度は、感情を込めてそう言葉を口にするー。


「ー星村さんー、僕のためにー…嬉しいよ」

今度は、感極まった感じにそう言葉を口にするー


2年の春に転校してきた男子生徒・渡海 和之は

放課後の校舎で一人、鏡の前に立ち、

”明日のバレンタインで綾からチョコを貰う”

イメージをしながら、受け取る練習をしていたー。


「ー星村さん、僕なんかでよければー」

告白される妄想をしているのか、そう呟く和之ー。


小さい頃、いじめられていた和之は綾に救われたー。

その後に家庭の事情で転校、

しかし、父親は浮気して離婚ー、

母親に引き取られ、さらにはその母親も新しい男を作り、

和之は放置されるようになったー。


そんな経験から、”小さい頃に自分を救ってくれた綾”を

心の中で神格化させて、執着するようになった和之ー。


夏のお祭りの際の出来事や、クラスメイトの菜々美に

叱られたことから、最近は大人しくはしていたものの、

”まだ”綾への執着は消えていなかったー。


「ー僕、星村さんの彼氏としてふさわしい男になれるように

 頑張るよ」

和之は鏡の前でそんな言葉を口にすると、笑みを浮かべるー。


”ーーな…何やってんだー、アイツーーー”


その様子を、偶然通りがかったクラスメイトの

須藤 渉が、目撃し、思わず物陰に身を隠していたー。


渉は去年、綾(翔太)に告白したことがあるー。

が、結果は失敗ー。

しかし、和之とは違い、渉は潔く諦め、

今は普通に綾(翔太)に接しているー。


「ーーーーー…嫌な予感がするなー」

渉はそれだけ呟くと、和之に気付かれないようにその場を後にしたー。


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”神田ー今、少しいいか?”


その日の夜、翔太の親友・哲真に須藤 渉から電話がかかってきたー。


「ー須藤?こんな時間にどうしたんだ?」

哲真がそう言葉を口にすると、渉は答えたー。


”渡海のやつがーーー”

渉が、哲真に先ほど目撃した光景のことを伝えるー。


「ーーマジかー…」

哲真は呆然としながら、これまでの和之の言動を思い出しつつ、

明日のバレンタインデーでも何か問題を起こしそうだな、とため息をつくー。


「ーでも、何で俺に?」

哲真が言うと、渉は笑ったー。


”いや、星村さんと一番仲いい男子は神田かなーって思ってさー

 ほら、よく一緒にいるし、カードゲーム部でも一緒だろ?


 遠藤も、星村さんとはよく一緒にいるけど、部活は違うから、

 お前に伝えておこうかなってー”


渉はそう言うと、

哲真は「はははー、そっかー。まぁ、付き合ってるわけじゃないんだけどな」

と、笑いながらそう答えるー。


とりあえずお礼を言って、電話を切った哲真は

表情を歪めたー。


「ーー渡海ー」


”綾”に執着する転校生・渡海 和之ー。

また、やっかいなことをしでかすかもしれないー。


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バレンタインデー当日ー。


「ーーー遠藤くんー

 はい、わたしからのチョコー」

翔太(綾)が笑うー。


すっかり”渡す立場”の気持ちになっていた綾(翔太)は

「あーーそっかー、あははー」と、笑いながら、

「ありがとう!」と、照れくさそうに、”綾からのチョコ”を受け取るー。


「そ、そうだー。僕も星村さんにって思って作っちゃったんだけどー」

綾(翔太)が笑いながら言うと、

翔太(綾)は「わ…すごい…!ずいぶん本格的!」と、

嬉しそうに、受け取ったチョコを見つめるー。


去年とはまるで違う、完成度の高いチョコー。

もう、完全に”女子の作るバレンタインチョコ”に見えるー。


「ーへ~すごいじゃんー!

 あんたが自分で作ったの?」

綾の親友・山井 穂乃果が笑いながらそう声をかけて来るー。


綾(翔太)は「う、うんー」と照れくさそうにしながら

「あ、そうだー。山井さんにもー」と、

穂乃果にもチョコを手渡したー


「ーわぁ…ーわたしのより本格的じゃん」

穂乃果がそう言いながら笑っていると、

翔太(綾)は「はい、穂乃果ちゃんにもー」と、笑いながら

チョコを手渡すー。


穂乃果は心底嬉しそうに「推しからの本命チョコ!!!」と、

”綾”のチョコを受け取ると、

「ほ、本命ー?」と、翔太(綾)は苦笑いするー。


翔太の身体で過ごす”綾”は、高校入学前までのように

”女子としてバレンタイン”を過ごすことはできないー。


こうして、事情を知る穂乃果や、入れ替わり相手の”翔太”ぐらいにしか

チョコを渡すことはできないことに、少し寂しさを感じていたー。


「ーーわたしで良ければ、100個でも1000個でも

 チョコ、貰うからね!」

穂乃果は翔太(綾)にそんな言葉を口にすると、

翔太(綾)は「穂乃果ちゃん、1000個もチョコ、食べられないでしょ?」と、

苦笑いしながら、静かにツッコミを入れたー。


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教室でも、バレンタインの朝らしく、チョコが飛び交うー。


「ーー綾ちゃんのチョコ、すごすぎやろ!?」

”綾(翔太)”の親友である笹野 翔子が驚きながら笑うー。


”友チョコ”の交換ー。

女子同士の盛り上がる時間の一つだー。


翔子は「ウチは、今年はちょっと失敗したからー」と、

苦笑いしつつ、綾(翔太)にチョコを渡すー。


後ろの座席の野坂 優菜や、

他の女子ともチョコのやり取りをする綾(翔太)ー。


哲真は、そんな様子を見つめながら

転校生・渡海 和之の座席を見つめるー。


和之は落ち着かない様子で爪をかじっているー。


どうやら”綾”からチョコを貰えないことに

少し苛立っているようだー。


「ーーー」

不安を感じながら、哲真はため息をつくー。


「ー何ため息ついてんの?」

綾の親友・穂乃果が哲真のところに近付いてくるー。


「あはは、分かった!あんた、チョコ貰えないからため息ついてたんでしょ?」


「ーーいやいや、違うしー」

哲真が慌ててツッコミを入れると、

穂乃果は「はい、これ」と、哲真にチョコを差し出したー


「は?」

哲真が少し不思議そうに首を傾げるー。


「ー…”は?”じゃないでしょ!?わたしからのバレンタインチョコ!」

穂乃果が少しムッとした様子でそう言うと、

哲真は「あ…あぁ…え?俺にー?」と、照れくさそうに笑うー。


「ーーお互い”知ってる”間柄だしー、

 色々世話になってるからー」

穂乃果は少し恥ずかしそうにそう言葉を口にすると、

哲真は「ーーーあ、ありがとなー」と、照れくさそうにそれを

受け取ったー。


哲真が受け取ったチョコは、穂乃果が一生懸命作った様子が見て取れる

美味しそうな手作りのチョコレートだったー。


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放課後ー


カードゲーム部での活動を終えて、

綾(翔太)は「まさか、僕がチョコをこんなに配るなんて」と、

苦笑いしながら、そう呟いたー。


哲真も、先ほど”綾(翔太)”からもチョコを貰っているー。


「はははー、結構配ってたよなー」

哲真がそう言うと、綾(翔太)は照れくさそうに笑うー。


同じカードゲーム部の足立 幸也や、

以前告白してくれた須藤 渉、昨年はいじめられていた丸岡 富雄、

カードゲーム部の前部長・石島 恭一らに義理チョコを渡しー、

女子同士でもチョコをたくさん交換したー。


「なんかー…病みつきになりそうー

 渡して喜んでくれるとやっぱ嬉しいしー」


綾(翔太)がそう言うと、哲真は「はははー」と、笑いながら、

「じゃあ、来年も楽しみだな!」と、そう言葉を口にしたー。


そんな会話を終えると、

部室を出て、帰路につく綾(翔太)ー


だが、その時だったー


突然、背後から腕を掴まれて、綾(翔太)は驚きの表情を浮かべるー。


「ーー!?!?!?」

驚いて振り返ると、そこには転校生・渡海 和之の姿があったー。


そのまま乱暴に引っ張られて、近くの空き教室に

引きずり込まれた綾(翔太)ー。


「ーー星村さんー僕への本命チョコはー!?」

和之がニヤニヤしながら言うー。


綾(翔太)は戸惑いながら

「え…ご、ごめんー渡海くんにはー…」と、

そう言い返すー。


するとー、和之は表情を変えて、

涙を浮かべながら「ーーどうして??なんで???」と、

声を荒げたー


「ー星村さん、僕のこと助けてくれたじゃないかー

 それなのに、どうしてー?

 僕に本命チョコはないの?なんで?どうして?

 ねぇ?なァおい!?」


和之が豹変して、綾(翔太)の腕を掴むー。


「ー僕への本命チョコを出せ!早く出せ!おいっ!」

和之のそんな言葉に、綾(翔太)は、怯えた表情で、

「な、ないってば!」と、反論するー。


そして、そのまま逃げ出そうとするも、

腕を掴まれて、抵抗できないまま、壁に叩きつけられるー


「い、いたっ…」

綾(翔太)は思わず目に涙を浮かべるー。


「ーどうして星村さんは、僕に冷たいんだ!!???

 僕には、星村さんしかいないんだよ!!

 本命チョコを、いいから黙って僕によこせよ!!!」


和之の滅茶苦茶な発言に、綾(翔太)は、

涙目で「ーこんなことしてー、”わたし”が喜ぶと思うのー!?」と、

声を張り上げて反論するー。


「ーーーこんなことしたら、わたし、渡海くんのこと、

 怖いって思うだけだよー!?なんでこんなことー!」

綾(翔太)がそう言い放つと、和之は顔を真っ赤にしながら

「うるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!」と、叫びながら、

綾(翔太)に近付いたー


そしてーーー

綾(翔太)に思いっきりビンタを食らわせてきたー


「ーーーえ…」

暴力まで振るわれるとは思っていなかった綾(翔太)は、

青ざめるー。


”翔太”は、元々奥手な性格ー。

しかし、”綾”の身体では、”男子”からの力ずくな行為に

”より強い恐怖”を感じるー。


「ーーーや…やめてよー」

気付いた時には、綾(翔太)は、泣いていたー。


「なんでこんなことするのー…?」

まるで子供のように、悲しくなって泣き出す綾(翔太)ー


「ーーーだったら、僕に本命チョコをだーーー


 !?」


和之が声を荒げてそう言いかけると、

教室の扉が開き、そこから翔太の親友・哲真が中に入って来たー

その背後には、哲真から話を聞いた翔太(綾)の姿もあるー。


”遠藤くんー…”

泣き崩れている綾(翔太)のほうを心配そうに見つめる翔太(綾)ー


そしてー、

渡海 和之の方も、心配そうに見つめるー。

和之は、”小さい頃”とは、全然変わってしまったー。


そんなことを思っていると、

哲真が、和之の方に詰め寄りながら、声を上げるー。


「ーーおいこの野郎!何してるんだ!」

哲真の言葉に、和之は怒りの形相で反論するー


「なにってー、星村さんが僕に本命チョコをくれないからー!」

和之がそう叫ぶと、哲真は和之の胸倉を掴んで

「馬鹿野郎!」と、そう叫んだー。


普段は声を荒げるようなことは、ほとんどしない哲真の

本気の怒りに、和之は驚いたような表情を浮かべるー。


そしてー、和之を掴んだまま、

身体ごと、綾(翔太)の方に強引に向かせると、

哲真はそのまま叫んだー。


「ーー見ろよ!”これ”がお前の望みなのかー!?」

哲真がそう言うと、

和之は表情を歪めながら、泣いている綾(翔太)を見つめたー。


「ーー小さい頃、助けてもらったんだろー?

 ー星村さんのこと、好きなんだろー?」

哲真は、今まで和之本人から聞いたことを和之にぶつけるー。


”綾が好き”とは言われていないがー、

お祭りの時や、これまでの絡み、今日の行動から、

綾に好意があるのは間違いないー。


「ーーよく見ろよ渡海!!

 そんな子を、お前は泣かせてるんだよ!」


哲真が、和之の身体を掴みながら、

綾(翔太)が泣いている姿を見せ付けるー。


「ーーーち……ち、ちが…」

和之は、その姿をハッキリと見せつけられて、

明らかに動揺した様子で言うー。


「ちがう…僕は…僕は、ただーーー…!

 星村さんのことをーーー」

和之が声を上げるー。


そんな和之に、哲真はハッキリとした口調で言い放つー。


「ー何が違うんだ!?

 お前がしたことの結果が、これだよ!

 分かるだろ!?

 

 星村さんのことを大事に思ってるなら、よく考えろ!」


哲真に叱られて、綾(翔太)が泣いている姿を

今一度見つめながら、和之は「あぁぁぁぁ…」と、声を上げるー。


哲真が和之から、手を離すと、和之はその場に手をついたまま、

「ーー僕はーーー…僕はーーーーーー…」と、

歯軋りをしながら、涙を流し始めるー。


「ーー大丈夫かー…?」

和之から手を離した哲真は、綾(翔太)に駆け寄ると、

綾(翔太)は泣きながら「ーーうんーありがとうー」と、だけ

言葉を口にするー。


そんな様子を見つめながら、翔太(綾)は

手をついたままの和之に近付くと、

言葉を口にしたー。


「ーー”嫌なことをされる”辛さを知ってるはずの渡海くんがー…

 ”裏切られる”辛さを知ってるはずの渡海くんがー…

 こんなことしちゃ、だめだよー」


とー。


「ーーーー」

和之は、翔太(綾)のその言葉に、悔しそうに目に涙を浮かべるー。


かつてはいじめられていた和之ー、

親に裏切られた和之ー、

彼は、知ってるはずだー。


イヤなことをされる辛さをー。


「ーーー渡海くんを助けた頃の”星村さん”も、

 きっとー、同じことを言うと思うよー?」


翔太(綾)は言うー。


今はもう、”綾”として言葉を掛けられないー。

でもーーーーー


翔太(綾)は、そんな風に言葉を掛けたー。


「ーーー………うぅぅぅ…」

その言葉に、和之は返事はしなかったー。


「ーーー渡海くんなら、変われるー。

 きっとー」


翔太(綾)がそう言うと、

涙目のまま、和之が顔を上げるー。


「ーーーーー!」

一瞬、翔太(綾)に、”あの頃の綾”の面影を感じたー。


「ーーー……」

もちろん、それは”気のせい”だと、和之は解釈しつつー、

首を横に振ると、

「ーーー星村さんーーー……」と、

綾(翔太)の方を見つめたー。


「ーーー僕がーーーバカだったー」

心底悲しそうに、言葉をそう振り絞ると、

和之は「僕がーーー僕が、バカだったー」と、

今一度、そう言葉を吐き出したー。


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「ーーー須藤のやつが、連絡をくれたんだー」

哲真が、助けに現れることができた理由を口にするー


帰り道ー、

翔太(綾)は、美術部の活動もあったために

学校に残り、綾(翔太)と哲真が二人で歩いていたー。


「ー須藤くんがー?」

綾(翔太)が言うと、哲真は頷くー。


綾(翔太)は、去年、須藤 渉に告白されたことを思い出しながら

少しだけ笑うと、

「ーーーじゃあ、今度、須藤くんにもお礼を言わなくちゃねー」

と、そう言葉を口にしたー。


「ーーーー」

綾(翔太)は、ふと立ち止まって、高校のある方角を振り返るー。


「ーーー…渡海くん、大丈夫かなー?」

綾(翔太)がそう呟くと、

哲真は少しだけ笑いながら

「また、変なことしてきたら、その時はもう容赦しねぇ」と、

それだけ言葉を口にすると、

綾(翔太)は「神田くんー本当にありがとうー」と、

改めてお礼の言葉を口にしたー。


「ーーへへー。”親友”を助けるのは、当然だろ?」


哲真のそんな言葉に、

綾(翔太)は、改めて”神田くんがいてくれて、本当によかったー”と、

そう言葉を口にしたー。


㊹へ続く


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★2-Cの日常★


バレンタインデー当日ー。

クラス全員にチョコを用意した報道部所属の岡崎 香奈枝は、

チョコを渡した時の反応を見ながら楽しんでいたー。


「ーーぼ、僕は勉強にしか興味ないしー」

勉強一筋の渡辺 大樹が、少しだけ動揺しながら

チョコを受け取るー。


「ーーうぉぉぉぉ…!チョコの中から闇の波動を感じるー!」

中二病の米沢 海斗がいつものように意味不明なことを

口にしながらチョコを受け取るー。


「ーーは、はははーありがとう」

イケメンなカード部の部員・足立 幸也は戸惑いながら

チョコを受け取るー。


「ーバレンタインも、暇つぶしにはなるなー」

人生は暇つぶしの藤沢 孝弘がそう言いながらチョコを受け取るー。


「ーーは~…みんなの反応見るのってなかなか面白いよねー」

全員にチョコを配り終えた香奈枝は、満足そうに笑いながら、

彼氏である敷島 郡司には本命チョコを渡すー。


「ーーーありがとうー大事にするよ」

郡司が笑いながらチョコを受け取ると、

香奈枝は「大事にしなくていいから、ちゃんと食べてよね?」と、

笑うー。


郡司は苦笑いしながら「分かってる分かってるー」と、そう言うと、

少し前を置いてから「ところで香奈枝ー」と、

少し言いにくそうに言葉を口にするー。


「ーわざとなのか、天然なのか分からないけど、

 香奈枝ー、一人だけチョコ渡してない男子がいるけどー」

郡司がそう言うと、香奈枝は「えっ!?だれだれ!?」と、

慌てた様子で周囲を見渡すー。


「ーー中尾」

郡司が、クラスメイトの中尾 俊太を指差すー。


1年の時、イメチェンに失敗し、

その後すっかり”影の薄いキャラ”として定着してしまった男子だー。


「ーーあっ…あ!!わ、忘れてた!」

大声でそう叫ぶ香奈枝ー。


郡司は、気まずそうに俊太の方をチラチラと見つめるー。


そんなやり取りを聞きながら、俊太は

「俺は、影になるんだー」と、一人、自虐的にそう呟いたー。


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コメント


次回が”2年生”のラストデス~!


そのまま3年目に突入して、

ついに最後の1年も描いていきます~!☆


まだまだ先は長いですが、ぜひ楽しんでくださいネ~☆!


今日もありがとうございました~!☆


★関連話★

(こんな話あったっけ?という場合の参考にしてみて下さいネ~)


転校生・渡海 和之の過去とトラブル⇒第33話

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