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”可愛いは正義”ー

彼女の紗理奈と入れ替わってから、そんな思いを強くした

彼氏の達志ー。


彼女の同意の元、今度は1週間、入れ替わり状態で生活することに決めるも、

紗理奈の身体で過ごすうちに、

良い部分だけではなく、辛い部分・嫌な部分にも直面していくー。


そして、いつもの調子で親切にしたことが

”裏目”に出そうになっていることを、紗理奈(達志)は

まだ理解できていなかったー。


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>かわいいは正義なのか③~戸惑い~

紗理奈と入れ替わって大学生活を過ごした達志はー、 ”紗理奈”として親友や周囲の反応の違いを目の当たりにして ”可愛いは正義なんだー”と、 そんな考えを抱くー。 1日だけ、という約束の入れ替わりを終えたあとも、 達志は”可愛いって得だよな~” ”可愛いは正義だよな~”などと、 紗理奈の前で口にするようになり、 紗...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”あ~~~楽だな~~~”


”ほんと、楽~~”


”語学力を失うほど、楽~~”


大学の昼休みー。

ニコニコしながら昼食を食べていた達志(紗理奈)ー。


何が楽なのかー。


それはー、”生理”からの解放ー。


彼氏の達志もそうだし、

なかなか男子には想像できないだろうけれどー、

生理がないー…それどころか周期的なものも何も気にしなくていい

この状況ー。


”生理からの解放”と言ってもいいこの状況は

心の底からの解放感を感じるー…

あの痛みも、あの気分の落ち込みも、あの気持ち悪さも

何もかもがないー。


それがー、どれほど楽で、どれほど安心することなのかー。

紗理奈は当然理解しているー。


そんな、解放感を味わいながら、達志(紗理奈)は思うー。


「でもまぁー…たっくんの言うことも分かるけどねー」

”達志”になってみて、”自分が可愛い”ことによって、

色々得をしていたり、周囲の反応が優しくなっていたことにも

気付かされたー。


別に達志の身体でも、きつく当たられるー、ということは

ないものの、

周囲の一部の人々の反応が”イージー”から”ノーマル”になったような、

そんな感覚を覚えるー。


紗理奈自身、”わたし、かわいい~~!”なんて思うタイプではないけれど、

客観的に見て、”わたしは得もしてたんだね”と、そんな風に思うー。


「ーーっていうか、たっくんの身体だとホント、ご飯美味しいよね」

達志(紗理奈)は、そんなメリットも口にしながら、

達志の身体を堪能していると、

そこに、達志の親友である公則が近付いて来たー。


「そういや、聞いたかー?」

公則の言葉に、「ーーえ、えっと、何か…あったのかー?」と、

そう言葉を口にするー。


すると、公則は言葉を口にしたー。


「ーーお前が仲良くしてる小暮ー…

 アイツ、なんかさー…紗理奈ちゃんに告白しようとしてる

 みたいだぜー。

 小暮のやつと同じサークルの奴が言ってたー。」


公則の言葉に、達志(紗理奈)は「え?」と、首を傾げるー。

それと同時に、”普段、紗理奈ちゃんって呼ばれてるんだー”と、

心の中で笑うー。


公則は、いつも紗理奈と1対1の時は”相馬さん”と呼ぶし、

達志と一緒にいる時も、紗理奈の前では”相馬さん”と呼んでいるー。

自分が”普段と違う呼ばれ方をしている”のを聞くのは、

どことなく新鮮だったー。


「ーーーーー」

達志が、同じ学部の小暮 慎太郎という男子と

それなりに仲良くしているのは知っているー。


しかし、紗理奈自身は特に慎太郎と接点はなく、

あまり深く、慎太郎自身のことは知らなかったー。


「ーーわ、わたしに告hーーー

 …じゃなくて、さ、紗理奈に告白ってー?」


達志(紗理奈)が、うっかり入れ替わりを忘れて

そんな言葉を口にするも、公則はそこには反応せず、

言葉を続けたー。


「ーなんか、紗理奈ちゃんに親切にされたらしくてー

 小暮のやつ”勘違い”してるらしいんだよー


 ”僕に告白されるのを、あの子は待ってるんだー”とか、

 そんなことを言ってたってさー」


公則がそこまで言うと、

達志(紗理奈)は震えたー。


確かに、達志はこの前、

”コンタクトレンズを一緒に探してあげた”と、そう言っていたー。

達志は元々お人好しで、困っている人がいれば助けるタイプだ。

特に意識せずに、小暮慎太郎のことを助けたのだろうー。

しかしー、今回は”紗理奈の身体”で、いつものように

慎太郎を助けてしまったー。


”女子として生きること”には”コツ”がいるー。

”優しくする相手”を間違えると、”変な勘違い”をされることがあるー。


慎太郎のような、人付き合いがあまりなく、

異性との接点もないような男子の”一部”にはー、

優しくされただけで歪んだ勘違いをしてしまう人間がいるー。


もちろん、大人しい男子でも、全員が全員そうではないし、

ちゃんと分別をできる子もたくさんいるー。


けれどーー…

”そうでない子”も、いるー。


「ーー教えてくれてありがとう!」

何だか嫌な予感がして、達志(紗理奈)は立ち上がると、

そのまま走り出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー小暮ーーー くんー。話って?」

慎太郎から呼び出されていた紗理奈(達志)は、

慎太郎の前にやって来るー。


今日もやっぱりー、”周囲がいつもより優しい”

そんな空気の中、過ごして”かわいい”を堪能した紗理奈(達志)ー


がー、慎太郎の言葉は、紗理奈(達志)が予想もしていない

言葉だったー。


「そ、そ、そ、相馬さんー、ぼ、ぼ、僕と付き合って下さいー」

慎太郎が顔を真っ赤にしながらそんな言葉を口にするー。


「ーーーーーえ?」

紗理奈(達志)は表情を歪めるー。


正直、今日もまだあまり調子が良くないー。

できれば早く帰りたいと思っていた紗理奈(達志)は

「ーーえっと、それはどういう意味ー?」と、聞き返すー。


「ーーそ、相馬さんの愛に、ぼ、僕も応えなくちゃってー」

慎太郎がそう言い放つー。


そんな、意味不明な言葉に少しイラッとした紗理奈(達志)は

「ーーあ、あのー。わたし”彼氏”いるんだけどー」

と、紗理奈の身体で、”自分”の存在を口にするー。


がー、慎太郎は「そんなの関係ないよ!

僕と相馬さんの絆ならー!」と、そう言葉を口にするー。


「ーーーー(小暮)ー」

慎太郎は”性格に難がある” ”思い込みが激しい”

そんな噂は周囲から聞いていたー。


しかし、”男子同士”で仲良くしている分には

そんなところが見えず、油断していたー。


「ーだ、大体、わたしと小暮の絆ってー?」

くん付けをするのも忘れてそう言うと、

「この前ー、時間をかけて僕のコンタクトレンズ、探してくれたじゃん」と、

慎太郎は、はぁはぁ言いながら叫ぶー。


「ーーはぁ?それはー…ただ…

 小暮くんが困ってたからー」

不快そうに紗理奈(達志)が言葉を口にするー


「ーーー小暮くんの勘違いだよー

 わたしには、たっくんがいるからーごめんね」


”紗理奈の口”で自分のことを”たっくん”と言うことに

少しドキドキしながら、立ち去ろうとする紗理奈(達志)ーー


がーーー


「ーーー!?」

紗理奈(達志)の腕を、慎太郎が突然掴んだー。


表情を歪める紗理奈(達志)ーー


「ーーどうしてー?どうしてー?

 相馬さんーどうして…?僕のこと、あんなに想ってくれてたのにー!」


慎太郎のその言葉に、

紗理奈(達志)は恐怖を覚えるー


「ーわ、わたしはただ、探し物を手伝っただけ!

 そんなつもりはーー」


紗理奈(達志)がそう言い放つー。


しかし、慎太郎は怒りの表情で

「僕を騙したな!」と、紗理奈(達志)の腕を引っ張り始めるー。


騙すつもりもなかったしー、

好意を見せたつもりもないー。

ただ、”いつも通り”人助けをしただけー。


それなのにー


「ーーは、放せって!」

思わず声を荒げる紗理奈(達志)ー


しかし、慎太郎の腕を振り払おうとしても、

振り払えないー


「ーーー!!!!」

そのことに驚く紗理奈(達志)ー


いつもならー、少なくとも抵抗はできるはずー。

けれどー…


”や、やっべぇ…こ、こんなに違うもんなのかー!?”


紗理奈(達志)はそう思いながらも

「や、やめろって!」と、声を上げるー。


だがーーー

一向に慎太郎はその言葉を聞き入れる様子はなくー、

手を振り払うこともできなかったー


「ーーーー!!!」

この時ー、紗理奈(達志)は、

今までの人生で感じたことのある”恐怖”とは異なる恐怖を

始めて経験したー



「ーーーち、ちょっとー、やめてってば!」

焦りを感じながら、無意識のうちに涙目になっていく

紗理奈(達志)ーーー


がーーー

その時だったー。


「ーーーやめろ!!!」

達志(紗理奈)の声が聞こえたー


驚いた様子で、達志(紗理奈)のほうを見つめる慎太郎ー。


「ーーー小暮くーーー…いえ、こ、小暮ー

 紗理奈をどこに連れて行こうとしてるんだー?」


達志(紗理奈)が言うと、

「そ、それはーー」と、慎太郎は気まずそうに呟くー


「ーーー嫌がってるじゃないかー」

達志(紗理奈)が少し怒ったような口調でそう言うと

慎太郎はあっさりと引き下がって、

「ぼ、僕ーー僕ーー…相馬さんに、愛されたと思ってー」と、

その場に膝をつくー。


「ーーー小暮ー…

 人の彼女にそういうことするの、良くないぞー。

 しかも、わたーー…本人、嫌がってるんだからー」


達志(紗理奈)は諭すような口調で、

けれども、慎太郎がまた同じことを繰り返さないようにと、

強い口調でそう言い放つー。


慎太郎は、”達志”の登場により、すっかりと委縮してしまったのか、

「ーーう、うんーー…わ、分かったよー約束するー」と、うつむきながら

頷くー。


「ーーー」

そんな様子を見て、達志(紗理奈)が振り返ると、

紗理奈(達志)は怯えた表情を浮かべたまま、

申し訳なさそうに「ありがとう…ありがとうー」と、そう言葉を口にしたー。


「ーー…うんー」

達志(紗理奈)は、そんな紗理奈(達志)の様子を見ながら

静かに頷いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その日の夜ー。


「本当にいいのー?まだ数日残ってるけどー」

達志(紗理奈)がそう言うと、

紗理奈(達志)は苦笑いしながら答えたー。


「ー最初はさ、”可愛いって得するなぁ”なんて

 思ってたけどー、

 ーーその分色々大変なんだなってー、分かったからさー」


紗理奈(達志)はそう言うと、

「ーーどっちにもいいところもあって、悪いところもあるって

 ことなんだよなー」と、そんな言葉を口にしたー。


最初は、”可愛いは正義”だと思うほどに、

紗理奈の身体になって、いいことばかりだったー。

しかし、日に日に”嫌な部分”も見えてきて、

やっぱり男も女も、色々苦労する部分もあれば、

得をする部分もあるのだと、達志は学んだー。


「ーーふふーそうそうー、たっくんの身体にも

 いいところはたくさんあるんだからー」

達志(紗理奈)がそう言うと、

「ーははー。だな…」

と、紗理奈(達志)は笑うー。


そしてー、

「ーー俺はもう”いつでも”元に戻る気になったからー、

 あとは、紗理奈の好きなタイミングで言ってくれればー


 最初の予定通り、1週間続けてもいいし、

 今、終えてもいいし、明日でもいいしー」

と、紗理奈(達志)は穏やかな言葉を口にするー。


「ーーーーーうんー。

 だったらーーー


 そろそろ、戻ろっか」


達志(紗理奈)のそんな言葉に、

紗理奈(達志)は、穏やかに微笑みながら頷いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー。


達志と紗理奈の二人は

”自分の身体”で大学にやってきていたー。


「ーやっぱ、自分の身体の方が落ち着くなぁー」

達志がそう言いながら笑うと、

「ーうんー。わたしもー」と、紗理奈は笑うー。


「ーーーははー

 でも、今日も早速、戸塚から冷たい態度取られたけどー」

と、後輩の名前を出すと、紗理奈は笑うー。


紗理奈と入れ替わって過ごしてー、

”可愛い”で得をすることもあれば、

それ以外の部分で”自分の身体でいる時よりもつらい”と

感じることも色々あったー。


逆に、達志になった紗理奈も

いいところも、悪いところも色々味わったー。


もちろん、女だからと言って

全員が”可愛い”で得をするわけではないし、

容姿に恵まれないような子もいるー。

逆に、大食いの子もいるし、運動が得意な子だっているー。


男の場合も、紗理奈が達志の身体になって感じたような

”たくさん食べられる”とは限らないしー、

男子でも力のない子はたくさんいるー。


それでも、人それぞれ、良いところもあれば悪いところもあるー。

入れ替わって、二人はー、特に達志はそんなところを

改めて実感することができたー


「ーねぇねぇ、せっかくあの”糸”あるんだしー、

 これからもたま~に入れ替わってみない?」

相変わらず都市伝説や不思議な現象が好きな紗理奈の

そんな言葉に、

達志は「はははーそうだなー。これからも時々交換してみるか!」と、

前向きな言葉を口にしたー


おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


最終回でした~!★

最初から最後まで、比較的平和的なお話だったのデス…!


これからも二人は時々、入れ替わったりしながら

楽しく過ごしていくことができそうですネ~!


お読み下さりありがとうございました~!★!

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