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エイリアンに占領された地球ー。


人間を”皮”にして乗っ取り、文明ごと地球を略奪したエイリアンー。


エイリアンの数よりも、人間の数の方が多かったために、

”乗っ取られずに”見逃されている人間たちは、

エイリアンの激しい弾圧の中、それぞれ苦痛の日々を送っていたー。


諦めて従う者ー

絶望して命を絶つ者ー。

反逆して”奈落”へと送られる者ー

そして、虎視眈々と反撃の機を伺う者ー。


それぞれの運命はー…?


★前回はこちら↓★

<皮>エイリアン・KYOTO①~占領~

不気味な色に染まる空ー。 常にオーロラが輝いているかのようなー、 そんな空を見上げつつ、内里 麻友(うちざと まゆ)は、 悲しそうな表情を浮かべるー。 「ーーーーーーあ、いたいたー」 そんな麻友に声をかけて来たのは、 麻友の親友でもあり、幼馴染の宮川 奈諸美(みやかわ なおみ)ー。 しかしー それはー”1...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーわたし、なんかもう疲れちゃったー」


自虐的に笑みを浮かべるのはー、

麻友の先輩・西崎 優美香(にしざき ゆみか)ー。


優美香は、麻友の所属していた”手芸部”の先輩で、

いつもニコニコして優しく、とても頼れる先輩だー。

よく、麻友も個人的な悩みを相談したりもしていたー。


その優美香が笑うー。


「ーーーもう、こんな世界、生きてても意味ないよー」

笑いながら、そう呟く優美香ー。


エイリアンに占領された絶望の世界ー。

”売れ残り”として、エイリアンに乗っ取られることを

免れた人間たちにも、安息の時はないー。


「ーーー先輩…そんなこと言わないでくださいー」

麻友がそう言い放つー。


「ーーふふーごめんねー。

 でも、もう疲れちゃってー

 もう、死んじゃおっかなー」


優美香がそう呟くー。


”優美香”は、麻友と同じ”売れ残り”ー

つまり、エイリアンに皮にされて、乗っ取られていない人間だー。


その”フリ”をしている”監視員”と呼ばれるエイリアンもいるものの、

優美香は恐らく”本当に”乗っ取られていないと思うー。


「ーーー先輩ー…

 ーー死ぬなんて言わないでくださいー」


麻友が悲しそうに言うー


がーーー


「ーーじゃあどうしろって言うんだよ!」

優美香が突然、持っていたペットボトルを麻友の方に投げつけて来るー


ビクッとしてしまう麻友ー。


優美香は変わってしまったー。

エイリアンに占領されてからー。

今まで一度も声を荒げたり、怒ったりするような人じゃなかったのにー

変わってしまったー


「ー親も、友達も、先生も、みんなみんな乗っ取られて、

 どうすればいいのー?

 死ぬなんて言わないでください?

 だったら麻友ちゃんがこの状況、どうにかしろよ!」


優美香は声を荒げると、やがてため息をついてから

にっこりと笑ったー


「ーーなんてねー。

 冗談冗談ー」


にこにこと笑う優美香ー。

投げたペットボトルを拾って、笑顔のまま

それをトントンと机に当てながら、

イライラした様子を隠さない優美香ー。


”冗談”ではなく、本気で怒っているー。


「ーーごめんなさいー……」

麻友は、涙をこらえながら歯を食いしばるー。


先輩がこんな風になってしまったのも、

全部全部、エイリアンのせいー。


エイリアンが憎いー


でもーーー。


教室に戻った麻友は

今日も”弾圧”されるー


「ーーおかえりー下等生命体ー」

親友だった奈緒美がニヤッと笑うー。


机に足を乗せながら、

ポテトチップスを貪る奈緒美ー。


奈緒美はよく、体重を気にしてダイエットをしていたー。

しかし、今の奈緒美はそんなことお構いなしー。

今は、まだ”乗っ取られる前”と同じ体型だけどー、

この調子だと、いつかはー


「ーー…た、ただいま戻りましたー…」

麻友がそう呟くと、

奈緒美は「ーー何か文句あんの?」と、苛立った様子を見せるー


「ーーい、いえー…」

麻友がお菓子のほうを見つめながらそう呟くと、

「ーあぁ、これねー

 ーこの女が太っちゃったら、”新しい人間”を着ればいいだけだしー、

 人間なんて”まだ”いくらでも余ってるんだからー」と、

ゲラゲラ笑いながら奈緒美は言うー。


「ーー”こいつ”が太ろうが、わたしには関係ないの」

自分を指差しながら邪悪な笑みを浮かべる奈緒美ー。


「ーーーーー」

周囲もゲラゲラと笑うー。


麻友は悔しそうに歯を食いしばるー。


しかしー


「ーーー何黙ってんの? 一緒に笑えよ」

奈緒美が、真顔で麻友を睨みつけながらそう言い放つー。


「ーーー…え…」

麻友が戸惑いながらそう言葉を口にすると、

奈緒美は「笑えっつってんだよ」と、麻友に”一緒に笑うように”促すー


麻友は、震えながら、エイリアンに乗っ取られた

元クラスメイトたちと一緒に笑うー。


「ーこいつが太ったら、今度は麻友を着てあげるからー ね?ふふ」

奈緒美が嬉しそうに笑うー。


”ーー奈緒美の身体が太って、エイリアンがわたしに着替えれば、

 奈緒美ちゃんは解放されるのかなー?”


麻友が、心の中でそんなことを思うー。


がー、奈緒美はニヤニヤしながら

「ー脱いだ後は、ビリビリに破ってポイしちゃお~!」などと、

そんな言葉を口にしているー。


震える麻友ー。

でも、どうすることもできないー。


麻友は、”死のう”とは思っていないー。

でも、もう”諦めて”いたー。

エイリアンたちに反撃する気力なんて、ないー。

勝ち目なんて、あるわけがないー。


そう、思っていたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


放課後ー。


幼馴染の彰吾から呼び出された麻友は、

彰吾の元にやってきていたー。


「ー誰に見られてるか分からないー。

 雑談してるフリをしながら、歩くぞ」


彰吾のその言葉に、麻友は頷くー。


二人で道を歩き出すー。

空は相変わらず、ネオン輝くような不気味な空ー。

かつてのような安堵できる青空は、もうないー。


エイリアンたちにより、地球の環境が変質させられているー。

エイリアンたちが人間の身体を乗っ取っている以上、

”人間が生活できなくなるような”環境にされることはないとは思うー。


けれどー、その保証もないー。


「ーー”反撃作戦”の準備が整ったー」

彰吾がそう言い放つー。


「ーー反撃作戦ってー?」

麻友がそう呟くと、

廃線となった地下鉄を再利用して、

エイリアンたちに気付かれない隠れ家を仲間たちと共に完成させー、

そこを拠点に反撃作戦を準備していた、と彰吾は言うー。


確かに、以前も彰吾は”反撃を企てている人達を知ってる”と、

そう言っていたー。

それが、今言っている計画なのだろうー。


「ーーや、やめた方がいいってばー

 エイリアンたちに、勝つなんて絶対に無理だよー」


麻友がそう言い放つと、

彰吾は首を横に振るー。


「ーーー仲間と共に選んだ、エイリアンに乗っ取られたやつらを

 10人ほど捕らえて、やつらと交渉するー。

 この周辺の地域だけでも、取り戻すんだー」


彰吾はそう言い放つー。


エイリアンに乗っ取られた人間を仲間と共に奇襲ー、

捕らえて、そのエイリアンを人質に、他のエイリアンたちと

交渉するつもりだと、彰吾は言うー。

さらに、捕らえた”皮にされた人々”の解放も要求すると言うー。


「上手く行けばー、奈緒美だって助けられるー。

 お前だって、アイツのこと、助けたいって言ってただろ!」


彰吾がそう叫ぶー。

奈緒美は彰吾にとっても、幼馴染ー。

このまま放っておくわけにはいかないー。


けれどー…


「無理だよー…そんなことして、失敗したら、

 もっとエイリアンたちが怒りだしてー

 大変なことになっちゃうよー…


 ーー変なこと、しないでー」


麻友が涙目でそう言い放つー。


「ーーーま、麻友ー…」

彰吾は戸惑うー。


「ーあいつらを怒らせたらー…わたしたちー…

 もっともっとひどい目に遭うー…


 大人しくしてれば”今のまま”で済むのー

 だからお願いー…

 反撃なんてしないでー…」


涙目の麻友ー。

麻友はすっかり”諦めて”ー、

”このまま、これ以上酷い目に遭わずに生きる”ことしか

もう、考えることができていないー。


「ーーー諦めんなよ!麻友!必ずうまくいくから!」

彰吾が叫ぶー


「お前は、俺が守るからっ!」

彰吾の言葉に、麻友は首を横に振るー。


「ーー”奈落”に送られるだけだよー…

 それにー、残った人たちもさらに酷い扱いを受けるだけー…


 もう、勝ち目なんてありっこない!無理なの!」


麻友が泣きながら言うー。


「ーーー麻友ーーーー…」

彰吾は、悲しそうな表情を浮かべるー。


「ーーーーやっぱりー…

 麻友は、変わっちまったなー」


彰吾が悔しそうに言うー。


「ーーーーー…」

改めて、そんな言葉を掛けられて、麻友は思うー


”優しかったのに、壊れてしまった西崎先輩とわたしも同じー”

とー。


「ーーーーー正気じゃいられないよーこんな世界」

吐き捨てるようにそう言うと、麻友はそのまま彰吾の前から

立ち去っていくー。


彰吾は「それでも、俺はやらなきゃいけないんだー」と、

そう言葉を口にすると、

「ー1週間後ー。作戦を仲間たちと決行するー

 麻友も、俺を信じるなら、西口の廃線になった地下鉄の前に

 来てくれー!俺が必ず守るから!」と、

立ち去る麻友に向かってそう叫んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


帰宅した麻友ー。


ラバースーツ姿で酒ばかり飲んでいる姉・美姫に

暴言を吐かれながら、ひたすら耐える麻友ー。


「ーおい!クズ!

 さっさと酒買って来いよ!」

美姫が、別人のような怒鳴り声を上げつつ、そう叫ぶー。


真面目だった”お姉ちゃん”はもういないー。


「ーおら!”売れ残り”は、我々のために働く運命なんだから

 早く行って来いよ!」

美姫が鬼のような形相で叫ぶー。


もう、お姉ちゃんはいないー。


麻友は、そう自分に言い聞かせながら”お使い”を済ませるー。


”ーーーーーー”

彰吾たちが”反撃作戦”を決行に移せばー、

エイリアンたちは絶対に怒り狂うー。


”オオサカ”では、反逆を企てた人の同級生全員が

”連帯責任”として奈落送りになったと噂も聞いたー。


もし、彰吾とその仲間が反撃作戦を決行したらー…


お使いを済ませた麻友は”家として与えられている”

床下でガクガクと震えるー。


”わたしー…もうやだー…これ以上、酷い目に遭うのはーいやっ…”



そしてーー

その翌日ー


「ーーー話ってなぁに?」

麻友の友人の一人だった”詩織”を呼び出した麻友ー。


人間を乗っ取っているエイリアンにも”性格”があるー。

人間を見下しているのは全員共通ではあるもののー、

”比較的話を聞いてくれるタイプ”もいれば

”全く話が通じないタイプ”もいるー。


例えば、麻友の姉である美姫は”全く話が通じない”ー。

ひたすら、暴言を吐くタイプだー。


幼馴染でもあった”奈緒美”は、話は聞いてくれるものの、

人間をいたぶることしか考えていないー。


”話”をするのであればー

この”詩織”が一番いいー。

詩織を乗っ取ったエイリアンは”キレさせさえしなければ”

比較的、話を聞いてくれるー。


「ーー詩織ちー…し、詩織さまー…

 忙しい中、申し訳ありませんー」

まずは、来てくれたことに感謝の言葉を述べるー。


友達を”さま”付けで呼ぶなんて、今でも違和感はあるー。

でも、麻友はこうして、エイリアンに尽くすことで

これまで生き延びて来たー。


”ごめんねー…彰吾ー”

麻友は涙をこらえながら、詩織の方を見るー。


”もうー、これ以上酷い目に遭いたくないー

 もう、エイリアンに勝ち目なんてないー

 もうー、いいのー”


麻友はそんな風に思うー


”このままでも、もういいのー”

とー。


「ーーーで、わざわざ呼び出した理由は?」

詩織がニコニコしながらそう言葉を口にするー。


「ーーは、はいー

 実はー…」


麻友はそこまで口にして、一瞬迷うー。


麻友は、自己保身のために”幼馴染の男子”を売ろうとしているー。


していることが、どれだけ最悪なことかは、よく分かっているー。

けれどー…


彰吾たちが失敗すれば、連帯責任を取らされるかもしれないー。

もっともっと、酷い目に遭うかもしれないー。


そんな恐怖には耐えられなかったー


「ーー反乱を企てている人たちがいますー」

麻友がそう言い放つー


「ーーあらーーーいい子ねー」

詩織はニヤリと笑みを浮かべると、

麻友に顔を近づけながら、クスッと笑うー


「ー我々のために尽くす従順な下等生命体ー

 ふふー」


詩織はそう言うと、「可愛いなぁ…♡」と、笑みを浮かべながら

麻友にキスをしたー。


麻友は友達にキスをされて、ゾワッと恐怖を感じながら、

詩織の方を見つめるー。


「ーじゃあ、その話、詳しく聞かせてもらえる?」

ニヤリと笑う詩織に対して、

麻友は全てを打ち明けてしまうー。


そしてーーーー

その日の夜ーーー


「ーーー……くそっ! 離せ!離してくれ!」


麻友の幼馴染・彰吾は、

エイリアンたちにアジトである廃線になった地下鉄の駅に

乗り込まれてー、捕らえられたー。


彰吾と、その仲間が”奈落”と呼ばれる場所へと

連れていかれるー。


その光景を”見に来るように”言われた麻友は、

彰吾が連行されていくのを悲しそうにー、

そして、震えながら見つめるー。


「ーーーククククククー…

 密告、ありがとねー。

 これからも、よろしくー」


詩織はそれだけ言うと、満足そうに立ち去っていくー。


一人残された麻友は、

呆然としながら、その場に立ち尽くすー。


仲間を、裏切ってしまったー。


”ーーわたしってーーホント…最悪な子だったんだねー”

罪悪感に囚われながら、一人そう呟くと、

不気味な色の空を見上げながら、麻友は一人、涙をこぼしたー。


でもーー…

こうしないと、もっともっとひどい目に遭うー。

もう、酷い目に遭いたくないー

もう、これ以上は、耐えられないー。


「ーーーーどうして、こんな世界になっちゃったんだろうー…」

麻友は、そう呟きながら、己の無力さを呪うと、

そのまま家に向かって歩き始めるー。


いつまでこの地獄は続くのだろうー。

この地獄に縋りついて、その先に何が待っているのだろうー。


絶望のこの世界での日々はいつまで続くのだろうー。


麻友にはもう、”未来”も、何も見えなかったー。



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


過酷な世界での過酷な日々…!

私がもしここにいたら…?と考えるだけで

ぶるぶるデス…!


こんな状況から、逆転できるのかどうかは、

また次回以降のお楽しみデス~!


今日もありがとうございました~!★!

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