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隣の座席に座る梨乃の様子が突然おかしくなったー。


そんな梨乃から声を掛けられた栄太は、

梨乃が”江戸時代の侍・テツ”に憑依されてしまったことを知るー。


あまり元の時代に変える気が無さそうなテツを前に、

話を聞かされた栄太も、

憑依された梨乃も、只々困惑することにー…。


★前回はこちら↓★

<憑依>憑依侍①~現世にやってきた侍~

「ーーーようやく、貴様と決着をつける時が来たようだなー」 ”人斬り”の男が、そう言葉を口にするー 「ーーー…これ以上の狼藉は、許さぬー」 世間を渡り歩く剣客の男が、そう言い放つと、 刀を抜いて、それを構えるー。 江戸時代ー。 ”人斬り”として世を騒がせた男の行方を追っていた剣客の男は、 ようやく、”人斬り”の...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


授業が終わり、”続きは放課後に”と

約束した通り、栄太は梨乃と”話の続き”をしていたー。


「ーーーじゃあ、名前とこの世界に飛ばされる直前のことと、

 自分が”江戸”にいたことぐらいしか覚えていないってことー?」

栄太がそう言うと、

テツが表に出ている状態の梨乃が「そういうことでござるなー」と、

腕組みをしながら言葉を口にしたー。


「ーーーー…」

栄太は、そんな梨乃を見つめながら、少し顔を赤らめるー。


梨乃の姿・声で、”拙者”とか”ござる”とか言われると

どうしても気になってしまうし、

何だか、そのアンバランスな感じにドキドキしてしまうー。


「ーーおや、栄太殿、なんだか顔が赤くなっているようでござるが?」

梨乃は、そう言うと不思議そうに顔を覗き込んでくるー。


「えっ…近っ…」

栄太が思わず戸惑いながらさらに顔を赤らめると、

「あぁ!梨乃殿にドキドキしてるのでござるな!」と

揶揄うようにして言葉を口にしたー。


「ーーーーえ…ち、ちがっ!そういうわけじゃー」

慌てて栄太がそう言葉を口にすると、

梨乃は「ーーん~?本当でござるか?」と、わざと顔を

さらに近づけて来るー。


「ぶっ… い、いやー、こ、これはー、そのー」

栄太が激しく戸惑う様子を見せると

「ちょっと!や、やめなさいよ!」と、梨乃が急に声を上げて、

栄太と距離を取ったー。


梨乃本人の意識だー。


「ーーあははーすまないでござるー」

梨乃が、まるで一人二役をやっているかのような、

そんな状態に見えてしまう光景ー。


侍・テツに憑依されたあとも、梨乃は自分の意識も保っている状態で、

今は、梨乃本人と、テツの二人が梨乃の身体を動かすことも、

喋ることもできる状態ー。


そのため、先ほどから事情を知らない人からみれば

かなり奇妙な言動が続いているー。


「ーところで、この格好ー…変な格好でござるなぁ…」

梨乃は、自分のスカートを触りながらそう言葉を口にするー


「~~~~~~…」

そんな梨乃の方を見ていた栄太は、

梨乃のスカートがめくれかかっている状態にドキッとするー。


「ーーこら!触っちゃだめ!」

梨乃は、ぺしっ!と自分の手を叩くと、

すぐに栄太の方を見て、

「ご、ごめんねー松山くんー」と、

心底申し訳なさそうに、そして恥ずかしそうに言葉を口にするー


がー…

その恥ずかしそうな表情が一瞬にして

ニヤニヤした顔に変わると、

「ーー未来はいい世界でござるなー」

と、そんな言葉を口にしたー。


やがてー、ひと息ついてから、

再び色々な話を聞きだす栄太と梨乃ー。

梨乃の身体を使いながら、テツは状況を話し始めるー。


「ーー拙者は、人斬りの男と戦っていてー…

 それでーー最後に拙者がバランスを崩した時にー…

 う~~~~ん…」


テツからすれば、遥か未来に飛ばされた影響だろうかー。

記憶がやはりハッキリしないようだー。


「ーその”人斬り”の人っていうのはー?」

栄太がそう言うと、梨乃は腕組みをしたままー、

「ーたくさんの人を斬ってた男ーーー

 名前はーーー…ーーーう~ん…」と、

思い出そうとしながら、言葉を口にするー。


考え込む表情をしていた梨乃が、突然不思議そうな表情に変わると、

「でも、テツさんがこの世界に来たってことは、

 最後まで一緒にいた”人斬り”の人もこの世界に来てたりしないの?」と、

梨乃本人が、自分の身体でそう質問したー。


また、深刻な表情に戻る梨乃ー。


「確かにその可能性は十分にあるかもしれないー」

梨乃のそんな言葉に、栄太はゴクリと唾を飲み込むー。


もしもー、”人斬り”と戦っていた”というこの侍だけではなく、

”人斬り”まで、この時代に飛ばされて来ていたらー…


「ーーーー」

深刻な表情をしていた梨乃に憑依しているテツは、

やがて息を吸うと、

「でも、拙者一人かもしれないし、そんなに心配は

 しなくても大丈夫でござるよー、きっとー」と、

そう笑みを浮かべたー。


それからもしばらく話をしたものの、解決策は見つからないまま、

やがて、梨乃と栄太は時間も遅くなってしまったことから、

下校する準備を始めるー。


「ーーー遅くまで付き合わせちゃってごめんねー」

梨乃のそんな言葉に、栄太は少し照れくさそうに笑いながら、

「北村さんー…これから、どうするのー?」

と、そんな言葉をかけたー。


そんな栄太の言葉に、梨乃は「ど…どうするってー…」と、

少し困惑した表情を浮かべるー。


そしてー、少し考えた上で


「ー今日は、とりあえず部活もないしー

 このまま帰ろうかなぁって…思ってるけどー」

と、そう言葉を口にすると、

「拙者!梨乃殿の家を見たいでござる!」と、嬉しそうに梨乃の

身体で廊下を走り始めて、そのまま走り去ってしまったー


「あ!ちょっと!まだ松山くんと話し中なんだけど!!」

梨乃の声が階段の方から聞こえるー


「ーとにかく!急ぐでござる!」

「勝手にわたしの身体で走らないで!」

「ーー善は急げでござる!」

「ーー廊下は走っちゃだめ~!」


どうやらー、梨乃の意思とは関係なく、

梨乃は走らされているようだー。


「ーーあはは…なんだか、大変そうだなぁ…」

栄太はそう思いながらも、

”北村さんのためにできることがあれば、僕も手伝ってあげよう”と、

そんなことを思いながら、歩き出すのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その日の夜ー


「ーーーすごいでござるな!」

梨乃が子供のように笑いながら、本を読んでいるー。


”ーーー別に…わたしからすれば何もー”

奥に引っ込んでいる梨乃の意識はうんざりした様子で呟くー。


勝手に江戸時代の侍が身体の中に入り込んで来て、

しかも、何をするときにも色々言ってきてうるさいー。

さっき、お風呂に入った時に至っては、急に梨乃の身体で

勝手に興奮し始めて、

鼻血を出すわ、顔を真っ赤にするわ、

「ーーんほぉぉぉ~!♡」と、奇声を上げるわで大変だったー。


危うく親にも変な目で見られてしまったぐらいだ。


「ーーわたしの身体を動かしていいのは、

 わたしが許可を出した時だけね!

 まだテツさんは、この世界のこと、あまり知らないんだしー、

 もう少し慎重に!


 わたしが変な目で見られちゃうからー」


梨乃はそう言うと、テツは梨乃の口で「承知したでござる」と、

返事をするー。


そしてーー…

嬉しそうに先ほどから読んでいる本を見つめるー。


読んでいるのはー、社会科の歴史の教科書だー。


「ーー江戸幕府って終わるのでござるなぁ…

 拙者、てっきりずっと徳川の世が続くものかとー」

梨乃の身体で、テツはそんな言葉を口にするー


”この人から見れば、未来のことが載ってるんだもんねー。

 たしかに不思議な感覚かもー”

梨乃はそんなことを思いながら、歴史の教科書を夢中になって読む

”自分”の姿を自分の中から見つめながら

”なんか、不思議な感じー”と、そう言葉を口にしたー。


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翌日ー


「ーーあ、松山くんー おはようー」


翌日ー

登校してきた梨乃が、栄太の顔を見ると

そう言葉を口にしたー。


がー…栄太は、そんな梨乃の顔を見て、

ぎょっとした表情を浮かべるー。


「ーーーあ……え…、き、北村さんー…おはようー」

栄太はそれだけ言うと、

すぐに「え…?だ、大丈夫ー?」と、心配そうに言葉を口にするー。


「ーーえーーーあ、うんー大丈夫ー

 なんだか今朝は、すごく眠くてー…」

梨乃が目をこすりながら言うー。


一目見ただけで、”明らかに寝不足”だと分かってしまうような、

梨乃の雰囲気ー。

栄太は「ーーき、昨日寝れなかったのー?」と、心配そうに言うと、

梨乃は「ううんー…早く寝たつもりだったんだけどー」と、

そう言葉を口にするー。


「ーーー”憑依されてる”から、いつもより疲れるのかなー?

 二人分、北村さんの中にいるわけだしー…」


栄太がそう言うと、

梨乃は「ーー拙者のせいなら、かたじけないー」と、

急に、テツが表に出てきて、そう言葉を口にするー


「ーーううんー…仕方ないよー」

梨乃は、そう言葉を口にすると、

”テツ”は、少し気まずそうに昨日の夜のことを思い出すー。


”今日は、わたし…なんだか疲れちゃったし、早めに寝るねー”


”ーいつも梨乃殿がどのぐらいに寝るのかは分からないけどー

 承知でござるー”


そんな会話をしながら、昨夜ー、

梨乃はいつもより1時間ほど早く、眠りについたー。


がーーー…

”梨乃”が寝たあともー、

”テツ”は、梨乃の身体を動かすことができることに気付いたのだー。


どうやら、梨乃が寝ても、テツは”寝ない”ようだー。


「ーーーーーーーーーー」

”梨乃”が寝てからしばらくして、梨乃の身体で起き上がったテツはー、

「ーー…もしかして、今は拙者がー…動かし放題?」と、

そんな言葉を口にするー。


そしてーーー


「ーーー……」

”梨乃”の意識が寝ている状態の今は、

”完全に自分の自由”であることを確信したテツは、

ゴクリと視線を下に向けたー。


梨乃の胸の膨らみが服の上から見えて、

ドキッとするテツー。

もちろん、テツ自身ではなく、梨乃の身体がテツの代わりに

ドキドキしているー。


「ーーーー……ーーー」

梨乃は落ち着かない様子でしばらくソワソワしてみせると、

「ーー…り、梨乃殿ー…ーーかたじけない」と、小声でそう呟きながらー

胸を揉み始めたー


「ーーんっ…ーーこ、これはーー♡

 …あ… 思ったよりもーー、んふふふふ♡」


嬉しそうに胸を揉み始める梨乃ー。


やがて、その手の動きはどんどん激しくなっていきー、

ついには鏡にキスをしたりー、

鏡の前で色々なポーズをとって見たりー、

色々なことをし始めるー


「ーー拙者…り、梨乃でござるー」

”梨乃”の身体で、”梨乃”として自己紹介をして

ドキドキするテツー。


「ーーー…」

鏡を見つめながらゴクリと息を飲み込むと、

「わたし、梨乃だよっ♡」と、

”梨乃本人”っぽく、自己紹介して嬉しそうにニヤニヤとするー。


”梨乃が寝ている間に、散々梨乃の身体で色々遊んだー”


そのせいで、”梨乃の身体”は眠いのだー。


”ーーー昨日、遊んでいたなんて言えないでござるー…”

テツは、梨乃の中でそう呟くと、

梨乃は今一度、眠そうに大きなあくびをしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


放課後ー


「それにしても、”すまほ”ってのは凄いでござるなー…」

目を輝かせながらスマホを見つめる梨乃ー。


すぐに、冷めたような表情に戻ると、

「ーーー…まぁ…江戸時代から来たら、そうなるよねー」と、

梨乃はそう言葉を口にしたー。


江戸時代の侍であったテツからすれば”この世界”で見るものは、

何もかもが新鮮だったー


「この人、昨日、下校中に車みて、”変な馬がいる!”って

 叫んでてー、笑っちゃったー」

梨乃は思い出し笑いをしながら、栄太に対してそう言うと、

栄太は「あははー、確かにあの時代には今みたいな車はなかったもんねー」と

笑いながら答えるー。


「ーーー」

”こうして、北村さんと話ができるようになってラッキーかも”

栄太は、そんなことを思うー。


今まで、隣の座席だけどほとんど会話のなかった梨乃と、

”テツ”のおかげで昨日からこんなに話をすることができているー。


梨乃自身、”江戸時代の侍に憑依される”という

とんでもない事態を、”唯一”理解してくれている存在がいるのは

心強いのかもしれないー。


しばらく雑談をすると、

「ーーそろそろわたしは部活にー」と、梨乃が立ち上がるー。


「ーあ、今日は剣道部だったねー。…

 その…頑張ってー」

栄太が照れくさそうに言うと、梨乃は「ーーう、うんーありがとう」と、

そう言葉を口にするー。


「この時代にも剣術はあるのでござるなー

 真剣は使うのでござるか?」


梨乃は一人でブツブツ言いながら、そのまま教室の外に

向かって行くー


「真剣はさすがに使わないけどー…」

梨乃がそう言葉を口にするー。


そんな、”一人だけど二人”の会話をしながら

立ち去っていく梨乃を見つめながら、栄太は静かに微笑んだー。


ーーがーーー

その時だったー


ビクッー


栄太は、今までに感じたことのない感覚を覚えるー


「ーーーえ…?」


”自分の中に何かが入り込んでくる感覚ー”


そしてーーー


”ーーー急に驚かせてすまないー”

と、そんな声が頭の中に響いたー。


「ーーーえ…!?!?ま、まさかー」

栄太は、呆然とするー。


”「でも、テツさんがこの世界に来たってことは、

 最後まで一緒にいた”人斬り”の人もこの世界に来てたりしないの?」”


先日の、梨乃の言葉を思い出すー


「ま、まさか、人斬りー!?」

栄太がそう叫ぶと、梨乃に続き”江戸時代からやってきた魂”に

憑依されてしまった栄太の”口”が、勝手に動き始めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


剣道部での練習ー。


いつものように、竹刀を握り、練習を続けていた梨乃ー。


「ーーーーーーー」

がー、休憩に入ると、梨乃は竹刀を見つめながらー、

それをじーっと見続けるー。


「ーーーーーーーーーーー」

”懐かしい”

梨乃に憑依しているテツは、そんな感覚を覚えるー。


そしてーーー


無意識のうちに、梨乃は笑みを浮かべていたー。


”刀”を握ると、なんだかとても興奮するー


「ーーーー…ど、どうしたのー?」

梨乃本人の意識が、自分の口でそう言葉を口にすると、

テツは、返事をしようとした直後にーーーー


”自分のこと”を、突然思い出したー

刀を握ったことで、思い出したのかもしれないー


「ーーーーー……拙者ー…思い出したでござるー」

梨乃の口で、そう呟くテツー。


梨乃が不思議そうな表情を浮かべると、

梨乃の中にいる”テツ”は、静かに言葉を口にしたー…。



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


男子の方も憑依されるお話は、

私の作品の中では珍しいですネ~★笑


江戸時代の二人が揃ったことで、

何が起きるのかは、また次回のお楽しみデス~!


今日もありがとうございました~!

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