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彼は、”仕事人間”だったー。

仕事のためにプライベートが犠牲になっているー…

そんな、人間だー。


「申し訳ありませんー。すぐに手配いたしますのでー」

とにかく、仕事に対して一生懸命ー。

遅くまでの残業にも、文句を言わず、ただひたすらに仕事に打ち込んでいたー。


取引先からの電話を終えると、

「ーーあ…松山(まつやま)くんー」と、

そう言葉を口にするー。


「ーーあ、はいー、柿谷(かきたに)さんー」

若手の男性社員・松山 京平(まつやま きょうへい)が、

そう言葉を口にすると、

「ーー小暮(こぐれ)社長の会社に送った荷物、数が足りなかったってよ!」

と、困り果てた表情で、彼は言うー。


「ーーーえ…ホントですか…?」

京平が戸惑いの表情を浮かべると、

「確かあれば坂部さんがー」と、別の社員の名前を口にしようとするー。


がー、その言葉を遮ると、

「あぁ、いやー…誰のせいかはいいんだー。

 僕も注意不足だったしー、これからみんなで気をつけていければー」

と、彼は言葉を口にすると、

慌ただしく鞄に荷物を積めながら

「今から僕、小暮社長のところに謝りに行ってくるー」と、

そう言葉を口にして、会社を飛び出したー。


彼の名はー

柿谷 将司(かきたに まさし)ー。


いつも、仕事のことばかりを考えている典型的な仕事人間でー

家に仕事を持ち帰るのは当たり前ー。

休みの日にも、仕事をしていないと落ち着かないようなタイプで、

部下から”柿谷さんー少し休んだ方がいいですよー”と、

言われても、休むことができずに、会社にやってきてしまうー。


もちろん、会社からすれば”勝手に休みの日にやってきている

都合のいい駒”でしかなく、

給料も出ていないにも関わらず、将司は「それでもやらないと

いけないことがあるのでー」と、気にも留めていないー


そんな、会社にとっての都合の良い駒ー


それが、将司だったー。


慌てた様子で、取引先の社長・小暮の元に、

不足していた部品を持って向かう将司ー。


電車を降りて、慌てて階段を駆け下りようとしたその時ーーー


「ーーあっ…!?」

将司は、足を滑らせてバランスを崩したー。


すぐにバランスを立て直そうとしたものの、

後ろから来た利用客にぶつかられてしまい、将司は階段を

転がり落ちてしまうー。


”ーーそ、そんなー…嘘だろー!?”

階段を転がり落ちながら、将司は色々なことを考えるー。


こういう時ー、

人によってはこれまでの思い出が走馬灯のように流れたりー、

大切な人のことが頭の中によぎったり、

色々なことが起きるのかもしれないー。


しかしー…彼、将司の場合ー

階段を転がり落ちている最中に考えていたのもー

”仕事”のことだったー


”こ、小暮社長のところにー、早くいかないとー”


それだけを思いながら、階段を転がる将司ー


がーーー


「ーーーえっ!?」

階段を下りている最中だった女子大生が、

転がって来た将司に気付いて、驚いて振り返るー。


”ーーー!!!”

流石に、仕事のことを考えていた将司も、転がっている自分が

女性にぶつかりそうになって驚きの表情を浮かべたもののー

どうすることもできないままその子に激突ー

そのまま意識ははじけ飛んでしまったー…。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーーー!!!」


将司が、意識を取り戻すー。


「ーーー…!」

一瞬、何が起きたのか分からず、周囲を見渡すも、

身体に少し痛みを感じて、将司はすぐに

”何が起きていた”のかを思い出したー


”そうだー…僕は小暮社長のところに向かう途中、階段から

 転がり落ちてー”


そんなことを思い出すと、バッ、と時計を見つめる将司ー。


”しまったー…これ以上小暮社長を待たせたら

 この先の取引にも影響が出るかもしれないー

 小暮さんのところは、うちにとっても大事な取引先だし、

 取引先を失うわけにはー”


そう思いながら立ち上がる将司ー


がーーー…


「ーー!?!?!?」

少し歩いてすぐに違和感に気付くー。


履きなれないブーツに…

スカート…???


「ーーーは…?」

将司はーーいやーーー

将司に巻き込まれた”女子大生”は表情を歪めたー


「ーーー…よかったーお目覚めですねー

 救急車も一応読んでありますのでー」

と、駅員がそう声をかけてくるー。


どうやら、駅の中にある、急病人などを運ぶ部屋に

運ばれた様子だったー。


がー…今の将司には、そんなことよりも気になることがあったー


「ーーえ…あ、あの、どうしてぼーーー


そこまで言葉を口にして、将司は声を止めるー


”どうして、僕がこんな格好をー?”

そう、駅員に確認しようとしたのだがー、

”声”の異変に気付いたのだー


「ーーえ…”女”の声ー?」

将司は困惑するー


「ーーー…ど、どうかされましたかー?」

駅員が不安そうに言葉を口にするー


がー、その直後のことだったー


「ーーな、なにこれ!?

 ど、どうなってるんですかー!?」


”将司”の声が聞こえたー。


「ーー!?!?!?」

驚いて振り返ると、同じ部屋に運ばれていた”将司”が目を覚ましたー


「ーーえ…ど、どうして僕が目の前にー!?」


「ーーーえ…なんでわたしが…!?!?!?」


2人は、ほぼ同時に同じような言葉を口にしたー。


困惑した様子の駅員ー。


そうー

将司と、将司が転落した際にぶつかってしまった女子大生は

身体が入れ替わってしまったのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーわたしは…杉森 美月(すぎもり みつき)ですー。

 隣駅の近くの大学に通ってますー」


”将司”になってしまった美月は、戸惑いの表情を浮かべながら

そんな言葉を口にしたー。


将司は既に”中年”の男性ー。

美月からすれば、自分がいきなり上の世代になったような感覚で、

戸惑わずにはいられなかったー。


「ーーーーーどうしようー…」

美月(将司)は”こんなことになるなんてー”と、しきりに時計を

気にしながら、先ほどからかなりそわそわした様子を

見せているー。


「ーーあ…あの…

 それでー…身体のことなんですけどー…」

将司(美月)は、不安そうに”焦っている自分”の身体を見つめるー。


いつも、マイペースな美月からしてみると、

焦った様子でソワソワしている”わたし”の様子は普段、自分では

絶対に見せない姿だー


「ーー…ーーす、すみませんー。

 そ、それより前に大事なことがー」

美月(将司)は、焦り切った様子でそう言葉を口にしながら、

将司(美月)のほうを見つめるー。


「ーーー…だ、大事なことー?」

将司(美月)は当然戸惑うー。

”お互いの身体が入れ替わってしまった”という、この奇妙な状況よりも

”大事なこと”とは、いったいどんなことなのだろうかー。


そう思いつつも、美月(将司)のほうを見つめると、

美月(将司)は口を開いたー


「ーじ、実は僕、これから取引先に謝りに行く途中でー

 早く行かないと、会社の今後の取引にも影響しちゃかもしれないんだー」

美月(将司)は、そんな言葉を口にするー。


普段の美月とは、まるで別人のような振る舞いー。


そんな”別人のような自分”を目の当たりにしながら、

戸惑いの表情を浮かべると、将司(美月)は言葉を返すー。


「ーーー…と、取引先ー…?

 い、今はそれより、わたしたちの身体をー…」


将司(美月)は戸惑いながら言うー。


「ーーそんな場合じゃないんだ!」

美月(将司)は、少しだけ声を荒げると、

心底焦った様子で、

「いや…すみませんー」と、ハッとした様子で言葉を口にするー


「ーーでも…とにかく、先に小暮社長に謝りにいかないとー」

と、なおも”仕事のことであたまいっぱい”という雰囲気を見せ続けるー。


”何なの…この人ー…”

将司(美月)は、戸惑いの表情を浮かべるー。


”わたし”は、急に身体が入れ替わっちゃったことにこんなに不安を

感じているのに、目の前にいるこの人は、

入れ替わってしまったことを気にするどころか、

”取引先”のことで頭がいっぱいの様子を見せているー。


最初は、”身体目当て”なのかもしれないー、と

一瞬美月は思っていたー。

”中年のおじさん”が、”女子大生”の身体と入れ替わったらー…

”喜ぶ人”もいる、ということは、美月にも想像できるー。

何だかんだ理由をつけて、わたしの身体で何かしようとしてるんじゃー?、と

そんな不安も感じていたー。


しかしー、話しているうちに、”どうやらそうではない”と、いうことに

気付くー。


”この人ー…ホントに仕事のことしか考えてないー…”

美月は、心の中でそう唖然としていたー。


入れ替わってから、一度も”美月”の身体に興味を示すような素振りもなく、

ただひたすらに”取引先に謝りに行けなくなること”ばかり

考えているー。

そんな感じなのだー。


「ーーで、でもー…”このまま”じゃ、そのー…

 ”取引先”に行ってもダメじゃないですか?」

将司(美月)は、困惑しながらそう言葉を口にするー。


「ーーー…え」

美月(将司)は、完全に焦り切った表情で、

将司(美月)を見つめると、

「だ、だって、わたしはただの学生ですしー、

 わたしの身体で急に謝りに行ってもー…

 その”取引先”の社長さんは相手にしてくれないと思うんですけどー」と、

将司(美月)はそう言葉を口にするー


「ーーーぁ……」

美月(将司)は呆然としながら、それだけ呟くと、

「どうしようどうしようどうしようー」と、

髪をぐしゃぐしゃにかきむしり始めるー


「ーあ…ち、ちょっと!髪が乱れるのでやめてください!」

将司(美月)が慌てて叫ぶー。


がー、すぐに美月(将司)は「あっ!!!!!」と、声を上げるー。


「こ、今度は何ですかー…?」

将司(美月)は、さすがにイヤになってきてそう言葉を口にすると、

美月(将司)は目をキラキラさせながら言葉を口にしたー


とっても嫌な予感がするー。


そう思っていると、美月(将司)は、その”予感通り”、

”美月”にとって、イヤな言葉を口にしたー。


「ーーー…君が”僕のフリ”をしてくれれば大丈夫かもしれないー

 ぼ、僕は新入社員のフリしながら君の横でアドバイスするから!


 どうかー、どうか、お願いしますー

 取引先から取引を打ち切られてきたら、

 うちの部署のノルマはー!」


美月(将司)はそんな言葉を口にすると、

土下座をし始めるー


「ーちょ!?わたしの身体で土下座しないでください!!」

将司(美月)は、困惑の表情で叫ぶー。


ふとー、

近くの通行人が”土下座している美月”を見て、

不思議そうな顔を浮かべているー。


「ーーや、や、やめてください!分かりましたから!

 それしか手伝いませんからね?

 それが終わったら、元に戻るための相談、

 ちゃんとしてもらいますからね???」


将司(美月)が釘を刺すように言い放つと、

美月(将司)は「ーありがとう…!ありがとうございます!」と、

そう言葉を口にしたー。


美月(将司)に案内して貰い、

取引先の工場へとたどり着いた二人ー。


「ー小暮社長がもうすぐ来るので、

 この部品をお渡ししながら、とにかく謝って下さい。

 謝り方は、さっき電車の中で説明した通りー…」

美月(将司)がそう言うと、

将司(美月)は「ーわたし…何も悪いことしてないんですけどー」と、

”将司の代わりに謝る”ことに、不満そうな表情を浮かべるー。


「ーーあ、小暮社長ー」

美月(将司)は、取引先の社長の姿を見つけると、

思わず、そう言葉を口にしてしまうー


「ーーーーあ…」

将司(美月)からすれば、”知らない社長”を前に

”あまり良く分からない状況”のまま、

「こ、この度は、申し訳ありませんでしたー」と、そう言葉を

口にしながら、足りなかった荷物を手に、

それを小暮社長に手渡すー。


「ーーーーはぁ…こんなことが今後も続くんじゃ、困るんだよ?」

小暮社長の言葉に、

将司(美月)は「も、申し訳ございませんでしたー」と、

”なんでわたしが謝らないといけないのー”と、不満そうに、

心の中で呟くー。


「ーーーまぁいいやー、それで半崎(はんざき)さんは元気かいー?」

小暮社長の言葉に、

「はー、半崎?」と、将司(美月)は言葉を口にするー。


”半崎さん”なんて知らないー

やっぱり”他人のフリをするなんて無理!”と、美月は不満そうに

心の中で呟くー。


がー、

「ーーは、半崎専務なら元気ですよ!

 先日もゴルフでー」

と、美月(将司)が口を挟んだー。


「ーー半崎さんは、僕の会社の部長ー」

小声でそう呟く美月(将司)ー


将司(美月)は「は…はぁ…」と、頷くとー、

小暮社長は「そういえば、君はー?」と、

”将司の横にいる随分若い女性”である”美月”の方を見つめたー。


「ーーえ、あっ!ぼ、ぼくですかー!?

 僕はー、ひ、秘書です!秘書!」


「ーー(えぇっ!?勝手に秘書にしないで!?

 しかも、わたしの身体で”ぼく”ー!?)」

将司(美月)が心の中で突っ込むー。


事前の打ち合わせでは、新入社員の設定でいくはずだったのにー、

なぜ、秘書にー?


「ーー(やべっ…)」

美月(将司)は、小暮社長から急に声を掛けられて、

一人称も、肩書も間違えてしまったことを

心の中でそう思うー。


「ーーふぅんー。秘書かー。

 随分美人だねー」

小暮社長の言葉に、将司(美月)は、内心で”なんか嫌な視線を感じるー”

と、嫌な感情を抱くー。


がー、美月(将司)は「あ、ありがとうございますー!」と、

愛想よく答えるのを見て、

「ーー(ありがとうじゃないでしょ!)」と、内心で言葉を口にするー。


「ーーーー今度、柿谷くんも一緒に食事でもどうかな」

小暮社長は、下心丸出しで、”将司とセット”で、美月を食事に誘うー


「ーーあ、はい!ぜひっ!ご一緒させていただきます!」

美月(将司)は、取引先の社長のご機嫌を取る為か、

勝手に美月の身体で嬉しそうにそんな返事をしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーちょっと!勝手に食事の約束なんてしないでください!」


取引先の工場から外に出ると、

将司(美月)は、不満そうに叫んだー。


だが、美月(将司)は「取引先の期限を損なうわけにはいかないんですー。

理解してくださいー」と、そう言葉を口にしたー。


そしてーーー

時計を確認すると、

「ーーそ、そうだ!早く職場に戻らないと!」と、

美月(将司)はそんな言葉を口にするー


「ーーえ…えぇっ!?元に戻るために話し合うって約束じゃ?」

将司(美月)は完全に困惑しながら、そう言い放つー


がーーー

美月(将司)は「そ、そんなことより、早く職場に戻らないといけないんです!」

と、そう叫んだー。


”何なのこの人…”


入れ替わったことよりも”仕事”の心配で頭がいっぱいの将司を前に、

将司になってしまった美月は戸惑うことしかできなかったー…



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


入れ替わっても仕事のことばかり気にしている人との

入れ替わりを描くお話デス~!☆


入れ替わっても仕事のことばかりの彼と、

そんな彼と入れ替わってしまった彼女がどうなるのかは、

また次回のお楽しみデス~!


今日もお読み下さりありがとうございました~!!★

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